2023年夏の甲子園大会前予想

2023年
  • 今年ほど予選から波乱や熱い戦いの多かった年もないのではないだろうか!?

甲子園常連校敗退のNEWSが相次ぎ、選抜決勝を戦った山梨学院や報徳学園、甲子園常連校の横浜、明徳義塾、智辯和歌山、大阪桐蔭などが次々に姿を消していった。情報化社会が進む中において、相手校を丸裸にできる分、これまでと違った「戦力差の詰め方」ができるようになってきたのかもしれない。

そんな中、鳥栖工・高知中央・浜松開誠館・共栄学園と「赤」を基調としたユニフォームで春夏通じて初出場を勝ちとったチームも多かった。戦国甲子園で「赤い旋風」が巻き起こるのかも注目だ。

例年と比較しても、各校の戦力差がかなり縮まった大会になることが予想される。それでは今大会の優勝予想を行っていきたい。

先頭集団

先頭集団には仙台育英、広陵、沖縄尚学、履正社、専大松戸、慶應義塾、智辯学園、日大三の8校を挙げたい。

その中でもまず中心となるのは、仙台育英、広陵、沖縄尚学の昨秋地区大会優勝組か。

先取り!! 2023ドラフト候補50人【高校生編】仙台育英高の「三本 ...

仙台育英は夏連覇を狙っての堂々の出陣となる。投手陣は高橋、湯田、仁田が昨夏の全国制覇を経験。全員が140キロ台後半の球威のあるストレートを持ち、彼らが他のチームに比べて疲労度少なく登板できるのは強みだ。また、その他にも左腕・田中、2年生の左腕・武藤といった新戦力も台頭しており、宮城大会では5試合で失点はわずかに2。この安定した投手力が仙台育英の最大の強みだろう。連戦が続く後半に従って、その優位性は増していく。

一方、秋から春にかけて課題とされてきた攻撃陣も夏にかけて強化が進んできた。俊足の1番橋本、何でもできる2番主将・山田のコンビは鉄板であり、ここに成長著しい3番湯浅、不動の4番斎藤陽が続く。優勝へ向けて最大の関門となった準々決勝の東北戦では、5番斎藤敏が満塁弾を放って勝負あり。最後の夏に向けて機動力だけでなく、打線の破壊力が増してきた。

選抜では報徳学園にタイブレークの末に逆転サヨナラ負けを喫したが、須江監督にとってはある意味チームの成長を促す分岐点の一つだったかもしれない。すでに1度優勝旗に手をかけている東北の雄が満を持して最後の夏に優勝旗を奪還しに行く。

センバツ2023 2回戦 広陵 打線好調で快勝 継投奏功 二松学舎大付 ...

広陵はこの1年間中国地区では負けなしの強さを誇ってきた。この戦績は、あの野村(広島)-小林(巨人)のバッテリーを擁して2007年に準優勝して以来の快挙である。こちらも投打に安定した戦力を持つ。

投手陣の軸は選抜でもすっかりおなじみの右腕・高尾、左腕・倉重の2枚看板。高尾は広陵の長い歴史の中でも、2年生エースとしては屈指のじつりょくを持つ右腕。球威・切れともに抜群のストレートと変化球を丹念に低めに集めだすと、攻略は容易ではない。左腕・倉重も角度のあるボールを武器に全国での実績は十分だ。さらに、1年生右腕・堀田や岡山など2人に次ぐ戦力も充実しており、夏の連戦に向けて不安は全くないといえるだろう。

打線も「広陵のボンズ」としておなじみの主砲・真鍋が最後の夏を迎える。逆方向へも長打を打てるスラッガーはいるだけで相手チームにとって圧力となる。小林、只石と組む中軸の破壊力は全国でも屈指だろう。ここに田上、谷本、松下といった走れて小技も絡められる選手が加わり、硬軟織り交ぜた攻撃で相手投手陣を呑み込んでいく。非常に得点力に長けた打線だ。

過去4度の準優勝を誇り、ここ2年は常に全国上位をにぎわせてきた中国地区屈指の強豪。そろそろ夏の頂点を極めてもいい頃だ。

沖縄尚学(沖縄)|第95回センバツ高校野球 | 毎日新聞

沖縄尚学は2014年以来の春夏連続出場。今年は高い地力を誇っており、悲願の夏全国制覇を狙う。

何と言っても大きいのは絶対的エース東恩納の存在だ。流れるような美しいフォームから繰り出す快速球はほれぼれするようなボールであり、アウトコースに来るとわかっていても相手打者はなかなか手が出なかった。沖縄大会では決勝の完封を含めて、すべての試合で失点なし。琉球のミスター0を打ち崩すのは容易ではない。本戦の課題があるとすれば、伊波など2番手以降の投手がいかにエースの負担を軽減できるかということになってくるだろう。

一方、打線は1番知花、4番仲田と軸になる右の強打者がいるのが強みだ。例年はスピード感あふれる野球が持ち味の沖縄尚学だが、今年度は秋から打力の高さが売りであった。しかし、その分、細かい攻撃の精度に課題を残し、選抜では東海大菅生に完封負けを喫したが、夏の沖縄大会ではその課題を解消。決勝のウェルネス戦では足を絡めたうまい攻めで1点ずつ積み重ねる、従来の沖縄尚学らしい試合で勝利を収めた。

夏はベスト8が最高成績となっている同校だが、今年は優勝を狙えるチャンスの年と言えそうだ。

 

ここに近畿・関東の強豪校も食い込んでくる。いずれも分厚い戦力を有し、優勝を勝ち取る力は十分だ。

センバツ】準優勝2度の履正社、甲子園初采配の多田監督は打倒 ...

履正社は夏の大阪大会で12連敗中だった大阪桐蔭をついに下し、優勝した2019年以来の出場となる。

投手陣の軸は福田・増田のW左腕になる。福田は制球にやや不安ありとの評だったが、大阪大会決勝ではストライク先行の投球で3安打完封。最速151キロを記録した速球は、大阪桐蔭の打者が狙っていても差し込まれるほどの威力を持つ。縦に落ちるスライダーも切れ味鋭く、適度に荒れるため、相手打線にとってはかなり打ちづらい投手だ。昨年からエース格の増田はコントロール・キレともに素晴らしく、高いレベルで安定した投手。福田とはまた違った持ち味で試合を作る。その他にも多くの好投手が控えており、全国屈指のディフェンス力を誇る。

打線は選抜で履正社らしくない拙攻が目立ち、初戦敗退を喫したが、もともと打力は過去の年代と比べても引けを取らないチームだ。昨年から好打者・光弘とともに打線を引っ張ってきた西が核弾頭の役目を果たし、主将・森沢とともに、今年の履正社の売りである機動力でかき回す。中軸の近沢・森田はいずれも一発放り込む力を有しており、破壊力と走力を兼ね備えた打線だ。正捕手の坂根が負傷交代してしまったが、代役の野上が大阪大会決勝で前田から2点タイムリーを放ち、改めて層の厚さを見せつけた。

履正社にとっては、夏に大阪桐蔭に勝つことはある意味では全国制覇よりも成し遂げたかった至上命題だっただろう。その難題を果たした今、全国の舞台でも怖いものなしで臨めるはずだ。

高校野球】奈良県代表の智辯学園が大阪桐蔭に勝利 「5人」の投手 ...

智辯学園は準優勝を果たした2021年以来、2年ぶりの出場。昨年は春夏とも出場を逃したが、この2年間でじっくりと力を蓄えて戻ってきた。

何といっても持ち味は超強力打線である。奈良大会タイ記録となる12ホームランを放った長打力は特筆もの。決勝で2ホームランの1番松本は、高田商の軟投派左腕の緩いボールに対してもしっかりため込んで打ち返す技術の高さを見せた。同じく1試合2発を放った8番高良など、上位から下位まで切れ目がなく、どこからでも長打で飛び出す末恐ろしい打線だ。下位を打つ川原崎のようにしぶとい打者も並んでおり、攻撃力は大会でもトップクラスだ。

一方、投手陣の軸は、サイド右腕の藤田と速球派右腕・中山の2人。藤田は春以降、急成長を見せた技巧派右腕。短いテークバックからキレのあるボールを内外に投げ分け、内野ゴロを打たせる。藤田の投球に目が慣れてきたところで、スピードボールに力がある中山が抑えるのが勝ちパターンだ。そのほかにも、長身右腕の青山や楢林など多くの投手が控えており、一人の力に頼らず、全員で失点を抑えていくスタイルだ。

2年前はあと一歩で逃した夏の優勝旗。今年はより攻撃的なスタイルで忘れ物を取りに行く。

慶應義塾高等学校野球部、大逆転勝利で夏の甲子園へ:[慶應義塾]

