2023年選手権準々決勝予想 仙台育英vs花巻東

2023年

2023年選手権準々決勝

仙台育英vs花巻東

49%    51%

〇19-9   浦和学院   〇4-1    宇部鴻城

〇8-2     聖光学院   〇2-1  クラーク国際

〇4-3     履正社    〇5-2    智辯学園

優勝旗を狙う東北勢同士の一騎打ち。ともに豊富な投手陣と強力打線を持ち、実力はほぼ互角と言えるだろう。

 

仙台育英は150キロ近い速球を持つ高橋・湯田・仁田の3本柱に加えて、2年生左腕の田中も成長。潤沢な投手陣で継投しているため、疲労の色もそこまで濃くないのは大きな強みだ。中でも中心となるのは湯田と高橋の2人。湯田が主に試合を作り、終盤で高橋が締めるのが勝利のパターンとなっている。球威のある湯田、伸びのある高橋といずれもボールの威力は抜群であり、彼らから連打を浴びせるのは容易ではない。初戦の浦和学院戦で痛打を浴びた反省も2回戦以降でしっかり活かせている。ただ、ショート山田をはじめとしてやや守備陣が乱れているのは気がかりだ。

対する花巻東打線は、大会に入って好調を維持している。得点数こそ3試合で11点と多くはないが、久慈・熊谷の1,2番コンビがかき回し、注目のスラッガー佐々木麟、主砲の北條、好調な5番千葉といずれも打率4割以上を誇る中軸に回って得点をたたき出す。もともとチームカラーとして徹底されている走塁力は仙台育英の上を行く印象があり、相手守備陣の乱れがあれば容赦なく得点に結びつけるだろう。佐々木麟も大きなあたりを狙わず、センターから逆方向へつなぐ打撃でヒットを量産しており、こういう時の方が、相手にとっては怖い印象だ。仙台育英投手陣といえど、この打線を抑えきるのは容易ではない。

 

一方、花巻東投手陣は本格派ぞろいの仙台育英投手陣と異なり、タイプの違う投手をそろえて勝負する。初戦でフォークボールを武器に好投した2年生右腕・小松、左打者の外へ逃げるスライダーで勝負できる左腕・葛西、右サイドから冷静な投球を見せる中屋敷と、エース北條以外に次々と頼れる投手が台頭している。これだけタイプが異なる投手を1試合の中でつながれると相手打線にとってはかなり厄介だ。佐々木洋監督がスターターに誰を持ってくるのか注目だが、おそらくは投手陣総動員で抑えにかかるだろう。

対する仙台育英打線は、3試合で31得点と活発だが、仙台育英・小室や履正社の増田・福田のW左腕を相手にやや打線が抑え込まれる場面もあった。しかし、そんな中でも橋本・山田の1,2番コンビのかき回しや3回戦で決勝点を挙げた6番尾形のスクイズのように、機動力と小技で得点するすべを持っている。これが須江監督率いる、今の仙台育英の大きな強みと言えるだろう。また、甲子園に来てから主砲の斎藤陽に当たりが戻ってきているのも心強い。7番鈴木に一発が飛び出したように下位までパワーのある打者が並んでおり、力勝負の展開に持ち込むことができれば、仙台育英のペーストなるだろう。

 

経験値では仙台育英が上なのは間違いない。ただ、力の仙台育英に対し、「柔よく剛を制して勝つ」力を花巻東は十二分に持っている。ここはあえて花巻東やや有利と予想したい。スピード自慢の仙台育英投手陣に対してかき回す攻撃ができるし、強打の仙台育英打線を封じる、多彩な投手陣用もある。

この1年間同地区の強豪として、仙台育英をじっと観察し、対戦した時の倒し方をイメージしてきたはずだ。かつて、江川卓の作新学院が銚子商に、春夏連覇を狙った2003年度の広陵が岩国に敗れたように、同地区に行く手を阻まれて優勝できなかったケースは多々ある。連覇を狙う仙台育英は確かに強いが、今回それを止められるとしたら、花巻東なのではないだろうか。優勝へ向けて避けられない東北の強豪同士のマッチアップが今幕を開ける。

 

主なOB

仙台育英…大越基(ダイエー)、金村暁(日本ハム)、佐藤由規(ヤクルト)、佐藤世那(オリックス)、平沢大河(ロッテ)

