昨年は4強をすべて近畿勢が占めた選手権大会。今年も秋春夏3連覇を狙う王者・大阪桐蔭を中心に近畿勢は力のある面々が並ぶ。2年連続の近畿フィーバーとなるのか、それとも他地区が意地を見せるのか、注目の大会が8月6日に幕を開ける。
V候補筆頭
V候補の筆頭は何といっても選抜王者の大阪桐蔭だろう。
夏の大阪大会を54得点1失点と圧倒的な力で制覇。昨秋の段階では2年生左腕・前田以外の投手陣にやや不安を抱えていたが、選抜で長身右腕・川原が完全に一本立ち。さらに、夏の大阪大会では右腕・別所も安定感のある投球を見せ、3年生投手陣が最後の夏に完成度を高めてきた。2人とも力のある速球を武器に、変化球の精度、コントロールも兼ね備える。
さらに前田の投球はもはや今年のドラフト候補と言ってもよいほど。手首のしっかり立ったリリースから繰り出す角度のある速球にスライダー、チェンジアップも混ぜ、打者に的を絞らせない。しっかり戦略をたてて臨まない限り、攻略は困難だろう。
打線は例年のようなドラフト上位候補の打者はいないものの、春夏連覇を果たした2012年、2018年と比較しても攻撃力は高いように見受けられる。1巡目では苦労しても、2巡目からはしっかり捕まえ始める。各打者が次につなぐ意識が高く、1番伊藤から谷口、松尾、丸山、海老根と左右の巧打者が交互に並んで圧力をかけ、下位にも田井、星子、鈴木と巧打者が居並ぶ。選抜で11本のホームランを放ったように、長打力も兼ね備えており、1試合通して抑えきるのは容易ではない。
現段階では、1998年の横浜に次ぐ秋春夏連覇の可能性はかなり高いと言えるだろう。
2番手集団
しかし、大阪桐蔭を倒す可能性がないかと言えば、決してそんなことはない。まず、候補に挙がるのは近畿大会決勝で大阪桐蔭の公式戦連勝を止めた大阪桐蔭、そして練習試合で大阪桐蔭を下した東海大菅生に西東京大会決勝で逆転勝ちした日大三の2校になりそうだ。
智辯和歌山は夏連覇を目指しての戦いとなる。今年は選抜に市立和歌山、和歌山東と2校が出場しており、ハイレベルな戦いが予想されたが、終わってみれば智辯和歌山が圧倒する結果となった。
昨年に引き続き、今年も投手陣は層が厚い。ともに140キロ台後半の速球を持つ塩路、武元の2枚看板は強力。2人とも速球主体の投球で相手打者を追い込むことができ、多彩な変化球も持つ。近畿大会決勝では4人の投手陣の継投で大阪桐蔭打線を2点に封じたように、その他の投手陣も実戦経験は豊富だ。中谷監督の継投の手腕も大きな強みである。
また、打線は昨夏の優勝メンバーの渡部、岡西を中心に今年も長打力を併せ持つ。1番山口はマメタンクのような体型から痛烈な打球を放ち、相手投手は初回の一人目から圧力を受けることとなる。和歌山大会ではやや攻撃の粗さが見られたものの、そのあたりも本番までには修正してきそうだ。何より、全国で唯一大阪桐蔭を実際に公式戦で倒した実績を持っており、「打倒TOIN」の一番手なのは間違いないだろう。
日大三はここ数年甲子園から遠ざかっていたが、今年は見事に復活出場。激戦の西東京を勝ち抜いた実力はダテではない。
投手陣は決勝で完投勝利を挙げた左腕・松藤を中心に多彩な陣容を持つ。過去は絶対的なエースがいることの多かった日大三だが、今年は4強入りした2018年とどこか被る雰囲気がある。みなコントロールがよく、試合を壊す心配がないため、小倉監督も思い切った継投策がとれそうだ。
打線は東海大菅生の好投手・鈴木を攻略したように、今年も破壊力十分。練習試合とはいえ、大阪桐蔭打線を封じ込めた投手を打ち崩したことは大いに自信になるだろう。ヒットの3分の1を長打が占めるように、日大三らしいする力強い打球が飛ぶ。1番藤巻、3番富塚を中心に、勝負強い7番川崎など下位まで切れ目がない。3度目の夏制覇に向けて視界は良好だ。
ここ2年、甲子園を席巻してきた近畿勢の2校も打倒大阪桐蔭の有力候補となる。
京都国際はコロナウイルスのために出場辞退となる憂き目にあったが、最後の夏はエース森下が復活し、無事代表の座を勝ち取った。
森下は肘の故障のために本調子ではなかったが、本来なら全国でも一番の左腕と呼べる。しなやかなフォームから繰り出す伸びのある速球に切れ味抜群のスライダー、タイミングを狂わすチェンジアップと、まるでダイヤのエースに登場する「稲実のエース成宮鳴」のような完成度を誇る。昨年からエース格の平野に加え、今夏に急成長した右腕・森田も加わった投手陣は出場校中でも屈指の存在だ。
打線も昨夏のメンバーが中心となる。投げる方でのうっ憤を晴らさんとばかりに、4番に座った森下はホームランを連発。決勝でも逆転2ランを放ったように、ツボにはまれば打球はスタンドへ一直線だ。周りを固める平野、辻井らの経験者に加え、金沢、秋山ら今年からのメンバーにも好打者が多い。京都の新たな強豪校が一気に頂点を極めるか。
