2018年に100回を数えた夏の全国高校野球選手権大会。様々な歴史を刻んできたが、大会前最も盛り上がりを見せるのが組み合わせ抽選会である。その組み合わせの方式も様々な変遷を辿ってきた。
具体的に紹介すると、76回大会までは1回戦終わるごとに毎回抽選。77回~94回大会までは1回戦が終わったらベスト8までは組み合わせ抽選はなし。
59回大会までは抽選で東西の分け隔て無し。60回~88回大会までは1回戦は必ず東西対抗。そして、89回大会からは再び東西ランダムの対戦となった。
こうして見ると、1回戦が東西対抗でしかもやぐらが準々決勝までは固定化されているという方式はかなりここ最近になって作られたものであるということがわかる。
そこで、今回見てみたいのは1回戦が東西対抗でベスト8までやぐら固定制だった時代の開幕戦勝利チームの成績である。大会回数に直すと77回~88回の12年間ということになる。成績は以下の通り。
77回…関西 3回戦
78回…福井商 ベスト4
79回…敦賀気比 ベスト8
80回…明徳義塾 ベスト4
81回…青森山田 ベスト8
82回…育英 ベスト4
83回…常総学院 2回戦
84回…帝京 ベスト4
85回…桐生第一 ベスト4
86回…天理 ベスト8
87回…鳴門工 バスト8
88回…高知商 2回戦
何と12年間で9度ベスト8以上。つまり、開幕戦に勝った後2勝以上しているチームの割合は7割5分というわけである。この抽選システムが採用されている間は開幕戦勝利はまるでベスト8以上への招待枠ともいえるくらいの勝率を誇っていた。開幕戦に勝った勢いにプラスして、次に戦う相手は49代表校中最後に登場でそこまで待たされるというハンデを背負っていたわけである(東西対抗かどうかは今回はこの話とはあまり関係しませんがご愛嬌ということで(笑))
勝った顔ぶれを見てみても錚々たる面々が並んでいる。振り替えてみてもかなり初戦で勢いを得ていた感が強い。独特の緊張感を乗り越えた中での戦いは自信になるし、次対戦する相手にはプレッシャーになるだろう。しかし、そんな中でも優勝チームが出ていない。やはり最後まで勝ちきるにはそれ以上の何かが必要ということか。
ちなみに開幕戦勝利で優勝したのが、佐賀商業・佐賀北の佐賀県勢。それぞれ1994年、2007年に優勝しており、素晴らしい戦いぶりだった。がばい旋風恐るべし。
最後に上記12チームの戦いぶりを簡単に振り返って終わりにしたい。果たして来年の開幕戦勝利チームはどこまで勝ち進めるのか…
77回…関西 1回戦〇8-7仙台育英
2回戦〇11-0宮島工
3回戦●2-4 星稜
大会屈指の左腕・吉年(元広島)を擁して開幕戦で仙台育英との優勝候補同士の乱打戦をサヨナラで制した。2回戦ではお隣さんの広島から初出場・宮島工を圧倒。順調に駒を進めていたが、3回戦で山本省吾(近鉄―オリックスー横浜―ソフトバンク)擁する星稜と対戦。好左腕対決となったが、2回の4失点が響いて3回戦で敗退となった。
78回…福井商業 1回戦〇6-0弘前実業
2回戦〇11-0八頭
3回戦〇8-4横浜
準々決勝〇5-3高陽東
準決勝 ●2-5松山商業
春夏連続開幕戦に登場となった福井商。春は明徳に完封負けしたが、夏はエース亀谷が見事な完封勝利。2回戦も完封し、3回戦は横浜相手に9回一挙6点で大逆転勝利。準々決勝では好投手・宗政を攻略し、見事ベスト4に進出。最後は松山商業の伝統の守備力に屈したが、福井勢として前年の敦賀気比に続いて2年連続の4強入りを果たした。
79回…敦賀気比 1回戦〇1-0堀越
2回戦〇6-2倉敷商
3回戦〇11-0専大北上
準々決勝●4-5前橋工
2年連続福井勢として開幕戦に登場した敦賀気比。大会No.1投手・三上(元ヤクルト)を擁して快進撃を見せた。初戦で三上が堀越を2安打完封すると、2回戦では主将・金岡の活躍で倉敷商を撃破。3回戦も専大北上に完勝して福井勢として3年連続のベスト8入りを果たした。準々決勝では強打の前橋工に惜しくもサヨナラ負けした。最後は捕手ゴロの間に2塁ランナーにホームを陥れられたが、その場面は大会のハイライトシーンともいえる印象深いものとなった。
80回…明徳義塾 1回戦〇6-5桐生第一
2回戦〇7-2金足農
3回戦〇5-2日南学園
準々決勝〇11-2関大一
準決勝●6-7横浜
横浜、PLとともに3強と言われた明徳。初戦でエース寺本(元ロッテ)が制球難で苦しみ3点を追う展開となったが、打線が奮起して同点に。延長10回サヨナラ暴投で勝利した。勢いに乗って、2,3回戦は完勝。準々決勝では選抜準V投手の久保康友(ロッテー阪神―DeNA)を11得点で粉砕した。準決勝では横浜に大逆転負けを喫したが、明徳が本当の意味で全国区となったのはこの大会だったかもしれない。
81回…青森山田 1回戦〇3-2九州学院
