独断と偏見で選ぶ、2011年夏にベスト8へ進めなかったイチオシの好チーム

2011年

能代商(秋田)

1 保坂 10 石田
2 平川 11 森田
3 岳田 12 小玉
4 石川 13 安井
5 小川 14 和田
6 畠山 15 山田渓
7 16 宮腰
8 吉野 17 銭谷
9 山田一 18 大久保

秋田勢の連敗止めたリベンジャー

1997年の秋田商の勝利以来、実に13年間夏の甲子園での勝利がなかった秋田県勢。その間、秋田商の2度の選抜8強はあったものの、打力がものを言う夏の戦いにおいて、伝統的に投手を中心とした守りの野球を展開する秋田勢は分が悪かったと言えるかもしれない。また、組み合わせの不運もあり、初戦から強豪や伝統校を引いてしまうことが多かった。以下にその敗れた相手を上げる。

1998年…明徳義塾(同大会4強)、1999年…樟南(同大会4強)、2000年…育英(同大会4強)、2001年…如水館、2002年…尽誠学園(同大会8強)、2003年…天理、2004年…済美(同大会準V)、2005年…遊学館、2006年…天理、2007年…大垣日大(同大会8強)、2008年…鳴門工、2009年…日本航空石川、2010年…鹿児島実

見事に名のある強豪、上位進出校を初戦で引き続けている。そして、前年夏、能代商は久々の甲子園出場で屈辱の敗北を喫していた。鹿児島実を相手に序盤から当時2年生エースだった保坂がつかまり、中盤までに2桁得点を許すと、打線も3安打で完封され、15-0と一方的な展開で敗れてしまった。

この敗戦を絶対に忘れないため、練習試合のビニールハウスに当時のスコアを貼り続けたナインは、たくましく成長。保坂は前年よりコントロール・球威ともに増し、打線は全国の投手の球威に力負けしないようしっかりと振り込んできた。2年連続で夏の秋田大会を勝ち抜き、県勢の連敗を止めるべく、甲子園へと乗り込んできた。

1回戦

能代商

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 1 0 4 0 0 0 5
0 0 2 0 1 0 0 0 0 3

神村学園

能代商vs神村学園① – YouTube

初戦の相手は奇しくも、前年大敗を喫した鹿児島勢の神村学園であった。本命の鹿児島実が準決勝で敗退する中、その鹿実を下した薩摩中央の好投手を決勝で打ち込んできており、投打ともに実力は高い評価を受けていた。2年連続の「鹿児島勢vs能代商」の戦いは、今年も鹿児島勢がやや優勢かと思われていた。

しかし、チャレンジャー精神で挑む能代商ナインの、1年間の成長たるや、素晴らしいものがあった。序盤は神村学園の上位打線に捕まって1-3とビハインドを背負うが、6回表にため込んできた力が爆発する。神村学園の小さなエース久保に対し、2番吉野、3番保坂、4番山田が3連打を放って1点差に詰め寄ると、続く5番小川の野選でついに同点に。さらに6番平川のタイムリー、7番岳田の犠飛と畳みかけ、この回一挙4点を挙げる。

中盤で試合をひっくり返した能代商。このリードをエース保坂を中心にナインがしっかり守る。実は試合前、神村学園ナインにも「能代商ナインが対鹿児島勢に燃えている」という情報が入り、プレッシャーがかかっていた。試合中も能代商ナインの気迫が神村ナインにしっかり伝わっており、中盤以降はすっかり能代商のペースになった。相手の倍となる10安打を放った打力とエースを中心にしっかり守り切れるディフェンス力を手にした能代商が、ついに秋田勢の連敗を止める勝利を手にしたのだった。

 

2回戦

能代商

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 1 0 1 0 0 0 2
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

英明

 

これで勢いに乗った能代商は2回戦でも英明を撃破。速球派左腕・松本(巨人)に対し、序盤は抑え込まれるが、中盤に5番小川・3番保坂がコンパクトなスイングでタイムリーを放つ。この2点を保坂が緩急を活かした投球で守り抜く。4番中内を中心にパワーのある英明打線だったが、そのパワーを活かさせないのが保坂の投球であった。最後まで英明打線を封じ切った保坂が完封勝ちを記録し、能代商は一気に3回戦まで進出を果たした。

 

3回戦

能代商

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2
0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3

如水館

能代商 2度のサヨナラの危機を防ぐ!(如水館戦・第93回選手権) – YouTube

 

そして、敗れはしたものの、3回戦の如水館戦も素晴らしい戦であった。保坂と如水館の左腕・浜田の投げ合いとなった試合は、1-1のまま終盤へ。9回裏、10回裏と立て続けにサヨナラ負けのピンチを迎えるが、能代商ナインは2回とも見事な中継プレーで刺殺を奪う。1点を勝ち越した12回裏に如水館の機動力野球の前にサヨナラ負けを喫してしまったが、好ゲームの続いた2011年の試合の中でも屈指の好試合を演じた能代商ナインに万雷の拍手が浴びせられた。

その後、秋田勢は吉田輝(日本ハム)の金足農の準優勝や成田(ロッテ)の秋田商の8強入りなど全国でしっかり結果を残している。あの年の夏、能代商ナインが連敗をせき止めた戦いが後年の快進撃につながったと言っても、決して過言ではないだろう。

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