神宮王者を阻止した伝統校
2011年から2012年にかけて3季連続で甲子園準優勝を果たした八戸学院光星をはじめとして、2010年代に入って東北勢の力は勢いを増すばかりであった。白河の関越えが現実味を増してくる中で、2012年秋は仙台育英が前年の八戸学院光星に続いて東北勢として2年連続で優勝を達成。東北勢の悲願達成が成るか注目された大会だった。
仙台育英は前年秋の神宮大会を初制覇。安定感のある鈴木とストレートに魅力のある馬場(阪神)の本格派右腕2人を擁する投手陣は安定感があり、打線も2年生から4番を務める上林(ソフトバンク)を中心にパワフルであった。特に1番から熊谷(阪神)、菊名、長谷川、上林、水間、小林と、技も力も併せ持つ上位陣のラインアップは壮観で、どこからでも一発が飛び出しそうな迫力を秘めていた。
神宮では北照・大串や関西・児山(ヤクルト)といった好投手を攻略。甲子園でも前年秋の九州大会で3試合連続完封を達成した創成館・大野から小林のホームランなどで7点を奪い、好調なスタートを切った。しかし、3回戦では早稲田実・二山のうまい投球の前に打線が沈黙。終盤8回に4番上林の決勝打が飛び出して逆転勝利を飾ったが、やや打線の勢いに陰りも見えていた。
一方、高知も前年秋の四国大会を制覇。こちらも前年選抜出場のメンバーが残り、特に4番和田恋(巨人)は6割を超すハイアベレージでチームを引っ張り、大会でも屈指の好打者として注目された。しかし、本戦が始まると、先発の2年生酒井からエース坂本への継投策が光り、関西・常葉菊川と打力に自信を持つチームを相手にそれぞれ1失点で勝ち上がってきた。
また、ここまで7大会に出て1勝止まりだった島田監督にも変化が見え、ベンチ前で的確な指示を与えるなど落ち着いた采配を見せるようになってきていた。主砲・和田がやや当たりが出ていない不安はあったが、新しい高知の守り勝つ野球に手ごたえを感じ、準々決勝で満を持して王者へ挑戦権をたたきつけた。
必勝の継投策で強力打線を零封
2013年選抜準々決勝
高知
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
仙台育英
高知 酒井→坂本
仙台育英 鈴木→馬場
試合は序盤から投手戦の様相を呈する。仙台育英の鈴木が丁寧な投球で序盤3回を無失点で切り抜ければ、高知の先発・酒井はこの試合も最も好調な滑り出し。高めに伸びるストレートを武器に仙台育英の強力打線に真っ向勝負を挑み、初回のピンチを切り抜けてからはチャンスらしいチャンスすらつかませない。
こうなると先制点の占めるウェートが大きくなってくる中で、4回表に高知が貴重な得点をたたきだす。
4回表、1アウトから4番市川、5番股川が短長打で1アウト2,3塁とチャンスメーク。3番和田の調子が上がらない状況で決定的な仕事をしてきた4,5番が機能すると、ここで暴投と8番前田のタイムリー内野安打が飛び出し、2点を先制する。
仙台育英は昨秋から終盤の集中打に定評があり、序盤はスロースターターの様相を呈していた。そんな流れも相まってか、いつもは序盤5回で交代する酒井がこの日は6回までわずか被安打2ですいすいと投げ抜く。試合の中で対応を選手に任せる自主性の野球が持ち味の佐々木監督だったが、この日は結果としてそれが裏目に出た。
予定通り、7回から継投に入った高知だが、この日の坂本は3回戦ほどはボールにキレがない。仙台育英打線に再三痛打を放たれるが、それがことごとく野手の正面をつき、難を逃れる。
一方、仙台育英も6回から登板した馬場がストレート主体の投球で高知打線に追加点を許さず、試合は2-0のまま仙台育英の最後の攻撃を迎える。
9回裏、仙台育英は先頭の4番上林が痛烈なセンタ-前ヒットを放ち、5番水間も四球でつなぐ。同点のランナーまで出塁し、いよいよ反撃かと思われたが、続く6番小林の打球は痛烈な当たりのライトライナーに。さらに7番阿部はショートゴロ併殺となってゲームセット。最後の最後に攻めきれなかった仙台育英をしり目に高知が久々の4強入りを果たした。
まとめ
高知は続く準決勝で安楽(楽天)擁する済美とクロスゲームの末に2-3と敗戦。この試合を勝てば、神宮で敗れた浦和学院とのリベンジマッチだっただけに惜しまれる敗戦であった。個人的には安楽が連投になる済美よりも、継投で勝ち上がった高知の方がいい試合になったのではないかと今でも思うところはある(済美は1-17で敗戦)。それでも初戦敗退が続いていた高知にとっては久々に上位まで顔を出した大会となった。
対する仙台育英は投打ともに手ごたえを感じながらもまさかの完封負け。自慢の強力打線がここまで封じられるとは予想だにしていなかっただろう。夏も1回戦で浦和学院とのV候補対決を制しながら、続く2回戦で常総学院・飯田の巧みな投球術の前に4安打1得点に抑え込まれ、打線はみずものという言葉をかみしめさせられる一年となった。
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