2024年選抜2回戦
大阪桐蔭vs神村学園
51% 49%
〇7-1 北海 〇6-3 作新学院
強力打線を誇る九州の強豪と豪華投手陣を擁する近畿の雄。これまた、優勝候補同士の激戦となりそうだ。
大阪桐蔭は初戦はエース平嶋が140キロ台後半の速球と多彩な変化球を武器に好投。広陵のエース高尾と双璧と言えるくらい、ハイレベルな内容であった。投手層が豊富でも、トーナメントを勝ち上がっていくなかで必ず軸となる存在が必要だが、もう見つかったと言ってもいいだろう。また、控え投手陣も1回戦で登板した中野や南など、ストレートに力のある投手がずらり。何より、噂の剛腕・森がまだマウンドに立っていないというのも相手にとっては怖いところだ。底が見えない力を持つ大阪桐蔭投手陣が本当の意味で威力を発揮するのはここからだろう。
対する神村学園は、初戦で作新学院の好投手・小川を攻略。4番正林に一発が飛び出し、機動力も駆使するなど、硬軟織り交ぜた攻撃が光った。上位陣は全員ヒットないし打点が出ており、甲子園経験者がずらりと並んでいることもあり、各人は状況に応じて自分のすべきことをしっかりわかっている感がある。破壊力は出場校中でもトップクラスだろう。まずは、大阪桐蔭投手陣の140キロ台後半の真っすぐに対し、どう振りまけずに打ち返していけるかに注目したい。
一方、神村学園の投手陣はエース今村をできるだけ後ろに回す戦法で、作新学院の猛追を振り切った。特に先発した上川床はスライダーを武器に、6回途中まで投げ、小田監督の期待以上の役目を果たしたと言えるだろう。ただ、初戦で上川床・千原・釜と3人の投手が登場し、正体が割れたのも事実。次戦は、エース今村が先発するのか、はたまた初戦と同じような戦法を取るのか。いずれにせよ、継投になった場合は、作新戦と同じように、各投手が自分の得意なボールでどんどん勝負していく投球をしたい。
対する大阪桐蔭打線は、初戦は相手の四球をそつなく得点に結びつけ、8安打で7点と効率のいい攻めを見せた。大会前は、3番徳丸・4番ラマル以外の打者がどうかと思われていたが、境・吉田の1,2番が卓越した選球眼でたびたび四球を奪い、塁に出れば機動力で揺さぶる攻撃を展開した。攻撃力にやや課題がと言われていたが、自分たちの打線の点の取り方がよくわかっている頼もしさがあった。あとは、初戦でともに1安打を放った徳丸とラマルの2戦目以降の爆発が出るかどうか。左投手が多いだけに、右打者の4番ラマルの打撃が試合の結果を大きく左右しそうだ。
投手力は大阪桐蔭、攻撃力は神村学園に分があるが、総合力ではわずかに大阪桐蔭が上回るか。神村学園としては、1回戦のように先行して、桐蔭を慌てさせたい。
主なOB
大阪桐蔭…中村剛也(西武)、平田良介(中日)、中田翔(中日)、浅村栄斗(楽天)、森友哉(オリックス)
神村学園…野上亮磨(西武)、羽月隆太郎(広島)、渡邉陸(ソフトバンク)、秦勝利(楽天)
大阪 鹿児島
春 5勝 0勝
夏 1勝 1勝
計 6勝 1勝
対戦成績は春は大阪勢が全勝。夏は1勝1敗のタイとなっている。
1998年の選抜開幕戦ではPL学園と樟南の強豪対決が実現。4年前の夏の準優勝校である樟南は、直近3年間は、ライバルの鹿児島実に覇権を奪われ、永年の悲願であった県勢初優勝も先に達成された(1996年選抜)。しかし、この年は2年生捕手・鶴岡(日本ハム)を中心に、5年ぶりの選抜出場を達成。
ただ、相手は強豪・PLである。田中一(横浜)、平石(楽天)、大西(近鉄)の俊足コンビにかき回され、先制・中押し・ダメ押しと着実に得点を重ねられ、エース上重の1失点完投でPLが5-1と勝利した。ただ、この試合を経験したメンバーが多く残った次の代で、夏に5年ぶりの出場を果たすと、上野(広島)-鶴岡の鉄壁のバッテリーを中心に勝ちあがり、ベスト4に進出。優勝した桐生第一に惜敗したものの、5試合で失点4という素晴らしいディフェンス力で、「樟南ここにあり」を全国にアピールした。
