大会6日目第1試合
作新学院
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 計 |
1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 5 |
0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 3 |
筑陽学園
作新学院 林勇
筑陽学園 西舘
選抜8強vs3年前の優勝チームという初戦屈指の好カードは土壇場9回に筑陽学園が追いつくしびれる展開に。最後は作新学院の積極策が実り、3年ぶりの初戦突破を果たした。
試合
9年連続出場で2016年には全国制覇を果たした作新学院。しかし、一昨年は強打の盛岡大付、昨年は王者・大阪桐蔭とここ2年は強豪を相手に涙を飲んできた。今年のチームは春先まで打撃不振にあえいでいたが、3年生をグラウンド出禁とした小針監督の荒療治が効いたか、栃木大会では横山、石井ら中心打者が機能。4割打者が5人並び、昨秋敗れた佐野日大や宇都宮商に打ち勝った。エース林勇は伸びのある速球を武器に安定感のある投球が光る。3年ぶりの上位進出に腕を撫す。
一方、昨秋の九州王者で選抜8強の筑陽学園は春夏連続の甲子園出場を達成。激戦の福岡で春夏連続出場を果たしたのは2000年以降では、香月(近鉄)を擁した2000年の柳川、三好(楽天)-高城(DeNA)のバッテリーで選抜準優勝の2011年の九州国際大付に次いで3校目だ。投手陣は選抜までは西、西舘、菅井の3人の継投が持ち味だったが、夏は西舘がエースとして1本立ち。球威のあるストレートを武器に大会終盤はすべて完投勝利を収めた。
打線は大物うちこそいないが、つながりが持ち味。江原、中村、福岡ら好打者が並び、日替わりヒーローで勝ち上がった。選抜を超える4強入りを目指す。
立ち上がり、作新学院の鋭い攻めが西舘を襲う。ストレート主体の投球に対して、1番福田が狙いすましたようにセンターへヒットを放つと、2番松尾も強攻策でライトへのヒット。小針監督らしい強気の采配でチャンスを拡大すると、3番中島のショートゴロがエラーを誘って無死満塁のビッグチャンスを迎える。ここで4番石井はライトにきっちりと打ち上げて作新学院が1点を先制する。しかし、続くピンチは西舘が踏ん張り、追加点は許さなかった。
一方、作新学院のエース林勇は西舘ほどの球速はないが、キレのある真っすぐと落ちるボールを駆使し、作新学院のエースらしい勝てる投球を展開。1,2回と好打者揃いの筑陽学園打線を相手に的を絞らせない投球を展開する。
今年度に入ってからの戦績では上を行く筑陽学園を相手に優位な展開に持ち込むにはやはり先手必勝が勝利への近道。3回表には1番福田のヒットと盗塁でチャンスをつかむと、筑陽学園に焦りが出たか、1回に続いてショート中村にエラーが飛び出し、無死1,3塁となる。ここで3番中島が犠飛を打上げて2点目。ランナー3塁で確実に犠飛が打てるあたり、さすが攻撃力のチームである。
ここまで押されっぱなしの筑陽学園だが、3回裏に反撃態勢を取る。8番石川が変化球をとらえてヒットで出塁すると、9番西舘のバントがラッキーな内野安打となって1,2塁とチャンスを拡大する。犠打失敗で1アウトとなるが、2番弥冨がストレートをレフトへ詰まりながらもはじき返して1点を返す。しかし、バックホームがそれる間に3塁を陥れようとしたランナーをバックアップした林勇が好送球で刺し、簡単に流れは渡さない。
序盤からハイレベルな攻防が続いたが、中盤以降は両投手が好投。西舘が強気な内角攻めでリズムを取り戻せば、林勇は伸びのあるストレートと緩急を駆使して筑陽打線を相手に5回まで7三振をマークする。
こうなると、次の1点が大きくものをいうが、6回表に再び作新学院が「先手」を取る。4番石井が四球で出塁すると、5番横山の投手ゴロを筑陽バッテリーが一瞬お見合いしてしまい、内野安打となる。試合巧者の作新がこのチャンスを逃すはずもなく、6番大河内は強攻策にライトへのタイムリーで応えて1点を追加する。
反撃したい筑陽学園は6回に3番中村がエラーの汚名返上とばかりに3塁打を放ち、7回には2本のヒットを集めるなど徐々に林勇を攻略しかけるが、勝負所でコーナーに決まる投球の前になかなかチャンスをものにできない。一方、西舘は終盤に入ってストレートがさらに走り出し、パーフェクトピッチングを展開。我慢強く味方の反撃を待った。
その我慢の投球が最終回、ようやく実を結ぶ。野球は9回2アウトからという格言を筑陽打線が現実のものとした。終盤に入ってボールがやや高めに入りだした林勇に対し、6番進藤、7番野田がしぶとくヒットでつないで1,2塁とチャンスメーク。ここで、8番石川がインサイドのスライダーを狙い打ち、ライトオーバーの3塁打として2者が生還。チームの合言葉の「執念」の言葉通り、土壇場で同点に追いつく。
まさにザ・高校野球という展開の中、作新学院バッテリーも後続を打ち取って試合は延長戦へ。この試合常に先手を奪ってきた打線が延長10回に再びつながる。1番福田のヒットと盗塁でランナーをスコアリングポジションに進めると、2番松尾の打席で3盗を敢行。超攻撃野球でチャンスを拡大すると、3番中島がセンターへタイムリー。気落ちした西舘からこの回、5番横山もタイムリーを放ち、2点を勝ち越す。
再び2点のリードを奪って迎えた最終回、林勇は筑陽の上位打線をきっちり3人で打ち取り、ゲームセット。最後まで目の離せないハイレベルな試合を制し、作新学院が3年ぶりの勝利を飾った。
まとめ
作新学院にとってはこれ以上ないくらい、同校らしい勝ち方であった。バントを使わず、相手のスキを逃さない攻撃的な走塁と打撃で先手を奪い、ほとんどの時間帯で試合を支配していた。投げてはエース林勇が最終回こそ相手の粘りにあったものの、延長10回を投げて与えた四球はわずか1。ここ2年は勝利から遠ざかっていたが、作新ここにありを印象付ける白星であった。
一方、敗れた筑陽学園も好チームであったが、いかんせん相手とのペース争いに負けた印象が強かった。エース西舘の熱投や最終回の粘りはさすが選抜8強と思わせる戦いぶりであったが、惜しまれるのは中盤の6,7回と攻撃がつながらなかったことか。それでも激戦の福岡を勝ち上がって春夏連続出場した経験は大きく、来年以降も目の離せないチームになりそうだ。
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