2021年選抜1回戦
常総学院vs敦賀気比
51% 49%
選抜優勝経験のあるチーム同士の対戦。実力校同士のハイレベルな一騎打ちとなる。
常総学院は初出場時のエース島田監督(横浜)が監督に就任。初代エースの指導により、今年は強力Wエースで選抜に挑む。昨秋にエース格としてチームを牽引した秋本は右オーバースローから投げ下ろすストレートが、もう一人の右腕・大川は右スリークオーターからのシュート気味のストレートが武器。2人とも球威のあるボールを操る本格派で、昨秋打ち込まれたのは関東決勝の健大高崎戦くらいであった。大会でも屈指の陣容で挑む。
対する敦賀気比打線は昨秋はほとんどの試合で打線が爆発。2014年夏の3試合連続2桁得点や2019年夏の国学院久我山戦の猛攻のように、一度つながりだすと止まらない破壊力を秘める。1年生時から甲子園を経験した前川、大島のコンビは確実性と長打力を備えており、2019年の杉田(サイクル安打達成)と木下(広島)のコンビを彷彿とさせる。今年も敦賀気比の打線には要注意だ。
一方、敦賀気比のエースは左腕の竹松。昨秋は打者のインサイドを厳しくつく投球で40イニング以上を投げて、防御率0点台をマークした。細身の体ながら腕が長い投手らしい体格で、内海2世の呼び声も高い。2年生の上加世田も変化球の制球に優れた技巧派であり、2人ともスピードはそれほど目立たないが、味のある投球が光る。
対する常総学院の打線は大物うちこそいないものの、上位から下位まで切れ目がなく得点力は高い。3番三輪は広角に打ち分ける打撃でチャンスに強く、相手にとっては最も要警戒な打者だ。あとは常総学院らしい、走塁・小技を絡めた攻撃が増えてくればさらに得点力は増すはず。島田新監督が故・木内監督ばりの嫌らしい攻撃を見せられるか。
両チームとも投打にハイレベルだが、投手力で若干常総学院が上回るか。それでも両チームの差はほとんどなく、敦賀気比の持ち前のパワーがさく裂すれば一気にワンサイドに持っていく可能性もある。
主なOB
常総学院…仁志敏久(巨人)、金子誠(日本ハム)、内田靖人(楽天)、飯田大祐(オリックス)、宇草孔基(広島)
敦賀気比…東出輝裕(広島)、内海哲也(巨人)、吉田正尚(オリックス)、西川龍馬(広島)、平沼翔太(日本ハム)
茨城 福井
春 0勝 0勝
夏 3勝 0勝
計 3勝 0勝
対戦成績は夏のみで茨城勢の3勝負けなし。常総学院の記念すべき甲子園初白星は1987年夏の初戦。エース島田の好投で福井商を5-2と振り切って勝利を収めた。その後は沖縄水産・上原(中日)、尽誠学園・伊良部(ロッテ)、中京・木村(巨人)、東亜学園・川島(広島)とのちにプロ入りする投手を次々に攻略。決勝で春夏連覇したPL学園に敗れたものの、一気に強豪校の仲間入りを果たした。
思い出名勝負
2013年夏3回戦
常総学院
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 0 | 6 | 9 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 |
福井商
常総学院 飯田
福井商 長谷川→中道
常総学院は3季連続の甲子園出場。前年夏は桐光学園・松井(楽天)を終盤追い詰めるも捕まえきれず、同年選抜では濟々黌・大竹(ソフトバンク相手に9安打を放ちながらも要所を締められて完封された。ともに大会屈指の好左腕に封じられての敗戦となったが、この夏は4試合連続ホームランで決勝ではサヨナラ弾を放った4番・内田(楽天)とエース飯田の投打の柱を擁し、優勝を狙える戦力で乗り込んできた。
1回戦では北照の好左腕・大串から主砲・内田が先制3ランを放てば、エース飯田は吉田(オリックス)ら好投手を擁する打線を4安打完封。飯田は巧みなけん制でアウトを奪うなど、投手としての総合力の高さを見せた。2回戦は初戦で浦和学院とのV候補対決を制した仙台育英と激突。選抜優勝投手の小島(ロッテ)を攻略した大会屈指の強力打線を相手に飯田が「技」の投球で1失点完投。打線も鈴木・馬場(阪神)の仙台育英の誇る2枚看板を攻略し、4-1と快勝を収めた。選抜8強の2チームを立て続けに撃破し、ここ数年上位に顔を出せていなかった常総の復活の雰囲気が漂い始めていた。
