大会ベストナイン(2023年夏)

2023年

右投手 東恩納蒼(沖縄尚学)

沖縄大会から甲子園の3回戦まで無失点を継続した「琉球のミスターゼロ」。昨秋から注目の実力派右腕だったが、最後の夏はそのコントロールの精度、ボールのキレともにさらにワンランクアップしていた。ボール半個分の出し入れができ、ベース板上でもう一伸びする球質はアウトコースに来るとわかっていても打てないボールであった。

なおかつピンチの場面ではワンランクギアを上げ、ボール先行になることも厭わずに低めの変化球を振らせる投球は、2006年の斎藤佑樹を彷彿とさせるようなクレバーさも兼ね備えていた。準々決勝では慶応の強力打線に捕まったが、間違いなく今年の夏を彩った好右腕であった。

『ドラフト何位?』沖縄尚学東恩納蒼投手のラストサマーPDG2023-2024 – YouTube

左投手 黒木陽琉(神村学園)

鹿児島大会からその実力は高く評価されていたが、全国で綺羅星のごとく、そのベールを脱いで、チームを4強に導いた。その左腕から繰り出すボールはキレのあるストレートはもちろんのこと、伝家の宝刀・スライダーは来ると思っていても、手が出てしまうボールであった。技巧派右腕・松永とタイプの異なる左右の両投手の継投は相手打線の目先はかわすには実に効果的であった。

なかなか夏の甲子園で2勝目を挙げることができなかった神村学園だが、今年は強力打線と安定した投手力で4強入りと一気にブレイクスルーを果たした。南国の強豪のこれからの躍進が楽しみだ。

『ドラフト隠し玉』MAX147左腕神村学園黒木陽琉投手PDG2023-2024 – YouTube

捕手 尾形樹人(仙台育英)

王者・仙台育英の扇の要としてチームを準優勝に導いた尾形。攻守にわたって素晴らしい活躍、そしって成長を見せた。捕手としては盗塁意欲をそぐような強肩とタイプの違う本格派投手たちに自分の持ち味を出させる巧みなリードで仙台育英ディフェンス陣を統率した。湯田・高橋の2本柱が安心して投げられたのも、尾形に支えられてこそだろう。

そして、さらに素晴らしかったのがバッティングの成長度。春までは流し打ち中心の印象だったが、初戦の浦和学院戦で、ストレートをとらえた完ぺきなホームランをライトに放ち、相手の度肝を抜いた。さらに、花巻東戦ではチームが苦戦した技巧派左腕・葛西から流し打ちで技ありの一発を披露。広角に長打を打ち分ける様は、まさに「打てる捕手」のそれであった。今大会の仙台育英の躍進が尾形の存在あってこそと言っても過言ではないだろう。

仙台育英《 尾形樹人 7回表に逆方向への弾丸ホームランを放つ 第2号 》準々決勝|仙台育英 – 花巻東|2023年8月19日(土) 第105回全国高校野球選手権記念大会 甲子園 – YouTube

一塁手 延末藍太(慶応)

慶応の強力打線の中枢を支えた眼鏡の5番打者。渡辺千、加藤と強打の右打者が続く中、勝負強くクレバーな彼の打撃が、いいアクセントとなって打線の流れを作り出した。特に優勝候補対決となった3回戦の広陵戦は、好投手・高尾を相手に2安打5打点の大活躍!インサイドを突かれたボールに対しても、力負けせずにはじき返せたのは、打席前の思考でしっかり準備ができていた証拠だろう。

そして、好調を維持して迎えた決勝ではなんど4番に抜擢。5回にはセカンドへの渋い内野安打でチャンスメークし、ビッグイニングをもたらした。全国の眼鏡の球児にも勇気を与え、そして野球の楽しさ・面白さを伝えた、素晴らしい打者であった。

【高校野球 甲子園】慶応・延末藍太の大活躍にアルプスが揺れた! 5打点の大暴れ!「歓声が気持ちよかった」全打席ノーカット!【3回戦  広陵 vs 慶応義塾 】2023.8.16 – YouTube

二塁手 西尾太晴(八戸学院光星)

強打の八戸学院光星にあって、攻撃の潤滑油となった2番打者。今大会は、注目の3番中沢恒がやや調子を落とす中、彼がそれを補って余りある活躍を見せた。伝統的に強く振る姿勢を大事にする光星打線だが、彼も例外ではない。軸足にしっかり体重を残し、強く振り切るスイングで3回戦の文星芸大付戦は追加点となるタイムリー2塁打。中軸打者と変わらない質の打球を飛ばし、相手を恐れさせた。

準々決勝までの3試合で打率は4割5分5厘をマーク。また、大事な場面では犠打もきっちり決めるように、小技や走塁もうまいことがチームを非常に助ける存在にならしめていた。小粒でもピリリと辛い、そんな強打の2番打者に今年の光星を支えていた。