その京都国際に代わって代替出場した選抜で準優勝を達成したのが近江。近畿で唯一優勝経験のない滋賀県勢初のタイトルを狙う。
山田は選抜での負傷や春季近畿大会決勝で足がつるアクシデントなど、本調子でない時期が続いた。しかし、それでも大阪桐蔭の西谷監督をして、「フォークとツーシームは打てない」と言わしめた精度の高い変化球を持っており、万全の状態ならばそう打たれることはない。左腕・星野などほかの投手がどれだけ山田の負担を減らせるかが重要になる。
打線は滋賀大会で4番の山田に当たりが出なかったが、それでもチーム打率は3割5分を記録。津田、清谷、中瀬の左打者の上位陣を中心につなぐ攻撃で活路を開ける。選抜でサヨナラ弾を放った8番大橋など下位にも意外性のある打者が並んでおり、得点力は高い。選抜であと一歩で逃した優勝を、山田を中心に一枚岩となってつかみに行く。
今年の大阪桐蔭を下す重要なピースはやはり「好左腕」の存在である。そういう意味では鳴門、明徳義塾、横浜の強豪3校はかなり優位な位置にいると言えそうだ。
鳴門は選抜で唯一大阪桐蔭と互角の戦いを演じ、注目を集めた。好左腕・冨田と渦潮打線がかみ合えば怖い存在だ。
冨田は徳島大会4試合を一人で投げ抜き、打たれたヒットはわずか17本。140キロ台中盤の速球とスライダーを武器に真っ向勝負で抑えることができ、要所では三振でピンチを切り抜ける。インサイドを攻められる気の強さも持ち味で、選抜でも大阪桐蔭打線を相手に一歩もひるむことはなかった。課題は2番手投手であり、球数制限も絡んでくる終盤戦をいかに乗り切るかが重要だ。
打線は選抜でこそ1得点に終わったものの、単打を連ねて得点を重ねるしぶとさは特筆ものだ。チーム打率は4割を優に超えており、上位から下位まで穴がない。徳島大会で唯一不調だった4番前田に当たりが戻れば、鬼に金棒だ。近年徳島を牽引してきた強豪が再び甲子園を沸かせるか。
明徳義塾は昨夏準々決勝で悔しい逆転サヨナラ負けを喫したメンバーが残り、今年も戦力は充実。頂点を奪う力は十分ある。
エース左腕の吉村は左横手投げから繰り出す横の角度のついたボールが持ち味。昨夏も数々の強豪を苦しめたように、初見ではまず攻略することは難しそうだ。また、右サイドの矢野もスライダーを武器に好投を見せており、2人の継投によってストライクゾーンの横幅一杯を使った攻めが可能となる。
一方、打線は今年も明徳らしい小技の効いた攻撃が光り、犠打・盗塁など機動力を絡めてそつなく得点を奪いに行く。ここに馬淵監督の相手のスキを突く采配が相まって、得点力は倍増する。高知大会決勝では中盤まで劣勢だったが、高知投手陣の見せたスキを逃さずに1イニング6点をたたき出した。今年も四国の常連校は対戦校にとって実にやりにくい相手となりそうだ。
横浜は東海大相模とのライバル対決を制して、2年連続の代表権を獲得。かつての常勝軍団が復活の気配を見せている。
投手陣は昨夏のマウンドも経験した左腕・杉山が軸。球持ちの良いフォームから繰り出す140キロ台の速球とスライダーで相手打線を料理する。古くは愛甲(ロッテ)から成瀬(ロッテ)や近年では板川、及川(阪神)と続いてきた好左腕の系譜に名を連ねる力は十分に持っている。
2020年に村田新監督になって一番変わったのはやはり攻撃面だろう。近年はやや粗さが目立っていたが、ここにきて横浜らしい1点をそつなく奪う嫌らしい攻撃が蘇ってきた。昨夏の甲子園で劇的なサヨナラ弾を放った1番緒方を筆頭に、逆方向へつなぎながら、抜け目ない走塁を絡める横浜の野球ができれば、甲子園でも久々の上位進出は十分可能なチームだ。
明秀日立、敦賀気比、九州国際大付といった秋の地区大会チャンピオンチームも優勝戦線を賑わす。
明秀日立は選抜は2度の出場経験があったが、夏は初めての出場となる。劇的なサヨナラホームランでつかんだ夏に上位進出を狙う。
エースは選抜でも好投を見せた右腕・猪俣。スピード・球威ともに十分な速球で相手打者のバットを押し込むことができ、選抜では大島打線をシャットアウトしている。左腕・石川も経験豊富であり、左右2枚看板で連戦にも不安はない。
一方、看板の打線は準決勝までの5試合で51得点と好調を維持。3番佐藤、4番石川の中軸を中心にパンチ力のある打者が並ぶ。光星学院を全国区にした名将・金沢監督のもと、どんな投手相手にも気後れすることはないだろう。近年、常総学院以外の茨城代表はなかなか全国で勝ち進めていないが、今年の明秀日立はかなり期待できそうだ。
敦賀気比は4大会連続の甲子園出場。選抜で広陵に完敗した悔しさを晴らしに行く。
エース上加世田は選抜で広陵の左打者陣に攻略されてしまったが、相手のインサイドを果敢に攻める投球に磨きをかけ、福井大会では4試合で失点4にまとめた。もともとボールの力自体は全国でも屈指であり、きっちりコーナーに投げ切れればそうは打たれないはずだ。左腕・清野も計算が立っており、不安はない。
