2023年選手権1回戦 智辯学園vs英明(2日目第3試合)

2023年

大会2日目第3試合

英明

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 1 2 0 3 0 0 0 0 0 6
0 2 0 2 0 0 0 1 1 7

智辯学園

 

英明  下村→寿賀→下村→寿賀→下村→寿賀→下村→寿賀

智辯学園   田中→藤田→中山

強力打線を誇る近畿・四国の強豪同士の一戦は逆転に次ぐ逆転のシーソーゲームに。最終回に追いついた智辯学園が、延長10回にサヨナラスクイズを決め、薄氷を踏む思いで勝利を飾った。

試合

昨秋の四国王者であり、百々寿賀の中軸を中心に選抜でもその強打を実証している英明。そして、春季近畿大会で大阪桐蔭を下し、奈良大会タイ記録となる12ホームランを放っている智辯学園。ともに、大会でも上位クラスに入る強力打線を擁するチーム同士であり、打撃戦が予想された。

智辯学園の先発は2本柱の藤田中山ではなく、1年生右腕の田中。勢いのある速球を武器に立ち上がりから英明の左打者のインサイドを果敢に攻め、1回表を無失点で封じる。一方、選抜で智辯和歌山打線を翻弄した英明の先発・下村も持ち味の癖球を武器に智辯学園の注目の1番松本はレフトフライに打ち取るなど、無失点で立ち上がる。しかし、静かな展開は初回のみであった。

2回表、1アウトから5番大島が三遊間深い位置への内野安打で出塁。2アウト後に8番清家もヒットでつなぎ、2アウトながら1,2塁とチャンスを拡大する。1番鈴木や主軸の百々寿賀が怖い英明打線だが、下位打線がコンパクトに繋いでいけるのが強みでもある。ここで打撃もいい9番下村がこれまた基本に忠実な打撃でセンターへはじき返し、1点を先行する。この日は総力戦と思って、1年生の田中を頭に持ってきた智辯学園・小阪監督だったが、この回の英明の攻撃を見て英明打線には厳しいと判断したか、早くも次の回から投手をスイッチする。

しかし、近畿屈指の強力打線を誇る智辯学園も負けてはいない。その裏、4番池下がセンターへのヒットで出塁すると、5番川原崎には強攻策。下村の手元で動くボールを強くスイングすると、打球は右中間を真っ二つに破るタイムリー2塁打となり、同点に追いつく。さらに犠打でランナーを3塁に進めると、8番高良の犠飛で逆転。序盤から下村の投球に対して、強いライナー性の打球を放っており、バットの芯を外してポップフライを挙げさせる相手の術中に智辯学園ははまらない攻撃を見せる。

智辯学園は3回から藤田をマウンドへ。春以降、急成長を見せて先発の一角を担ってきた右腕だ。やや変則気味のフォームのスリークオーターだが、英明の左打者は明らかにタイミングが合っている。2番平見が内野安打で出塁すると、1アウト後に4番寿賀はインサイドよりのボールを痛烈にとらえてライト線を破り、すぐに同点に追いつく。さらに続く5番中浦にはすかさずスクイズを命じ、逆転。その後、藤田はランナー2人を出しながらもなんとか無失点でしのぐが、小阪監督藤田もこの回で厳しいと判断し、4回からエース中山を3番手で送る。試合前の想定より、かなり速いペースで後ろへつなぐこととなり、投手起用プランはかなり苦しいものとなった。

一方、英明の香川監督にとっても智辯学園の各打者の打球を見て、村一人で引っ張るのは厳しいと判断したか、3回裏から左腕・寿賀との細かい継投に入る。だが、智辯学園打線のしぶとい攻撃をかわし切れない。4回裏、先頭の6番知花が内野安打で出塁すると、死球・野選と英明サイドの乱れに乗じてチャンスを広げる。ここで9番西川は低めのスライダーをしっかりミートして三遊間を破り、まず同点。英明は寿賀を2度目のマウンドに送るが、1アウト後に山家がきっちり犠飛を打ち上げ、4回にして早くも「再々々逆転」を果たす。

これでリズムをつかみたい智辯学園だが、英明もすでに智辯学園の投手を2人交代させている。エース中山は140キロ台の速球を武器に、安定感はチーム1。しかし、オーソドックスなタイプであり、大会のビデオなどから英明も対策はばっちりだっただろう。1アウトから6番大島のヒットと四球などでチャンスメークすると、9番下村が第1打席に続いて、今度はライトへタイムリー。投手ながら本当に無理のない素直な打撃を見せる。技巧的なピッチングも含め、野球センスの塊のような選手だ。さらに香川大会で打率5割越えの1番鈴木が高めのストレートを左中間にはじき返すと、レフトが痛烈な打球を捕球しきれず。打球が転々とする間に2者が生還し、英明が再び試合をひっくり返す。

