2024年選抜1回戦
創志学園vs別海
54% 46%
名将・門馬監督が就任し、着実にその野球が浸透しつつある常連校・創志学園に最東端からの出場となる21世紀枠・別海が挑む構図だ。
創志学園の強みは何といっても左右の好投手の存在だろう。左スリークオーターから多彩な変化球とキレのある速球を投じる山口はストライクゾーンの横幅と緩急で勝負でき、右の長身の中野は最速140キロ台後半の速球にカーブ、フォークを交え、縦の攻め方ができる。全く持ち味の違う2人が完投能力もあり、継投も可能というのは指揮官にとってはこの上なく戦いやすいだろう。強肩でリードもさえる捕手・後藤を中心に守りも堅く、中国大会での失点は4試合でわずかに3だ。
対する別海打線は秋の戦いではやや課題が残る内容であった。そんな中で7番の中道が当たっていたのは好材料。本来は中軸を打つ力のある打者がこの打順にいることで、たまったランナーを返すことができる。打力を補うべく機動力にも磨きをかけており、1番波岡、2番影山を中心に積極的に足を使対ところだろう。スクイズなど小技も駆使しながらなんとか3点以上を目指して攻撃していきたい。
その打力でのビハインドをかわせるとすれば、エース堺の投球だろう。長身のサイド右腕という特徴を生かし、独特の角度から繰り出すキレのあるボールを内外角に配する。コントロールで崩れる心配がないため、試合を作る能力には定評がある。持ち味のスライダーを活かすためにも、打者の左右を問わずにいかにインサイドを強気についていけるかが重要になるだろう。他にも立蔵、金澤と投手はいるが、本戦では堺と心中になりそうだ。
対する創志学園打線は、門馬監督の指導の下、初回から高い集中力で相手守備陣に襲い掛かる。その攻撃を体現する1番亀谷は思い切りのいいスイングと卓越した選球眼で、突破口を開く。彼に代表されるように各打者がしっかりボールを見極めて打つべきボールにスイングをかけるため、相手投手は徐々に逃げ道がなくなっていく。チーム打率は3割2厘だが、数字以上の圧を感じる打線に仕上がっている。
両チームともに投手力には定評があるだけに、ロースコアの接戦が予想されるが、打力では創志学園に分があるだけに、別海としては一度セーフティリードを奪われると苦しい。前半で先行する展開か、小差で終盤まで食らいつく流れになれば面白い試合となりそうだ。
主なOB
創志学園…高田萌生(楽天)、難波侑平(日本ハム)、石原貴規(広島)、西純矢(阪神)、草加勝(中日)
別海…徳井健太(平成ノブシコブシ)
岡山 北海道
春 1勝 1勝
夏 5勝 1勝
計 6勝 2勝
対戦成績は春は五分の星だが、夏は岡山勢が好相性となっている。
2011年の選抜では2年生エース玉熊を擁する北海と当時創部間もない創志学園が対戦。創志学園は全員が1年生での出場であり、野山主将が選手宣誓を行うなど、注目度が高かった。地力で上回る北海に先制を許すも、創志学園は堅守を武器に渡り合い、試合は1-1のまま終盤に突入。最後は北海が4番川越のホームランで勝ち越し、玉熊の打たせて取る投球で逃げ切ったが、創志学園も健闘を見せ、引き締まった好ゲームであった。
一方、1998年の夏は岡山城東と駒大岩見沢が対戦。2年前の選抜で4強入りと旋風を巻き起こしていた岡山城東は2年生エース中野を中心に、進学校らしいクレバーな野球で「ヒグマ打線」の駒大岩見沢打線をかわしていた。しかし、5-1のリードで迎えた最終回に駒大岩見沢打線が爆発。坂地のホームランなど長打攻勢で一気に1点差まで迫る。最後は中野が踏ん張って1点差で逃げ切ったが、改めて野球は最後までわからないことを感じさせる好ゲームであった。
好相性の岡山勢が勝つか、北海道勢の巻き返しか、楽しみなカードだ。
思い出名勝負
2003年夏1回戦
降雨ノーゲーム
倉敷工
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |||||
1 | 7 | 0 | 0 | 8 |
