2023年選手権1回戦 日大三vs社(4日目第2試合)

2023年

大会4日目第2試合

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
0 0 1 0 1 0 1 0 × 3

日大三

 

社     高橋→福田

日大三   安田

強豪地区を勝ち抜いたチーム同士の好カード。日大三はエース安田が会心の投球を見せ、終始、社にリズムをつかませず、2安打完封で5年ぶりの聖地での1勝を手にした。

試合

日大三は2年連続、社は3季連続での出場。ともに前年から経験者を擁しており、落ち着いた状態で試合に入っていく。日大三は安田、社は高橋と両エース右腕が先発のマウンドに上がった。

日大三のエース安田は漁師を務める祖父について子供のころから船の上で足腰を鍛えたというたくましい経歴の持ち主。強靭な下半身から繰り出す速球とチェンジアップの緩急を武器に、西東京大会でも強豪に競り勝ってきた。初回から持ち味の角度も威力のある速球で社打線を圧倒。ミートのうまい社の打者陣だが、コンタクトはできてもボールの威力に押し込まれてしまう。

一方、社のエース高橋は春夏連続の甲子園のマウンド。選抜では海星打線のうまい攻めに攻略され、初戦敗退に終わったが、ストレートの切れには定評がある、兵庫屈指の好投手だ。1回裏、先頭の1番古賀にいきなりヒットを許し、犠打で1アウト2塁とされるが、日大三打線のキーマンである3番二宮、4番岡村を打ち取り、大事な初回を無失点でしのぐ。

攻撃力ではやや日大三に分があるだけに、社としては先制点が欲しいところだったが、日大三・安田の投球がとにかく素晴らしい。130キロ台でも回転数がよく、しかも回転軸が真縦に近いため、ボールが沈むことなくミットに突き刺さる。体をやや左に倒して腕を縦に振ることで、この回転のいい速球を生み出している。3回を終わって一人のランナーも許すことなく投げぬき、打の印象の強い日大三が、まずは守りからしっかりとリズムを作っていく。

すると、3回裏、日大三は先頭の9番安田が高めの速球を逃さず、右中間へ打ち返し、自らチャンスメーク。1番古賀は打ち取られるが、2番池内が犠打できっちり進めると、ここで初回のチャンスで打てなかった3番二宮が高めに浮いたスライダーを逃さずにとらえ、もう少しでセンターバックスクリーンへ飛び込むかという、フェンス直撃のタイムリー2塁打を放つ。高橋の失投を逃さずにとらえた主将の一撃。日大三が押し気味に進めながら得点を上げられなかった中、両チームにとって大きな1点となった。

先制点をもらった安田は自らの一打で得点を得たこともあり、リズムに乗って快投を演じる。速球の威力については先ほど述べたが、その速球があるぶん、チェンジアップによる緩急がさらに効果を発揮する。一般的にはタイミングを外すという認識が強いボールだが、安田のチェンジアップは落差とキレも抜群。狙いにいってもなかなか打つことは難しく、社打線のバットがクルクルと回っていく。5回に社の6番年綱に初ヒットは許したものの、後続をきっちり打ち取って5回を無失点。バックも軽快な守備でエースを援護し、日大三が投攻守で試合を支配していく。

すると、5回裏、日大三は先頭の8番森山高橋のアウトコースの速球を力強くとらえて左中間へのあたりを放つ。日大三らしい打球でチャンスメークすると、社の中継プレーのミスを逃さず、森山は一気に3塁へ。相手のスキを逃さないあたりは、さすがに鍛えられている。9番安田は打ち取られて1アウトとなるが、1番古賀の四球を挟んで2番池内がきっちり犠飛を放ち、森山が生還。社のミスにも乗じて得た2点目は、非常に大きな意味を持つ追加点であった。