慶応義塾は2018年以来5年ぶりに春夏連続出場を達成。東海大相模・横浜と県内2強を正面から下した力は本物だ。

投手陣の軸はすっかりエースに成長した2年生右腕・小宅。もともとコントロールの良さが売りだったが、春先以降はスピード・球威ともにアップし、成長著しい。決勝の横浜戦こそ失点したものの、準決勝までは1点も許さずに勝ち抜いてきた。また、右サイドの松井は前年から経験豊富であり、技巧派という印象はなく、球威のあるボールで打者のバットを押し込んでいく。春まではどちらかというとウィークポイントに挙げられていた投手力が飛躍的に伸びてきている。

そして、新チーム結成時から売りだった打線は、やはり素晴らしい破壊力で神奈川の猛者たちをなぎ倒した。決勝で劇的な逆転3ランを放った渡辺千をはじめとして、甘いボールは一振りでスタンドに放り込める選手がずらりとそろっている。準決勝では、東海大相模から3ホームランで流れを強奪。例年なら相模や横浜がこのような攻撃をするのだが、今年はその「強打」のスタイルは慶応のものだ。さらに機動力をうまく生かして得点するすべはもともと有しており、硬軟織ませた攻撃で大量点をたたき出す。

選抜では仙台育英を追い詰めながらも無念のサヨナラ負け。しかし、2008年も選抜初戦敗退から夏はいっきに8強まで勝ち進んだ。今年も「陸の王者」が優勝戦線へ堂々と切り込んでいく。

高校野球「実力校ランキング・23年夏」千葉編 センバツ8強の本命 ...

専大松戸は2021年以来2年ぶりに春夏連続出場を達成。拓大紅陵、習志野と県内の強力なライバルを下し、見事に代表切符をつかみ取った。

投手陣は春まではプロ注目のエース平野が目立っていたが、この夏は梅沢、青野の両投手が急成長。特に青野は激戦となった拓大紅陵戦で延長タイブレークの試合の最終版を投げぬき、チームに劇的なサヨナラ勝ちを呼び込んだ。右サイドから球威のあるボールを内外に投げ込み、打者の左右を問わずにインコースをつけるのが強みだ。平野はこの夏はなかなか調子が上がらず、準決勝も途中降板となったが、エースの調子が出なくとも激戦の千葉を勝ち切れたのは投手陣の総合力がアップした証拠だろう。これで平野が復調すれば鬼に金棒だ。

一方、打線は決勝の習志野戦で劇的なサヨナラ勝ちを収めたように、粘り強さ・しぶとさは例年以上だ。もともと中軸の中山・吉田の右打者コンビはパンチ力があるが、この夏は決勝でサヨナラ打を含む猛打賞を記録した9番宮尾、同じく決勝で4安打と爆発した7番太田のように下位からでも攻撃の起点を作る場面が多かった。

2年前はエース深沢(DeNA)など強力投手陣を擁しながら、援護しきれずに敗退したが、この夏はその轍を踏むつもりはない。

高校野球西東京大会 決勝 [写真特集1/12] | 毎日新聞

日大三は2年連続の甲子園出場。三木新監督になってからは初めての甲子園であり、世代交代をうまく成功させた。

エースは右腕・安田。オーソドックスなタイプの投手だが、スタミナは抜群であり、チェンジアップを活かした緩急が持ち味だ。西東京大会では準々決勝からの三試合を全て完投勝ち。いずれも苦しい局面に立たされる場面があったが、決勝戦では6回の無死満塁のピンチを切り抜けたように、メンタル面の強さを兼ね備える。

そして、このエースを支える打線が素晴らしい破壊力を秘める。大会終盤に軟投派の投手相手にはやや苦戦したものの、準決勝では2番池内、3番二宮、6番針金の1イニング3ホームランで試合をひっくり返したように、甘いボールは確実にスタンドへ消えていく。特に3番二宮は強打に加えて俊足も兼ね備えた理想の中軸だ。歴代の先輩たちと比較しても、何ら見劣りしない打線と言える。

昨年は聖光学院のしたたかな戦いに屈して悔しい初戦敗退に終わっており、今年はその雪辱に燃える。三度目の夏制覇に向けて、舞台は整った。

追いかける常連組、経験者たち

トップ集団とほぼ差がなく追いかけるのは、全国各地の常連校だ。甲子園を知り尽くした面々が優勝争いに堂々と割って入る。

まずは東北地区の3校の常連組が仙台育英に続く2校目の東北勢優勝を目指す。

八戸学院光星がタイブレークを制し、夏の甲子園へ 高校野球青森 ...

八戸学院光星は2年連続の出場。例年の強力打線に加えて、投手陣も今年は充実する。

昨夏の甲子園を1年生で経験した2年生左腕・洗平は父も光星学院の名投手としてならしたサラブレッド。しなやかなフォームから繰り出すキレのあるボールで、準決勝ではライバルの青森山田打線を7安打で完封し、チームを勝利に導いた。決勝では3回で降板したが、同じく2年生の左腕・岡本が好リリーフ。こちらはMAX147キロのスピードボールを武器に八戸工大一打線の反撃をしのぎ切り、チームを2年連続の甲子園へ導いた。この強力左腕2枚看板が今年のチームの強みと言えるだろう。

一方の打線は今年も超強力。近距離バッティングで鍛え上げたスイング力で青森大会の好投手を打ち砕いた。中でも前年から中軸を担う3番中沢恒は長打力を確実性を兼ね備えた打線の「軸」。初回から少しでも甘いボールが来れば容赦なく外野深くまで打球を運んでいく。青森大会では決勝戦こそ八戸工大一・金淵の前に苦戦したものの、準決勝までは毎試合のように大量点をたたき出した。長谷・池田などパンチ力のある打撃陣が並ぶラインアップは壮観であり、攻撃力には相応の自信を持つ。

昨年は4点のリードを守り切れず、愛工大名電にサヨナラ負けを喫したが、当時の敗戦を経験した洗平・中沢恒を軸に今年は東北大会で仙台育英を倒している。上位進出、そして全国制覇を狙う戦力は十分そろっていると言えるだろう。

花巻東、4年ぶりの夏の甲子園 盛岡三に10-0 高校野球岩手 ...

花巻東は夏は2019年以来4年ぶりの出場。全国屈指のスラッガー佐々木麟を軸に悲願の全国制覇に挑む。

佐々木麟は1年生時から注目を集めたスラッガーだったが、そこから着実に実績を積み上げ、高校通算ホームランは140本に達した。長い高校野球の歴史においても、これほどの数字を積み上げた打者は過去に例がない。ややアッパー気味のスイングで高めの速球に対して課題があったが、ややグリップの位置を低くすることで自分の振りやすい形を作り出した。この絶対的な「軸」を千葉、熊谷など周りを固める好打者が活かす。全員が決して手を抜かない「走塁力」で相手投手陣に圧力をかけ、乱れだしたところを仕留めるのが理想形だ。

一方、投手陣は今年も継投策が主体。チーム一の速球を持つ小松を軸に中屋敷、北條、葛西、熊谷と左右でタイプも様々そろえた投手陣で失点の総数を抑えることができるのが強みだ。最も苦しい試合となった3回戦の水沢商戦も継投で相手に行きかけた流れを断ち切り、タイブレークでの勝利を呼び込んだ。4人の好投手を擁してベスト4まで勝ち上がった2013年のスタイルに近いかもしれない。

海の向こうで大先輩・大谷翔平(エンゼルス)が前人未到の活躍を続ける中、後輩たちもその勢いに乗って、これまで見たことのない景色を見に行くつもりだ。

聖光学院、延長10回、4点差を跳ね返し逆転V 学法石川下し連覇 ...

聖光学院は県大会決勝で奇跡的な逆転勝利を収めて、2年連続の甲子園へ。4強入りした昨年に続く上位進出を狙う。

投手陣は昨年の佐山のような絶対的な軸はいないが、枚数は豊富だ。左サイドの小室は制球力に長け、大会終盤は先発の役目も担った。リリーフには安定感のある安斎や右サイドの星名が控え、斎藤監督は試合の流れによって躊躇なく交代のカードを切る。思えば、昨年の甲子園でもV候補の日大三を相手に左腕・小林剛の先発でかく乱して、試合の流れを渡さなかった。一人で投げ切る投手はいないが、各々が自分の役割を理解し、次へつなでいく。

一方、打撃陣は1番高中、4番三好と昨年の甲子園を経験した打者が残っているのが最大の強みだろう。ともに好球を逃さない積極性を持ち、聖光学院らしい気迫あふれる攻めで流れを呼び込む。学法石川との決勝では4点を勝ち越された10回裏に、上位打線が連続押し出し死球をもらって追い上げると、4番三好に起死回生の同点タイムリーが飛び出して、同点に追いついて見せた。最後は何か、聖光学院サイドの気持ちに学法石川が完全に飲まれたような印象があった。今年は攻撃力がチーム最大の売りと言えそうだ。

日大三、横浜、敦賀気比とV経験校をことごとく沈めた昨年の甲子園から1年。そのイズムが確実に残っている今年の聖光学院も、優勝戦線をかき回す力は十二分に秘める。

 

さらに、昨年から今年にかけて甲子園を経験してきた猛者たちが、続々と登場。

浦和学院が2年ぶり夏の甲子園へ、花咲徳栄下す 高校野球埼玉大会 ...