打線は4番上加世田を中心に1番浜野、3番春山と好打者が並ぶ。敦賀気比らしいシャープなダウンスイングが光り、準々決勝では選抜に出場した丹生の好左腕・井上も攻略して見せた。打って打ってつないでいく敦賀気比らしい攻撃で、全国を震撼させて2014年に匹敵する打棒を見せたいところだ。
九州国際大付は福岡県勢として同校が成し遂げた2011年以来11年ぶりの春夏連続出場を達成。勢いに乗って全国の頂点を狙う。
選抜で好投を見せた左腕・香西は怪我の影響でなかなか投げられなかったが、2年生右腕の池田が一本立ち。5回戦の福岡工大城東、決勝の筑陽学園と味方打線が封じ込められた試合で好投を見せ、ともに1-0での完封勝利を果たした。コーナーを丁寧に突く投球で四死球をほとんど与えず、甲子園でも大崩れはなさそうだ。
打線は選抜と打順を組み替え、1番だった黒田を3番に、4番だった佐倉を6番にしたことでより分厚い攻撃となった。佐倉は3ホームランを放って計17打点と大爆発を見せ、破壊力と柔らかさを兼ね備える。個々の能力は大阪桐蔭と比較しても決して劣るものではなく、つながりさえ良ければ、全国屈指の破壊力を秘める。西日本短大付以来30年優勝がない福岡に優勝旗を持ち帰る可能性は十二分にありそうだ。
また、仙台育英・市立船橋・星稜・山梨学院といった東日本勢も優勝争いに堂々加わってくる。
仙台育英は昨年まさかの予選敗退を喫したが、今年はきっちり修正し、代表の座をつかみ取った。
投手陣はチームに140キロ台の速球を投げる選手が14人いるというべらぼうな選手層を誇る。その中でエース格となるのは昨年の選抜でも好投を見せた左腕・古川。巧者揃いの明徳打線ほとんどヒットを許さなかった剛球左腕は最上級生になってさらにスケールアップしている。右腕・高橋も安定感があり、この2人から大量点は難しいだろう。
打線は例年と比べて長打力は目立たないが、4番齋藤陽・6番遠藤を中心に勝負強い打者が並ぶ。須江監督になってから細かい攻撃もより目立つようになってきており、犠打・盗塁を駆使してじわりじわりと引き離していく。白川の関越えを果たすため、みちのくの強豪が聖地に乗り込む。
市立船橋は2007年以来、実に15年ぶりの甲子園出場。千葉大会決勝で木更津総合に大勝した実力は本物だ。
投手陣は決勝で先発した左腕・森本哲星と坂本の2枚看板。かつて好投手を数多く輩出してきた市立船橋だが、今年のWエースも引けを取らないだろう。特に森本哲星-片野の黄金バッテリーは全国でも屈指の存在であり、森本哲星の140キロ台中盤の速球はコーナーに決まるとなかなか攻略は難しい。
打線も千葉大会6試合で55得点と好調を維持。決勝で終盤に木更津総合投手陣を粉砕したように、ここぞの場面で一気呵成に襲い掛かる。石黒、森本哲太の上位打線から下位を打つ森本哲星まで切れ目なくつながる。久々の出場だが、優勝争いに絡む力は十分持っている。
選抜8強の星稜は、決勝で昨夏代表の小松大谷を接戦で下して春夏連続出場を達成。過去2度の準優勝を超える頂点を狙う。
投手陣は、選抜でも好投したエース・マーガードが好調。球威抜群の速球に加えて、縦に落ちる変化球も光り、要所で三振も奪える。選抜では準々決勝で悔しい逆転負けを屈しただけに、雪辱に燃える。また、同じく選抜の天理戦で好リリーフを見せた右腕・武内も控えており、連戦にも不安はない。
打線は、中軸がやや不調だったが、脇を固める2番垣淵、6番松田らがカバーし、チームとしての得点力は落とさなかった。7番には巧打者の津沢も控えており、打線全体で得点力を保つことができる。過去、幾度も甲子園で名勝負を演じてきた山下監督の息子の山下智将監督が就任して初めての甲子園で快進撃を見せられるか。
選抜で木更津総合に悔しいサヨナラ負けを喫した山梨学院も春夏連続出場を決めた。
エースの榎谷はすでにその実力は選抜で証明済み。抜群のコントロールで試合を作る。加えて、球威十分の右腕・山田が成長し、心強い2枚看板となった。準決勝では強打の東海大甲府打線を3点に封じ込め、自身を深めた。本番でも大量失点は想像しにくい。
一方、選抜で木更津総合のエース越井に抑え込まれてしまった打線だが、春以降改めてスイングを鍛えなおし、球威に負けない振りができるようになってきた。例年強力打線で挑んでくる山梨学院だが、そろそろ1大会2勝の壁を越えられるか。清峰で優勝経験のある吉田監督に導かれ、一気のブレイクスルーを狙う。
実力校、虎視眈々
上記の高校を2番手としたが、その他のチームも実力差はほどんとないだろう。常連校や、激戦区を勝ち抜いたチームが虎視眈々と頂上を狙う。
聖光学院、日大三島、二松学舎大付、天理の選抜組は春のリベンジに燃えている。
聖光学院は連覇を止められた昨夏のリベンジを果たし、春夏連続で甲子園に臨む。
