2023年選手権決勝予想 仙台育英vs慶応

2023年

2023年選手権決勝

仙台育英vs慶応

49.5% 50.5%

〇19-9  浦和学院   〇9-4   北陸

〇8-2    聖光学院   〇6-3   広陵

〇4-3    履正社    〇7-2   沖縄尚学

〇9-4    花巻東    〇2-0   土浦日大

〇6-2    神村学園

選抜の2回戦最終カードで好勝負を演じた両校。お互いに課題と収穫を持ち帰り、選抜から大いに成長を遂げて、このファイナルの舞台へと勝ち上がってきた。選抜では仙台育英に慶応が挑む構図だったが、今、両チームの差はほとんどないだろう。優勝旗を争うにふさわしい2校が105回目の王者をかけ、23日の決勝戦に挑む。

まずは両チームの戦力について比較をしてみたい。

仙台育英 慶応
エース力 9.5 10
投手陣総合力 10 8
長打力 10 10
中軸力 10 8
機動力 10 10
打線の層の厚さ 10 9
守備力 7 10
応援の力 10

上記の私見(完全に私見です、悪しからず)を土台に考えていきたい。

 

慶応義塾は準決勝で2年生エース小宅が土浦日大を完封。あれだけ、しつこくいやらしい打線を9回0封できたのは大いなる自信になりそうだ。右打者のインサイドも正確につける抜群のコントロールに加えて、ベース板上で明らかにグイっと伸びている球質は、いくら仙台育英打線と言えども手こずるはずだ。また、ショート八木を中心に守備力では明らかに仙台育英を上回っており、ロースコアの接戦に持ち込めれば、慶応ペースの試合になるだろう。まずは、序盤から中盤にかけて仙台育英打線の仕掛けをうまくかわし、リズムをつかみたい。投手層に関しては、仙台育英に分があり、慶応が勝つパターンとしては、小宅が最低でも7回あたりまで投げて松井につなぐか、小宅が最後まで投げ切るのが理想だ。

対する仙台育英打線は苦戦するかと思われた神村学園の左腕・黒木までも攻略して、決勝への切符を捕まえた。ただ打つだけでなく、足元から揺さぶって相手のリズムを崩し、長打を浴びせるのが、須江監督の仙台育英と言えるだろう。また、上位から下位までまんべんなく当たっているのも好材料であり、非常に野球能が高いのも彼らの特徴だ。小宅の伸びのある速球に対して、序盤から1番橋本を中心にカットして球数を投げさせることができれば、じわじわとボディーブローのように慶応バッテリーを苦しめることができそうだ。終盤に入るまでにある程度「小宅攻略」の手ごたえをつかめるような攻撃を見せたい。

 

一方、仙台育英は準決勝で今大会初先発の高橋が力投。2点は失ったものの、自慢の快速球を武器に神村学園打線を6安打2点でまとめてみせた。この起用により、慶応サイドとしては、仙台育英の投手起用が読みづらくなっただろう。また、リリーフで登板した湯田が球威のある速球を武器に4回1失点と完全に復調。準々決勝までは多くの投手を起用したが、決勝はおそらくこの2人で賄うことになりそうだ。これまで豊富な投手力でつないできたアドバンテージがここにきて有利に働くだろう。懸念があるとすれば、5試合で9失策の守備陣。これは機動力も集中打もある慶応相手には致命傷になりかねない。決勝戦にむけて再度修正をかけたいところだ。

対する慶応打線は、準決勝は2点どまりだったが、2桁の10安打を浴びせており、打線全体では当たっている。1番丸田、2番八木のコンビが非常に当たっており、特に丸田の足は1つ先の塁を陥れることができる、大きなアドバンテージとなる。また、下位打線まで満遍なくヒットが出ているのも好材料で、甘く入ったボールは確実に外野の頭を超す。高橋・湯田の2人も甘い速球は要注意だ。懸念があるとすれば、3番渡辺千、4番加藤の2人が準決勝で無安打だったことか。決勝戦では彼らの力が必ず必要になってくるだろう。

そして、慶応の何よりのアドバンテージは応援の力だ。準々決勝の6回の代打・清原からの攻撃に代表されるように、あの圧力は選手たちに無限の力を与え、あっという間に流れをわがものにする。仙台育英の須江監督が、「東北のパワーを貸してください」と懇願したのも、あの慶応の応援を脅威に感じての発言に違いない。準決勝までの応援の力では慶応の圧勝だが、仙台育英が東北6県の力を結集してどこまで食い下がれるか。

 

さて、最終的な予想だが、挑む側の慶応の方がやや精神的なアドバンテージはあるように思う。選抜ではやや仙台育英の投手陣に打線が力負けした感もあったが、準決勝までの彼らを見ていると、その心配もない。大いなる成長を遂げた陸の王者が昨夏の覇者を呑み込む可能性はあると言えるだろう。2年生エース小宅も完封勝ちと好調を維持。打倒・仙台育英へ向け、待ったなしだ。