浦和学院は県内のライバルである花咲徳栄を県大会決勝で圧倒し、2年ぶりの夏の甲子園をつかんだ。

投手陣は質量ともに全国でも屈指の陣容だ。成長著しい左腕・鈴木は躍動感のあるフォームから伸びのある速球を繰り出し、準々決勝・決勝と先発のマウンドを務めた。その後ろを、経験値の高い左腕の月野、伊藤や本格派右腕・渡辺がバックアップする。2021年夏、2022年春とエース宮城が先発しなかった試合で敗れた浦和学院だが、今年は誰が出てきてもエース格の力があり、そのぶん、森大監督も、その時の状態に応じて見極めて、継投策に走ることができそうだ。

そして、支える打線も強力。埼玉大会では7試合で66得点という強打ですべての試合をワンサイドゲームに持ち込んだ。昨年春に大舞台を経験した1番小林と3番喜屋武がチームを引っ張り、序盤から先制点をもたらす試合が多い。小林は俊足を生かした走塁で相手投手陣に神経を使わすことができ、動揺したところを喜屋武の強打で返すのが得点パターンだ。4番には将来有望な1年生の西田が座るが、5番の2年生三井が好調だったことで、強打の2人に囲まれて西田も伸び伸びと自分のスイングをすることができた。引っ張って1,3塁を作るケースが非常に多く、野球をよく知る選手たちだ。

昨年は決勝で聖望学園にまさかの完封負けを喫して代表の座に手が届かなかったが、その強い先輩たちを見て育った今年の学年がきっちり借りを返した。目指すはもちろん浦和学院としての夏初優勝だ。

全国高校野球 地方大会 星稜、連覇! 夏つかむ 遊学館に競り勝つ ...

星稜は2年連続の出場で、大敗した昨年のリベンジに燃える。

エースは右腕・武内。すでに2年生の選抜から甲子園を経験済みで、天理とのしびれる延長戦を制した肝っ玉の持ち主だ。あれから順調に成長を遂げ、今や北信越屈指の右腕に成長。最速149キロを誇る速球と多彩な変化球で相手を牛耳る。ただ石川大会では小松大谷戦、遊学館戦とともに4失点。ボールに力はあるだけに力んで高めに浮かないように注意したい。石川大会では佐宗、中山と左腕コンビが奮闘。結果として、投手陣の厚みが増したことは、甲子園へ向けて大きな収穫になっただろう。

援護する打線は上位打線が強力。昨年から主軸を務める3番斎賀を中心に1番から5番の上位打線だけで二桁に近いヒット数を記録した。やや上位偏重になっている嫌いはあるが、確実性と長打力を秘めた打者が並んでおり、彼らだけで試合を決める決定力を持つ。特に5番に座る武内は投球で不本意だった分、打撃で決定的な仕事を何度もやってのけた。星稜らしい手堅く力強い攻撃で投手陣を援護する。

昨年はエースのマーガードが序盤から打ち込まれてまさかの大敗を喫した。今年はそのリベンジを果たし、上位進出を狙う。

北陸が土壇場9回に逆転、丹生破り決勝進出 2023夏の高校野球福井 ...

北陸はハイレベルな福井大会を制して春夏連続の甲子園出場。選抜は初戦敗退に終わったが、全国上位の力を持つ。

春までは長身右腕の友廣がエースだったが、この夏は故障で調子を崩しがちであった。そんな中で、選抜で好投を見せた川上、ストッパーとしてチームに貢献した竹田や鳴海といった面々が成長。丹生戦、福井商業戦といずれも継投で戦い抜いたように、夏に来て分厚い投手層を作り上げた。ここに決勝戦で復調の兆しを見せた友廣が加われば、磐石の布陣となる。

打線は巧打の一番小南、攻守の要の三番平田と軸になる選手がきっちり、出る役割・返す役割を担った。二番に入った中浦は準々決勝で4安打を放つなど、打ってつなぐ二番として大量点に貢献した。逆方向にしぶとく返す打者が多く、逆転劇を見せた準決勝の最終回のように、追い詰められた場面でも各人がしっかり役割ん果たした。

甲子園の勝利は近大付を倒すなど、8強入りと快進撃を見せた1992年までさかのぼる。今年はその成績を並び、そして越える可能性を十分秘めたチームだ。

 

愛工大名電、大垣日大の東海地区の常連組ももちろん優勝候補の一角だ。

愛工大名電が夏の甲子園出場へ 中京大中京を破る 高校野球愛知 ...

愛工大名電は選抜出場の東邦や剛球左腕・東松を擁した享栄など強豪ひしめく愛知を勝ち抜き、愛知大会3連覇を成し遂げた。

エースの笹尾は目立つ球威・球速があるわけではないが、相手の打者を見ながら投球スタイルを変えることができる。いわゆる「勝てる投手」と言えるだろう。決勝の中京大中京戦では異様な雰囲気の中で1点差に迫ってくるライバル校を冷静な投球で退けた。苦戦を強いられた3回戦の大府戦では大泉、伊東の左右の両投手が踏ん張りを見せて、9回の逆転劇を演出した。際立ったボールを投げる投手はいなくとも、総合力で相手打線を封じに行く。

そして、愛知大会を勝ち抜く原動力となったのが強力打線の存在だ。特に準々決勝では全国的に注目されていた150キロ左腕の享栄・東松を序盤から圧倒。ベースよりに立つことで相手の制球難を引き出すあたりは、ここ数年の全国レベルでの経験値の差が出た印象だった。3番加藤は打率こそ高くないものの、長打率は7割を超え、4番寺田は勝負所での一打が光る。お得意の機動力も絡め、今年の名電打線にも大量点が期待できそうだ。

昨年は、長年苦しめられた夏の呪縛から解放される3勝を挙げ、新たな歴史を築いた愛知の強豪。今年は、伸び伸びとした戦いで再び全国を沸かせてくれそうだ。

高校野球:2年連続5度目の大垣日大、甲子園39勝の阪口慶三 ...

大垣日大は春夏連続の甲子園出場。御年79歳の名将・阪口監督に率いられ、投打にたくましさを増して帰ってきた。

エースは本格派右腕の山田。選抜では満塁弾の一発に泣いたが、その他の場面は沖縄尚学打線を封じ込めた。140キロ台中盤を記録する真っすぐは数字以上に伸びがあり、相手打線のバットを押し込む。取りたい場面で三振が奪えるのが何よりの強みだ。さらに、春から夏にかけて矢野や権田といった控え投手陣も成長しており、山田一人に頼らない陣容を作り上げてきた。また、阪口監督のお孫さんにあたる正捕手・高橋は卓越したインサイドワークで投手陣を牽引。強肩も武器に扇のかなめを務める。

そして、選抜で沖縄尚学・東恩納を追い込みながら、攻略しきれなかった打線は勝負強さを増して帰ってきた。決勝で起死回生の同点ホームランを放った1番高川をはじめとして、大事な場面で一本を出すことができ、特に3番米津、4番高橋、5番山田の中軸の3人はチーム総得点の半数以上の24打点をたたき出した。準々決勝からの3試合はいずれも苦しい試合となったが、この3連続の接戦を負けなかったことが、チームの成長の証と言えるだろう。

ここ数年は高い地力を誇りながらベスト8にあと一歩届かない大会が続いている大垣日大。今年のチームは久々に壁を突き破る力を持っている。

 

近畿勢の近江、社の2校も戦力は充実している。

全国高校野球 滋賀大会 近江、接戦制しV5 滋賀学園、1点差で涙 ...