投手陣の大黒柱はエースの佐山。抜群のコントロールとテンポでチームに守りのリズムをもたらす。選抜では近江打線につかまってしまったが、最後の夏は球威も増して臨む。2番手には成長著しい右腕の小林剛も台頭してきており、より分厚い投手陣となった。
一方、打線は決して爆発力を秘めているわけではないが、とにかく選球眼が良く、つなぐ意識が高い。特に安田、山浅の左打者2人はしぶとい打撃が光り、相手投手のちょっとした乱れを逃さないだろう。連覇の止まったことで、新たに自分たちを見つめなおした常勝軍団がまずは、5度目となる夏8強を目指す。
東海王者の日大三島も春夏連続出場。夏の甲子園初勝利から一気の上位進出を狙う。
エースは投打でチームの中心となる右腕・松永。選抜では初回に3失点してリズムに乗れなかったが、その後は1失点にまとめたように、速球とフォークを武器に打たせて取ることも三振を奪うこともできる。控え投手陣との差がやや気になるところではあるが、松永が投げている間は不安はないだろう。
一方、選抜で金光大阪バッテリーのうまい投球の前に完封されてしまった打線だが、4番松永を中心に実力者が並んでおり、つながりは抜群だ。決勝の静清戦では一気の7連打で試合を決めた。報徳学園で全国制覇の経験がある永田監督のタクトに率いられ、春のリベンジとなる1勝をまずは狙う。
二松学舎大付も選抜初戦敗退からの春夏連続出場。過去4度阻まれた8強への挑戦をかける。
選抜では左腕の布施がエースだったが、今夏のエースは同じく左腕の辻が務める。右打者へのクロスファイヤーを武器に、ぐいぐい攻める投球が持ち味だ。右腕・重川も台頭してきており、選抜時と比べても投手層の厚さはかなり増したと言えるだろう。今年の二松学舎の「左」は要警戒だ。
打線は選抜でこそ、先手を取られる展開で3点どまりだったが、各人のポテンシャルは高い。親富祖、瀬谷といった昨夏からのメンバーを中心に持ち味のフルスイングで圧力をかける。準決勝ではかつて何度も行く先を阻まれた帝京に打ち勝ち、自身を深めた。2014年から数えて5回目とここ数年はすっかり常連校になっており、どこが相手でもひるむことはない。
天理は選抜でこそ星稜との延長戦に敗れたが、夏の奈良大会を圧倒的に勝ち抜いて見せた。
投手陣の柱は長身のサイド右腕・南沢。練習ではなかなか経験できない角度からの球筋に、各校の打者陣もきりきり舞いされた。選抜からスピード、球威ともに増しており、奈良大会では27回2/3を無失点で切り抜けた。左腕・中川にも計算が立っており、守りに不安は全くない。
選抜で星稜のエース・マーガードの球威に苦しんだ打線だが、夏は21得点の決勝を含めて打って打って打ちまくった。ドラフト候補にも挙がる3番戸井はシャープなスイングでライナー性の打球を飛ばし、打線の核となる。上位から下位まで切れ目がなく、ワッショイのリズムに乗って一気に相手投手陣を飲み込んでいく。夏3度目の全国制覇へ向けて視界は良好だ。
三重、愛工大名電、県岐阜商の東海勢3校も実力は高い。
三重は2年連続の代表権を獲得。今年は昨夏を超える8強入りを狙う。
昨夏からエースの上山は甲子園で樟南打線を完封したように、抜群の制球力が光る。特に直球のコントロールは抜群であり、昨夏よりスピードも球威も増した真っすぐで押し切っていく。何より昨夏すでにマウンドを経験しているアドバンテージは大きいだろう。
打線はチーム打率が5割を超えた昨夏ほどの数字ではないが、今年も下位まで高打率の打者が並んでおり、つながりの良さがある。2年生ながら甲子園をすでに経験している3番野田は6試合で打点10とすでに打線の顔になっている。粘り強く相手にジャブを打ち続ける粘っこい打線がエースを支え、準優勝した2014年に匹敵するような快進撃を見せていきたい。
愛工大名電は激戦の愛知大会を制し、2年連続出場。今年こそ苦手な夏に結果を残したい。
昨年は田村、寺嶋と左右の剛腕がいたが、今年は左腕エース有馬が柱となる。最速147キロの速球とスライダーを武器に強気の投球が売りであり、決勝では強打の東邦打線を相手にひるむことなく投げ続けた。工藤公康(西武)、濱田(中日)など好左腕を輩出してきた名電の系譜に名を連ねるか。
打線は昨夏からのメンバーである加藤、大森、伊藤を中心に力強い攻撃が目立ち、チーム打率は優に4割を超える。春の大会で封じられた東邦の好投手をきっちり攻略したように、対応力の高さが光った。過去13度の出場で初戦突破は3回のみと苦しんでいるが、今年一気にブレイクスルーしたいところだ。
県岐阜商も2年連続の夢舞台となる。サヨナラ負けした昨夏のリベンジに燃える。
投手陣は今年も層が厚く、ともに140キロ台後半の速球を持つ井上、小西の両右腕を中心に充実した陣容を誇る。特に、エースの井上は変化球の精度も高く、頼りになる存在だ。岐阜大会ではやや失点が多かったのは気になるが、選択肢が多い分、思い切った継投が可能だ。
