神宮大会4強校の成績振り返り(1997年~2001年)

コラム

各地方大会終了後、すぐに大会が開催される夏と違い、選抜は秋季大会が終わってから5か月が経過して行われます。大会前の優勝予想は非常に難しく、何か月も前の大会成績をもとに考えなくてはいけません。しかし、だからこそ番狂わせと言われる結果が出て面白いのではないでしょうか。今回は、歴代の神宮大会で4強入りしたチームの選抜での結果を振り返っていきます。

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1997年選抜

優勝:上宮→ベスト4

準優勝:春日部共栄→ベスト8

ベスト4:函館大有斗→2回戦敗退

ベスト4:佐久長聖→初戦敗退

 

上宮は前年秋に練習試合も含めて負けなしという圧巻の勝ちっぷりで選抜でもV候補の筆頭に。1番渡辺(ロッテ)、3番三木(近鉄)、4番多井とタレントをそろえた打線がエース山田(巨人)、サイド右腕・建山の投手陣を支え、横浜商・明徳義塾と下して8強入り。準々決勝では前年秋の近畿決勝で大差で下した育英に苦戦するも、9回裏に3点差を追いつき準決勝にコマを進めた。

その準決勝は無印の快進撃を見せていた天理。技巧派左腕・小南に対してなかなか打線がつながらず、7番前田のソロホームランの1点に封じられると、終盤にエラーをきっかけに逆転をゆるし、1-2で惜敗。驚異の快進撃はストップし、新チーム結成以来初の黒星を喫した。夏も関大一に2-3と敗退し、連続出場はならず。勝ち続けることの難しさを感じさせられた。

春日部共栄は4番岡田を中心とした圧倒的な打力で「東の横綱」に位置付けられ、前年の秋の神宮でも上宮を8-7と土俵際まで追い込んでいた。長身のサイド右腕・長峯も安定しており、1,2回戦はともに8-1と大勝する。しかし、準々決勝は雨の中で行われたが、中京大中京のエース大杉の頭脳的な投球の前に苦戦。4点ビハインドから追い上げたが、一歩及ばずに惜敗した。

その春日部共栄に神宮大会で敗れていた函館大有斗。初戦は郡山を相手に最終回まで2点ビハインドであったが、1点差に迫ってなお満塁と攻め立てると、最後はショートゴロが相手の失策を誘って逆転勝ち。奇跡的な勝利をもぎ取った。しかし、2回戦では神宮に続いて対戦した春日部共栄に挑むも、エース神田が相手強力打線に捕まって1-8と完敗。リベンジはならなかった。

佐久長聖は旧・佐久時代に中村監督のもと、台頭してきた新興勢力。1994年夏には初出場でベスト4の快挙をやってのけた。1回戦はエース木幡の好投もあって最終回まで5-3とリードしていたが、土壇場9回表に2アウトランナーなしから連続四球を与えると、ラストバッターのタイムリーで1点差に。さらに、2アウト1.3塁からまさかの重盗を決められ、同点に追いつかれた。最後は延長11回に勝ち越し点を許し、初めての選抜で甲子園の洗礼を浴びることとなった。

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1998年選抜

横浜高校無敗伝説!公式戦44連勝エース松坂大輔を変えた敗戦

優勝:横浜→優勝

準優勝:沖縄水産→初戦敗退

ベスト4:国士舘→初戦敗退

ベスト4:敦賀気比→3回戦敗退

 

この大会は神宮優勝を成し遂げた横浜が選抜も制覇。前年の上宮が成し遂げられなかった1年間公式戦無敗を達成し、高校球界の王者に上り詰めた。

横浜の強さはまさに圧巻であった。前年夏の甲子園出場投手の最速が平安・川口(オリックス)の142キロだった中で、エース松坂(西武)は150キロの速球と高速スライダーで打者を牛耳る。小倉監督のデータのもと、序盤は相手の得意コースから半分ずらしたところに投げ、相手が慣れてきた終盤に苦手なコースを攻めるという芸当も松坂のスピード・球威があってこそのものだ。

