2023年選抜2回戦
広陵vs二松学舎大付
52% 48%
2018年夏に続く両校の対戦。神宮準優勝の広陵に強打の二松学舎大付が挑む形となるか。ただ、2018年も前評判はやや広陵が上だったが。二松学舎大付が強打で流れを強奪した。今回もどちらが勝つかは簡単には読めないだろう。
広陵の投手陣は、右のエース高尾と左のエース倉重の2枚看板が軸。秋の大会を勝ち抜く中で左右の両輪がそれぞれ好投を見せ、育ってきたのは中井監督にとっても嬉しい収穫だった2人とも速球に角度があり、変化球との高低の攻めで打者を打ち取れる。リリーフ登板の多かった右腕・横川、速球派右腕の岡山も控えており、右の2枚看板だった昨年から層は厚くなっている。連戦を勝ち抜く構えは万全だ。
対する二松学舎大付打線は、昨夏1年生で甲子園のスタンドに放り込んだ4番片井を中心に今年も破壊力満点。各打者がしっかりバットを振り抜く伝統はしっかり継承されており、打力は大会出場校中でも上位に位置するだろう。片井は秋季大会でもホームランを量産したように、長打にできるツボを持っている。投手との二刀流を務める3番大矢も強打者であり、この2人の前にランナーをためると一気の大量点も期待できる。
一方、二松学舎大付の投手陣の中心は技巧派右腕のエース・重川と本格派右腕・大矢の右の2枚看板になりそうだ。市原監督としては、大矢を打撃に集中させたいため、重川がエースとして一本立ちできれば理想と言える。広陵の強力打線に対して、いかに内角を意識させた攻めができるかが重要だ。失点しても最少失点で抑えることを意識し、3~4点までに抑えられれば、二松学舎の勝利が近づいてくる。
対する広陵打線の顔は何といっても主砲の真鍋だろう。昨年から卓越した長打力を誇っていたが、より確実性と柔らかさが増した印象で、打者としての穴がなくなってきた。まともに勝負される場面が減ってもイライラすることなくチーム打撃に徹し、中軸として役割を全うする。周りを田上、田上、松下ら左の巧打者が並べ、つながりのある強力打線と言えるだろう。昨年、九国の好左腕・香西に翻弄された経験も糧に、本番に挑む。
投打のバランスと真鍋という「飛び道具」を擁する点で広陵がやや優位という予想にはなる。しかし、一度流れを失うと一気に試合が決まりだすのが野球の怖いところ。二松学舎としては自慢の強打で序盤から広陵に圧力をかけられれば、十分勝つ可能性はあるだろう。
主なOB
広陵…有原航平(レンジャーズ)、金本知憲(阪神)、小林誠司(巨人)、野村祐輔(広島)、佐野恵太(DeNA)
二松学舎大付…初芝清(ロッテ)、鈴木誠也(カブス)、大江竜聖(巨人)、秋広優人(巨人)、秋山正雲(ロッテ)
広島 東京
春 4勝 8勝
夏 4勝 5勝
計 8勝 13勝
対戦成績は春夏とも東京勢がリード。広陵は帝京(2007年選抜)、日大三(2010年選抜)、二松学舎大付(2018年夏)と、このところ東京勢に3連敗中であり、相性が悪い。
2015年夏は早稲田実と広島新庄が対戦。1年生スラッガー清宮(日本ハム)を擁する早稲田実が強打で広島新庄の2年生エース堀(日本ハム)に襲いかかれば、広島新庄は自慢の機動力で応酬する、激しい点の取り合いは、継投策で広島新庄の反撃をかわした早稲田実が7-6で勝利し、3回戦進出を決めた。
一方、1990年夏の準々決勝第1試合では、山陽と日大鶴ケ丘の初陣対決が実現した。初戦で9回2アウトからの5連打で奇跡的な逆転サヨナラ勝利を演じた山陽は、2年生エース川岡が手を怪我するアクシデントにもめげずに力投。日大鶴ケ丘の強力打線を封じ込めると、打線も好投手・難波をうまく攻めて4点を奪取し、4-2と快勝で4強まで駆け上がった。
強豪地区同士の対戦カード。どちらに凱歌が上がるか。
思い出名勝負
2010年選抜準決勝
広陵
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 4 | 9 |
2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 10 | × | 14 |
日大三
広陵 有原→上野→川崎
日大三 山崎→熊坂→吉永→吉沢
2010年選抜準決勝第1試合。ともにプロ注目のエースと強力打線を引っ提げた優勝候補同士が雨が降りしきる中で激突した。
広陵は3年ぶりの選抜出場。本格派右腕・有原(日本ハム)を擁し、中国大会4強ながら地力を高く評価されて選出された。有原はやや立ち投げのフォームから角度も威力も抜群の速球で相手打線をねじ伏せ、コーナーに決まった時はほとんどの打者が手が出ないようなボールであった。打線は、巧打者・福田(オリックス)をはじめとしてミート力の高い打者が並び、主砲には2年生スラッガー丸子がどっかり座る。非常に得点力の高い攻撃陣である。
初戦は立命館宇治との乱戦に。エース有原がまさかの不調であったが、4番丸子が3安打2打点の大活躍で援護し、7-6と接戦をものにする。続く2回戦は宮崎工の変則左腕・浜田(中日)に打線が苦戦するも、今度はエース有原が快投を見せ、2安打で完封。9回裏に2年生・三田のサヨナラ打が飛び出してベスト8へ進出した。続く準々決勝でも勢いに乗る三田が先制タイムリーを放つなど、前年夏の王者・中京大中京を圧倒。ほとんど流れを渡すことなく、4強の座を勝ち取ってみせた。