2回戦〇9-3東福岡
3回戦〇7-4日田林工
準々決勝●0-4樟南
青森勢の快進撃はこの大会から始まった。前評判は高くなかったが、エース松野を擁して粘り強い戦いを披露。初戦で注目スラッガー高山(西武)を擁する九州学院に逆転勝ち。2戦目は同じく注目スラッガー田中賢介(日本ハム)を擁する東福岡に完勝。日田林工とは延長11回の激闘を制した。準々決勝では樟南のエース上野(広島)に力負けしたが、青森県が上位常連となるきっかけを作る大会となった。
82回…育英 1回戦〇8-1秋田商
2回戦〇11-6小松工
3回戦〇12-2那覇
準々決勝〇8-7長崎日大
準決勝●7-10東海大浦安
春夏連続の開幕戦となった育英。しかも、主将・上野は選手宣誓を司るという大会な主役のようなシチュエーション。春は力を出し切れず、初戦で敗れたが、夏は川原・栗山(西武)らの強打が爆発。秋田商のエース菅原を見事に攻略。2回戦は好左腕・鹿野を打ち崩し、3回戦は個性派集団・那覇を圧倒。準々決勝では長崎日大との死闘を制した。準決勝で東海大浦安の浜名の前に散ったが、30盗塁を記録した機動力は智辯和歌山の強打とはまた違った脅威を感じさせた。
83回…常総学院 1回戦〇15-4上宮太子
2回戦●0-3秀岳館
春夏連覇を狙った常総学院が初戦で登場。相手は大阪を奇跡的な勝ち上がりで制した上宮太子となったが、大阪予選から1週間しか空いていない上宮太子にとっては酷な展開。疲れの見える相手を常総打線が圧倒して、注目の相手1年生左腕・田村も打ち砕いた。2回戦では熊本から初出場の秀岳館と対戦。しかし、常総の強引な攻めを相手エース・山田が粘りの投球でしのぎ、3併殺を奪われる。守備ミスから出た失点を最後まで返せずまさかの完封負けとなった。この大会最大のサプライズともいえる試合だった。
84回…帝京 1回戦〇11-8中部商
2回戦〇5-0光泉
3回戦〇17-7福井
準々決勝〇5-4尽誠学園
準決勝●1-6智辯和歌山
4年ぶりの出場ながら優勝候補として出場した帝京。初戦で中部商相手に大量リードを奪うも、7回に一挙7点を奪われて1点差に迫られる冷や冷や勝利だった。その後は、力の差を見せつけながら勝ち進み、準々決勝では8年前に春夏連覇を阻止された因縁の相手尽誠学園に逆転勝利を収めた。準決勝では智辯和歌山の右サイド・田林を打てず敗れたが、見事なベスト4だった。
85回…桐生第一 1回戦〇9-2神港学園
2回戦〇3-2樟南
3回戦〇6-5小松島
準々決勝〇5-4岩国
準決勝●2-6常総学院
初戦で地元兵庫の神港学園に大勝して波に乗った桐生第一。菊池の逆転ランニング3ランが大きかった。技巧派エース伊藤から速球派の藤田につなぐ継投策がさえ、2回戦からは3試合連続の1点差勝利。特に藤田は3番として毎試合2安打を放ち、大車輪の活躍だった。準決勝では常総の前に屈したが、4年前の全国制覇以来の上位進出となった。
86回…天理 1回戦〇4-3青森山田
2回戦〇9-3福井
3回戦〇6-1浜田
準々決勝●3-10東海大甲府
2年連続の出場となった名門・天理。初戦でエース柳田(ロッテ)擁する青森山田相手に3点差を追いついて延長12回サヨナラ勝ち。速球とフォークが持ち味の柴田とスライダーのいい山下の長身2枚看板が交互に投げてベスト8入りを果たした。最後は強打の東海大甲府に屈したが、名門・天理の復活を印象付けた大会だった。
87回…鳴門工 1回戦〇14-3宇都宮南
2回戦〇6-0丸亀城西
3回戦〇10-3高陽東
準々決勝●6-7駒大苫小牧
春夏合わせて考えると5年連続で甲子園に顔を見せた鳴門工。前年春の選抜で佐藤剛(広島)を擁する秋田商に0-10と惨敗した時のメンバーが多数残り、雪辱に燃えていた。左腕エース田中暁はスライダーを武器に好投。3番柳田は開幕戦で先制点につながる長打を放ち、幼馴染の二人が投打の軸としてチームを引っ張った。新渦潮打線の威力はすさまじく、準々決勝の駒大苫小牧戦でも松橋・田中将大(楽天―ヤンキース)を打ち砕いた。最後はまさかの逆転負けを喫したが、鳴門工の強さを見せつけた大会だった。
88回…高知商 1回戦〇10-7白樺学園
2回戦●2-3鹿児島工
明徳の独壇場となっていた高知県で久しぶりの代表をつかんだ高知商。高知大会決勝では明徳相手に終盤劇的な逆転勝利を飾った。1回戦は北海道から初出場の白樺学園と対戦。先発の右サイド・中平がいきなり打ち込まれて4点を追いかける展開となったが、徐々に追い上げて逆転。相手のトルネード右腕・大竹口を攻略した。リリーフした2年生の剛腕・小松の好投も光った。2戦目で同じく初出場の鹿児島工に逆転負けしたが、久々の伝統校の出場に地元の高知は大いに沸きあがった。
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