攻撃陣は終盤にけた違いの勝負強さを見せ、決勝の帝京大可児戦でも逆転された直後に4点差を追いつく粘りを見せた。4番伊藤は9安打中7本が長打と、試合の行方を決める長打を放てる。昨年は春夏ともに強敵の前の初戦敗退を喫し、悔しい思いをした。今年は、そのリベンジのためにもまず1勝を狙う。
社は激戦の兵庫大会を制して初優勝。初陣ながらその実力は高く評価される。
このチームのストロングポイントは何といっても投手力だ。芝本・堀田の両右腕はともに安定感があり、球威・スピード・制球力ともに高いレベルでまとまる。彼らの投球が社の守りの野球のリズムを作り出す。兵庫大会決勝でサヨナラ負けのピンチを防いだように、内外野も堅守で投手陣を支える。
好投手との対決が続いたため、攻撃陣の数字はさほど目立つものではないが、社らしい機動力を絡めた攻めで得点を積み重ねる。3番福谷は5割を超す打率をマークし、チームトップの12打点と大活躍を見せた。本番でもキーマンになるだろう。彼の活躍が社の浮沈のカギを握っていると言っても過言ではない。
下関国際は逆転勝ちで4年ぶりの代表切符を獲得。昨年の選抜を経験したメンバーが多く残り、地力は高い。
投手陣はともに甲子園のマウンドを経験している右腕・松尾、左腕・古賀に加えて右の仲井が成長。マウンド度胸のある仲井とスライダーのキレが光る古賀と、ともにタイプの違う2人がこの夏は、お互いのピンチを救ってきた。質量ともに豊富な陣容で、ディフェンス面に大きな不安はないと言えるだろう。
攻撃陣は下関国際らしい機動力に加えて、中軸には賀谷、奥山、水安とパワーヒッターが並ぶ。昨秋は広陵投手陣に完封されてしまったが、その悔しさをばねにパワーアップを重ねてきた。強豪を立て続けに撃破して8強入りした2018年のチームと比較しても決して見劣りしないチームだろう。
また、興南・鹿児島実といった南国の強豪2校も高い実力を誇る。
鹿児島実は4年ぶりの甲子園出場。選抜出場の大島に競り勝ち、代表権を得た。
初戦でいきなり春の九州王者の神村学園と当たる厳しい組み合わせだったが、ここをエース左腕・大崎の好投で競り勝ったのが大きかった。赤崎はストレートと多彩な変化球を丹念に低めに集め、決定打を許さない。見た目以上に打ちにくい投手だ。
打線は迫力はさほどでもないが、勝負所を逃さない鋭さを持つ。決勝で大島の好投手・大野から少ないチャンスをものにしたように、ここぞの場面できっちり狙い球をとらえる確実性が光った。夏の甲子園での勝利となると、2015年夏の開幕戦が最後なだけに、まずは初戦を突破して勢いに乗りたいところだ。
興南も4年ぶりの大舞台に腕を撫している。
エース右腕の生盛は伸びのある速球を武器に力で押す投球ができ、カーブ・スライダー・フォークと変化球の精度も高い。細身な体ながら、ボールに力を伝えるのがうまく、甲子園でも快投が期待できそうだ。2番手の安座間も変化球のコントロールが良く、投手力は安定している。
打線は禰覇、安座間の中軸が当たっているのが好材料。決勝では沖縄尚学投手陣を中盤に一気に攻略したように、ここ一番で畳みかける力を持つ。甲子園でも戦いを知り尽くした我喜屋監督のタクトの元、2010年以来となる優勝を狙う力は十分あるだろう。
好投手擁し、上位伺う
野球は何といっても投手力。全国屈指の好投手を擁するチームは、相手にとって非常に怖い存在である。
日本文理は昨夏も甲子園のマウンドを踏んだエース田中が再び聖地に帰ってくる。
田中は昨夏は敦賀気比打線につかまったが、当時から速球の威力は目を見張るものがあった。最上級生になってストレートのMAXは150キロを超え、決勝では帝京長岡打線をわずか3安打に封じ込めた。投球回数以上の三振を奪っており、力で相手をねじ伏せる。
一方、元来「打撃の文理」と言われてきたように、今年も打線は破壊力を秘める。昨夏の甲子園でホームランを放ったスラッガー玉木を中心に上位には力のある打者が顔をそろえる。打撃でも中心となる3番田中は新潟大会で特大の一発を放った。県大会決勝では相手の好投手に苦しんだものの、本番では2009年や2014年を彷彿とさせるような打棒を見せたいところだ。
聖望学園は県大会決勝で関東王者の浦和学院を1-0と僅差で完封。エースおかべの好投で13年ぶりの全国行きを決めた。
岡部は激戦の埼玉大会で重要な試合をほぼ一人で投げ抜いて見せた。決勝の浦和学院戦では雨が降りしきる悪コンディションの中、我慢強く丁寧にコーナーを突き、強打者揃いの打線に付け入るスキを与えなかった。ストレートにも球速以上の力があり、攻略は容易ではない。
一方、打線は見た目の派手さはないが、センターから逆方向へ打ち返すしぶとさがある。ベテランの岡本監督の指導のもと、小技も鍛えられており、相手にとっては嫌な場面で大事な1点をもぎ取ることができる打線と言えるだろう。前評判をかわしてつかんだ夢舞台で、エースを中心にさらなる快進撃を見せたいところだ。