駒大苫小牧
倉敷工
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 1 | 2 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 5 |
0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
駒大苫小牧
倉敷工 陶山
駒大苫小牧 白石→鈴木
2003年夏の甲子園1回戦、「倉敷工vs駒大苫小牧」の試合は雨に翻弄され、涙に濡れた試合であるとともに、翌年以降の駒大苫小牧の躍進の大きなエネルギーになった試合としても知られている。
駒大苫小牧は、駒澤大学出身の香田監督が就任して以降、着実に力をつけ、南北海道での上位常連となっていった。社会人野球で北海道勢初優勝を果たした大昭和製紙北海道・我喜屋監督(のちに興南で春夏連覇)に教えを請い、「雪を言い訳にしない」せず、「全力疾走とカバーリング」を徹底して2001年についに甲子園初出場を果たす。初戦で松山商に6-7と惜敗したが、4強入りした強豪と接戦を演じ、手ごたえも得ていた。
そして、2003年は秋の北海道大会を制して選抜に出場。初戦で藤代に惜敗したが、その悔しさをばねにさらに練習を重ねたナインは、エース白石を中心とした分厚い投手陣と小さなスラッガー若狭を軸とした強力打線で春夏連続の甲子園出場を果たした。
その新興勢力・駒大苫小牧が初戦で引きあてた相手は岡山の伝統校・倉敷工。過去幾度も甲子園に出場していたチームであり、この夏も好右腕・陶山と粘り強い打線でしぶとく勝ち上がってきた。岡山大会決勝では倉敷高校との「倉敷対決」を10-8で制し、7年ぶりの出場権を獲得。陶山はスライダーの調子がいい時は手が付けられないほどの安定感がある。
そして、2003年8月8日、運命の試合が幕を開けた。試合前に天候の崩れが予想された中、試合開始から駒大苫小牧打線が陶山をとらえる。コントロールに苦しむ右腕に対し、鍛え上げた北国の打線が火を噴き、2回に一挙7得点の猛攻で8-0と大量リード。エース白石も重い速球を武器に好投を見せ、駒大苫小牧の甲子園初勝利は目の前まで迫っていた。
ところが、4回に雨が激しくなると、大会運営本部は降雨コールドノーゲームを決定。8点をリードしたチームにとってはあまりにも無情な宣告であった。宿舎へ帰ると、駒大苫小牧ナインは「明日は2回戦のつもりで戦おう」とお互いを鼓舞。必死で切り替えようとし、翌日の試合へと気持ちを作り直した。
翌日、前日とは打って変わって、快晴の中で駒大苫小牧vs倉敷工の「第2試合」が幕を開けた。
1回表、倉敷工は2アウトから3番松本がたたきつける打撃で内野安打を奪取。続く4番渡部もエンドランを成功させて、ヒットで続き、前日1安打に抑えられた白石を攻める。その後、満塁まで攻め込みながら得点こそ挙げられたなかったものの、「前日とは違う」という雰囲気は球場に確実に存在していた。
そして、その雰囲気を確信に変えていったのが、倉敷工のエース陶山。前日は全く自分の実力を発揮できなかったが、「一度死んだ身」のこの日は素晴らしい投球を見せる。あれだけコントロールに苦しんだ右腕が、この日はストレート、スライダーともにコーナーにビタビタ決まり、初回の駒大苫小牧打線を3者凡退に。スコアは0-0だったが、明らかに立場が入れ替わったことを感じさせるスタートだった。
すると、2回表、倉敷工のしぶとい打線が白石をとらえる。1アウトから8番萩原が右方向への打撃でライトへ痛打。これを犠打で二進させると、続く1番西野がアウトコースのスライダーを素直にセンターに打ち返し、萩原がホームへと帰ってくる。両チームにとって是が非でも欲しかった先制点。この日は倉敷工がものにした。