近江は5大会連続の夏の甲子園出場。王者の風格を漂わせるブルー軍団が今年も甲子園に返ってくる。

投手陣は昨年のエース山田(西武)のような絶対的な柱は不在。今年は全員の力を結集して抑えに行く。左腕・河越は緩急自在の投球が光る左腕。緩いボールをうまく使って相手のタイミングを外しに行く。彼の投球になれたところで、速球派右腕の西山につなぎ、相手打線のタイミングをずらすのが必勝パターンだ。5試合で失策2と守備も安定しており、経験値の高いショート横田を中心に投手陣を盛り立てる。

打線は5試合で37得点と好調を維持。1番清谷、4番横田とキーになる打順に昨年からの経験sん芳賀いるのが強みだ。清谷はもはや芸術とも言える巧みなミート力で少々のボール球でもヒットにする技術を持つ。2番嶋村とのコンビで幾たびもチャンスを演出してきた。このランナーを返すのが4番横田。決して、長打を何本も打つタイプではないが、状況に応じた打撃でランナーを返す。決勝ではスクイズも決めるなど、今年の近江らしい「全員野球で勝つ」スタイルを体現する。チーム打率は4割3分5厘と優に4割を超し、破壊力は十分だ。

昨年は春夏ともにあと一歩のところまで迫りながら逃した優勝旗。今年こその思いはどこよりも強いはずだ。

社(兵庫)|第95回センバツ高校野球 | 毎日新聞

は3季連続の甲子園出場。激戦区の兵庫においてこの記録は偉業と言える。

投手陣はエース右腕・高橋と左腕・年綱の両輪に加えて、2年生右腕・福田も成長。さらに充実した陣容となった。高橋は好投手がそろう兵庫県内でも屈指の実力派右腕。キレのあるボールをコントロールよく投げ分けることができ、攻略は容易ではない。神戸国際大付のパワーあふれる打線を1失点完投したように、どんな相手にも自分の投球ができる。決勝で好リリーフを見せた福田もコントロールが安定しており、終盤の大事な場面では出番がありそうだ。この投手陣から大量点を挙げることは難しいだろう。

一方、打線は例年の手堅さに加えてパワーがある。4回戦で実現した神港学園との強豪対決では0-0で進んでいた7回から激しい打ち合いとなったが、2本のホームランが飛び出して8-5と打ち勝った。近年の社は昨夏の二松学舎大付のように「打って」局面を打開する力を持つ。俊足好打の1番山本、2番隈のコンビのように、社らしい細かく1点を刻んでいく攻撃も健在だ。決勝ではその真骨頂とも言える接戦で、「競り合いに強い」明石商にサヨナラ勝ちを収めた。社史上でも、過去最高クラスの攻撃力と言えるだろう。

選抜では海星のうまい野球の前に屈し、悔しい思いをした社ナイン。その雪辱を晴らす舞台がやってきた。

 

英明、九州国際大付、明豊の西日本の強豪も優勝戦線へ名乗りを上げる。

英明、耐え抜いた 智弁和歌山下し春初勝利 | 2023選抜高校野球 ...

英明は同校初の春夏連続出場。投打に充実し、選抜を超える快進撃を狙う。

投手陣の軸はTHE軟投派のエース下村。右サイドから繰り出す癖球を武器に、相手打線のバットの芯を外す。強振すればするほど術中にはまっていく彼の投球が舞台が上がれば上がるほど有効になるだろう。智辯和歌山打線を翻弄した選抜の投球がまたみられるか。また、野手兼任の清家、寿賀といった面々も控えており、継投も自在。選抜で登板した百々も登板可能であり、それぞれがタイプが異なるという、相手にとってはやりにくい投手陣だ。

一方、打線は決勝で13得点をたたき出したように破壊力を秘める。同選抜で逆転3ランを放った3番百々、決勝で一発を放った4番寿賀の強打の左コンビを中心に上位から下位まで切れ目がない。昨秋の神宮大会では選抜優勝投手の山梨学院・林を集中打であっという間に飲み込んでおり、つながりだすと止まらない魅力を持つ。打率5割以上打った、2年生1番鈴木が成長著しいのも心強い。あの作新学院戦のようなワクワクするシーソーゲームが夏もみられるか。

春は高松商とのアベック出場だったが、その高松商は県大会序盤で敗退し、波乱含みだった今年の香川大会。しかし、終わってみれば英明の強さが光った。1年間安定して結果を残してきた昨秋の四国王者が有終の美を飾りに行く。

九州国際大付が2年連続夏の甲子園へ、東筑を下す 高校野球福岡 ...

九州国際大付は2年連続の代表切符。全国屈指のスラッガー佐倉が最後の夏に戻ってくる。

しかし、今年の九州国際大付の強みは安定感ある2年生左腕・田端の存在だろう。伸びのある速球を活かした緩急が持ち味。福岡大会では、久留米商、大牟田、東筑と難敵ばかりを相手に1点差ゲームをしのぎ切った。投球の技術面もさることながら、追い詰められた場面で自分の投球ができるメンタル面も素晴らしい投手だ。右腕・下酔尾は投球イニング以上の三振を奪う本格派。田端の後を受けてもう一度試合を引き締め直す。

一方、打線は佐倉という軸はいるものの、昨年ほどの長打力があるわけではない。しかし、接戦でのしぶとさは昨年以上であり、特に9回裏の逆転サヨナラ勝ちを収めた久留米商戦ではつなぐ意識で奇跡的な勝利を呼び込んだ。佐倉はもともとパワーには定評のある打者だったが、最終学年になってより確実性が増した印象だ。佐倉が塁に出て、好調の5番白井が返すパターンも福岡大会では多かった。8番下川、9番田端のバッテリーコンビも打撃好調であり、今年はつながりで勝負できる。

昨年は大型チームで期待されながら春夏合わせて3勝と、もう一つナインとしては暴れたりない印象だった。今年は投打の軸を擁して、さらなる躍進を狙う。

明豊が大分商を破り、3年連続9回目の夏の甲子園 高校野球大分 ...

明豊は安定した投手力を武器に3年連続出場。こちらも近年の大分の盟主になりつつある。

投手陣の軸は中山、森山の右腕コンビだ。中山は決勝で大分商の強力打線をわずか2安打で完封。強力打線を誇る相手に真っ向勝負で封じ込めたピッチングは見事であった。昨夏の甲子園で好投を見せた右腕・森山も安定感があり、この2人からなかなか大量点は望めないだろう。守備陣は5試合で6失策の堅守の明豊からするとやや多かったかもしれないが、球際の強さは相変わらず。川崎監督に鍛え上げらえたディフェンス力で今年も勝負をかける。

一方、打線は選抜準優勝の一昨年、夏ベスト16入りした昨年と比較すると、長打力という点では、やや派手にかける印象だが、ワンチャンスを生かす勝負強さがある。準決勝では大分舞鶴の好左腕・糸永の投球の前に完封負け目前まで追い込まれたが、8回裏にたった一つの四球を機に、8番西川、1番高木の連続タイムリーで一気にひっくり返した。相手の失策や四死球に付け込んで攻め込むうまさは、今年の方が上かもしれない。チーム打率3割7分7厘と上位から下位までまんべんなくつながるのも強みだ。

ここ数年は常に上位をにぎわす大分の新・強豪。夏は2001年、2009年のベスト8が最高成績だが、今年はそのさらに上を目指す。。

好投手擁し、V争いへ

野球の勝敗を最も左右するのは投手力だろう。好投手を擁し、V争いにどう加わってくるか。

創成館が昨夏決勝のリベンジで5年ぶり甲子園!背番3の永本が粘投 ...

創成館は選抜出場の海星に競り勝って5年ぶりの選手権出場。豊富な投手陣を武器に上位をうかがう。

毎年、力のある投手がそろう創成館だが、準決勝・決勝を完投したエース永本はその歴史上でも屈指の好右腕と言えるだろう。気持ちのこもったボールで打者に向かっていき、インコースも容赦なく攻める。投手として最も大事なものを持っている。2試合とも終盤に一打同点あるいは逆転のピンチがあったが、決して引くことはなかった。エースナンバーを背負う福盛も永本に劣らない実力派右腕であり、創成館の守りの野球の中心となる。守備陣も5試合で3失策と安定しており、1試合平均の失点はわずか0.6だ。

一方、攻撃陣は5試合で17得点、打率は2割5分2厘とお世辞にも強打とは言えない。しかし、その分、相手のちょっとしたスキに付け込むうまさがあり、決勝戦では海星の失策に乗じて得た先制点が結局はものを言った。長打力はないが、犠打を駆使して確実につなぎ、1点ずつ刻んでいく。ある意味では最も創成館らしいスタイルのチームと言えるだろう。

守りのスタイルが確立している分、試合前から自分たちのやりたいことに「ぶれ」がないのが強み。稙田監督らしいチームで上位進出をうかがう。

東海大熊本星翔が九州学院を破り、5年ぶりの優勝 高校野球熊本 ...