一方、日大三は夏春連続の甲子園出場。2006年に斎藤佑樹(日本ハム)の早稲田実に連続出場を止められて以降、なかなか出場できなかったが、2009年夏に関谷ー吉田(ともにロッテ)のバッテリーを中心に久々の夏の甲子園出場を果たした。その時のメンバーから左腕・山崎(オリックス)、ショート吉沢が残った新チームは高い打力を武器に秋の東京大会で4強に進出。優勝した帝京に4-5と競り負けたが、こちらも実力が高く評価され、逆転での選出を勝ち取った。
初戦は21世紀枠の山形中央が相手だったが、2年生左腕・横山(阪神)を平岩、吉沢の2本の2ランなどでKOし、大量14得点で一蹴。続く2回戦は向陽の技巧派右腕・藤田に苦戦するも、エース山崎の好投で3-1と競り勝つと、準々決勝では再び打線が爆発して10-0と圧勝。山崎は初戦の序盤は苦戦したが、それ以降は角度のある速球を武器にほとんど得点を許さず、安定感抜群の投球を見せていた。エースの好投と強打がかみあい、日大三が力強く4強まで勝ち上がってきた。
ともに左右の本格派エースをどう攻略するかが焦点である。機動力豊かな広陵と長打で圧倒する日大三というタイプの違う打線がお互いのエース攻略に挑んだ。
1回表、広陵は1番福田が巧打で出塁すると、続く2番豊田にはエンドランを指示。これがうまくはまり、ライトへのヒットでいきなり1,3塁とチャンスを迎える。3番三田死球で満塁となるも、4番丸子はうまく打ち取って投手ゴロ併殺。しかし、続く打者の場面で山崎が2者連続で暴投を投じてしまい、広陵が労せず2点を挙げる。雨の中でなかなか普段通りの制球がきかなくなってしまったか。
しかし、条件は広陵も同じ。1回裏、今度は日大三打線が有原を捕まえる。1アウトから2番荻原がエラーで出塁すると、2アウト後に4番横尾、5番山崎が連続タイムリー。2人とも有原の速球を力負けせずにしっかり振り抜き、タイムリーにつなげる。
相手のミスから得点を得た広陵と力で点を奪った日大三。同じ2点でも、後者のほうが手ごたえを得た得点だったか。日大三は3回裏、強打の2番荻原が左中間スタンドへのホームランを放ち、一歩前へ出る。ここまではどちらかと言えば日大三のムードであった。
ところが、雨の中で指のかかりがいまいちと判断したか、小倉監督はエース山崎を4回までであきらめ、5回から継投策に入る。5回はなんとか無失点で抑えたが、当時はまだ経験の浅い3番手の2年生右腕・吉永に対して、広陵打線も6回から反撃開始。先頭の6番藏舛の2塁打に四死球を絡めて満塁のチャンスを作ると、この日当たっている2番豊田が流し打ちで1,2塁間を破り、2者が生還。広陵らしいそつのない攻めで試合をひっくり返す。
逆転された日大三も6回裏に7番畔上のタイムリーですぐさま同点に追いつくも、エースがマウンドにいる広陵とすでに降板した日大三では安心感に差は出てしまっていただろう。7回表、広陵は4番丸子が吉永の速球を完ぺきにとらえると、打球はライトスタンドへ飛び込む勝ち越し弾となって、広陵が再び一歩前へ出る。2年生の主砲に待望の一発が飛び出し、7回裏も有原が日大三打線を無得点に封じる。決勝進出までいよいよあと2イニングである。
ところが、降りしきる雨はさらなるドラマを用意していた。8回裏、日大三は山崎のこの日4本目となる内野安打と四球で1アウト1,2塁とすると、続く代打・根岸は投手前にセーフティバント。これを足元がぬかるんだか、有原が悪送球してしまい、山崎が同点のホームを駆け抜ける。両者の立場が一瞬にして入れ替わった瞬間だった。
グランド上のボールが止まりやすく、投球のボールも滑る。そんな状況の中、追いついたものと追いつかれたものの勢いの差は歴然。ここから日大三打線がとめどなく広陵を飲み込んでいく。3番平岩の四球を挟んでなんと8連打が飛び出し、この回一挙10得点の猛攻。シーソーゲームが一転し、広陵にとってみれば、日大三の背中があっという間に見えなくなってしまった。
最終回、広陵も日大三の4番手・吉永の制球難に付け込み、4四球を選んで4点を返すが、やはり9点差はあまりにも重かった。最後は準々決勝まで大当たりの3番三田が三振に取られ、ゲームセット。強豪同士の好カードは思わぬ形で、日大三に軍配が上がった。
日大三はその後、決勝で島袋(ソフトバンク)擁する興南と再び激闘を演じる。延長12回まで及んだ死闘となったが、今度は日大三守備陣にミスが出てしまい、大量5失点で敗退。惜しくも準優勝に終わった。しかし、この悔しさをばねに成長した吉永、横尾、畔上らが成長し、翌年のチームはほぼ無双状態。選抜こそ九州国際大付に敗れたが、神宮・夏の甲子園・国体はすべて優勝し、日大三史上でも最強と呼べるチームへ成長した。
一方、広陵にとっては雨の中で気の毒な試合内容となってしまった。可能であれば、万全のグラウンドコンディションで試合をしてもらいたかったというのが率直な感想である。夏も連続出場を果たすが、初戦で2年生エース斎内(阪神)を擁する聖光学院に0-1と敗退。この年は興南が春夏連覇を果たすが、その打倒・興南を果たしうる有力チームだっただけに、もう少し見ていたかったというのが正直な感想であった。
【甲子園プロ対決】山﨑福也 vs 有原航平 [第82回選抜] – YouTube
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