2022年選抜1回戦
星稜vs天理
51% 49%
高校球界を代表する名門校同士が初戦からいきなり激突。力の差はほとんどなく、好勝負が期待できる。
天理のエースは長身の右サイドの南沢。昨秋の途中までは上手投げだったという変わり種だ。予選の途中からサイド投法に変えたことで、コントロールが安定。打者からするとあまり経験したことのない角度からボールが飛んでくる。控えには、嶋川・村上の2年生右腕コンビも控えており、投手力に大きな不安はない。
対する星稜打線は北信越の決勝こそ完封されたものの、準決勝までは日本文理や富山商の好投手を打ち崩してきた。4番若狭はチーム最多打点をマークしたように、ここぞの場面での一本に期待がかかる。基本的にストレートには強く、下位まで切れ目がないのも特徴だ。スター選手はいなくとも、穴と言える打順もない、相手にとっては嫌な打線だ。
一方、星稜のエースは伸び盛りの速球派右腕・マーガード。1年時からその素質が注目されていた右腕は、最終学年を迎えてコントロールも安定。カットボールとを武器に打たせて取ることも三振を奪うこともできる。ここ最近の星稜は投手層が厚いのも特徴で、同じく速球派の2年生右腕・武内や左腕・牧野も控えている。こちらも質量ともに豊富な投手陣だ。
対する天理打線は、昨年の選抜4強を経験した戸井と内藤の中軸コンビがカギを握る。特に戸井はショートで主将とまさにチームの要。シュアな打撃には定評があり、勝利のためには彼が封じられるわけにはいかない。中村監督になってから出場した2大会はともに4強入りしており、大会を通じて打線が成長した印象があった。同じ道をトレースできるか。
ちょうど30年前の選抜以来の両校の対戦となる。投打の軸がしっかりしている天理か、総合力の星稜か。中村監督・林監督の采配にも注目だ。打線全体の力を鑑みて、わずかに星稜有利か。
主なOB
天理…門田博光(南海)、鈴木康友(巨人)、中村奨吾(ロッテ)、西浦直享(ヤクルト)、太田椋(オリックス)
星稜…小松辰雄(中日)、村松有人(ソフトバンク)、山本省吾(近鉄)、松井秀喜(マリナーズ)、奥川恭伸(ヤクルト)
奈良 石川
春 1勝 1勝
夏 1勝 2勝
計 2勝 3勝
対戦成績は石川勢が3勝2敗とリード。
1977年夏の1回戦では前年夏4強の星稜・小松(中日)と同年選抜4強の智辯学園・山口(阪急)という大会屈指の好投手同士の投げ合いが実現。序盤に先手を取った智辯学園が2-1と僅差で投手戦を制した。
大会No.1投手(1977年選抜) 山口哲治(智辯学園) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)
一方、1995年の夏準決勝では星稜と智辯学園が初の決勝進出をかけて激突。前日に福留孝介(中日)を擁するPL学園に打ち勝った智辯学園だったが、この日は星稜の2年生左腕・山本(近鉄)の前に打線が沈黙。けが人が多く満身創痍の星稜だったが、打線も15安打を放ち、3-1のスコアながら投打に圧倒した内容で決勝に進出した。
思い出名勝負
1992年選抜準々決勝
星稜
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | × | 5 |
天理
星稜 山口
天理 西岡
ラッキーゾーンが撤廃されてから初めての大会となった1992年の選抜。そんな記念すべき大会で、ベスト8まで勝ち上がってきた常連校2校が、準々決勝の第1試合で顔を合わせた。神宮大会の優勝校と2年前の夏の優勝校の対戦とあって、観衆も期待を込めて見守った。
星稜は山下監督が1年生時から投打の軸にと考えてきた左腕・山口と主砲・松井秀喜(ヤンキース)が順調に成長。前年夏にはV候補筆頭の松商学園に競り勝って、4強入りするなど、着実に階段を上がってきていた。そして、新チームになって迎えた神宮大会ではエース三沢(巨人)を擁する帝京に13-8と打ち勝って堂々の優勝を達成。満を持して甲子園初制覇を狙っていた。
甲子園では開幕戦に登場し、いきなり4番松井が4打数4安打の2ホームランと大当たり。ラッキーゾーン撤廃の影響などものともしない長打力に観衆は度肝を抜かれた。この試合を危なげなく制すると、2回戦では堀越の好投手・山本からも松井が8回にインサイドのボールをうまく払ってライトへ2ランを叩き込む。エース山口も完封勝利を挙げ、投打に危なげなくベスト8まで勝ち進んできた。
