2年生エース同士の好勝負
2009年の選抜は初戦で神宮大会のベスト4がすべて姿を消す波乱の展開に。そんな中で、前評判は高くなかったものの、2年生の好投手をエースに擁する2チームが初戦で激突した。
南陽工は前年秋の中国大会で準優勝し、2006年以来3年ぶりの選抜出場。2年生エース岩本(阪神)は重いストレートとフォークボールを武器とする本格派で、「津田2世」の呼び声高い期待の右腕だった。打線は上位の竹重、中川、国弘を中心に勝負強い打者が並び、チームは本気で全国制覇を狙って甲子園へと乗り込んできた。
対する前橋商はエース野口や主力打者の後藤(オリックス)、箱田がともに2年生の若いチーム。野口は162㎝と小柄な体格からキレのあるボールを投げる好左腕で、前年秋は守り勝つ野球で関東4強の座をつかんだ。3番の後藤は走攻守3拍子揃った好選手であり、まだまだ若い面々ながら上位を狙う手ごたえを感じていた。
4番の活躍で流れを取り戻し、接戦を制す
2009年選抜1回戦
南陽工
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 4 |
1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 |
前橋商
南陽工 岩本
前橋商 野口
試合は序盤から前橋商が攻勢をかける。立ち上がりから硬さの見える南陽工・岩本に対して1回裏、先頭の後藤が死球で出塁すると、犠打で二進後に3番箱田のヒットと4番高野の犠飛で1点を先制する。
さらに2回裏には下位打線もつながり、ヒットで出た7番市村を送って9番野口がタイムリー3塁打を放って2-0。ストレート、変化球ともに高めに浮きがちな岩本に対して、前橋商の期待の2年生が躍動する。
反撃したい南陽工は3回表、打者2巡目に入って期待の上位打線が機能する。死球で出た2番竹重をランナーにおいて、3番中川、4番国弘が連続長打を放ってすぐさま同点に。やや球威にかけた野口のボールを中軸打者が引き付けてはじき返し、仕事を果たした。
追いつかれた前橋商だったが、まだ安定しない南陽工・岩本をとらえて3番箱田と4番高野の連打などで満塁のチャンスをつかむと、犠飛で1点を勝ち越す。しかし、バタバタしている印象の岩本から3イニング連続で得点は挙げたもののすべて1点どまり。これが中盤以降に響いてしまう。
再び1点を追うこととなった南陽工は5回表、センター後藤の失策からランナーを出すと、前の打席で2点タイムリーを放った4番国弘が再び野口のボールを引っ張ってタイムリーにし、同点に追いつく。国弘はこの日2本の同点タイムリーで計3打点を上げる活躍を見せた。
その後は、前橋商・野口、南陽工・岩本がともに立ち直り、試合は投手戦の様相を呈していく。特に岩本は4回以降、緊張も解けたのか、伸びやかな投球を取り戻し、前橋商打線にヒットは許すものの、勝負所で決定打を許さなかった。
こうなると、追いついた側がやや気持ちの面で優位だったか。9回表、南陽工は先頭の9番河村が2塁打で出塁。犠打で三進後に勝負強い2番竹重がきっちり犠飛を打ち上げて勝ち越し点をたたき出す。その裏、前橋商も2安打を放って追いすがるが、最後は期待の3番箱田が打ち取られてゲームセット。両2年生エース同士の緊迫した投げ合いを制して、南陽工が31年ぶりに選抜で凱歌を上げた。
まとめ
接戦を制した南陽工はその後、2回戦ではPL学園と対戦。9回まで相手エース中野に無安打無得点に抑え込まれながらも、0-0で延長戦に持ち込み、10回に4安打で勝ち越して8強入りを決めた。準々決勝で菊池雄星(マリナーズ)擁する花巻東に敗れたが、南陽工らしいしぶとく守り勝つ野球で31年ぶりにベスト8に進み、存在感を示した。
一方、敗れた前橋商は翌年、エース・野口、主砲・後藤を中心に1年間群馬県内を負けなしで通過。夏は見事代表権をつかんで甲子園行きを決めた。甲子園では野口が巧みなけん制も見せて、宇和島東の牛鬼打線をわずか3安打で完封。2回戦で北大津の強力打線の前に敗れはしたものの、全国の身長の低い選手に勇気を与える戦いぶりを見せた。
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