花巻東…菊池雄星(ブルージェイズ)、大谷翔平(エンゼルス)、岸里亮佑(日本ハム)、高橋樹也(広島)、千葉耕太(楽天)

 

宮城  岩手

春  0勝   1勝

夏  1勝   1勝

計    1勝     2勝

対戦成績は、岩手の2勝1敗。すべてのカードに花巻東が絡んでいる。

2009年度は春夏連続で花巻東が宮城勢と対戦した。選抜準決勝ではエース菊池雄星が利府の1番遠藤の先制2ランを浴び、大会での無失点記録がストップする。しかし、中盤以降、徐々に花巻東が利府の技巧派左腕・塚本をとらえだし、菊池自らのタイムリーもあって逆転に成功、岩手勢として初の決勝進出を果たした。また、同年夏は3回戦で東北高校と対戦。菊池が自己最速となる154キロをマークし、東北打線を封じて、ベスト8進出を果たした。

一方、2015年夏も同じく3回戦で今度は仙台育英と花巻東が対戦した。仙台育英はエース佐藤世(オリックス)、主砲・郡司(日本ハム)を中心に前年秋の神宮を制しており、V候補の筆頭格。対する花巻東もエース左腕・高橋樹(広島)を中心に力のあるチームで、2回戦では敦賀気比のエース平沼(西武)を攻略し、同校の春夏連覇を阻止していた。

試合は、両チームともにエースをリリーフに回し、序盤から点の取り合いとなる。仙台育英は佐々木良、紀伊の5,6番を中心に強打で得点を重ねれば、花巻東は相手のミスを無安打で得点に結びつけるしたたかさで対抗。拮抗した試合展開は4-3のまま最終回を迎え、花巻東は連打で佐藤世を追い詰める。しかし、最後は1アウト1,2塁からセカンドゴロ併殺でゲームセット。仙台育英が、当時の東北勢初優勝の夢を背負って、ベスト8へコマを進めた。

これまで東北勢のレベルアップに貢献してきた東北の強豪同士。仙台育英が初優勝を成し遂げ、また違った状況での戦いとなるが、互いに意識する関係なのは間違いないだろう。今回、勝利するのはどちらになるか、、、

思い出名勝負

2009年選手権3回戦

東北

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1
0 0 1 1 1 0 0 1 × 4

花巻東

 

東北    佐藤朔→清原

花巻東   菊池

2009年選抜でエース菊池雄星(ブルージェイズ)を擁して、岩手勢として初の決勝進出を果たした花巻東。あと少しで逃した優勝旗を狙い、夏も甲子園に乗り込んできた。1,2回戦を勝利して迎えた3回戦。相手は同じ東北地区で、それまで地区を牽引する役を担ってきた、宮城の雄・東北高校であった。

花巻東は150キロを超す速球と高速スライダーを持つ、菊池雄星の実力はもちろん、徹底した走塁力をベースにした攻撃力も定評があった。しかし、春の東北大会で八戸西に2-7と完敗を喫し、佐々木洋監督から「エース依存体質」の改善を問われることとなる。これにナインは奮起し、核弾頭の柏葉、小柄ながら粘り強いつなぎ役・佐藤涼、キャプテン川村、主砲・猿川、勝負強い横倉、千葉と個性あふれる面々が力を発揮して春夏連続の甲子園出場をつかんだ。

迎えた甲子園初戦は、花巻東が選抜決勝で敗れた清峰を倒してきた長崎日大が相手だった。長崎勢へのリベンジを期し、満を持して臨んだ試合で菊池がまさかの3被弾を喫する。しかし、ここでこそエース依存脱却を証明すべきと、ナインが奮起。8回裏には選抜以降の成長株である、2年生佐々木が相手エース大瀬良(広島)から満塁の走者を一掃する逆転タイムリーを放ち、8-5で初戦をものにした。その後、2回戦では調子を取り戻した菊池雄星が横浜隼人打線を封じ、4-1と快勝。東北勢初優勝へ着実に歩を進めていた。

一方、佐々木主(マリナーズ)、斉藤隆(ドジャース)、ダルビッシュ有(パドレス)の3人のメジャーリーガーなど錚々たる顔ぶれを輩出してきた東北高校。ダルビッシュを擁した、2003年から2004年の2年間は、まさに高校球界の中心的存在であった。しかし、2006年の宮城大会決勝で引き分け再試合の末にライバル仙台育英に敗れると、時代は再び仙台育英のものとなる。2006年から3年連続で仙台育英の甲子園行きを許し、悔しい思いをしてきた。