東海大熊本星翔も5年ぶりの甲子園出場。エース玉木の成長で強豪ひしめく熊本大会を制した。

玉木は独特の右サイドから繰り出すキレのあるボールが持ち味。右打者に対して、インコースにもスライダーを投じることができ、簡単に打者の踏み込みを許さない。決勝では昨夏の甲子園8強メンバーが多く残る九州学院の強力打線をわずか3安打で完封して見せた。速球派右腕・内田も控えており、野手陣も5試合で2失策と堅守。彼らがディフェンス面から崩れる姿はなかなか想像できないさろう。

打線はチーム打率こそそこまで高くないものの、破壊力のある打者をそろえる。その筆頭が1番打者の百崎だ。1年生時に東海大相模から転校してきた経歴の持ち主だが、最後の夏にその打棒が爆発。長打力のあるトップバッターとして、試合開始からフルスイングで圧力をかける。2番川道、4番新美と上位陣は全員当たっており、彼らのもたらした先制点でエース玉木をうまく乗せて勝ち上がってきた。決勝では九州学院の好右腕・直江から2桁安打を放ったように、全国クラスの打力を持つ。

過去2度の出場はいずれも初戦敗退に終わっており、まず初勝利が目標。しかし、その先を見据えられるだけの戦力は間違いなく持っている。

徳島】徳島商が12年ぶり歓喜!エース森が投打で躍動し鳴門の連覇 ...

徳島商は大会屈指の剛腕・森煌を擁し、12年ぶりの代表切符を獲得。名門校が久々に全国の舞台へ帰ってくる。

森煌は最速149キロを誇る屈指の本格派。長身から繰り出す剛球は威力十分で、徳島大会では5試合で失点をわずか3に抑えた。剛球投手にありがちな制球難もなく、1試合平均の四死球は2とコントロールも安定しているのが強みだ。森影監督が1年生時から大事に育て上げた逸材がついに全国の舞台でベールを脱ぐ。懸念点があるとすれば、森煌以外の投手が徳島大会で登板していないこと。球数制限と酷暑のある甲子園で2番手以降をどうまかなうかは考えておかなくてはいけない。

援護する打線は5試合すべて4得点というある意味、珍しい(?)記録で徳島大会優勝を飾った。往年の強力打線で平成中期の甲子園を沸かせた姿とはやや異なるかもしれないが、上位から下位までまんべんなくつながり、得点能力は決して低くない。特に2番横手は打って走って大活躍。彼が攻撃の潤滑油となり、徳島商のスコアボードに得点をもたらした。エースが安定しているだけに、是が非でも先行する展開を作り出したいところだ。

近年は鳴門に完全に押され気味だったが、大黒柱を擁して、今年は久々の復活出場。全国に「TOKUSHO」健在をアピールしたい。

宇部鴻城が4年ぶり3回目の夏の甲子園へ 高校野球山口大会(朝日 ...

宇部鴻城は4年ぶりの全国切符。投打に充実し、初の8強入りを狙う。

エースは右サイドの浅田。躍動感あるフォームから伸びのあるボールを内外に投げ分け、大分大会3試合で失点をわずか1に抑えた。中でも決勝の南陽工戦の投球は彼の持ち味がよく出た内容であり、ランナーを出しても内野ゴロで併殺を奪って、バックに攻守のリズムをもたらした。ともに速球に伸びのある吉村、松成も控えており、連戦にも不安はない。投手陣全体で四死球が少ないのも強みだ。

また、打線も勝負強さを兼ね備えており、得点力は高い。準々決勝の岩国戦、準決勝の高川学園戦といずれもしびれるような1点差の好ゲームになったが、上位から下位まで穴のない打線が勝負どころでタイムリーを放った。中でも秋春と敗れていた高川学園戦では7回に7番高木の長打を足掛かりに相手のミスも絡めて過去すという、今年の宇部鴻城らしい野球で勝利を手にした。全員が低く強い打球を放ち、相手守備陣に圧力をかける。

2012年は東海大甲府に、2019年は明石商にベスト8目前で行く手を阻まれた。今年こそは8強入りに名乗りを上げたいところだ。

全国高校野球 和歌山大会 市和歌、サヨナラV 和歌山北、延長及ば ...

市立和歌山は智辯和歌山が初戦敗退するという波乱の和歌山大会を制した。市立和歌山らしい粘り強さが光るチームだ。

市立和歌山のエースは本格派右腕の栗谷。140キロ台中盤の速球と多彩な変化球を低めに制球できる、安定感ある投手だ。春季和歌山大会では智辯和歌山打線を封じたように、実績も十分だ。後ろには速球派右腕の小野が控えており、1試合通して失点を抑えるめどは立っているといえるだろう。課題があるとすれば、5試合で11失策という守備陣か。このあたりを本番までにどこまで修正できているか注目したい。

一方、打線はチーム打率2割7分台と目立った数字は残っていないが、粘り強く1点1点を積み重ねるスタイルで勝ち上がってきた。この打者に回せばという存在はおらずとも、上位から下位まで全員が仕事をできるのが市立和歌山打線の特徴だ。決勝でサヨナラ打の9番熊本がチームの打点王というのが、それを象徴している。投手陣が安定しているだけに、確実にランナーを進めて返す攻撃ができれば勝機が広がってくる。

絶対王者の智辯和歌山と常に互角の戦いを繰り広げてきた実力校が甲子園でその実力を発揮するか、注目だ。

 

富山商、明桜の伝統校も好投手を擁して勝負をかける。

2023 全国高校野球選手権 富山大会】きょう決勝 富商「エース ...

富山商は本格派左腕・森田を擁した2014年以来の出場。今年は、好右腕・上田を擁しての出陣となる。

上田は最速140キロ台の速球と高速スライダーを武器にする本格派右腕。ややコントロールに難はあるものの、要所で力のあるボールを投げ込み、相手打者を封じ込めてきた。富山大会を通じて、失点4に封じた点がその力を物語っている。2年生の森も重要な場面で登板してチームの危機を救っており、この2人が完投も継投も視野にいれられるのは強みだろう。

援護する打線は非常にペース争いがうまい印象。相手に得点が入ってもすぐに取り返すことで、流れを簡単に渡さない。チーム打率3割1分台という数字以上に怖い打線だ。エースの上田は6番を打つが、打撃センス抜群であり、準々決勝ではホームランを放ってチームを勢いに乗せた。勝負強さと長打力を兼ね備えており、前崎監督も自信をのぞかせる。

ここ数年は、高岡商に出場権を占有されていた感があったが、県内2強の意地を見せた形となった。甲子園でも結果を残していきたいところだ。

全国高校野球 地方大会 青森 光星、連覇/秋田 明桜、逆転 2年 ...

明桜は風間(ソフトバンク)を擁した2021年以来2年ぶりの出場。今年も高い投手力を武器に、全国の舞台へ挑む。

投手陣は実力派の3人を中心に形成。MAX147キロを誇る剛腕・難波、コントロール抜群の加藤悠、強気な左腕・松橋裕の3人を自在に継投させられるのは大きなアドバンテージだろう。3人とも球威、スピードとも申し分ないため、疲れを残さずに投げてくると相手打線にとっては攻略は容易ではない。また、捕手の吉川がそれぞれの持ち味を引き出したリードをするため、より継投が活きてくる側面もある。

一方の打撃陣は集中打が持ち味。決勝の秋田商戦がそうだったように、相手投手の乱れたところを逃さない力が光る。スタメン9人中7人が4四球以上を選んでいるように、選球眼としぶとさを兼ね備えた打線と言えるだろう。また、輿石監督が語ったように、下位打線が出塁し、好調の1番吉野・2番土田のコンビが返すのが得点パターンとなったのも大きいだろう。数字以上の力を秘めた打線だ。

決勝では劇的な逆転勝ちで代表の座を射止めた明桜。勢いに乗って甲子園でも上位進出を狙う。

 

北海・クラーク国際の南北北海道代表も対照的なスタイルのエースを擁して、上位をうかがう。

183センチ97キロの大型右腕に注目!2023年北海道のイチオシ選手は?

北海は節目の40回目の夏の甲子園出場となる。安定した投手力をベースに南北海道大会を制した。

投手陣の軸は右腕・岡田と左腕・長内の左右2枚看板になる。エースの熊谷が故障で不在にしている間に一気に台頭してきた。ともに春季全道大会では完封勝利を飾っており、速球派の岡田、技巧派の長内と持ち味が異なるのも、平川監督にとっては大きな収穫だっただろう。秋のエースだった熊谷は178センチ、78キロというがっちりした体格から繰り出す球威抜群の速球が武器。故障も癒え、北海道大会では復活の投球を見せた。3本の矢をそろえた投手陣で勝負をかける。

打線でも中心になるのは、エースで4番の熊谷。北海道大会では21打数16安打の5ホームランと、驚異的な成績を収めた。長打力と確実性を兼ね備えており、全国クラスの好投手を相手にどれだけの打棒を見せるか注目だ。また幌村など下位の打者も高打率を残しており、熊谷を歩かせてもかえって大量点につながるのが、彼を敬遠させずに済んだ理由だった。チーム打率3割9分台の強打で投手陣を強力に援護する。