対する仙台育英としては、経験値・層の厚さでは慶応を上回るのは間違いない。一番怖いのは試合の中で受けに回る瞬間を作らないことだ。それさえなければ、互角以上の展開になるが、その瞬間を作ってしまったことで、積み上げてきた力関係が意味をなさなくなるのが甲子園だ。初優勝からの連覇という、偉業に向けて、最強の挑戦者が待ち構えることとなる。

 

主なOB

仙台育英…大越基(ダイエー)、金村暁(日本ハム)、佐藤由規(ヤクルト)、佐藤世那(オリックス)、平沢大河(ロッテ)

慶応義塾…山本泰寛(阪神)、矢崎拓也(広島)、木澤尚文(ヤクルト)、柳町達(ソフトバンク)、正木智也(ソフトバンク)

 

宮城  神奈川

春  1勝  0勝

夏  1勝  4勝

計  2勝    4勝

選抜での対戦は、上述したように今春の選抜での両校の対戦だ。投手力でやや不利かと思われた慶応が、エース小宅の好投で食らいつき、最終回に奇跡の同点劇を演じた。延長10回裏に仙台育英の主将・山田がサヨナラ打を放ち、試合は決したが、この試合が慶応ナインに大きな自信を与えたのは間違いないだろう。

2023年選抜2回戦 仙台育英vs慶応(4日目第3試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

一方、高校野球100周年の記念の年となった2015年は東海大相模と仙台育英の東のV候補同士が決勝戦で対戦。序盤に東海大相模打線が仙台育英のエース佐藤世(オリックス)のフォークをとらえ、6点を奪って先行するが、仙台育英も6回裏に相模のエース左腕・小笠原(中日)を捕まえ、1番佐藤将の満塁走者一掃打で同点に追いつく。

両者ともに相手エースを攻略した試合の結末は9回表。小笠原が自ら勝ち越しソロを放って流れを引き寄せると、この回一挙4点の猛攻を見せて、45年ぶり2度目の選手権優勝を飾った。亡き恩師・原貢監督に捧げる、アグレッシブベースボールでつかんだ栄冠であった。

東海大相模vs仙台育英 2015年夏 | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

思い出名勝負

2008年夏3回戦

横浜

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 1 0 0 0 1 0 1 3
1 0 0 1 0 0 0 0 0 2

仙台育英

 

横浜     土屋

仙台育英   穂積→木村

突出したチームがなく、優勝候補が乱立していた2008年の選手権大会。好勝負が多く演じられた中、1回戦最終ブロックは実力校ぞろいの死のブロックとなった。その中を力強く勝ち抜いたのが、横浜と仙台育英という、グレーのユニフォームを身にまとう「東の強豪」2校であった。

横浜はコントロール抜群の左腕・土屋(ロッテ)、俊足のトップバッター倉本(DeNA)、2年生の主砲・筒香(レイズ)とタレント揃いのチームで秋の関東大会を制覇。神宮大会でも決勝戦に進み、優勝した常葉菊川とも4-5と接戦を演じた。この世代でもちょっと抜けた存在かと思われたのだが、選抜大会では北大津の積極野球の前に後塵を拝し、2-6とまさかの初戦敗退。カウント0-3から打ってくる相手に完全に振り回されてしまった。

雪辱を期した夏は筒香が不振で打順を落とすなど、思うようにいかないこともあったが、記念大会で南北に分かれていたことが功を奏したか。ライバルの慶応や東海大相模が北神奈川に配置される中、南神奈川大会を力強く勝ち抜き、本戦出場を果たした。迎えた甲子園では1,2回戦と浦和学院・広陵という強豪を相手に、土屋がいずれも2桁安打を浴びる苦しい投球となる。しかし、打線が筒香の復活のホームランなどでエースを援護。いずれも競り合いとなった苦しい試合を、力強さをうまさを融合した横浜らしい攻撃で制し、3回戦へとコマを進めてきた。

横浜vs広陵 2008年夏 | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

一方、仙台育英は前年のチームがエース佐藤世(ヤクルト)を中心に全国的にもV候補に挙げられており、3年生主体のチーム作りが進んでいた。スタメンに名を連ねていたのは1番の橋本到(巨人)のみであり、新チームは苦しいスタートを切ることとなった。さらに、この年は東北に好左腕・荻野がおり、秋の東北大会を制覇。この全国トップクラスの左腕攻略なしには、甲子園への道は切り開けないわけである。

左打者が多く並ぶ中、左腕対策を徹底した仙台育英は決勝で東北と激突。乾坤一擲の勝負でもぎ取った1点を、2年生右腕の穂積から1年生左腕の木村へという、若い投手リレーで守り抜き、1-0と会心の勝利をもぎ取った。この勝利で自信を得たチームは、甲子園初戦で菰野の好投手・西(阪神)を攻略。橋本の5打数5安打を含む13安打の猛攻であった。さらに、2回戦では福井商の2年生左腕・竹沢も中盤までに捕まえ、「荻野に勝った俺たちに怖い左腕はいない」と言わんばかりに、力強く3回戦へと駆け上がってきた。

 

さて、左腕対策万全の仙台育英の次なる相手は、横浜のエース左腕・土屋。チームの格としては、この年は横浜の方が上であったが、伸び盛りの選手が多い「若い仙台育英」は横浜にとってもやりにくさがあっただろう。

