2024年選抜1回戦 阿南光vs豊川(2日目第1試合)

2024年

大会2日目第1試合

阿南光

1 2 3 4 5 6 7 8 9
2 3 0 0 0 0 0 0 6 11
0 0 0 0 0 0 1 2 1 4

豊川

 

阿南光   吉岡

豊川    鈴木爽→林→平野→中西→柴田

好投手・吉岡と豊川の強力打線の対決が注目された試合は、阿南光打線が序盤から豊川投手陣を攻略。相手のミスや四死球に付け込んで着実に得点を挙げ、エースを援護した。吉岡モイセエフに一発を浴びたものの、余裕を持って完投。同校の甲子園初勝利を手にした。

試合

豊川は左腕・鈴木爽、阿南光はもちろんエースの吉岡が先発のマウンドに上がった。好投手・吉岡を相手に先制点はやりたくない豊川。昨秋は投手陣にやや不安を抱えていただけに一冬超えてどうかというところだったが、不安が現実となる。

1回表、先頭の1番福嶋が真ん中寄り高めの速球をセンターにはじき返す。続く2番西村に対し、高橋監督は強攻策を指示。次が好打者の3番福田ということもあり、犠打もありうる場面だが、この作戦に西村が応える。フルカウントからこれも高めの速球を左中間に打ち返すと、前進してきたセンターが捕球しきれずに後逸。打球が転々とする間に2,3塁となり、続く3番福田の内野ゴロで福嶋がホームインし、阿南光が先制に成功する。

さらに、続く4番住江もショート深い位置へのゴロを打ち、西村もホームイン。この場面は、豊川守備陣は前進守備でよかったような気もしたが、結果的に阿南光は内野ゴロ2本で2点を手にする。逆に鈴木爽は手元で動く球質が持ち味だが、その持ち味を出す前に捕まってしまった。

その裏、注目の右腕・吉岡がマウンドへ。二段モーションの独特のフォームから角度の効いた速球を投じる。立ち上がり、ややボールが高めに浮きがちだったが、球威・スピードとも十分であり、豊川打線にコンタクトを許さない。2アウトからは3番モイセエフとの勝負になったが、高めの速球を見逃し三振。タイミングがあっていない感じがあったが、立ち上がりでエースが阿南光のペースを決定づける。

これ以上の失点は避けたい豊川だが、2回表、2アウトランナーなしから四死球2つと投手前のアンラッキーな内野安打で満塁のピンチを迎える。ここで長谷川監督は投手を鈴木爽から林優大に交代。鈴木爽はいいボールも来始めていたが、ツキがなかった。林優大は右サイドからの癖球が持ち味だったが、これに対し、2番西村はインサイドを突いたボールがやや甘く入るのを逃さない。シュート回転する蒸すかしいボールであったが、シャープに振りぬくと、打球はレフトオーバーの走者一掃打に。2回で阿南光が早くも5点のリードを奪う。

豊川としては一番避けたかった展開に。神宮で高知高校を相手に4点差を跳ね返しているが、甲子園ではまた別物だ。阿南光のエース吉岡に余裕を与えてしまい、快速球と落ちる変化球の「縦の攻め」の前に三振の山を築かれる。対照的に阿南光はセーフティリードを奪ったため、ランナーを出しながらも落ち着いた守りを見せ、吉岡は6回まで無失点。豊川の各打者もさすがの粘りを見せて、9球粘って四球を選んだりと圧力をかけるが、自分のボールが決まれば打たれないという吉岡の自信を感じる投球だった。

しかし、豊川の投手陣も2番手の林優大が代わり端こそ打たれたものの、その後はストライクゾーンを広く使った持ち味を発揮。3番手の平野も好投し、5-0のまま試合は終盤戦へ入る。

