記憶に残る代打(1997年夏)

1997年

浦添商 上地直太

大会11日目第3試合

1997年夏3回戦

浦添商

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 1 0 0 3 3 0 0 7
0 0 0 3 1 0 0 0 0 4

春日部共栄

 

浦添商    上間→渡久山

春日部共栄  長峯→高藤

試合前予想

今や春夏通じて計5度の全国制覇を誇る沖縄県。しかし、1997年当時はまだ全国制覇の経験はなく、1990年、1991年と2年連続で選手権準優勝を果たしていた沖縄水産も少し勢いに陰りが見えていた時期であった。そんな中、当時新興勢力として力を増していたのだ、名将・盛根監督に率いられていた浦添商。1993年夏に初出場を果たすと、着々と力をつけていき、4年後に当たる1997年には選抜でも初出場を果たす。

左腕・上間と主将・下地昌のバッテリーとパンチ力のある打者の並ぶ打線はいずれも評価が高く、甲子園でも上位進出が期待されたが、1回戦の育英戦で下地昌が負傷退場するという非常事態に。エース上間が乗り切れず、打線も育英の好左腕・柳原のカーブに対して、意識過剰となってしまい、好球必打の打撃ができなかった。この敗戦で自分たちの足元を見直したナインだったが、夏の沖縄大会では再びけが人が続出。苦しい状況に追い込まれたが、準々決勝の那覇商戦で3番下地康が最終回に逆転ホームランを放つなど、チーム一丸となって沖縄大会を勝ち抜き、春夏連続出場を決めた。

迎えた甲子園では、初戦で岩倉の技巧派左腕・舟山を3回途中までに9得点でKOし、甲子園初勝利を達成。2回戦では秋田商のエース左腕・石川(ヤクルト)も攻略し、逆転勝ちで2勝目を手にした。ただ、好調な打線と裏腹にエース上間はもう一つ調子が上がらず。秋田商戦では1番熊谷に2本のホームランを浴びるなど、12安打を打たれる苦しい内容だった。

こうして3回戦へ進んだ浦添商。続く相手は、「東の横綱」春日部共栄であった。秋の関東大会を優勝すると、神宮大会でも準優勝。上宮に9回逆転負けを喫したが、最終回を迎えるまで7-4とリードしており、その実力は全国トップクラスであった。右横手のエース長峯はキレのあるスライダーが武器、打線も大久保白見岡田と強打者ぞろいで、投打のポテンシャルでは浦添商を上回る相手であった。ただ、選抜では準々決勝で雨の中、難しい戦いとなって中京大中京に敗退。夏の埼玉大会でも打線がうまくつながらないなど、ムラのあるところが課題でもあった。

展開

浦添商は上間、春日部共栄は長峯と両エースが先発。立ち上がりは静かな投手戦となる。春日部共栄の長峯は、春から夏にかけて精神面での課題が指摘されていたが、本戦では復調。1回戦の比叡山戦、2回戦の函館大有斗戦と危なげない投球を見せていた。長身からのスライダーを武器に内野ゴロを打たせて取るのが持ち味だ。

格上の相手に対して、なんとか先制して慌てさせたい浦添商は3回表に、その長峯の犠打処理の悪送球で幸運な先制点を手にするが、4回表の1アウト3塁のチャンスではランナーが飛び出して挟まれてしまう。そうそうチャンスが多くは来ないなかでの逸機は、少し嫌な予感がしたことだろう。

すると、4回裏、打者一巡は抑えていた上間が捕まる。3番増田、4番岡田の短長打であっという間に同点に追いつくと、6番砂原、7番大熊と下位打線に連続タイムリー2塁打が飛び出して、3-1と逆転に成功する。かさにかかって攻めてくる春日部共栄の猛攻。5回裏にも3番増田にタイムリーが飛び出して、4-1で前半戦を終了する。球場内も、「やはり春日部共栄か」というムードになりつつあった。

そして、代打へ

しかし、グランド整備明けの6回表。流れを変える大事なイニングで浦商ナインが好機をとらえる。先頭の3番前川がヒットで出塁すると、4番下地康の犠打をまたも長峯が悪送球。再び春日部共栄の守備が乱れる。犠打で1アウト2,3塁とすると、6番渋谷のショートゴロを今度は大久保がはじいてしまい、失策2つで1点が入る。

ここで、打席には代打・上地盛根監督曰く、「弱気で好球を逃すことがある」との評だったが、ここは積極的に打って出る。すると、インコースのボールを引っ張った打球は痛烈にライトへ抜けていき、2者が生還!一気に同点に追いつく。春日部共栄とすれば、あまりにももったいない失点であったが、このあたりのムラの多さが年間を通じて東の横綱が抱えていた課題でもあった。

ミスで失った流れはなかなか返ってこないのは、野球、というよりスポーツでの自明の理だ。7回表、4番下地康以下の3連打で3点を勝ち越し。好投手・長嶺を積極的な打撃で打ち崩した。投げては、2番手で登板した渡久山が好投。強打の春日部共栄打線を相手に4イニングでわずか1安打に抑え、見事なジャイアントキリングを呼び込む投球を見せた。

浦添商は、この大会でベスト4まで進出。一気に4勝を挙げたが、中でも、この3回戦の春日部共栄戦の逆転劇は鮮烈であった。その流れを呼び込んだのは、相手ミスにつけ込んだ流れの中で、代打で積極的な打撃を見せた上地の打撃だったのではないだろうか。

チャンスをサインミスで潰してしまう

智辯和歌山vs浦添商 1997年夏 | 世界一の甲子園ブログ

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