札幌大谷は選手権大会は初めての出場となる。2018年の神宮王者が堂々甲子園に乗り込んでくる。
エースは左腕の森谷。172㎝、82㎏のがっちりした体格から繰り出す速球は威力十分であり、コーナーに決まるとなかなか攻略は難しい。やや四死球が多いのは気になるところではあるが、大会屈指の左腕であることは間違いないだろう。
また、攻撃陣も準々決勝で北海を19-0と大差で下したように、破壊力を秘める。上位から下位まで切れ目なくつながり、要所では犠打を駆使してきっちりランナーを進めてくる。得点圏で一本出す自信があるゆえの攻め方だろう。ともに打率5割以上をマークした1番飯田、2番樹神の働きがカギを握る。打線が全国クラスの投手を攻略できれば、エース森谷の投球と相まって一気の上位進出もあり得る。
樹徳は群馬大会で前橋育英、桐生第一、健大高崎と強豪3校を立て続けに下して30年ぶりに甲子園に出場する。
チームの大黒柱は本格派右腕の亀井。伸びのある速球とスライダーで強打者相手にも真っ向勝負し、逃げない投球が光った。決勝では初回に5点のリードを奪ってから、「機動破壊」の健大高崎打線の猛塁を受けたが、最後まで落ち着いてしのぎ切った。また、守備陣もセンターラインを中心に堅守を誇っており、ディフェンス面に不安はない。
また、攻撃陣も目立った打者がいるわけではないが、全員が逆方向への意識を強く持って打席に入る。2番高木や9番亀田など、つなぎの打順に高打率を誇る打者が並んでいるのも心強い。久々の出場だが、強豪を相手に堂々と渡り合った実力は間違いなく全国レベルである。
鶴岡東はベスト16に進んだ2019年以来3年ぶりの出場となる。
山形県大会では準決勝までをすべて無失点で勝ちぬく安定ぶり。春までエースだった投手を故障で欠きながらも、右大園小林廉や左腕・矢部などタイプの違う投手の継投で勝ち抜いた。守備陣も5試合で失策はわずか1と鉄壁であり、安定したディフェンスを武器に試合を優位に進める。
打線もチーム打率4割以上と好調を維持。犠打を駆使して確実にスコアリングポジションにランナーを進め、長打で返す攻撃を見せた。上位から下位までずらりつ高打率の打者が並んでおり、スキのない打線を形成する。高い総合力を武器に、2015年・2019年にあと一歩で逃した8強入りを狙う。
創志学園は4年ぶり3度目の出場。決勝ではしびれる投手戦を制し、優勝を決めた。
エースは最速147キロの速球が武器の右腕・岡村。右サイドから繰り出す剛球を前に、岡山大会で各校の打者は苦戦を強いられた。インサイドを有効に使う投球も光り、捕手・竹本の好リードがエースを後押しする。過去の出場時も高田(巨人)、西(阪神)とプロ入りした投手が甲子園を沸かせたが、岡村もその2人に続く活躍を見せたい。
また、岡村が唯一捕まった準々決勝のおかやま山陽戦で2桁得点をたたき出したように、打線も底力を秘めている。1番から5番まで全員4割以上の打率をマークしており、リードオフマン横井やスラッガー金田と軸がしっかり機能する強みを見せた。過去最高となる1大会2勝へ向けて、そして長澤監督最後の雄姿を飾るべく、全国の舞台へ乗り込む。
海星は3年ぶりの選手権出場。県屈指の伝統校が安定した戦いで代表の座をつかんだ。
長崎大会では1試合の最大失点は2点まで。向井、宮原の両右腕が安定した投球で試合を作った。宮原は最速147キロの速球を武器とする本格派、向井は精度の高い変化球を操る技巧派とそれぞれ持ち味が異なっており、2人の継投で相手打線の目先を狂わすことに成功した。守備陣も5試合で1失策と安定しており、ディフェンス面は盤石と言えそうだ。
一方の打線は、選抜行きをかけた昨秋の九州大会で有田工・塚本に完封された苦い経験があったが、この夏はチーム打率3割8分台と好調を維持。唯一苦戦した準々決勝の鹿町工戦でも終盤にきっちり逆転を収めるなど、苦しい場面でチャンスをものにできるようになった。丸本・森・西村の中軸はいずれも打率4割台と好調だ。投打に安定した戦力で、まずは久々の8強進出を狙う。
富島は夏は3年ぶり2度目の出場となる。好投手を軸とした守りの野球で甲子園初勝利を狙う。
エースは今大会でも注目の右腕・日高。すらっとした体格から解き放つストレートは最速148キロを記録し、真っすぐと分かっていてもなかなかとらえきれない、キレのあるボールを投じる。さらにスライダー、フォークなど変化球の精度も高く、本調子ならなかなか得点を挙げるのは難しいだろう。スタミナも抜群で、試合後半までボールの威力は落ちない。
一方、打線はやや破壊力にかけるものの、下位に高打率の打者が並んでおり、つながりは非常に良い。失点数がある程度計算できるだけに、1点1点を確実に積み重ねる野球になりそうだ。打っても3番を務める日高は打撃でも打率4割を超し、投打でチームを牽引する。
有田工は春夏連続の甲子園出場。初戦敗退に終わった選抜の雪辱を張らせるか。
エースは右腕・塚本。クレバーな投球には定評があり、気づけば相手打線を自分のペースに引き込んでおり、抜群のコントロールで打者を料理していく。捕手・上原との息の合ったコンビネーションも魅力だ。ただ、打たせて取る投球が持ち味なだけに、予選終盤で乱れた守備陣については修正が求められそうだ。
一方、打線でもキーマンになるのは塚本となる。1番打者として打率4割以上、出塁率は優に5割を超し、初回から相手守備陣に圧力をかけていく。4番を務める2年生の角田は選抜まではやや確実性に課題があったが、この夏はきっちり結果を残した。選抜では後手後手の展開で国学院久我山に屈しただけに、この夏は先行してリズムをつかみたい。
強力打線で勝ち進むか
夏の戦いを勝ち抜くうえで必須なのは打力。今年も強力打線で優勝戦線をかき回しそうなチームが多数存在する。
高松商は3大会連続の選手権出場。昨夏を経験したメンバーを中心に上位進出を伺う。
投手陣の柱は昨夏も主戦格として投げた左腕・渡辺和。最速140キロ台の速球を武器に、最終学年になって安定感が増してきた。ここ2年は投手力は課題となってきたが、香川大会の防御率は1.91とここにきてエースとしての存在感が出てきた。長身の2年生左腕・大室も控えており、昨年より投手力は上だろう。
一方、看板となる打線の顔は何といっても1番を打つ浅野だろう。昨年から注目をあつめていたスラッガーは最終学年になってスイッチヒッターに転向。天性の長打力に加えて、新たな武器も手にした。相手投手にとっては初回からいきなり洗礼を受けることとなる。3番を打つ渡辺升が当たっているのも好材料であり、打ち合いになれば高松商のペースと言えるだろう。
八戸学院光星は8強入りした2019年以来の出場。みちのくの強豪が再び全国制覇に挑む。
投手陣は今年も継投策がメイン。左右計6人のタイプの違う投手でつないでいく。決勝では八戸工大一の猛追を受けたが、6人全員が登板してリードを守り切った。技巧派左腕・渡部や右腕・富井と、それぞれが持ち味を出して相手打者に向かっていく。ベテラン仲井監督のタクトも見ものだ。
一方、八戸学院光星のチームカラーと言えば、やはり打線だろう。光星伝統の近距離バッティングで磨いたシャープなスイングで快打を飛ばす。4番野呂、5番織笠の中軸の2人はともに4割以上のハイアベレージを誇り、初回からビッグイニングを作り出せる。今年も打撃と継投という、光星らしいチームで上位進出を目指す。
明豊は2年連続の選手権出場。完封負けで初戦敗退した昨年の借りを返しに行く。
投手陣は昨年のチームと同様に継投策が売り。絶対的な柱はいないが、左腕・坂本、右腕・野村を中心に先手先手を打ってつないでいく。川崎監督の投手リレーはすでに甲子園で何度も実証済みであり、また伝統の堅守は今年も大分大会5試合で3失策と受け継がれている。
そして、明豊と言えば川崎監督に鍛え上げられた智辯和歌山仕込みの打力だろう。昨年の選抜準優勝に貢献した5番竹下は打率6割をマークし、打点は12とチャンスにめっぽう強い。ベンチのメンバーも含めて野手の層が厚く、昨年は専大松戸の深沢(DeNA)に完封負けを喫してしまったが、今年は好投手攻略に自信を隠さない。持ち前の打力を武器に上位進出を伺う。
九州学院は2015年以来7年ぶりの出場。今や日本の主砲となった村上宗(ヤクルト)を擁した年以来の出場となる。
投手陣は2年生エースの村上が軸。140キロ台の伸びのある速球とスライダーを武器に熊本大会の大半を投げ抜いた。準々決勝では降雨による継続試合で9回裏のピンチの場面から始まるという苦境に立たされたが、後続を全員三振で仕留めるメンタルの強さを見せた。守備陣も5試合で1失策と安定しており、エースを支える。
打線はヤクルトの主砲・村上の弟である村上慶が4番に座る。決勝では先制打を放ったものの、大会を通じてはやや不調。しかし、5番松下、6番後藤と後続の打者がカバーし、打線の層の厚さを見せた。下位にもホームランを放った9番瀬井が座るなど、今年も伝統の攻撃力は高いレベルを維持している。平井新監督になってから初めての甲子園で、新しい九州学院の伝統を築けるか。
佐久長聖は4年ぶり9度目の夢舞台。自慢の攻撃野球で長野大会を制した。
投手陣の中心は背番号10ながら実質エース格として働いた右腕・広田。目立ったスピード・球威はないものの、内外角を丁寧に突くコントロールがあり、試合を作る能力に長けている。守備陣も長野大会7試合で2失策と、元PL学園の藤原監督にみっちり鍛えられている。打線が抑えられることがあったとしても、不安を感じることはないだろう。
一方、打線は強打に加えて犠打・盗塁など小技や機動力にも長けている。藤沢、柳沢、岡田の上位3人は全員ハイアベレージをマークしており、初回から相手守備陣をかき回す。チーム全体でコンパクトなスイングを徹底しており、しぶとくつなぐ嫌らしさがある。ここ何大会かは1大会2勝目の壁を破れていないが、今年のチームには上まで勝ち上がる可能性を感じさせる。
高岡商は決勝で乱打戦を制し、5大会連続の甲子園に乗り込む。
投手陣は3人の投手の継投が生命線。昨夏も甲子園でベンチ入りした右腕・川尻を中心に右サイドの桑名、左腕・横江とタイプの違う3人の投手で目先をかわしていく。富山大会では失点がかさんでしまったが、センターラインを中心に守備は安定しており、堅守で投手陣を支えたい。
一方の打線は今年も活発。決勝では後アウト一つで敗退の場面で1番柴田、2番宮内、3番川尻の3連打で試合をひっくり返した。ここ数年は全国レベルの打撃を見せており、攻撃力では他校に引けを取らないだろう。投手力にやや不安を抱えるだけに、できれば先行して試合を進めたいところだ。
国学院栃木は11連覇中だった王者・作新学院を下しての出場となった。
エースは右腕の盛永だが、このチームの持ち味は継投策である。盛永は内角を果敢に攻める強気の投球で活路を見出し、作新学院戦では8回まで相手打線を無失点に封じた。3投手の継投で2勝を挙げた2018年選抜のような戦い方を見せたいところだ。
攻撃陣は国学院栃木らしい機動力野球が持ち味。積極的な走塁で相手の平常心を奪う野球は、4強入りした2000年の選抜ともどこか被るところがある。作新学院戦でサヨナラホームランを放った4番平井を中心に4割打者がずらりと並び、攻撃力はどこと比べても決して見劣りしないだろう。作新を下して歴史を作った国学院栃木の夏はまだまだ続きそうだ。
盈進はノーマークの存在ながら波乱の広島大会を制し、最も勢いのあるチームの一つだ。
投手陣の中心は右腕・向井。速球、変化球ともにベース板上でのスピード感があり、打者のバットを詰まらせる。右腕・寺田もスライダー、シュートと変化球の精度に優れており、本番でも継投策を視野に入れることになりそうだ。
持ち味の打線は広島大会で非常に活発だった。打率6割を超した3番秋田、同じく高打率の5番山藤を中心に当たっている打者が多く、機動力も絡めて一気に集中打で得点を奪うシーンが目立った。広島大会ではいずれも先制してリズムをつかんだだけに本戦でもその野球を貫きたい。
ダークホース
一関学院は花巻東・盛岡大付の2強の歴史に風穴を開け、12年ぶりの代表の座をつかんだ。
投手陣は4人の投手で岩手大会6試合を切り抜け、失点はわずか2。一人一人は決して目立った投手ではないが、アンダーハンドの小野涼を中心にタイプの違う投手でつないできた。打線もつなぎの意識が高く、決勝では150キロ右腕・斎藤を見事に攻略。この10年余りで2強に遅れを取った感は否めないが、持ち味を出した打球で全国で好結果を残したい。
能代松陽はあの秋田県勢の連敗を止めた2011年以来の甲子園となる。能代商から校名変更してからは初めての出場だ。
エースは最速144キロを誇る三浦。11年前の出場時とは違う本格派右腕だが、速球の威力は全国でも十分通用するだろう。秋田大会ではラスト2戦でシーソーゲームを制したように、打線も非常に活発だ。打率5割を超す3番田中が打てば、捕手としてリードも乗っていけそうだ。まずは11年前に続いて初戦を突破し、波に乗りたい。
旭川大高はここ5年で3度目の出場と近年安定して出場を重ねている。
投手陣は池田、山保の本格派右腕2人がおり、先発も継投も自由自在。しかし、今年は端場監督としては継投をメインで戦うようだ。北北海道大会では準々決勝の白樺学園戦以外は、少ない失点で勝ち上がった。2018年、2019年とあと一本が出ずに敗退したように、やはり課題は攻撃力か。当たっている藤田、鶴羽、山保の中軸の前にランナーを貯めたいところだ。
帝京第五は夏は初めてとなる甲子園出場とつかみ取った。
鈴木、大井、岩来の上位打線が非常に好調であり、決勝では昨夏甲子園のマウンドを経験した新田のエース向井も攻略して見せた。元来、選球眼に優れたチームであり、攻撃陣が先制して、国方・積田の両右腕で形成する投手陣を支えたい。1985年の選抜で準優勝投手となった小林監督(元帝京)の采配にも注目だ。
浜田は実に18年ぶりの甲子園出場。県屈指の伝統校が久々に聖地に帰ってきた。
投手陣は左腕・波田から右腕・森井へつなぐ継投が持ち味。打線が1番中野を中心とした機動力野球で援護してきた。OBの和田毅(ソフトバンク)が松坂世代唯一の現役選手として奮闘しており、後輩たちも活躍してエールを送りたいところだ。
鳥取商は決勝で劇的な逆転サヨナラ勝ちを収め、3度目の出場権を獲得。
山根、岩崎の両右腕を中心に鳥取大会4試合を失点わずか3で制した。打線は決勝で相手の好左腕に苦しんだが、自分たちで考える野球で活路を見出し、サヨナラ劇につなげた。甲子園でもまずは失点を抑えて、ロースコアの接戦に持ち込みたい。
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