迎えた7回裏、それまで1安打の豊川打線がついに吉岡をとらえ始める。先頭の4番中村が真ん中寄りのストレートをライト前に引っ張って打ち返し、出塁。続く5番北田には強攻策をとると、初球のストレートを今度は逆方向へ流し打ち、1,2塁とチャンスを広げる。6番鈴木貫の痛烈なセンター返しは吉岡の好守に阻まれて打ち取られるが、7番山本が四球を選んで満塁に。2アウト後、代打・三浦がストレートを逆方向へはじき返し、3塁ランナーが生還。しかし、続く2塁ランナーの突入はレフト福嶋が好返球で阻止し、最少失点でしのぐ。

継投でかわし続ける豊川は8回から期待の長身右腕・中西をマウンドへ。しかし、いきなり先頭の吉岡にヒットを許すと、犠打失策と死球で満塁の大ピンチを招く。ただ、ここから開きなおったか、インサイドを強気に突く投球で阿南光の各打者を次々打ち取る。最後は巧打の1番福嶋を打ち取り、豊川が流れをぐっと引き寄せた。

この流れに乗って、8回裏、ついにあの男が目を覚ます。先頭の1番林優翔がセンターへの痛烈なヒットを放つと、1アウト後に打席には注目の強打者、モイセエフ・ニキータ。カウント2-0から高めに浮いた変化球をとらえた打球はライトスタンドへライナーで飛び込む2ランホームラン!5-3と一気に点差は2点につまり、それまで押されっぱなしだった豊川へ確実に流れが傾き始める。

しかし、最終回へ望みをつなぎたい9回表に阿南光打線が中西を攻略する。高めに浮いたボールを2番西村、3番福田がとらえ、連打。阿南光打線の振りがみな鋭い。ここで4番住江は変化球をとらえ、打球はショートを急襲。ランナーが前を走った不運もあり、捕球しきれなかったが、やはり打球が鋭かった。さらに5番吉岡が四球でつなぐと、6番矢藤にもタイムリーが飛び出し、7点目。さらに、ボーク・スクイズ・押し出し・犠飛と実にそつのない攻撃で阿南光が得点を積み重ね、気づけばスコアボードに「6」が刻まれていた。

豊川もその裏、3安打を集め、1番林優翔のタイムリーで1点を返すが、吉岡は余裕を失わない。最後は、先ほどホームランを打たれたモイセエフからきっちり三振を奪い、ゲームセット。阿南光が投打で豊川を圧倒し、2回戦進出を決めた。

まとめ

阿南光としては、序盤に相手投手陣を攻略して、エースにセーフティリードをプレゼントする理想の展開となった。各打者のスイング、特に上位打線の振りが非常にシャープであり、新基準のバットであることを忘れさせるような打球が続いた。

投げてはエース吉岡が豊川の強力打線から11奪三振の好投。ストレートに関してはいい意味で力が抜けて投げており、まだまだ球速は出るが、抑えている印象だ。それでも回転数・回転軸が素晴らしく、初速と終速の差が少ない、しかも角度のあるボールになっている。また、試合中に相手打者を観察する冷静さも光った。やはり、この本格派右腕を打ち崩すのは容易ではない。大会屈指の好右腕とシャープな打線。大会初勝利を挙げた四国の新顔が台風の目となるか。

対する豊川は序盤の攻防で自分たちの良さを出しづらくなってしまったか。先発の鈴木爽も決して悪いボールばかりではなかったが、守備の不運もあり、相手に傾いた流れを引き戻しきれなかった。持ち前の強力打線も、悠々と投げる吉岡に6回まで1安打。モイセエフの一発など、終盤の打撃はさすがの内容であったが、やはり点差と残りイニングを考えると厳しいものがあった。東海大会を制しているだけに、実力があるのは誰もが認めるところ。この試合での教訓を夏にどう生かすか、これからの豊川の戦いに注目したい。

【センバツ開幕戦 豊川 vs 阿南光 全打席完全ハイライト】 注目の対決!大会屈指の好投手 擁する阿南光!大会屈指の強打者擁する豊川 !2024.3.19阪神甲子園球場 (youtube.com)

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