勢いに乗る「KURAKO」は3回表、やや動揺の見える白石から1アウト後に4番渡部が死球を受ける。ここは手堅い倉敷工だけに犠打もあるかと思われたが、なんと渡部はスチールを敢行。駒大苫小牧が本来やりたかったような野球でチャンスを拡大すると、続く5番須田は甘く入ったスライダーを完ぺきにとらえ、レフトオーバーのタイムリー2塁打で2点目を挙げる。さらに6番清水がヒットでつないで1、3塁となると、2アウト後に捕手・糸屋の1塁けん制が悪送球となって、3塁ランナーがホームイン。大きな意味を持つ3点目が入った。
しかし、3点差になったことで少し開き直れたのか、直後に駒大苫小牧打線が反撃を見せる。もともと激戦の南北海道を圧倒的に勝ち抜いただけに、攻撃力は高い。先頭の8番糸屋が死球で出ると、犠打で二進後に2番桑原のタイムリーでまず1点。陶山の決め球のスライダーが甘く入ったところを逃さなかった。さらに続く3番石川の3塁線へのゴロが3塁手の悪送球を誘ってもう1点。序盤でビハインドを1点とし、まだまだわからないと思わせる展開になる。
ただ、ここから倉敷工のエース陶山が粘る。力のある速球とスライダーを低めに集め、駒大苫小牧打線になかなかヒットを許さない。のちに社会人野球のJFE西日本でも活躍した実力派右腕に「切り替えの時」を与えたがために、目の覚めるような快投で流れを倉敷工に呼び込んでいく。4回表には3番松本のタイムリー2塁打が、6回表には2番大森の絶妙なスクイズが飛び出し、大技小技でじわじわと点差が広がる。駒大苫小牧は2年生左腕の鈴木に継投していたが、その2年生バッテリーを揺さぶるような攻撃で5点目をたたき出した。
3点差のまま試合は終盤へ。そうはいっても、まだまだひっくり返る点差だ。しかし、6回裏には3番石川のヒットと4番若狭の四球でチャンスを得ながら重盗失敗などで得点ならず。駒大苫小牧サイドからやや焦りを感じる内容である。
それでも、7回裏には7番桑島、8番糸屋の2年生コンビが連打を放ち、2アウト後に1番原田が死球を受けて2アウトながら満塁のビッグチャンスを手にする。さすがの陶山も疲れが見え始めていた。ここで打席には2番桑原。一打同点もありうる場面だったが、ここで桑原の二遊間へたたきつけた打球はショート渡部のグラブに収まり、直接2塁を踏んで6-3の併殺に。昨日を思い起こさせるような雨も降り始めていたが、この日は、大事なところで駒大苫小牧にツキが味方しなかった。
駒大苫小牧は7回から9回まで鈴木がパーフェクトリリーフを見せ、終盤は完全に押し気味で試合を進めていたが、8回にも併殺でチャンスをものにできない。結局、最後まで自分のリズムを見失わなかった陶山が、駒大苫小牧打線の終盤の反撃をしのぎ切り、倉敷工が5-2で7年前に続いて初戦突破を果たした。
この勝利で勢いに乗った倉敷工は2回戦でも春の四国王者・今治西に4-3で逆転勝ち。好投手・豊嶋を一気の集中打で崩し、改めて地力の高さを見せつけた。その後も、甲子園に姿を現し、2009年の選抜開幕戦では金光大阪を相手に11-10の死闘を制して、サヨナラ勝ち。持ち前の粘りと勝負強さで再び甲子園の観衆を沸かせた。
一方、敗れた駒大苫小牧にとってはあまりにも悔しい結果となった。しかし、この試合に出場した6人の2年生が主役となったチームは、強力打線の鵡川や好投手・木興(ロッテ)を擁する北海道栄といった同じ室蘭地区のライバルとの熾烈な戦いを制し、2年連続の夏出場を果たす。そして、個膵炎初戦となった2回戦の試合前には、2003年度の3年生からの手紙を渡され、主将・佐々木が読み上げて、皆涙を流したのは有名なエピソードである。
改めて勝利を誓ったナインは、佐世保実を7-3と下し、念願の甲子園初勝利を達成。そこから日大三、横浜と言ったV候補を次々なぎ倒し、甲子園へ鮮烈な「駒大苫小牧時代」へと突入していくのである。
【駒大苫小牧 vs 倉敷工(再試合)⚾HDフル動画】第85回全国高校野球選手権大会(平成15年)1回戦「敗色濃厚が降雨再試合で一転」 (youtube.com)
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