南北海道随一の伝統校・北海。準優勝を果たした2016年に続く快進撃を見せられるか。

クラーク記念国際(北海道)|第95回センバツ高校野球 | 毎日新聞

クラーク国際は春夏連続の甲子園出場。4度目の甲子園で初勝利を狙う。

エースは野球センス抜群の右腕・新岡。右スリークオーター、右サイド、右アンダーと様々な投法を使い分け、相手打線をかわす投球が持ち味だ。目立ったスピードや球威はなくとも、相手打者のバットをかいくぐる投球の妙が彼にはある。準々決勝の帯広農戦は唯一自分の投球ができずに打ち込まれたが、最終盤の決勝戦では立て直し、5安打完封勝利を飾ったのはさすがであった。フィールディングもよく、投手としての総合力という点でも評価の高い投手だ。

一方、打線は昨秋から課題と言われてきたが、この夏はエースを強力に援護した。特に新岡が打ち込まれて大量ビハインドを背負った準々決勝では、中軸の3者連続ホームランを含む4ホームランで豪快に試合をひっくり返し、名将・佐々木監督を喜ばせた。選抜で1得点に終わった姿はもうなく、この夏は打って勝つ展開も十分に可能だろう。

これまでの甲子園でも初勝利を挙げると、一気に勝ち進んだチームは多く存在する。クラーク国際もブレイクスルーを果たせるか注目だ。

打力で割って入る強豪たち

夏の戦いにおいて、より重要になってくるのが打力!強打を武器にV戦線をかき回すか。

日大山形が逆転で2年ぶり19回目の甲子園 高校野球山形大会 ...

日大山形は決勝で好投手を打ち崩して逆転勝ち。過去にベスト4が1回、ベスト8が1回と県内No.1の実績を誇る伝統校が2年ぶりに甲子園に乗り込む。

日大山形と言えば、過去に幾多の好投手を攻略した「粘りの攻撃」が持ち味。決勝では山形中央の好左腕・武田の前に劣勢に追い込まれたが、7回に一挙5得点で試合をひっくり返した。チーム特有のあきらめない精神が根付いており、集中力の高い攻撃を見せた。特に5番沼沢、6番鈴木の2人が好調だったことで、より攻撃のつながりが増しただろう。

この打線の援護を受けてエース菅井も奮闘を見せた。足を高く上げる独特なフォームから繰り出す速球は、184㎝の長身から繰り出すために角度があり、相手打者にとっては非常にアジャストしづらいボールだ。テンポとコントロールもいいため、攻略困難な投手だ。後ろには本田、佐藤大と安定感ある投手が控えており、失点も計算できるチームだ。

最高成績のベスト4を果たした時は、日大三・作新学院・明徳義塾と優勝経験校を立て続けに倒した。あの時のインパクトを超える活躍を見せたいところだ。

土浦日大が九回に逆転、5年ぶりの夏の甲子園へ 高校野球茨城大会 ...

土浦日大は県大会決勝の最終回に奇跡的な逆転勝ちを収め、5年ぶりの代表切符を獲得。勢いに乗って上位進出を狙う。

決勝戦は霞ケ浦のプロ注目右腕・木村の前に8回まで0行進が続いていたが、選手たちは全く動揺がなかった。球威がやや落ちたところを逃さず、コンパクトな打撃で着々とヒットを積み重ね、気づけば一挙5点で試合をひっくり返していた。打率5割を超す2番太刀川、4番香取が軸となるが、それ以上に試合中の選手の考える力とメンタリティが素晴らしい打線だといえるだろう。好投手攻略の自信を胸に全国へ臨む。

一方、投手陣の中心は藤本、小森の左右2枚看板だ。左腕・藤本はイニング数と同じ数の三振を奪っており、勝負所で空振りが取れるのが強み。一方、小森は140キロ台後半を記録する速球を武器に試合終盤を締める役割を果たしてきた。他にも準々決勝で先発した伊藤彩など3人の投手が控えており、豊富な陣容を誇る。

近年は2017年、2018年に2年連続で甲子園出場を果たすも、ともに初戦敗退に終わっている。1986年以来の勝利、そして上位進出へ期待が高まるチームだ。

全国高校野球 栃木大会振りかえる 文星芸大付 11回目の夏 攻守隙 ...

文星芸大付は県大会決勝で作新学院をサヨナラで下し、16年ぶりの出場。永年、行く手を阻まれてきたライバル校をついにくだした。

出場の原動力となったのは強力打線。準決勝・決勝と昨夏・今春の甲子園出場校を打ち砕いて優勝を決めた。特に準決勝の猛攻は圧巻。昨夏、2年生エースとして甲子園で好投した国学院栃木・盛永から毎回得点をたたき出した。相手投手のちからのある速球に対して、振りまけずにしっかり外野深くまで運ぶスイングの強さは素晴らしい一言だった。決勝では作新学院の継投策にも惑わされず、着々と加点。最終回に4点差を追いつかれたが、5番黒崎のサヨナラ弾でサヨナラ勝ちを収めた。かつて宇都宮学園時代から甲子園でならした強打が甲子園に帰ってくる。

投手陣は左腕の渋谷、右腕の堀江・工藤の3人でまかなう。絶対的な存在はいないかわりに、どの投手も任された場面で自分の役割をしっかり果たすことがっできる投手陣だ。決勝戦の最終回こそ打ち込まれる場面があったが、それまではどの試合も2失点以内で試合を作った。また、サヨナラ弾を放った捕手・黒崎はインサイドワークにも定評があり、それぞれの持ち味をしっかり引き出していく。

2006年、2007年の連続出場の時以来の甲子園。作新学院1強の時代から変化しつつある栃木の高校野球界で復権を果たすためにも、全国での結果がほしいところだ。

全国高校野球 山梨大会 東海大甲府8年ぶりV 駿台甲府を破る ...

東海大甲府は強力打線を武器に8年ぶりの夏の甲子園出場を決めた。選抜王者・山梨学院が敗退する中、伝統校が意地の戦いを見せた。

打線は県大会終盤に何度もシーソーゲームをものにしたように、何点差あってもあきらめないハートの強さを全員が持ち合わせる。準々決勝・準決勝といずれも3点差、4点差と苦しい状況で連打を積み重ねられたのは、ライバル校である山梨学院のエース林を常に想定して練習してきた成果だったのかもしれない。スタメンのうち4人が打率5割を超え、中でも3番兼松は逆方向にも長打が放てる、大会屈指の好打者だ。「甲府の暴れん坊」の異名にたがわない破壊力を今年も持っている。

一方、2桁失点もあった投手陣はやや不安を抱えるのは否めない。エース長崎はボールに力はあるのだが、やや制球が甘くなる場面も目立ち、準々決勝では9失点を喫した。監督のゲキに奮い立った決勝では、山梨学院・林を打ち崩した駿台甲府打線を2点に抑え込んだだけに、メンタル面が大きく左右しそうだ。1年生左腕・鈴木蓮はしなやかなフォームから繰り出す速球が武器。苦しい投手事情のなか、現れた救世主である。

甲子園でも打って勝つスタイルは不変であり、ある程度の得点は見こめそうだ。勝ち上がれるか否かな投手陣にかかっている。

前橋商がサヨナラ勝ちで13年ぶりの夏の甲子園へ 高校野球群馬 ...

前橋商は13年ぶりの夏の甲子園。前橋育英、樹徳、桐生第一と強豪を連破し、代表切符をつかんだ。

県大会決勝で最終回に逆転サヨナラ勝ちをつかんだように、県大会6試合中5試合で逆転勝利を収めた。多少の点差があっても、腰を据えてじっくりと反撃する体勢は、相手チームにとっては不気味だろう。4番真藤は5割近い打率を誇り、勝負強さと長打力を兼ね備える。県内に速球派の好投手が多かったこともあり、スピードボールへの対応はばっちり。シャープに振りぬく打撃で好投手を次々攻略してきた。昨年から残るメンバーも多く、経験値が大会のも強味だ。

一方、投手陣の軸はエース坂部と2年生右腕・清水の2人だ。坂部はがっしりした体格から繰り出す球威のあるボールが持ち味でスタミナも抜群。野手陣と同様に下級生の時から試合経験を積んでおり、ピンチの場面でも冷静な投球が光る。リリーフで登板が多かった清水は190センチの長身から繰り出す角度の効いたボールが武器。2人とも完投能力があるが、坂部から清水への継投はより効果を増している印象だ。

ここ最近は健大高崎・前橋育英の2強時代が続いていたが、ここにきて昨年の樹徳、今年の前橋商と流れが変わってきた感がある。ハイレベルな群馬を制した実力を大舞台でも発揮したい。

いなべ総合がV 7年ぶり3度目、夏の甲子園へ 高校野球三重大会 ...