2023年8月12日 八戸学院光星 8回表西尾君追加得点 0-7 – YouTube

三塁手 田内真翔(おかやま山陽)

おかやま山陽が初の全国8強入りを果たす立役者となった、2年生の核弾頭。右打席からの思い切りのいい打撃でヒットを積み重ね、日大山形・菅井や大垣日大・山田の剛球にも力負けせず、日大三・安田の緩急にもしっかり対応して見せた。好球は積極的に打っていく田内の姿勢が、おかやま山陽打線全体を勢いづけた。また、サードの守備でも、強烈な打球をしっかりとめ、チームのホットコーナーを死守した。

ジンバブエ代表監督という異色の経歴を持つ堤監督に率いられ、新たな扉を開いたおかやま山陽。2年生の田内には、今回の経験を活かして戦う機会が、まだ一年も残されている。

おかやま山陽 対 日大三 【完全ハイライト】 – YouTube

遊撃手 後藤陽人(土浦日大)

3番ショートとして好守でチームを牽引し、土浦日大を初の4強入りに導いた。ショートの守備では派手さはないものの、堅実に守り抜いて5試合を無失策。安定したスローイングと足の運びで投手陣を支えた。また、打っては2ホームランを放った5番松田のような派手な打撃はなかったものの、広角に打ち分ける打撃で安定したヒットを積み重ね、4割以上の打率をマークした。

これまで全国での1勝からかなり遠ざかっていた土浦日大だが、茨城のチームらしいテンポの良さとクレバーさで、一気に全国大会4勝を奪取。後藤を中心に輝いた土浦日大ナインの躍進が、これからの茨城の高校野球を勢いづけそうだ。

【野球部訪問】土浦日大に密着!令和の強豪校を体現するような練習、環境が凄い… – YouTube

左翼手 北條慎治(花巻東)

打って投げて大活躍を見せた花巻東の4番打者。3番佐々木麟が注目されがちだったが、どうしてどうして、彼の存在こそが花巻東の強打を成り立たせていた。初戦は、右サイドの好投手・浅田(宇部鴻城)との対戦となったが、4回にセンターから逆方向への打撃で攻略し、3点奪取に成功。サイド投手攻略のお手本と呼べる打撃で活路を開いた。

また、2回戦のクラーク国際戦では先発投手としても試合を作り、レフトの守備でも体を張ったプレーでチームを鼓舞した。投攻守で活躍を見せた北條に引っ張られ、花巻東は2013年以来の夏8強入りを達成。完全燃焼の戦いとなった。

花巻東 4番《 北條慎治 タイムリー2ベースヒットで 4 – 0 とする!4回裏 》花巻東 4 – 1 宇部鴻城|2023年8月8日(火)第105回全国高校野球選手権記念大会 – YouTube

中堅手 丸田湊斗(慶応)

端正な顔立ちが注目された慶応の一番打者・丸田だったが、その実力と活躍があってこその人気沸騰ぶりであった。左打席からしっかいと振り切る打撃でセンターから右方向へ強い打球を飛ばし、ひとたびヒットゾーンに打球が飛ぶと、一気に加速して1つ先の塁を奪った。特に準々決勝では沖縄尚学・東恩納攻略の口火を切る2塁打を放ち、一挙6点のビッグイニングを演出。2塁上でチームを鼓舞した様は、WBCの大谷翔平を思い起こさせるものがあった。

丸田をはじめとして、自ら考え、伸び伸びとプレーする慶応ナインの姿は、野球の新たな魅力をファンに伝えるものであった。決勝の先頭打者弾に代表されるように、今年の夏を象徴する存在となった丸田の、上のステージでの活躍を今から楽しみに待ちたいと思う。

慶應義塾 1番《 丸田湊斗 3ベースで出塁❗️鼓舞のアクション❗️ 7回表》準々決勝|沖縄尚学 – 慶應義塾|2023年8月19日(土) 第105回全国高校野球選手権記念大会 甲子園 – YouTube

右翼手 正林輝大(神村学園)

4強入りと快進撃を見せた桜島打線の4番にどっしり座って、チームを引っ張ったのが正林であった。将来性豊かな2年生が多く並ぶチームにあっても、彼の打撃はやはり別格。内外の揺さぶりにも緩急にも惑わされず、どっしりとした構えから自分のスイングを貫いて、タイムリーを量産した。4試合で23打数10安打5打点の数字は、4番打者の面目躍如といえるだろう。

今年がドラフトでも指名があるのではと思わせるほどの好打者。増田、岩下、上川床とその他にも多くの野手が残る来年の神村学園が、正林を中心にどんな成長曲線を描くのか、楽しみでならない。

【神時代-YA・KA・ZE RED-】[10]「兄超え」誓う強打者! ~甲子園に出場する神村学園を追う~ – YouTube

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