打線も小池(DeNA)・小山(中日)・後藤(西武)・松坂と右の大砲がいれば、松本・佐藤・加藤と小技の効く面々も並び、バランスの取れた打線であった。選抜では得点こそ多くはなかったが、毎試合のように2桁かそれに近いヒットを浴びせ、常に横浜がせめつづけている印象であった。内外野の守備も堅く、まさに一分のスキも見せない勝ちっぷりであった。

その横浜と戦前は東西の横綱として挙げられていたのが剛腕・新垣(ダイエー)を擁する沖縄水産。宮里・新垣の強力右腕2枚看板と大城、糸数を中心とした打線がかみ合い、秋は圧倒的な勝ち方を見せた。しかし、選抜では初戦で浦和学院の好左腕・南に打線がわずか2安打2得点に封じ込められると、リリーフ登板した新垣も制球難に苦しんで2-4と逆転負け。裁監督の集大成と位置付けたチームだったが、よもやの初戦敗退に終わった。

国士舘は3年連続の選抜出場。1991年、1993年にベスト4、1996年にベスト8と「春の国士舘」の名をほしいままにしていたが、前年は明徳義塾に逆転負けを喫し、初戦敗退に終わっていた。リベンジに燃えるナインは伝統校・広島商と中盤まで接戦を繰り広げる。しかし、1点ビハインドで迎えた7回裏に、この回からマウンドに上がった2番手の鎌田が集中打で一挙6点を失い、万事休す。2年連続初戦で姿を消すこととなった。

敦賀気比は前年夏の8強を経験した東出(広島)が1番投手として甲子園に帰還。野手上がりながら、そうとは思えないほどの伸びのあるストレートを投じ、初戦は伝統校・島田商を1失点完投して勝利をものにした。しかし、続く3回戦は強豪・PLを相手に好投するも、いずれもテキサス性の2本のタイムリーで3点を失う。相手外野手の好守にもはばまれ、ベスト8進出はならなかった。

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1999年選抜

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優勝:日南学園→ベスト8

準優勝:日大三→2回戦敗退

ベスト4:PL学園→ベスト4

ベスト4:駒大岩見沢→2回戦敗退

 

日南学園は前年夏の甲子園を経験したエース春永と4番吉武が投打の軸として残り、神宮大会を初制覇。小川監督も自信を持って臨んだ。初戦は峰山の好左腕・川原に苦しむも、延長戦の末に勝利。続く2回戦は春永が静岡打線を完封し、ベスト8までコマを進めた。しかし、続く準々決勝ではそれまで鳴りをひそめていた打線が奮起して序盤から得点するも、春永が今治西の強力打線に捕まって逆転負け。投打がもう一つかみ合わず、4強を前に姿を消した。

日大三は小倉監督就任後、年々力をつけ、この年は2年生エース栗山をチーム打率3割8分8厘の強力打線が支えて、秋の東京大会を制した。初戦は福井商の吉田、山岸(西武)の2年生投手陣を攻略してまずは5-2と無難に初戦突破。ところが、2回戦では看板の打線が水戸商のアンダーハンド・三橋に4安打でシャットアウトされた0-3と完敗。不安視されていた栗山が好投しただけに惜しまれる結果であった。

PL学園はなんと組み合わせの妙で3季連続横浜と対戦することに。シーソーゲームを6-5と接戦でものにすると、その後は玉野光南・平安と危なげなく下して4強まで勝ち進んだ。エース植山の安定感ある投球に田中一(横浜)、覚前(近鉄)、七野(横浜)と好打者の揃った打線と投打にスキは全くないように思えた。

