大会10日目第1試合
作新学院
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 3 |
0 | 1 | 7 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | × | 12 |
山梨学院
作新学院 川又→市川→福冨→磯
山梨学院 林→中田
関東ダービーとなった準々決勝第1試合は、山梨学院が猛打で作新学院を圧倒。エース林も好投を見せ、投打ががっちりかみ合って、1991年の市川以来となる山梨勢4強入りを決めた。
試合
山梨学院はエース林、作新学院は左腕・川又が先発。それぞれ、これまでの試合と同じ投手起用を見せた。
山梨学院は初回、1番髙森に痛烈な打球を打たれるも、ショート進藤の好プレーでアウトに打ち取る。3回戦の最終回から続いているかのような作新の勢いをまずは食い止める。この回、作新の上位打線を3人で退け、無失点で立ち上がる。相変わらず、コントロールもボールの回転数も素晴らしい。
一方、作新の先発・川又は初回から2つの四球を与える不安定な立ち上がり。元来、打たせて散るタイプの投手だが、やや警戒してボールが先行してしまった印象だった。また、1番徳弘が盗塁を成功させるなど、山梨学院の機動力も作新バッテリーに圧力をかける。
是非とも先行したい作新は2回表、2アウトから6番塙がヒットを放つが、けん制でタッチアウトに。ここまで6人中4人が初球打ちと積極的な打撃で林に向かっていくが、やや前のめりが過ぎたか。2回を終えて林の球数はわずか14球。結果的に、6人で攻撃を片付けられる。
すると、2回裏、山梨学院が川又を捕まえる。先頭の6番進藤がアウトコースの速球を痛烈に引っ張って、3塁線を破る2塁打で出塁。球威を完全に上回るスイングで長打を放つ。続く7番大森の犠打は失敗に終わるも、3回戦でもタイムリーを放った8番林がこれも高めの速球を引っ張って高々と打ち上げる。作新のレフト塙も左中間寄りの守備位置から懸命に追ったが、ボールはレフトポールの前でポトリと落ち、山梨学院が1点を先制する。
欲しかった先制点を奪われた作新。すぐに追いつきたいところだが、林の投球が素晴らしい。作新打線も狙い球を絞って積極的に振っていくが、林のコントロールミスの少ない投球に打たせて取られていく。逆に山梨学院バッテリーは、打っていく姿勢を利用するようにストライク先行の投球でリズムを作る。
強打でリズムをつかんできた作新だが、どうやらこれまでとは勝手が違うぞという展開。そんな中、先発・川又が3回戦からいよいよ調子を上げてきた山梨学院打線を抑えきれなくなる。3回裏、2番星野がライトへのヒットで出塁すると、3番岳原は8球粘って四球をもぎ取る。カーブにもチェンジアップにも目がついて言っており、川又は苦しい。ここで3回戦からの4番起用が当たっている高橋がアウトコースのチェンジアップをうまくセンターへ持っていき、山梨学院が2点目。しっかり呼び込んでの軽打は技巧派投手にとっては辛い一打だった。
さらに攻撃の手を緩めない山梨学院は続く打者の初球に重盗を敢行。これがまんまと決まると、1アウト後に6番進藤はランナー2,3塁からなんとヒットエンドランをかけ、ショートゴロとなる間に1点を追加する。山梨学院の自在でかつ粘り強い攻撃の前に、川又はここから5者連続の四死球で3者連続の押し出しを与えてしまう。この日は川又を粘って投げさせていた小針監督もついにここで継投を決断。しかし、2番手の市川からも、3番岳原がセンターへの2点タイムリーを放ち、この回決定的な7点が入って試合の大勢は決まった。
この回、川又は四死球を与えたとはいえ、決して悪いボールばかりではなかった。だからこそ、小針監督も続投させていたのだが、山梨学院の各打者の粘りと選球眼の良さが打ち取ることを許さなかった。2,3回戦と継投が苦しくなっていた作新学院だが、山梨学院の機動力も絡めた分厚い攻撃の前にこの日も、3回から継投に入ることとなった。
リードを広げた山梨学院は4回裏には6番進藤、7番大森、8番林と3者連続のタイムリーを放ち、さらに2点を追加。この試合14安打12得点と強打で作新学院を圧倒した。これまで甲子園にくると、打てずに苦しんできた山梨学院だが、ようやくその強打が花開くこととなった。
反撃したい作新学院は4回には4番齋藤のタイムリー、6回には1番髙森のホームランで得点を挙げる。作新学院らしい強打だったが、大量リードを武器に余裕を持った投球を見せるエース林はその強打に対しても、慌てることなく、自分のペースで投げ抜き、結局8回を投げて96球、3失点と好投。この日も無四死球と安定感抜群の投球で、試合を作った。
9回には3回戦に続いて2番手の右腕・中田が登板。作新学院も最後の意地を見せ、1,2塁のチャンスを作ったが、最後は7番上野が打ち取られてゲームセット。山梨学院が関東勢対決に12-3と圧勝し、初のベスト4進出を決めた。
まとめ
山梨学院はこの日は序盤の猛攻で早々と試合を決め、大勝を収めた。今大会初めての2桁得点とあって、強打がフォーカスされがちだが、3回の攻撃で見られたランナー2,3塁からのヒットエンドランや押し出しを奪った選球眼など、随所にただ打つだけでない、攻撃力の高さを見せた。強打の作新学院相手とあって、少々の得点差はあってないようなものだったが、さすがに1イニング7得点は試合を決めるに十分なものであった。
また、エース林も大量点をバックに好投。作新学院の早打ちにも助けられたが、8回までを100球以内で投げ抜き、理想的な投球で試合を作った。ストライク先行で、厳しいコースを突いていけるため、打たせて取る投球でリズムを作りやすい。ここまで4試合を通して、投げるたびに成長した姿を見せる林。強力打線を支えに、今大会の主役となっている右腕が、中一日を置いて準決勝の舞台へ挑む。
一方、敗れた作新学院は今大会は3試合で26失点と投手陣のやり繰りで非常に苦労した印象だった。強力打線をバックに打ち勝つ野球を見せ、ベスト8まで勝ち進んだのはさすがだったが、やはり好投手を相手にそう多くの得点は望めないため、ここから上は軸になる投手が必要になってくる。この日は厳しい現実を突きつけられる結果となった。
ただ、昨年夏の連続出場を国学院栃木に止められたところから奮起し、作新らしい野球で8強入りできたのは、復活に向けて大きな一歩になっただろう。やられっぱなしでは終われない、小針作新の戦いは夏へと続いていく。
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