2021年選手権3回戦
高松商vs智辯和歌山
48% 52%
〇10-7 作新学院
初戦で作新学院との打撃戦を制した高松商に対し、智辯和歌山は相手校の出場辞退による不戦勝でこの試合が初めてとなる。打力に自信を持つチーム同士の対戦だ。
高松商は初戦は小柄な左腕・徳田の好投で試合を作り、渡辺→坂中とつなぐ継投で作新学院の攻撃をしのぎ切った。徳田はキレのあるストレートを武器にストライク先行の投球で打たせて取るのが持ち味。次戦も同じような投球ができるか。絶対的な力を持つ投手はいないだけに、先手先手の継投策で相手にリズムを与えないようにしたい。
対する智辯和歌山打線は1番主将・宮坂、4番の主砲・徳丸を中心に巧打者・強打者がずらりと並ぶ。徳丸は1年生から4番を務めた逸材であり、県大会ではマークされて本領発揮できなかったが、最後の大舞台で大暴れを見せたい。そして、何よりも彼らには県大会決勝で全国屈指の剛腕である市立和歌山・小園を打ち崩した自信があり、強打に加えてしぶとさも兼ね備えているのが強みだ。
一方、智辯和歌山の投手陣は最速147キロのエース中西、速球派サイド右腕の伊藤、三振の奪える左腕・高橋と豊富な陣容を揃える。特に中西は前年秋の対市立和歌山3連敗を機にエースとして大いに成長。変化球の制球にも優れており、簡単に打ち崩される投手ではない。中谷監督の継投のタイミング、2年生捕手・渡部のインサイドワークも重要になってきそうだ。
対する高松商攻撃陣は上位の左打者陣が逆方向への逆らわない打撃で作新学院の左投手を攻略。2番に強打者・浅野を置く打順が最高のアクセントになっており、打線の破壊力は出場校中でも屈指である。また、4番藤井に最後の最後で会心の当たりの満塁走者一掃打が出たのは好材料だ。智辯和歌山の投手陣のレベルはもう2ランクほど上を行くが、勝つためには攻撃陣の援護は絶対不可欠である。
本来ならば、投打のバランスが取れている智辯和歌山がかなり優位と予想していたが、初戦が不戦勝となったことで経験値で高松商にアドバンテージが生まれた。高松商が得意の打撃戦に持ち込めれば勝負はわからなくなりそうだ。
主なOB
高松商…山口富士雄(阪急)、大森剛(巨人)、神田義英(ロッテ)、新田玄気(ヤクルト)、松永昴大(ロッテ)
智辯和歌山…中谷仁(楽天)、岡田俊哉(中日)、西川遥輝(日本ハム)、黒川史陽(楽天)、細川凌平(日本ハム)
香川 和歌山
春 5勝 4勝
夏 1勝 2勝
交流 1勝
計 6勝 6勝
対戦成績は春は香川、夏は和歌山がリードし、トータルでは五分。昨年の交流試合では尽誠学園と智辯和歌山が対戦し、尽誠学園が勝利している。1999年夏にも智辯和歌山と尽誠学園が対戦しており、この時は尽誠学園の好投手・森本から智辯和歌山が1番久米の2ランのみの2点で辛勝。春先からエースとなった井上の好投が光った試合であった。今回はどちらに軍配が上がるか…
思い出名勝負
2019年選抜2回戦
高松商
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 |
1 | 2 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | × | 6 |
市立和歌山
高松商 中塚→香川
市立和歌山 柏山→岩本
2019年の選抜2回戦の初戦は伝統ある公立校同士の対戦となった。
高松商は準優勝した3年前以来となる選抜出場。当時ほどのタレント集団ではないが、左腕エース・香川と右腕・中塚の2本柱を安定した守備と勝負強い打線で支える好チームであった。大会初戦では春日部共栄の注目の速球派右腕・村田を攻略。エース香川もキレのある速球とスライダーで相手打線を翻弄し、8-0と大差で初戦突破を果たした。