一方、一昨年の夏の王者・天理はこれで5季連続の甲子園出場。しかし、南(日本ハム)、谷口(巨人)と大型投手がエースでスケールが大きかった過去2年と違い、この年は小柄な選手が多いものの、しぶい野球が持ち味であった。近畿大会では西岡、井上の両投手を堅守で支え、準優勝。島監督に交代してまた新しい天理の野球を見せ始めていた。
本大会では初戦でエース西岡が米子商打線を3安打完封して1-0で勝利すると、2回戦でも名門・広島商に3-2と競り勝って8強に進出。エース西岡は体格には恵まれないが、スライダーを丁寧に低めに集めて打たせて取り、打線も少ないチャンスを確実に活かして得点を重ねた。従来の豪快なイメージとは異なるものの、試合巧者ぶりが際立つ勝ち上がりである。
ともに優勝へ向けて落とせない一戦。特に星稜にとっては、本大会で初めて同格以上の強豪と対戦する試合となった。
試合は序盤から星稜・山口、天理・西岡が一歩も引かない投手戦を見せる。2回表に星稜が下位打線で作ったチャンスを活かして、先制点を挙げるが、その他のイニングはなかなかランナーがホームに帰ってこない。
星稜・山口は2年生まではスローカーブを活かした緩急が持ち味だったが、前年夏の大阪桐蔭戦でそのスローカーブを狙われてホームランされ、敗退した。新チームになってからの走り込みで球威の増した左腕は、この日も快調な投球で天理のしぶとい打線を抑え込んでいく。
対する天理の西岡も1,2回戦以上に丁寧な投球で星稜打線を3回以降は無失点に封じ込める。特に4番の松井秀喜には細心の投球を見せ、長打を浴びないように丁寧に低めを突く。慎重になって2四球を与えたものの、4打席通じて1安打に抑えたのだから上々の結果だろう。
また、星稜打線に対しては投打の中心である3番山口、4番松井の注意が行き過ぎて、その後の5~7番を打つ月岩・福角・奥成に捕まるケースが多かった。しかし、西岡はそこでも神経を途切らせることなく後続を抑えており、星稜打線を「線」にしないことに成功する。
1点差で進行する試合。こうなると、1点リードしているほうによりプレッシャーがかかってくる。しかも、追われる方は初めての上位を狙うチーム、追う方は直近6年間で2度の全国制覇を果たしているチームだ。
星稜の山口は8回裏、疲れを最も感じるイニングでついに天理打線につかまる。9番から始まる打順で打線がつながり、同点のタイムリーが飛び出す。なお1アウト2,3塁となって4番大西の当たりはサード松井の元へ。これを松井がはじく間に3塁ランナーが生還し、土壇場で星稜が勝ち越しに成功する。
主将の失策による失点で動揺したか、山口は続く5番山本への投球が甘く入る。これを試合巧者の天理が逃すバズもなく、高々舞い上がった打球がレフト席へと吸い込まれてこの回一挙5得点。試合の趨勢を決めるには十分な点差であった。
9回表に星稜もランナーを出すが、最後は西岡が得意のスライダーをひっかけさせてセカンドゴロ併殺で無得点。天理が会心の逆転勝利でベスト4進出を果たした。
天理はその後、準決勝で東海大相模に惜敗。しかし、力では上回る相手に2-3と接戦を演じ、持ち味は十分に発揮した戦いだった。夏も連続出場を果たして8強入り。前年は大型チームで優勝候補に挙げられながら春夏ともに1勝に終わったが、野球は決して個々の力だけで決まるものではないことをこの年の代の選手たちが証明して見せた。
一方、星稜にとっては重圧に押しつぶされた格好になったか。おそらく星稜史上最も前評判の高いチームであり、優勝候補筆頭として臨む戦いは初めてだったかもしれない。これまで投手を軸に先制して手堅く守り勝つ野球が持ち味だった星稜が、松井秀喜という強烈な「打」の柱を引っ提げて臨んだ大会だったが、したたかな強豪の前に屈することとなった。
東海大相模vs天理 1992年選抜 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)
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