ところが、油断があったわけではないと思うが、準決勝の沖縄尚学戦はエース植山が先発を回避すると、序盤から沖縄尚学打線にペースを握られる。驚異の粘りで同点に追いつくも、延長12回に勝ち越しを許し、6-8で涙を飲んだ。思えば、PLにとっては平成の甲子園でこの大会が最も優勝するチャンスだっただろう。

駒大岩見沢は前年夏に続く2季連続の甲子園出場。前の年から4番を務める眼鏡のスラッガー北村を中心にこの年もヒグマ打線は健在であり、エース古谷(ロッテ)も秋の大会を通して目途が立ってきた。初戦は神戸弘陵の好左腕・西嶋をKOして14-5と大勝。自信を持って2回戦の市川戦に臨んだ。しかし、前年に王者・横浜の公式戦連勝記録を止めた関東王者に中盤古谷がつかまって4回に一挙5失点。好投手・高室に要所を締められ、10安打を放つも3点止まりだった。

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2000年選抜

優勝:四日市工→2回戦敗退

準優勝:敦賀気比→出場辞退

ベスト4:北照→2回戦敗退

ベスト4:国士舘→2回戦敗退

 

大会前に内海-李(ともに巨人)のバッテリーを中心に優勝候補の一角に上がっていた敦賀気比が出場辞退する憂き目に。出ていれば活躍が期待出来ただけに惜しい結果であった。

四日市工は夏春連続の甲子園出場。エース左腕秋葉はやや制球難に苦しむところがあったが、ボールの力は一級品。看板の打線は梅山、佐野、大西、佐藤と強打者が並び、破壊力は大会トップクラスだった。初戦は戸畑のプロ注目右腕・横松(広島)から21安打14得点を奪って大勝。順調なスタートを切る。

2回戦はそこまで5季連続出場中の常連校・明徳義塾が相手。打線が相手エース三木田をとらえるが、秋葉もこの日は本調子でなく明徳のうまい打撃にしてやられる。7-8とルーズベルトゲームになった試合は、終盤に2番手で登板した左腕・増田を攻めきれず。尾崎監督期待のチームだったが、ベスト8を前に姿を消した。

北照は4番捕手の上村(オリックス)を中心に強力打線で北海道大会を制覇。神宮大会では柳川の剛腕・香月(近鉄)も打ち込むなど、全国レベルの強力打線であった。甲子園では初戦で奈良の橿原と対戦。2年前にも同じ奈良の郡山と対戦して敗れていたが、好投手・梅景から延長11回に4点を奪い、奈良勢へのリベンジを果たした。

続く2回戦は福島商との雪国対決となったが、サイド右腕の飯島が好投。打線も福島商の好左腕・芳賀から3点を奪い、3-1と2点リードで勝利まであと1イニングに迫った。しかし、9回表に2アウト満塁のピンチを招くと、5番藤川に満塁の走者を一掃するタイムリー3塁打を浴びて土壇場で逆転負け。惜しくもベスト16で姿を消した。

国士舘は大会屈指の左腕・小島(広島)を擁し、2年ぶりの選抜出場。ここ2大会は初戦敗退が続いていたが、小島が圧巻の投球で高岡第一打線を3安打で完封し、快調なスタートを切った。

2回戦は初戦で20得点を挙げた智辯和歌山打線が相手。打線が序盤からリードを奪い、小島は4番池辺のホームランによる1点に封じ込めていた。しかし、3点差をつけた8回表に2点差に迫られてなお満塁から池辺の打球は1塁ベースに当たる不運なタイムリーとなり、同点に。この一打を皮切りに5連打が飛び出し、小島の選抜は2回戦で終わりを告げた。

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優勝:東福岡→ベスト8

準優勝:尽誠学園→ベスト8

ベスト4:常総学院→優勝

ベスト4:日大三→3回戦敗退

 