試合は英明の2点リードで終盤戦へ。スコアボードに「0」こそ刻まれるものの、両チームとも毎イニングスコアリングポジションにランナーが進み、息つく暇もない展開となる。智辯学園はロングリリーフとなった中山がなんとか踏ん張り、英明はベンチが懸命な継投策で智辯学園打線の攻撃のリズムをかわす。強力打線を誇るチーム同士らしい激しい攻め合いとなった。英明としては6回から8回までの3イニングで5安打2四球を上げ、何度も突き放すチャンスがあったのだが、盗塁失敗などもあり、なかなか追加点が奪えなかった。これが結果的に智辯学園に生き返るスキを与えることとなる。

8回裏、智辯学園はこの日3度目の登板となる下村から9番西川が死球で出塁。すかさず香川監督寿賀をマウンドに送るが、1番松本に四球を与えてしまう。さらに、犠打と死球で1アウト満塁となると、4番池下の打席で暴投が飛び出し、智辯学園が1点差に迫る。池下はスライダーで空振り三振に取り、後続も打ち取ってなんとかしのぐが、英明サイドの受けるプレッシャーも半端なものではなかっただろう。強打の左打者が居並ぶ智辯学園打線に対して、寿賀の決め球であるスライダーでなんとか持ちこたえている印象だった。

そして、試合は1点差のまま最終回へ。9回表も中山がピンチをしのいだ智辯学園は9回裏、先頭の6番知花がアウトコース寄りの速球を右中間へはじき返し、会心の3塁打を放つ。序盤から下村に対して、一貫して福く強い打球をはじき返してきたことが、英明ベンチの思惑を外したといえるだろう。1アウト後に8番高良、9番西川が四球を選んで満塁とすると、英明はこれまで通り、左打者の1番松本に対して左腕・寿賀を送る。これまで気がはやって低めのスライダーに手を出してきた松本だったが、土壇場で冷静に選球。高めに浮いたスライダーを見送り、押し出しの四球を選んでついに同点に追いついた。

同点を許した寿賀だが、続く2番山家、3番中山を打ち取り、試合は延長戦へ突入する。寿賀は2番手ながら先発の下村を大きく上回る投球数を投げ、チームを支えた。

タイブレークの延長10回表、英明はその4番寿賀からの攻撃。上位打線で有り、もともと積極的な攻撃の光る英明は強攻を選択。しかし、結果はファーストへのライナーとなり、チャンス拡大はならない。このあたりは、徐々に流れが智辯学園に傾き始めていたか。後続も中山が打ち取り、無失点で10回表をしのいだ。

智辯学園としても3番手の中山の投球数が120球に到達。小阪監督としても早めに勝負を決めたかっただろう。10回裏、4番池下に犠打で送らせて1アウト2,3塁とサヨナラのチャンスを作る。続く打席には途中出場の5番谷口。初球のスライダーにはバットを止まらせ、ヒッティングの構えを見せたところで2球目にスクイズを敢行する。寿賀が懸命のグラブトスを見せるも、3塁ランナーが一足早く生還してゲームセット。互いに流れを何度も引き寄せあったシーソーゲームを制し、智辯学園がサヨナラ勝ちで2回戦進出を決めた。

まとめ

智辯学園としては英明打線に序盤から投手陣が打ち込まれ、本当に苦しい内容の試合であった。3番手で登板したエース中山は7イニングを投げて11安打4四死球。実に15人のランナーを出し、1イニング平均2人以上の走者を背負っていたこととなる。それでも丁寧に丁寧にコースを突き、逆転を許した後は、英明打線に決定的な追加点を与えなかった。この中山の粘りが勝利を呼び込んだのは誰の目にも明らかだろう。まさに投打の中心としてチームを牽引して見せた。

一方、打線は英明の左腕・寿賀のスライダーには苦労したが、やはり序盤から下村のサイドからの癖球を攻略できたことは大きかった。長打力が注目されるが、低く強い打球を続けられるところが、このチームの強みだろう。1番松本はヒットこそ出なかったものの、最終回は満塁から落ち着いて選球し、貴重な四球をつかみ取った。今後の戦いを見据えたときにキーマンが仕事を果たしたのは大きいだろう。ディフェンス面では課題を残したV候補だが、何はともあれ、まずは大きな大きな1勝をつかんで、初戦突破を果たした。

対する英明も、17安打を放った打線、下村寿賀の小刻みな継投と、らしい野球を見せて観衆を沸かせた。惜しむらくは後半5イニングで残塁の山を築いてしまったことだが、ここは踏ん張った智辯・中山をほめるべきだろう。6番大島が4安打、9番下村が3安打と上位から下位まで本当に切れ目のない打線で智辯学園投手陣を苦しめた。過去甲子園でなかなか勝ちきれない印象が強かった英明。結果的には初戦敗退に終わったが、今年の春夏連続出場で大きなステップアップを果たしたのは間違いない。父から指揮を引き継いだ若き指揮官の香川監督のもと、英明が県内で高松商の強力な対抗馬になっていきそうだ。

8月7日 🅵🆄🅻🅻【智弁学園 vs 英明】 ハイライト&ホームラン | 第105回全国高校野球選手権記念大会2023 – YouTube

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