ただ、初回から毎イニングランナーを出しながらも、社・高橋は最少失点で踏ん張っていく。5回のピンチではライト年綱が、ランナー1塁からのライト前ヒットで3塁を狙ったランナーを刺し、社らしい堅守で流れを引き寄せる。このプレーででリズムをつかみたい社打線は6回、7回と四球を選び、しぶとくチャンスメーク。しかし、少ないチャンスでも、効率よく得点を挙げてきた社の前に日大三のエースが立ちはだかる。社も7回に盗塁でスコアリングポジションにランナーを進めるが、最後は安田の「緩急」の前に三振。相手の作り上げようとして流れを断ち切る投球は、これぞ全国トップクラスと呼べる内容であった。

安田の調子を考えると、これ以上の失点は防ぎたい社だったが、7回裏、日大三は2アウトからしぶとく得点をもぎ取る。2番池内が高めの速球をレフトへ打ち返すと、3番二宮はライト前へ打ち返す。ここでライト年綱が3塁を狙ったランナーを再び刺そうとするが、今度はこれが悪送球となる、池内が1塁から一気にホームイン。高橋はここでついにマウンドを譲ることとなった。しかし、7回で9安打を浴びながら最少失点での3点に抑えた高橋の粘りは称賛に値するものであった。

得点を上げたい社は8回表、1アウトから8番藤井が高めのストレートをセンターに打ち返して出塁。この日一番とも言える会心の打球でチャンスを作る。しかし、ここでも安田のチェンジアップをとらえきれず、9番河関・1番山本が外野フライに倒れる。終盤に入ってなんとかミートはできるようになってきたが、それでもヒットにするのは難しいボールであった。

社も2番手の福田が8回裏に2安打を打たれるも、無失点。計11安打を浴びながらも3失点で最終回へ望みをつなぐ。だが、この日の主役は日大三のエースであった。2番から始まる上位打線に期待が高まったが、2番のセーフティバントが日大三のサード二宮の堅守の前にアウトにされるなど、最後までつけ入るスキがなかった。最後は代打・尾崎をサードゴロに打ち取り、二宮が軽快にさばいてゲームセット。安田が圧巻の投球で社打線を2安打完封し、5年ぶりに甲子園での勝利を飾った。

まとめ

日大三は強打のイメージが強いが、この日は安田の投球が何より素晴らしかった。速球、チェンジアップの2球種がほとんどなのだが、そのいずれもが一級品であり、なかなか攻略は難しい内容であった。特にチェンジアップの落差は、もはやカーブなのではと思ってしまうほどのものであり、強靭なスタミナも武器に、最後まで攻略の糸口すらつかませなかった。歴代の「SANKO」のエースのなかでもトップクラスの実力の持ち主と言えるだろう。

また、打線は3点止まりではあったが、4回を除く毎回ヒットを放ち、高めに浮いたボールは確実にヒットゾーンに打ち返すあたりは、さすが日大三と思わせる打撃であった。3安打を放った3番二宮に代表されるように好球は必ずしっかり振りきっていくところに、日大三打線の伝統が根付いている感があった。エースの投球と強打ががっちりかみ合った東の優勝候補が、三木監督の初采配となった試合を制し、まずは順調に初戦の壁を突破して見せた。

一方、社はエース高橋が粘りの投球を見せ、3点で踏ん張って好ゲームを展開。選抜から大きく成長した姿が見られた。ただ、この日は相手エースを褒めるしかなかったか。それほど、安田の投球には打てるボールが見当たらなかった。守ってはライト年綱の好送球や盗塁でのチャンスメークなど、社らしさも顔をのぞかせる面があったが、やはり全国で勝つには「最後の1本」を出す力が欠かせないということだったのだろう。

3季連続の甲子園で再び全国の強豪の前に屈する格好になった2023年夏。全国の舞台でしか得られない課題と収穫を持ち帰り、再び激戦区・兵庫での戦いへと戻っていく。

【高校野球 甲子園 ハイライト】日大三・安田今大会初完封!11年日大三を優勝へ導いたエースの吉永直伝のチェンジアップ駆使!【1回戦 日大三高 vs 社 】2023.8.9 – YouTube

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