いなべ総合は粘り強い攻撃で接戦をものにし、7年ぶり3度目の出場。過去最高のベスト8を目指す。

県大会は初戦でいきなり鈴鹿との強豪対決に。昨夏敗れている相手との雪辱戦となった。点を取っては取られのシーソーゲームとなったが、1点をリードされた8回裏に4番石垣の逆転2ランホームランが飛び出し、見事にリベンジを果たした。この勝利で勢いに乗ると、津田学園・宇治山田商といった強豪相手にも持ち前の粘りの攻撃で競り勝って優勝を決めた。大物うちはいないが、1番梨本をはじめとして足の速い選手が多く、コツコツとつないで終わってみれば大量点に結び付けてくる。1試合平均7つ以上の四死球を選んでおり、選球眼も光る。

一方、投手陣はともにスピードボールが武器の水野と高田で形成。2人とも速球とスライダーを武器にした本格派右腕であり、タイプは似ている。2人とも投球回数と同じ被安打を浴びているように、圧倒的に抑えるわけではないが、四死球から崩れる心配がないため、チームに攻撃のリズムをもたらす。ライバル関係の2人の相乗効果で成長してきたチームだけに、全国での活躍が楽しみだ。

7年前は同校史上初勝利から一気に2勝を挙げ、躍進を遂げた。三重県屈指の名将・尾崎監督に率いられ、強豪公立校が上位進出を狙う。

全国高校野球 京都大会 立命館宇治、4年ぶりの夏 京都翔英に ...

立命館宇治は4年ぶり4度目の出場。1年生時から注目されてきた世代がいよいよ全国でベールを脱ぐ。

野手陣は力のある面々が並び、スタメンのほとんどが高打率をマーク。誰を抑えればよいという感じではなく、満遍なく出塁してタイムリーをたたき出してきた。優勝に向けて一番の山となった準決勝の龍谷大平安戦では、選抜でも好投した右サイドの桑江に対して、初回に北川、伊東が2本のタイムリーを放って先制。いずれも低く強い当たりで1,2塁間を抜けていき、サイド投手攻略のお手本のような打撃であった。チーム最多打点をたたき出した5番築山も当たっており、どこからでも点が入る強力打線と言える。

一方、投手陣の軸は2年生の十川。190センチ以上の長身から繰り出す角度のあるボールはそれだけでアドバンテージであり、強打者の並ぶ龍谷大平安打線を6安打で完封し、チームに大きな1勝をもたらした。決勝戦こそ疲れもあってか打ち込まれたものの、全国デビューが楽しみな投手だ。2番手の家村も安定しており、ディフェンス面から崩れる心配もない。

過去3度の出場では4年前の1勝が最高成績だが、今年はそれを大きく超えていくポテンシャルを持つ。選手時代に鳥羽で3季連続出場を果たした里井監督のもと、立命館宇治が甲子園の主役を奪いに行く。

立正大淞南が11年ぶりの夏の甲子園へ 高校野球島根大会 - 高校 ...

立正大湘南は11年ぶり3度目の出場。過去最高のベスト8を越える成績を狙う。

看板の打線はチーム打率3割9分9厘と強力だ。1番酒井を筆頭に高打率の打者が並び、中でも4番山下は打率7割越えで2ホームランと打線の顔を言える存在だ。県大会決勝で益田東の好左腕・糸井を低めのボール狙いで攻略したように、好投手相手でもじっくりと腰を据えて対策を立てられるクレバーさがある。過去の甲子園でも2009年、2012年と終盤勝負に非常に強かった印象があり、今年もチーム全体で攻めかかれる打線と言えそうだ。

一方、投手陣もともに140キロ台の速球を持つ山下、日野の2枚看板を有しており、力がある。島根大会では石見智翠館、開星と強豪との対戦が続いたが、失点はしても最少点で踏ん張り、いずれも相手打線を3点に封じた。決勝で益田東打線を完封したように、そう多くの失点はしない陣容だ。太田監督の継投のタイミングの見極めもキーになってくるだろう。

これまで2度の出場はいずれも初戦を突破しており、好成績を収めてきた立正大湘南。出場すれば強いというジンクスを今年も作れるか、注目だ。

めざせ!!甲子園】2023夏の高校野球鹿児島大会”決勝” 『鹿屋中央 ...

神村学園は4年ぶり6度目の出場。5番岩下の劇的なサヨナラ弾で優勝を勝ち取った。

投手陣は右腕・松永、左腕・黒木の2枚看板。松永は右スリークオーターからコントロールよくアウトコース低めに投げ込み、試合を壊さないタイプの投手だ。一方、左腕・黒木はキレのあるスライダーを武器にする本格派であり、欲しい場面で三振が取れる強みがある。安定感のある右腕から終盤を締めるストッパータイプの左腕への継投は非常に理にかなっており、この継投で相手打線の目先をかわすことができる。

一方、打線は上位に2年生が多く並ぶ若いチームだ。小技の効く2番増田、主砲・正林、サヨナラホームランの5番岩下と将来性有望な2年生がチームを活性化させ、スピード感あふれる野球を体現してきた。そんな中、1番今岡歩はそのパフォーマンスも含めてチームを鼓舞するムードメーカー。フルスイングを武器に、初回から相手投手に襲い掛かる。過去に甲子園で激戦を演じてきたチームと比較しても全く見劣りしない攻撃陣と言えるだろう。

過去5度の夏出場がある神村学園だが、意外にも1大会2勝以上を挙げたことはない。今大会は最高成績を残すポテンシャルは十分ありそうだ。

優勝争いかき回すか、ダークホース

ダースホースに挙げた4校だが、それぞれに魅力あふれるチームであり、上位校を食う可能性を十二分に秘める。

全国高校野球 長野大会 上田西、逆転V 8年ぶり、松商学園破る ...

上田西は安定した投手陣と堅守をベースに長野大会を8年ぶりに制覇。過去最高の3回戦進出を狙う。

投手陣はいずれも140キロ台の速球を持ち、しかもタイプの異なる権田・服部・滝沢の3人で形成。いずれも完投能力があり、リリーフも可能とあって、吉崎監督にとっても試合を組み立てやすいだろう。県決勝こそ松商学園打線に6点を奪われたものの、準決勝までの5試合は平均1失点と踏ん張りを見せた。そして、支えるバックはなんと6試合で無失策を誇る。内外野とも速い出足で相手の打球をつかみ取る。堅い守りが上田西の何よりの強みだ。

一方、打線は3番ショートでチームの中心の横山が軸。高い身体能力を活かし、高校通算30ホームランを放った打撃センスでチームを引っ張る。決して強力打線というわけではないが、打線全体のつながりがよく、1番中村・3番横山と軸がしっかりしているため、得点力は決して低くはない。決勝戦で見せたような集中打が甲子園でも見られるか。

毎年、県内では毎年のように上位を争い、2015年のエース草海(セガサミー)など好選手も輩出してきた上田西だが、全国では2度の出場で1勝とまだインパクトを残し切れていない印象はある。今大会で一気のブレイクスルーを期待したいところだ。

おかやま山陽が6年ぶり夏の甲子園へ、倉敷商下す 高校野球岡山 ...

おかやま山陽は2017年以来6年ぶりの夏切符。春夏3度目の出場で初勝利を狙う。

チームの強みは層の厚い投手陣。予選開始前までは、井川・西野の経験豊富な両右腕が中心と思われていたが、夏は三浦・三宅の2年生コンビが成長。この2人と井川できれいに12イニングずつを投じており、層が厚くなった。特に三宅はコントロールが抜群であり、夏の甲子園でもキーマンとなる可能性がある。バックも1試合平均1失策と堅守で投手陣をバックアップした。

一方、打撃陣は初戦から倉敷・坂本、倉敷翠松・家島とタイプの違う左右の好投手を攻略してきた。1番田内、2番湯浅を中心に犠打を駆使した手堅い野球でスコアリングポジションに進め、相手に圧力をかける。穿孔される展開も多かったが、落ち着いて終盤にひっくり返すあたり、試合中にしっかり相手を分析し、相手の癖や傾向をつかむことができる攻撃陣だ。好投手を打ってきた自信を胸に全国の舞台へ挑む。

これまで2度の出場はいずれも差のつく展開で敗れてしまったが、今年は投打に戦力が充実している。初勝利からの一気の上位進出も期待できる。

高校野球鳥取大会 鳥取商が鳥取西を下し連覇、4回目の甲子園出場 ...

鳥取商は2年連続の甲子園出場。エース山根を中心に守りの野球で今年も聖地にたどり着いた。

山根は昨夏の甲子園でも優勝した仙台育英を相手に好投。緩いカーブを活かした緩急を武器に5回まで無失点の好投を見せた。1年の時を経て、スピード・球威ともアップしており、最後の夏に集大成の投球を見せたい。また、鳥取大会でその山根を支えたのが荒川、山下の2人の右腕。2人とも落ち着いたマウンドさばきで先発も務め、あえて山根を後ろに回す戦術も可能にした。

一方、打撃陣は鳥取大会4試合で11得点とやや課題が残った。その中でも、3番青木、5番金山の中軸は当たっており、できるだけ彼らの前にスコアリングポジションにランナーを置いた状態で回したい。そうそうヒットが続くとも限らないため、犠打を使って確実にランナーを進める攻撃が求められそうだ。

これまで3度の出場経験があるが、いずれも初戦敗退に終わっている鳥取商。甲子園初勝利へ県民の期待は大きい。

全国高校野球 地方大会 川之江が接戦制す ノーシードから夏 ...