1回裏、仙台育英はさっそく仕掛けにかかる。先頭の1番橋本がレフトへの華麗な流し打ちで出塁。さらに、レフトのちょっとしたスキをついて2塁を奪い、いきなりビッグチャンスを作る。これで3試合目の初回にして、橋本は早くも大会9本目のヒットとなる。2番遠藤の犠飛で3塁へ進むと、4番加藤の犠飛で悠々ホームを陥れる。昨夏からレギュラーとして出ていた、この俊足の核弾頭が、仙台育英ナインの心のよりどころになっていただろう。

一方、仙台育英の2年生右腕・穂積は球威は抜群なものの、制球にやや不安がある。3回表、先頭の8番小田に甘く入ったボールをセンターへ運ばれると、今大会ラッキーボーイの1年生2番・大石、同じく2年前の甲子園で1年生からレギュラーとして出場していた3番松本が連打を放ち、瞬く間に同点に追いつく。この兆候を見た佐々木監督は、3回で早くも1年生左腕・木村をマウンドへ送る。V候補・横浜を前に、継投の遅れは致命傷になりかねない。

リリーフした木村の力投でリズムを得た仙台育英は、3番小野・5番鈴木のラッキーな内野安打で1アウト1,3塁とチャンスメーク。挑みかかる仙台育英に勢いを感じる。ここで6番佐々木は、土屋のボールを再び流し打ってレフトへ勝ち越しのタイムリー。左投手攻略のお手本のような打撃に、「対荻野」の練習の成果を感じさせた。

このリードをなんとか守り切りたい仙台育英だが、横浜の打線もしぶとい。選抜で北大津のエース河合のスライダーに翻弄された悔しさをばねに、夏は各人がしぶとさを身に着けてきた。7回表、再び下位打線の9番中原のヒットからチャンスをつかむと、2番大石もヒットで続き、1,3塁と同点のチャンス。ここで、3番松本がきっちり犠飛を放って同点に追いつく。

試合は同点のまま進み、土屋と木村の投げ合いに。土屋は1,2回戦と不調だったが、この試合は2点を許しながらも、安定して低めにスライダーを集め、守りのリズムを作る。春夏甲子園計4試合目にして、初めて自分らしい投球を見せ、仙台育英の勢いを正面から受け止める。これに対し、仙台育英・木村は1年生らしく、速球とスライダーを思い切り投げ込み、横浜打線にヒットを許しながらも攻める気持ちは忘れない。立場も学年も歩んできた道も対照的な、2人の左腕が、ナイトゲームの3回戦を彩っていった。

そして、試合は最終回の9回へ。サヨナラ負けの圧力を背負いたくない横浜が、木村を攻略しに行く。

この回、またも9番中原がヒットを放つと、1番倉本が送って1アウト2塁。ここで、この試合絶好調の2番大石が3本目のヒットをレフトへ放ち、1.3塁と絶好の好機を迎える。打者は3番松本。ここ木村の投じた7球目が痛恨の暴投となり、中原がホームへ生還。思わぬ形で横浜に勝ち越し点が入った。勢いに乗っていた仙台育英に若さが出た瞬間だったのかもしれない。

9回裏、仙台育英は7番の下位打線から。一人でもランナーを出せば、橋本に打席が回るが、そんなことは土屋も百も承知だった。落ち着いて低めを振らせる投球で2アウトを奪うと、最後は投げ合って聞いた9番の木村を三振に切って取り、ゲームセット。横浜が大熱戦を制し、ベスト8へコマを進めた。

 

横浜は2年前の夏の大阪桐蔭戦の初戦敗退から、前年夏は東海大相模に振り逃げ3ランを許しての敗戦、そして2008年選抜は上述したように北大津に敗北と、なかなか結果を残せない苦しい時代を過ごしていた。しかし、この夏は小倉コーチの高度な戦術を選手がしっかり実践し、1試合1試合強豪との戦いを制して、4強まで勝ち上がった。最後は再び大阪桐蔭に屈したものの、この2008年夏は、名門・横浜に自信を取り戻させる戦いとなったのは間違いないだろう。

一方、仙台育英としては格上の相手に対して、好ゲームを挑んだが、最後はミスが響いて敗れてしまった。しかし、決して前評判の高いとは言えなかったチームが、県内の最強のライバル左腕を下し、全国でも16強まで勝ち進んだのは称賛に値するものであった。この戦いを経験した木村が最上級生となった年、仙台育英は甲子園に再び姿を現し、開星・延岡学園を相手にあまりにも劇的な形で勝利し、再び全国にインパクトを与えた。「本気になれば世界が変わる」を座右の銘とする佐々木順一郎監督が率いた、仙台育英らしいチームが一時代を築いたと言っても過言ではないだろう。

そして、その名将から指揮官の座を引き継いだ若き指揮官・須江監督が、再び神奈川勢を相手に全国の頂点を目指すこととなる。

高校野球中継 横浜(南神奈川) 対 仙台育英(宮城) – YouTube

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