鹿児島勢の初勝利は2007年夏。優勝候補の大阪桐蔭を大阪決勝で下した金光大阪に対し、2年前の選抜準優勝校・神村学園が迎え撃った。序盤リードを許したが、中盤の集中打で金光大阪のエース左腕・植松(ロッテ)を攻略。6-3と完勝で夏の甲子園初勝利をマークした。
相性では大阪勢が上回っているが、今回の両校に大きな力の差はないだろう。優勝に一歩近づくのはどちらのチームか。
思い出名勝負
2007年夏1回戦
神村学園
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 | 1 | 1 | 6 |
0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 |
金光大阪
神村学園 盛
金光大阪 植松→弓削
中田翔(中日)擁する大阪桐蔭が全国的に優勝候補筆頭として注目された2007年夏。しかし、あと1勝で甲子園という大阪決勝で、ライバルが立ちはだかった。前年夏、秋と2度にわたって大阪桐蔭に惜敗していた金光大阪。本格派左腕・植松(ロッテ)、技巧派右腕・弓削の左右2枚看板を擁し、前年夏からのメンバーを多く残したチームは、最後の夏に本領を発揮。逆転サヨナラゲームなどもありながら、激戦の大阪大会をしぶとく決勝まで勝ち上がってきた。
植松は春先までは不調にあえいでいたが、夏に復活を遂げ、大事な場面では抜群のコントロールを誇る右腕・弓削が好救援を見せる。また、対大阪桐蔭を想定し、徹底して守備力を鍛えてきたこともあり、内外野ともに鉄壁の布陣であった。特に二遊間の谷田-石井はアンツーカーから出るのではないかというほどの深い守備位置から正確な送球で次々とアウトを稼ぎ、エースを援護していた。
迎えた大阪決勝では初回に、先発・中田から1番石井の先頭打者ホームランなどで初回に3点を先取。この得点をエース植松が高めの速球を武器にした投球で守る。特に得意にしている4番中田は5打席ノーヒットに抑える会心の投球を見せた。打線が最終回に1点を追加すると、最後は1点差に迫られながらも後続を打ち取って優勝。長距離砲がずらりと並んだ打線を3点に抑えた植松は一躍全国注目の投手となった。
そんな金光大阪だが、夏の甲子園は初出場。その初戦の相手は2年前の選抜で初出場ながら準優勝を達成した神村学園であった。
永年、夙川学院でソフトボール界の名将として君臨した長沢監督を創部間もない野球部の監督に招聘。チームの根幹を作り上げ、2005年の選抜では創部2年目で準優勝を達成した。エース野上(西武)、4番天王寺谷という投打の軸を据えながら、その他のスタメンの打順は試合ごとに入れ替えるという猫の目打線で勝ち上がり、その柔軟な采配で全国を驚かせた。
ただ、その年の夏は前田大和(阪神)を擁する樟南に、9回3点差をひっくりかえされて逆転負け。終始リードしていた試合を最後の最後にうっちゃられ、やはり最後は鹿児島御三家(鹿児島実、樟南、鹿児島商)が上回るのかと、悔しい思いをした。
そして、この年、長沢監督から若い山本監督に指揮を受け継いだチームは躍動。右サイドのエース盛を強力打線が援護し、次々と強豪を打ちったる。迎えた決勝の相手は名門・鹿児島実。終盤に1点のリードを許すが、9回裏に相手エースを攻略し、劇的な逆転サヨナラ勝ちで、念願の夏初出場を果たした。
初出場同士の対戦で有りながら、両者ともに実力は非常に高く評価されていた。このブロックは、東の横綱・帝京や春の近畿王者・智辯学園、大会最速の右腕・佐藤由(ヤクルト)を擁する仙台育英と強豪がずらり。優勝争いを占うブロックとして注目されていた。
金光大阪は大阪大会のチーム打率が3割6分と打線も好調ではあった。しかし、決して大物うちがいるわけではなく、どちらかと言えば、犠打できっちり送って、3番吉見、4番毛利、5番小松のタイムリーを待つという堅実な野球であった。
これに対し、神村学園は攻撃型のチームである。2年前の選抜では打順を入れ替えながら戦っていたが、この年は、ほぼ不動のオーダーである。2年生捕手の鶴田を4番に据え、同じく2年生ながら長打力のある小原を7番に。キーになる打順に長距離砲を置き、その周りを巧打者で固める怖い打線であった。