しかし、2009年度はエース佐藤朔を中心に攻守にそつのないチームに仕上がり、宮城大会決勝では4-1と快勝。穂積・木村と前年夏の甲子園を経験した投手を擁する育英に対し、佐藤朔が安定感ある投球で勝利を収めた。甲子園では初戦でエース岡(ロッテ)を擁する倉敷商に対して、2回に集中打で6点を挙げて早々と試合の大勢を決め、8-2と快勝。2回戦では、関谷-吉田(ともにロッテ)のバッテリーを中心に、V候補の筆頭格だった日大三にも3-2と競り勝ち、久々の大舞台でしぶとい勝ち上がりを見せて、3回戦へ進んできた。

 

試合前の予想はやはり花巻東が誘有利。花巻東の機動力野球を東北がどう封じるか、そして絶対的エース菊池雄星を勝負強い東北打線がどう捕まえるかに注目が集まっていた。

東北打線は1,2回と菊池雄星からヒットを放ち、一方、花巻東は2イニング続けて佐藤朔の前に3者凡退。試合の入りは東北がやや押し気味の展開となる。しかし、3回裏、ひょんなところから試合の流れは花巻東に傾く。

3回裏、先頭の7番佐々木の3塁ゴロが失策を誘い、犠打で1アウトランナー2塁。ここで9番山田の打席で走者がスタートを切ると、守備シフトで2塁ベースに酔っていたショートをあざ笑うかのように打球は三遊間を破る。花巻東らしい野球で先制点を奪い、試合のペースをつかむ。

続く4回裏には、死球で出塁した2番佐藤涼が犠打で二進すると、果敢に3塁へスチール。これが成功してチャンスを広げると、2アウト後に5番横倉の打球が三遊間深い位置への内野安打となり、大きな追加点を奪う。序盤、スピード感あふれる花巻東の野球の前にどこか東北守備陣が押されているような雰囲気があった。

さらに5回裏、今度は先ほど先制打の9番山田が1塁へのバントヒットで出塁。2塁への盗塁が悪送球を誘って3塁へ進むと、2番佐藤涼のタイムリー内野安打で大きな3点目を手にする。エース菊池雄星を援護すべく磨いてきた機動力野球が、夏の大舞台で着実に発揮できていた。

反撃したい東北の6回表、2アウトランナーなしから今大会大当たりの5番伊藤航が2塁打で出塁。続く代打の桐生が高めに浮いたスライダーを逃さずにライトへ流し打ち、1点を返す。しかし、この日の菊池雄星は、故障に苦しんだこの大会の中では最も調子がよく、ストレートはたびたび150キロオーバーを記録。左打者の外へ逃げるスライダーも武器に、その後は淡々と東北打線を封じ込んでいく。

8回裏に女房役・千葉のタイムリーで1点を追加した花巻東は、最終回ももちろんエースがマウンドへ。9回に来ても最速154キロをたたき出すという余力を見せつけた左腕は、勝負強い東北打線を5安打1失点で完投。東北勢対決を制し、春夏連続での8強入りを決めた。

 

しかし、その後、花巻東はエース菊池雄星が初戦の走塁が原因で生じた脇腹の痛みが悪化。明豊との激闘は何とか制したものの、準決勝の中京大中京戦は1-11と大敗を喫した。ただ、春夏連続で4つの白星を挙げたこの年の戦いを境に、岩手勢のイメージは一新される。それまで抽選会で対戦が決まると、相手から拍手が起きる屈辱もあった岩手県だが、花巻東と盛岡大付の2強を中心にぐんぐんレベルがアップ。今や野球後進県のイメージなど全くなく、大谷翔平の活躍もあって、日本で最も注目される都道府県の一つとなっている。

一方、東北高校はその後、ライバル仙台育英の躍進もあり、頻繁に甲子園へ出場することはできていない。しかし、自由な校風、「個」の力をつぶさずに伸ばす教育方針で、若生監督時代からの東北高校の良さは残っており、今も仙台育英と並んで、県内屈指の強豪として君臨している。2023年選抜では好投手・ハッブスを擁して久々の選抜出場を達成。OB含めた関係者を喜ばせ、建材をアピールした。

花巻東vs長崎日大 2009年夏 | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

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