東福岡は絶対的エース下野、2年生の4番吉村(横浜)と投打の柱を擁し、秋は全く危なげない戦いで九州大会、神宮大会を制覇した。選抜本戦でも1回戦の広陵戦では、初回にいきなり連打や2ランスクイズで5点を奪って相手を圧倒。2回戦では強打の日大三との対戦となったが、夏に全国制覇を果たす強豪を相手に腰を据えた戦いで逆転勝ちし、ベスト8へコマを進めた。

迎えた準々決勝は前年の神宮で12-3と圧倒した常総学院が相手。打線は、常総投手陣に球威のある投手はいないため、自身を持って臨んだが、エース下野が立ち上がりを急襲されて3点を失う。その後、下野の3試合連続ホームランなどで1点差に迫るが、中盤に2イニング連続で満塁のチャンスを逃すなど、11安打を放ちながら2点どまり。最後はホームを狙った1番上坂が好返球で刺され、2-4で惜敗した。力では互角以上だったが、常総のうまさにやられた試合であった。

尽誠学園は和田、中村の左右2枚看板が安定し、打線も坂口・坂田・原の上位を中心に活発であった。初戦で鳥栖を14-1と圧倒すると、3回戦では関西の2年生エース宮本(日本ハム)から初回に坂口・坂田がアベック弾を放ち、3-1で快勝した。

続く準々決勝は関西創価の好投手・野間口(巨人)を相手に打線は10安打4得点とよく攻め立てていた。しかし、投手陣が計12四死球を与える乱調で常に先手を取られ、最後は延長10回にサヨナラ犠飛で幕。大会屈指の好ゲームだったが、あと一歩及ばなかった。

常総学院は悲願の全国制覇を達成。藤代・水戸商とともに3校が出場していずれも初戦突破した茨城だったが、その筆頭格として最高の結果を残した。初戦は南部に7点のビハインドを背負う苦しい展開となったが、それまで不調でリリーフに回っていたエース村上が無失点投球で大逆転勝ちを演出。際どい試合だったが、頼れるエースを手にした。

その後、打線は金沢・中林(阪神)、東福岡・下野、関西創価・野間口(巨人)と好投手を次々に攻略。特に前年秋に大差で敗れた東福岡を下した一戦は殊の外ナインに自信を与え、「東福岡に勝ったらもう優勝しかない」と完全にスイッチが入った。決勝では仙台育英との壮絶な打撃戦を制して7-6で悲願の全国制覇を達成。取手二高時代以来となる茨城勢の優勝をつかみ取った。

日大三はエース栗山を中心に前評判の高かった1学年上の代が西東京大会予選でまさかの敗退。それを見て危機感を抱いた2001年世代は近藤(オリックス)・千葉(横浜)の投手陣と都築(中日)・内田(ヤクルト)・原島の強力打線がかみ合い、秋の東京大会を圧倒的な勝ちっぷりで制した。

初戦は姫路工の剛腕・真田(巨人)と対戦。のちに小倉監督が「甲子園で対戦した中で最高の投手」と絶賛した投手を相手に、日大三打線は4番原島の先制弾や3番内田の逆転2ランなどで13安打8得点を奪取。監督も驚くほどの豪快な打撃でプロ注目右腕を沈めた。3回戦の東福岡線は中盤の守乱が響いて敗退したが、中盤までは仁ぐ王者と互角の勝負を見せた。この選抜の戦いで自信をつけたナインは、同年夏に全国制覇を果たすこととなる。

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いかがでしたでしょうか?1998年の横浜は圧倒的な強さでしたね。2001年の常総学院も選抜まで安定した成績を残しました。ただ、やはり序盤で敗退するチームも数多く見受けられています。

秋の大会で勝ち上がることで相手にデータを取られてしまう不利さも関係あるとは思いますが、5か月という期間が空く間に、高校生は信じられないぐらい成長することで逆転現象が起こるのでしょう。今回の神宮4強校(大阪桐蔭、広陵、花巻東、九州国際大付)がどこまで勝ち上がれるか、見ものですね。

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