試合が始まると、序盤は神村学園ペースとなる。3回には9番若松の内野安打を皮切りに満塁までチャンスを拡大。試合前は打ってくるかと思われた神村打線だったが、バスター戦法で植松の高めの速球に安易に手を出さない。この戦法が功を奏し、細かい制球力が有るわけではない植松の球数はかさんでいく。5回まで2安打3四死球と数字としてはそれほどの印象はないが、すでに球数は100球が見えるところまで達していた。
一方、神村学園のサイド右腕・盛は躍動感のあるフォームから繰り出す癖球が持ち味。序盤3回は、金光大阪打線もタイミングが合わず、静かに0行進でイニングを重ねていた。
しかし、4回裏、苦しむエースを援護すべく、打線が奮起する。好打者の3番吉見が2塁打で出塁すると、4番毛利の四球を挟んで、5番小松が先制タイムリー。さらに6番斎藤の犠飛も飛び出し、2点目。打者2巡目に入って、盛のボールに対応し始めた。
さらに5回裏にも2番古莊のタイムリーが飛び出して3点目。植松も5回までを無失点で切り抜け、金光大阪ペースの試合に思えた。あの大阪桐蔭を倒した自信もあり、3点のリードを守り切る絵図はあっただろう。ただ、神村学園打線が序盤からボディブローのようにかけていた攻撃の圧力が6回表に入って現れ始める。
この回、先頭の2番東のヒットと3番木下のヒットでランナーをためると、犠打で送って2,3塁から植松に暴投が飛び出し、まず1点。さらに6番西をショートゴロに打ち取るが、これを名手・谷田がこぼし、チェンジとなるはずが、アウトが取れない。守りの野球の金光大阪としてはらしくないミスが続いた。
続く、裏の4番である7番小原がタイムリーを放って1点差となると、打席には投げ合ってきた8番盛。球数が100球に到達し、植松の球威も落ちていた。アウトコースのボールを素直に打ち返した打球は、右中間を真っ二つに破り、2者が生還。この回、一挙4点の猛攻で試合をひっくり返した。
自ら逆転打を放った森はこの後勢いに乗る。毎イニングランナーは出すものの、荒れ気味の投球で的が絞りにくく、金光大阪打線は苦戦する。スコアリングポジションに進まれてもあと一本を許さない粘りも光った。
金光大阪は8回表から右腕・弓削をマウンドへ。必勝の投手リレーであり、横井監督も全幅の信頼を置く右腕だ。しかし、その立ち上がり、長打の打てる7番・小原が待ち構えていた。弓削の速球がわずかに甘く入るのを逃さずに引っ張った打球は、なんとレフトスタンドへ飛び込むソロホームランに!金光大阪にとっては痛い一本となったが、長沢監督にとってはしてやったりの一打だっただろう。小原は9回にもタイムリー2塁打を放ち、3安打3打点の大活躍であった。
金光大阪は最終回に望みをつなぐも、最後はタイムリーを放っていた2番古莊が打ち取られてゲームセット。神村学園・盛から6四死球を取りながらも、5安打で3点に抑えられた。全国No.1の優勝候補を下し、勢いに乗って乗り込んだ大阪の新鋭の前に立ちはだかったのは、同じく新鋭ながらしたたかな戦いのできる実力校であった。
神村学園としては序盤の攻めが功を奏し、会心の内容でつかんだ1勝であった。2年前の選抜準優勝は、1年生から試合に出ていたメンバーが多く、その恩恵を受けた面もあった。それだけに、名門・鹿実をくだしてのこの年の出場、そして、甲子園での1勝は若き指揮官にとって格別なものだっただろう。そこから時は流れ、今や神村学園は春夏通算12回の出場を誇る、全国屈指の強豪となっている。
一方、金光大阪はほろ苦い夏の甲子園デビューとなった。ただでさえ初出場なうえに、大阪桐蔭を下したことで、報道も過熱し、気の毒な面もあった。ただ、ここから全国制覇を幾度も重ねていくことになる大阪桐蔭に勝った功績は色あせることなく、今も大阪の高校野球ファンの脳裏に刻まれている。この戦いから15年後の春、当時と同じようなバッテリーを中心とした守りのチームで、甲子園初勝利を手にすることとなる。
コメント