対する福井商は2010年で永年チームを率いてきた北野監督が勇退。好投手と強打を旗印に、勝負どころでは手堅く犠打を絡めて得点を重ねる「炎」のチームは、米丸新監督にタクトがゆだねられた。2011年は初戦で作新学院に1-11と大敗を喫する苦い船出となったが、この年は好投手・中村を擁し、決勝では福井工大福井との死闘を8-7で制して2年ぶりの夏切符をつかんだ。
しかし、初戦は帯広大谷を相手に先行を許す苦しい展開に。持ち前の犠打を活かした攻撃で逆転したが、エース中村の投球がピリッとせず、むしろリリーフした長谷川の方がいい投球を見せた。すると、2回戦ではその長谷川が選抜8強の聖光学院戦に先発。140キロ台の速球を武器に力で押して、スラッガー園部(オリックス)を擁する強力打線を1失点で完投した。攻撃陣も犠打の後に2本のタイムリーが飛び出し、試合巧者ぶりを見せつけた。
1987年夏以来の対戦となった両校の顔合わせ。常総学院は2戦連続で強豪校を退け、しかも捕手も吉成と内田の2枚体制を敷くという充実ぶり。投攻守走に全くスキが見当たらなかった。これに対して福井商はなんとか得意の犠打を絡めた得点で先行し、常総を慌てさせたいところだ。
福井商は1回裏に願ってもないチャンスを迎える。1回裏にいきなり1番の山本が3塁打を放ち、無死3塁のビッグチャンス。福井商としてはスクイズをちらつかせながら強攻もできる場面だったが、飯田が変化球も交えた巧みな投球で福井商に伝家の宝刀を出させない。結局、2,3,4番をあっさり打ち取り、初回を0で切り抜ける。福井商にとってはなんとも痛い逸機だった。
ただ、序盤は福井商の長谷川も好投。伸びのある速球をアウトローに集め、序盤は強打者・巧打者揃いの常総打線を封じる。県大会では1イニングほどしか投げていない投手が甲子園でこれだけの投球を見せるのだから、やはり高校野球はわからないものだ。
だが、この長谷川の好投を崩したのは意外な男だった。5回表、9番眼龍が長谷川の抜けたストレートをとらえると、打球はレフトスタンドへ飛び込むソロホームランに。福井商が何としても欲しかった先制点を常総が豪快にかっさらう。これで勢いを得た常総は6回にも伸び盛りの2年生進藤のタイムリーが飛び出して2点目。長谷川のストレートにも徐々に慣れ始め、7回にも1点を奪う。
なんとか反撃したい福井商は7回裏、連続四死球に得意の犠打を絡め、林の内野ゴロの間に好走塁でホームを陥れる。福井商らしいうまい点の取り方だったが、この場面が序盤で見られていたらと悔やまれた。
最終回、常総学院は長谷川のボールを完全に攻略。3番進藤の2塁打に4番内田のホームランと自慢のストレートも変化球もとらえられては成す術なし。常総が豪快な野球で試合巧者の福井商を退け、久々にベスト8へと進出した。
常総はその後、準々決勝で前橋育英と激突。2点をリードして試合を優位に進めたが、最終回にエース飯田が足をつって降板するアクシデントに見舞われ、同点に追いつかれてしまう。結局、延長10回にサヨナラ負けを喫してよもやの敗戦。勝った前橋育英がそのまま勢いに乗って優勝しただけに悔やまれる守りとなった。ただ、それでも2003年の優勝以来、出場しても勝ちきれない流れが続いていたが、この大会で3勝を挙げ、完全に断ち切った印象であった。
一方、敗れた福井商としてはある程度やれることはやったうえでの力負けだったが、やはり初回のチャンスを活かせなかったことは悔やまれたか。それでも甲子園でブレークした長谷川の好投は素晴らしかった。その後は敦賀気比の隆盛もあって甲子園から遠ざかっており、県内屈指の伝統校が復活する日をファンは心待ちにしている。
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