2023年選抜3回戦 広陵vs海星(8日目第3試合)

2023年

大会8日目第3試合

海星

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 2 0 0 0 0 0 0 0 2
0 0 0 0 1 1 1 0 × 3

広陵

 

海星  吉田→高野

海星  高尾

実力校同士の第3試合は1点を争う好ゲームになった。広陵がしぶとい攻撃で海星の好左腕・吉田を攻略。2年生エース高尾も粘りの投球で2失点完投し、昨年を上回る8強進出を決めた。

試合

広陵は高尾、海星は吉田。両チームとも初戦と同様の先発投手を選んだ。

広陵のエース高尾は初戦で二松学舎大付の強力打線を相手に無失点ピッチング。この日も低めへ制球された勢いのある速球、そして多彩な変化球が冴える。1番田中、2番山口と塁に出すと厄介なコンビを封じると、3番永田に四球を出すも、4番永田は渾身の真っすぐで見逃し三振に切って取る。

一方、海星の左腕・吉田はキレのある速球とカーブ、チェンジアップを武器に打たせて取るタイプ。初回、いきなり1番田上にヒットを許し、犠打で得点圏に進まれる。しかし、注目の3番真鍋を強気のインサイ攻めで打ち取ると、4番小林もクロスファイヤーでショートゴロ。向かっていく投球で広陵打線を封じる。

すると、エースの投球が打線に火をつける。2回表、先頭の5番平尾がストレートを痛烈に引っ張ってレフトへ運ぶ。犠打で二進すると、2アウト後に8番井坂のセカンドゴロを松下が悪送球してしまい、平尾がホームイン。まさかの形で高尾に今大会初失点が付く。さらに、9番吉田は動揺に付け込むように、アウトコースの速球を流し打ち。左打者の理想とする「ショートの頭を狙う打撃」で2点目を挙げる。

V候補の広陵に対し、狙い通り先手を取った海星。自らタイムリーを放ったこともあり、吉田が乗る。2点のリードをバックに広陵打線を淡々と打たせて取っていく。一方、2点先行は許したが、高尾もヒットを浴びながらも、力のあるボールを低めに集めて海星打線に追加点を許さない。また、アウトにこそできなかったものの、広陵のショート小林が三遊間深い位置の打球を好捕したように、両チームとも次の1点を絶対にやらないという気迫の守備を見せる。

4回まではやや海星が押し気味のペース。広陵は、初戦で3安打を放ったキーマンの真鍋を海星バッテリーに抑え込まれる。海星バッテリーとしては細心の注意を払っての投球だ。しかし、序盤我慢の展開となったが、リードされながらもチーム全体で踏ん張る姿勢が、中盤に実を結ぶ。

5回裏、1アウトから7番中尾が高めに浮き始めた吉田のストレートをとらえ、右中間フェンス直撃の当たりを放つと、快速を飛ばして3塁を奪う。下位打線が風穴を開ける、この長打。さすがに広陵打線は力がある。ここで8番高尾はしっかり吉田の速球をとらえ、1点を返す。まだ海星がリードしていたが、ムードをぐっと広陵に引き寄せる得点だ。

試合は、そのまま後半戦へ。グラウンド整備が終わり、流れの変わりやすい6回表、高尾は海星打線に粘られながらも根負けしない。5番平尾、6番、7番角野としぶとい打者を3者連続で内野ゴロに打ち取る。6回で球数が100球を超え、苦しい内容のはずだが、素晴らしい踏ん張りを見せた。

すると、6回裏、今度はノーアウトから1番田上が高めのカーブをとらえて、またも右中間を破る。田上も抜群の走力を発揮してあっという間に3塁を奪うと、2番谷本が初球できっちり犠飛を放ち、広陵がついに同点に追いつく。失投を逃さない確実性と好走塁、そしてチャンスでの積極性。広陵らしい野球で試合を振り出しに戻した。

同点に追いついてもらった高尾はさらに乗っていく。海星打線も粘って食らいつくのだが、一向に甘いボールが来ない。初戦は社の好投手・高橋の乱れたスキに付け込んで見事に攻略したが、この日の高尾は付け入るスキをなかなか見せてくれない。

序盤の海星ペースから、徐々に流れは広陵へ。7回裏、7番中尾が2打席連続のヒットで出塁。犠打失敗で一瞬嫌な流れを感じるが、9番松下がエラーの汚名返上とばかりにレフトへ見事な流し打ちを見せる。ここで先ほど3塁打の1番田上はストレートを二遊間へ鋭くはじき返すと、これをセカンドが後逸してしまい、2塁ランナーが生還。ヒットと記録してもよさそうな痛烈な当たりだったが、何か広陵の押せ押せの空気に海星が受けに回ってしまったように見えた場面だった。

しかし、海星もその後、捕手・田川が好送球で広陵の盗塁を防ぐと、2番手でマウンドに上がった高野も渾身の投球で3番真鍋を三振に取る。逆転されても、その後の守りで踏ん張る、非常にいいチームだと感じた。

ただ、この試合は中盤から調子を上げた高尾の投球に尽きるだろう。8,9回と四球でランナーこそ出したものの、それも厳しくコースを突いた結果。ヒットになりそうな甘いボールがほとんど来ない。昨夏から好投手を攻略してきた海星打線を6回からは無安打に抑える完ぺきな投球。155球の熱投で逆転勝ちを呼び込み、広陵が2010年以来の選抜ベスト8進出を決めた。

まとめ

広陵はミスから先制される苦しい展開となったが、じわじわと追い上げてひっくり返す地力の高さを見せた。海星の左腕・吉田もいい投球を見せていたが、中盤以降に甘く入ったボールを逃さず、しかも長打にする打撃はさすがであった。3番真鍋という「核」を封じられても9安打3得点を挙げたところに広陵打線の底力を感じさせた。

また、なんといっても素晴らしいのはエース高尾の投球だ。初戦の完封勝利より、この試合の後半戦の投球の方が、より凄みを感じさせた。球威・スピード・コントロールとどれをとっても申し分なく、海星打線としてはファウルで粘っても粘っても打てるボールが来ない印象だっただろう。まだ左腕・倉重も控えるが、高尾が絶対的な柱になり始めているのは中井監督にとってもうれしい収穫のはずだ。4度目の選抜制覇へ向けて視界良好となる、2回戦の戦いぶりであった。

一方、敗れた海星も素晴らしい試合をしたが、この日は相手エースを褒めるしかない状況だった。やはり、全国クラスの好投手が相手だとそうは打てるものではない。また、投手陣も持ち味を発揮し、吉田が打たせて取る投球で試合を作れば、リリーフの高野も渾身の速球で3番真鍋を三振に切って取った。敗れはしたものの投打に自分たちのやれることを出し切っての敗戦であり、海星野球の強さを見せた戦いぶりであった。

2023年選抜3回戦予想 広陵vs海星 | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

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