一方、市立和歌山は前年秋の近畿大会では8強ながらも優勝校の龍谷大平安相手に好ゲームを演じたことが評価されて選抜出場をつかみ取った。2年生エース岩本は、抜群のコントロールを誇る技巧派左腕であり、今大会は開幕戦で市呉を相手に好投。最終回に同点に追いつかれたが、8番片上のサヨナラ打で劇的な勝利を飾った。
持ち味の異なる左腕エースを擁する両校の対戦。試合前の予想では打力で勝る高松商がやや有利かと思われた。
しかし、ふたを開けてみると先発はともに右投手の中塚と柏山であった。ともに前年秋の公式戦でよく投げており意外ではなかったが、この先発起用が結果的に試合の流れを大きく左右することとなる。
高松商の先発・中塚は1回裏、簡単に2アウトを取るが、3番緒方に真ん中寄りのストレートをフルスイングされると、打球は左中間スタンドに飛び込むホームランとなって先制を許す。初回に市立和歌山・柏山がストレートがシュート回転しながらもなんとか踏ん張って無失点に抑えただけに、この先制パンチは大きな意味を持った。
快調な流れから一転して長打を浴びてしまった中塚。2回裏にも6番山田、7番瀧谷に連打を浴びてピンチを招くと、9番壹岐にはセンターオーバーの2塁打を浴びて2失点を喫する。この回いずれも打たれたのはストレートであり、変化球でストライクを取れない状況で痛打されてしまった。立ち上がりは変化球でもストライクが取れていたが、初回の一発で明らかにリズムを崩してしまっていた。
一方、立ち上がりにコントロールがばらけていた市立和歌山の先発・柏山だったが、こちらは2回以降徐々に立ち直りを見せる。ストレートが徐々に低めのコーナーに決まるようになり、捕手・米田の好リードもあって高松商の強力打線を4回まで無安打に抑え込む。エース左腕・岩本を早く引きずり出したい高松商にとっては痛い序盤の攻防であった。
こうなると試合の流れが完全に市立和歌山に傾く。4回裏には5番米田、6番山田が連打を放ってついに中塚をKO。代わったエース香川からも満塁のチャンスを作ると、暴投に悪送球が絡んで労せず2点を追加。さらに9番壹岐が2打席連続となるタイムリーを放ち。この回6-0と大きく点差を広げた。
四国王者としてこのままでは終われない高松商は6回になってようやく得点が生まれる。荒れ球の柏山に対してじっくり選球して連続四球を選ぶと、5番浅野は真っすぐをとらえて満塁とチャンスを拡大する。ここで6番上田はストレートの詰まりながらもセンター前に落ちるタイムリーを放って2点を返す。なお追撃のチャンスだったが、ここで市立和歌山もエース左腕・岩本にスイッチ。この継投策が功を奏し、無失点で切り抜ける。
その後は高松商・香川、市立和歌山・岩本の投げ合いに。香川は腰痛の影響で本調子でない中でも懸命の投球で無失点に抑えたが、高松商打線もまた市立和歌山・岩本をとらえきれず。岩本は初戦ほどの出来ではなかったが、要所を締める投球で後半3イニングを無失点で締めてゲームセット。公立校同士の対決を制した市立和歌山がベスト8一番乗りを果たした。
市立和歌山は続く準々決勝は習志野に逆転負けを喫したが、この大会でアベック出場した智辯和歌山とともにベスト8へとコマを進め、和歌山のレベルの高さを示した。半田監督のもとで好投手と安定したディフェンスを武器に、派手さはなくとも粘り強いチームを作り上げてきており、県内のライバル智辯和歌山とともに現在も熾烈な争いを繰り広げている。
対する高松商は序盤で右腕・中塚が思いのほかつかまってしまったが、やはりエース香川が腰痛の影響で満足のいく起用ができなかったことが痛かっただろう。この代はけが人が非常に多く、夏も連続出場を果たしたが、選抜のスタメンの何人かは外れる結果となった。四国王者として上位進出も期待されていただけに少々悔しい結果となったが、この年の春夏連続出場を見た1年生が今年甲子園でまた躍動する姿を見せている。
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