川之江は4強入りした2002年以来21年ぶりの甲子園出場となる。

エースは4番も務める山内太暉。左スリークオーターから球威のある速球とキレのある数ライダー、チェンジアップを投じる。やや荒れ球の感はあるが、勝負所でコーナーにボールを決める気持ちの強さがあり、精神的支柱としてチームを牽引する。2番手の右腕・近藤も計算が立っており、連戦にも不安はない。

一方、攻撃陣は上位から下位まで切れ目なくつながり、力がある。愛媛大会終盤では準決勝の聖カタリナ戦、決勝の今治西戦といずれも終盤勝負に競り勝ったように、勝負強さも兼ね備えている。チーム最多打点を挙げた5番合田は4割を優に超える打率を残し、4番山内太暉を歩かせにくい状況を作り出した。7番三好も打率5割と当たっており、どこからでもチャンスを作り出せる。

済美や今治西など強豪ひしめく愛媛で長らく苦しんでいた川之江だが、今回は久々の甲子園をつかみ取った。大舞台で再び旋風を巻き起こしたい。

力のある初出場校

今年ほど初出場校に注目が集まる年もないかもしれない。いずれも春夏通じて初出場のNEW FACEによる旋風が甲子園をかき回していく。

全国高校野球 宮崎大会 宮崎学園、初の甲子園 延長で聖心 ...

宮崎学園は春夏通じて初の甲子園出場。決勝戦では劇的なサヨナラ勝利で試合を決めた。

エースは2年生左腕の河野。189㎝の長身から繰り出す角度のあるボールが武器で、今大会チームの躍進の原動力となった。やや四死球が多いのは気がかりだが、ランナーを出しても粘り強く抑えて、味方の反撃を待てる投手だ。県大会でほとんどのイニングを河野が投げており、甲子園でもかれの左腕がすべてを握っている。

一方、打線はチーム打率2割4分台と数字は高くないが、終盤の勝負どころで長打が飛び出す魅力がある。ともにホームランを放った1番斎藤聖、5番斎藤崚の2人はチームが苦しい場面で大きな仕事をやってのけた。準決勝、決勝は甲子園経験校を相手に連続のサヨナラ勝ち。ここ一番で思い切りよくバットを振りきる打者がそろっており、トーナメントを勝ち抜くうえで何より重要な要素を兼ね備えている。楽しみな打線だ。

毎年のように代表が入れ替わる宮崎から出てきた初出場校。旋風なるか注目だ。

鳥栖工も初の甲子園出場。堅守と手堅い攻撃をベースに佐賀大会を初制覇した。

投手陣は古沢、松延響の2枚看板。ともに先発・リリーフと両方こなすことができ、5試合で失った点数はわずか4。2人とも低めへ安定して制球することができ、佐賀県勢らしい守りの野球を体現する。守備陣も5試合で失策2と堅守を誇っており、守り合いになればなるほど強さを発揮するチームだ。2007年に優勝した佐賀北にも似た雰囲気がある。

また、打線は大物うちこそいないものの、コンパクトなスイングで単打を繰り出し、犠打で進めてしぶとく返すパターンを確立している。7番藤田が4割以上と当たっているように上位から下位までキーになる打順で高打率の打者がいるのも強みだ。決勝で6回に集中打で4点をたたき出した攻撃は鳥栖工打線の良さが出たものであった。

佐賀県からの初出場校は侮れない印象のチームが多く、鳥栖工もその例に漏れない。今年もがばい旋風なるか、期待が集まる。

高知中央が春夏通じて初の甲子園出場 明徳義塾破った勢い ...

高知中央は明徳義塾、高知と常連校を連破しての出場。初陣ながら、その実力の高さは保証済みだ。

投手陣は、右サイドの高橋、左腕・藤田、右オーバーハンドの堅田といずれも140キロオーバーのストレートを誇る3人による編成は強力だ。彼らを相手打線のタイプや試合中の状況に応じて、太田監督が組み替えるため、おのずと失点数は少なくなる。あの馬淵監督率いる試合巧者の明徳義塾でさえ、牙城を崩せなかったのだからよほどだろう。守備陣も1試合平均1失策と安定している。

一方の打線はチーム打率こそ高くないものの、相手の乱れたすきに付け込む攻撃の速さがある。1番謝、4番越智、6番堅田とキーになる打者は当たっており、彼らが絡んでランナーをためると一気の大量点がある。決勝では序盤から圧倒されていた高知の2年生エース辻井が少し疲れが出てきた6回に、謝の2塁打を足掛かりに一気に突き崩した。

思えば、高知からの夏の初出場校は1994年の宿毛までさかのぼる。激戦区を勝ち抜いたNEW COMERの躍進に期待が高まる。

高校野球:東京学館新潟、スローガンは「新時代」…日本文理に ...

東京学館新潟は県大会決勝で中越を逆転サヨナラで下して初優勝。勢いに乗って全国でも快進撃を狙う。

投手陣は計6人の投手が登板し、マウンドを守ってきた。抜群のコントロールを持つ左腕・涌井が軸になるが、基本的に継投を視野にいれて戦うことになるだろう。旅川監督もそのあたりは躊躇なく、投手を代えていっており、このチームの戦い方として沁みついている。6試合で2失策とバックも堅守が光る。

そして、打線は県内の強豪校相手にも打ち負けなかった破壊力を持つ。佐藤、渋川の1,2番コンビは打って走れる最高のコンビであり、彼らが塁に出ると、一気に東京学館新潟のムードになりそうだ。3番捕手の八幡は打率2割2分2厘と苦しんだが、ヒットの大半が長打であり、大事なところでチームを救う一打を放ってきた、「頼れる扇の要」だ。

日本文理、中越を県を代表するチームを下しており、実力は十分。あとはその実力を聖地で発揮するだけだ。

頂点へ、きょう決勝 浜松開誠館と東海大静岡翔洋 高校野球静岡 ...

浜松開誠館は常葉菊川時代に甲子園準優勝経験のある佐野監督に率いられ、初出場を達成。堂々、聖地に乗り込む。

投手陣はともに2桁イニングを投げた左腕の松井、広崎と右腕の近藤の3人で形成する。県大会では準々決勝までの4試合をわずか2失点で封じており、安定感が光った。エース近藤は決勝の東海大静岡翔洋戦で8失点を喫しながらも意地の完投勝ちし、優勝投手に。全国へ向けて自信を取り戻した一戦となった。

一方、打線は初戦の沼津商戦こそ2得点と苦しんだが、鬼門の1回戦を突破したことで硬さが取れたのか、徐々に本領を発揮し、決勝では12得点を挙げた。。1番深谷は24打数12安打でヒットの半数が2塁打と理想のトップバッター。試合開始からチームに勢いをつける。全員がしっかりとバットを振り切る力を持っており、全国でも十分通用する打線と言えるだろう。

かつて中村紀洋氏(元近鉄)がコーチに来ていたことでも話題になった静岡の新鋭。甲子園でインパクトを残し、恩返しといきたいところだ。

高校野球:共栄学園が9回二死から2点差逆転、初の決勝へ…内野 ...

共栄学園は強豪が次々敗退した混迷の東東京大会を制覇して初出場。波乱含みの今年の甲子園予選を象徴するチームが、49代表校最後の切符をつかみ取った。

エース茂呂は激闘続きの終盤戦のなかでも自分を見失わずに投げぬいており、身体的にも精神的にもタフなエースだ。疲労が濃くなければ球威・スピードも十分な投手であり、また相手の攻撃を瞬時にかわす視野の広さとクレバーさも併せ持っている。控え投手陣も田嶋・首藤らが控えているが、まずは茂呂を中心に大会は回っていくだろう。

そのエースを援護する打線は、準決勝・決勝と奇跡的な逆転劇を続け、まさにミラクル共栄学園といった戦いぶりを見せた。決勝戦の9回2アウトからのセーフティバントのように、相手に何をやってくるか悟らせない攻撃は、各人がしっかり状況を見て考える野球を実践してきた賜物だった。個人成績を見ていると打率は高くないように見えるが、油断すると足元をすくわれる打線である。

奇跡的な勝ち上がりと赤いユニフォームは、まるで2003年の雪谷を彷彿とさせる。東東京を勝ち抜いた実力に疑いの余地はなく、全国での戦いが非常に楽しみだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました