2022年選手権準決勝 下関国際vs近江(13日目第2試合)

2022年

大会13日目第2試合

下関国際

1 2 3 4 5 6 7 8 9
1 0 1 0 0 2 1 3 0 8
0 0 2 0 0 0 0 0 0 2

近江

 

下関国際   古賀→仲井

近江     山田→星野

選抜王者を下した下関国際と選抜準優勝の近江の対戦は、終盤に下関国際打線が近江のエース山田を全員野球で攻略。リリーフ登板した仲井が近江打線を4回以降無失点に封じ、3度目の出場で初の決勝進出を決めた。

試合

近江は大黒柱の山田、下関国際はエース左腕・古賀と試合前の予想通り、両エースがマウンドに上がった。

1回表、下関国際はこの試合も1番起用された赤瀬がショート正面へのゴロを放つ。これをショート津田が悪送球してしまい、いきなり無死2塁のチャンスを迎える。2番松本は三振取られるも、3番仲井がインサイドの速球を肘をたたんで打ち返し、レフトへのタイムリーで1点を先制する。山田のボールに対して、1回からしっかりアジャストする。

先制点をもらった下関国際・古賀だが、こちらも1アウトから当たっている2番清谷に四球を与える。犠打で2塁に進むと、4番山田に対し、下関国際バッテリーはすべての球種を使って勝負。最後は高めの速球を振らせる配球で空振り三振に切って取る。

2回表、近江は2イニング連続で捕手・大橋が好送球で盗塁を刺すと、2回裏に近江は5番石浦、6番岡崎が連続四球を奪う。ここで坂原監督は早くも先発の古賀をあきらめ、2番手の仲井にスイッチ。予想外に速い交代だったが、仲井は犠打で1アウト2,3塁から近江の8番大橋のスクイズを失敗させ、併殺で切り抜ける。

下関国際は3回表、8番山下のライト前にポトリと落ちるヒットで、3イニング連続先頭打者が出塁。犠打の構えの9番橋爪にストレートの四球を与え、1番赤瀬の犠打で1アウト2,3塁となる。2番松本の四球で満塁となると、3番仲井の打席で暴投が飛び出し、下関国際に2点目が入る。しかし、仲井を内野フライに抑えると、4番賀谷には10球粘られながらも、ツーシームで空振り三振を奪ってピンチを脱する。スコアリングポジションにランナーを背負ってからが山田の真骨頂だ。

反撃したい近江は、3回裏1アウトから不調だった1番津田がライト前にヒットを放つ。2番清谷の打席で盗塁を敢行すると、捕手の悪送球を誘って津田は3塁へ。ここで2番清谷が右中間を破るタイムリー3塁打を放って1点を返す。3番中瀬はスライダー空振り三振に倒れるも、4番山田がそのスライダーが甘く入るのを逃さず強振。打球が3塁ベースに当たるラッキーなタイムリー2塁打となり、近江が同点に追いつく。

その後はしのぎ合いとなり、両投手、両ディフェンス陣が譲らない展開となる。拮抗した展開の中、5回裏に近江は大チャンスを迎える。

1アウトから2番清谷、3番仲井がいずれもストレートを叩いて連打。スライダーが来る前のカウント球を狙い打つと、4番山田は打撃妨害で1アウト満塁と大チャンスを迎える。しかし、5番石浦は外角のスライダーに食らいつくも、浅いセンターフライで2アウト。センター赤瀬が懸命のプレイでポテンヒットを防ぐ。続く6番横田は体調不良から復帰して初戦以来の出番だったが、初球の甘いスライダーを完ぺきにとらえるも打球はサード真正面。あと一打が出ずに得点のチャンスを逃す。

この5回裏が結果的に潮目の変わる分岐点となった。5回まで制球・球威が不本意な状況ながらも粘っていた山田だったが、下関国際打線の粘っこい圧力の前に心身とも疲弊していた。

6回表、下関国際は3番仲井、4番賀谷が連続四球を選ぶ。2人とも低めに落ちる変化球をなかなか振らず、近江バッテリーにプレッシャーを与える。すると、続く5番水安のファーストゴロを1塁手の石浦が3塁へフィルダースチョイスしてしまい、無死満塁と一気にピンチが広がる。球数も100球に迫り、苦しい状況となる。

ここで、6番奥山は3球三振に切って取るも、7番に対してなかなか空振りが取れない。高めのストレートで勝負してファウルが続いていたが、近江バッテリーの頭の中には低めの変化球をことごとく見切られた残像が残っていただろう。徹底して速球勝負を続けたが、7球目にストレートがやや甘く入るところを森が逃さずとらえると、打球はライト線へ落ちるヒットとなって2者が生還。下関国際が大きな大きな勝ち越し点を手に入れた。

その裏、近江も四球で出た7番川元が盗塁を敢行するが、捕手・橋爪の好送球でタッチアウト。9番小竹が四球を選ぶが、続く1番津田仲井のスライダーの前に空振り三振に倒れる。2回からのロングリリーフであったため、力投派の仲井が最後までもつのか心配されたが、山口大会で3試合連続完投していることもあり、心配ご無用。むしろ投げるたびにボールの切れ味が増していき、ミートのうまい近江打線がとらえることができない。

迎えた7回表、ついに近江の大黒柱がマウンドを降りる時がやってきた。これまでと違うのは「負けている局面での降板」ということだ。1番赤瀬にサード強襲のヒットを打たれると、2番松本にはカウント2-1と置いこみながらフォークをセンターにはじき返される。山田の調子が悪かったこともあるが、すべての球種に対してアジャストするこの1,2番コンビは非常に厄介だ。3番仲井の犠飛で5点目が入ると、5番水安に四球を与えたところで多賀監督山田の交代を指示した。

後続を星野がなんとか抑えると、7回裏、2番清谷の四球と山田のヒットで再び近江はチャンスを迎える。ここで1点でも返せばまだ試合の行方はわからない状況だったが、5番石浦はピッチャーゴロで2アウト。続く6番横田はカウント2-1からの渾身のアウトローに手が出ず、近江は反撃の機会を逸する。攻守に要となるはずだったこの2年生を大会期間中に離脱させざるをえなかったことが最後の最後に響いてきた。

7回はなんとかおさえた星野だったが、8回表、下関国際打線の餌食となる。四球のランナーを犠打で進塁させられると、9番橋爪には甘く入った変化球を左中間に運ばれて6点目。さらに、1番赤瀬のスクイズがサード中瀬の悪送球を誘って橋爪が生還すると、2番本も立て続けにスクイズを決め、この回決定的な3点がスコアーボードに刻まれた。

大量リードを得た下関国際は仲井が最後までマウンドに仁王立ち。8回裏を四球1つのみで封じると、最終回の攻撃も2番清谷、3番中瀬の左の好打者コンビをなんなく打ち取って2アウト。

そして、近江の最後の打者はこれまでエースで4番としてチームを牽引してきた山田であった。この男の力なくして3季連続の近江の躍進はなかっただろう。野球の神様がいるかのような感覚にとらわれる中、山田は初球、これまで苦しめられていた仲井のスライダーを完ぺきにとらえる。しかし、打球は深い守備位置を取っていたレフト奥山のグラブに収まり、試合終了。

この試合を象徴するような下関国際のしたたかさが近江の大黒柱を封じ込め、下関国際が山口県勢として1985年の宇部商以来37年ぶりとなる決勝進出を決めたのだった。

まとめ

下関国際は準々決勝の大阪桐蔭戦に続き、選抜ファイナリストの近江も撃破。もう誰も前の試合をフロックと呼ぶ者はいないだろう。下関国際としても序盤に左腕エース古賀がマウンドを降りるという不測の事態があったのだが、試合が終わってみると、そんなアクシデントがあっても響かない強さを感じさせられた。

特に、近江・山田のボールに対する選球眼の良さは素晴らしく、大会No.1右腕の低めに落ちる変化球をことごとく見切っていた。大阪桐蔭の西谷監督をして、「フォークとツーシームは打つのは難しい」と言わしめるボールであったが、そのボールを真っ向から攻略して見せた。また、投げては右腕・仲井がロングリリーフをものともせず、3回の2失点のみ。体とボールの強さを感じさせる内容であった。

投攻守走に全くスキを見せない下関国際。坂原監督の築き上げてきた野球が今、全国の舞台で花開こうとしている。地道に積み上げてきた一つ一つのチームプレーが強者を穿つ姿を私たちは決勝の舞台でも見ることになるのだろうか。仙台育英とのファイナルでも坂原監督と下関国際はいつも通りの野球で、目の前の試合を勝ちに行きそうな気がする。

 

一方、近江は2年連続で4強で敗退したが、この大会を通じて「本当に強くなった」と感じさせるチームであった。特に、今日は横田が復帰してなかなか活躍できなかったが、彼が抜けた状況でチーム力を保って勝ち続けたことが、何よりの成長の証だっただろう。上位から下位まで切れ目なくつながる攻撃、普段と違うポジションでも、それを感じさせない内野守備は、全国制覇を本気で狙ってきたことを証明するものであった。

また、エースで4番として昨夏からチームを引っ張ってきた山田のパフォーマンスも素晴らしいものであった。投打にスケールの大きさを示し、大げさでなく、滋賀県史上の最高のプレーヤーであった。惜しむらくは、力投派であるぶん、試合を重ねるごとに球威が落ちやすい点であったが、上の舞台にいけば、そういった連戦による不安はなくなりそうだ。近い将来、再び彼の名を耳にすることになるだろう。

この3季の甲子園で近江の躍進が滋賀県に残したものは殊の外大きい。多賀監督は「山田のいる間に全国制覇を」とおっしゃっていたが、昨夏からの近江の戦いを見て「次は俺も」と思っている滋賀の野球少年たちはたくさんいるはずだ。彼らがいつか、今日近江ナインが果たせなかった夢をかなえる日がやってくることを信じ、近江ナインへの感謝をもちながら、今夏の戦いは幕を閉じた。

山田投手 立ち上がり 先制点 [2022夏 下関国際vs近江] – YouTube

2022年選手権準決勝予想 近江vs下関国際 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

コメント

  1. […] […]

タイトルとURLをコピーしました