2024年選抜1回戦 神村学園vs作新学院(5日目第1試合)

2024年

大会5日目第1試合

作新学院

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 2 1 0 0 3
0 1 1 0 2 0 0 2 × 6

神村学園

 

作新学院   小川→石毛→斎藤奨

神村学園   上川床→千原→釜→今村

ともに昨年の甲子園を経験した選手が残る強豪同士の好カード。序盤から好投手・小川を攻略した神村学園が序盤のリードを守り切り、快勝で2回戦へコマを進めた。

試合

激戦ブロックの先陣を切るカード。作新学院がエース小川哲を先発させたのに対し、神村学園はエース左腕・今村ではなく、昨年の甲子園で「打」で活躍した左腕・上川床であった。

神村学園・小田監督としては、何か仕掛けて作新との差を埋めようとの狙いがあってのこと。この期待に上川床が応える。1回表、2アウトから3番小川亜のヒットと四球でランナーこそためたものの、5番柳沼を見逃し三振に打ち取り、無失点の立ち上がり。ややテークバックの短いフォームから曲がりの大きいスライダーを駆使し、1年ぶりとは思えないほどの落ち着いた投球を見せた。

その裏、作新のマウンドには今大会注目の右腕・小川哲が上がる。しかし、初回、入耒田のセカンドゴロがエラーを誘い、内野ゴロで2塁へ。3番今岡がショート内野安打でつなぎ、打席には神村の絶対的主砲・正林を迎える。いきなり正念場となった小川だが、ここは強気にインサイドを突いていき、フロントドアのようなボールで見逃しの三振。さらに、満塁までピンチが広がるも、6番上川床を詰まらせて打ち取り、難を逃れる。

先制点を上げたい作新だが、2回表に先頭ランナーをヒットで出しながら、三振ゲッツーでチャンスを広げきれない。相手の先発の意図からして、できるだけ長いイニングで粘りたいことを考えると、序盤で捕まえておきたいところなのだが、神村も当然、強攻主体の作新の攻めはよくわかっている。

すると、2回裏、神村は先頭の7番木下が死球で出塁。犠打とショートゴロ野選でチャンスを広げると、2アウト後に2番増田が初球のストレートを見事にレフト線へはじき返す。これがタイムリー2塁打となって1点を先制。昨夏はつなぎ役のイメージが強かった2番打者が、一冬超えた選抜で大きな仕事をやってのける。

先制された作新だが、3回表、ビッグチャンスを迎える。

先頭の9番小川哲が四球をもらうと、続く1番小森、2番土井がいずれも初球打ちのヒットでつなぐ。実に作新らしい野球で、無死満塁、しかも上位打線。これ以上ない展開である。しかし、ここで3番小川亜はスライダーにどうしてもタイミングが合わず、3球三振に打ち取られる。さらに、4番広田をインハイで詰まらせて2アウトとすると、5番柳沼はカウント2-1からスライダーを意識しすぎたか、高めの速球に振り遅れて空振り三振。上川床のスライダーに翻弄され、中軸で満塁のチャンスを活かせなかった。

すると、その裏、神村の先頭は4番正林。初球、インサイドのカットボールをとらえた打球はライナーでライトポール際に飛び込むホームランとなり、1点を追加する。正林の打撃はもちろん素晴らしく、九州屈指のスラッガーの面目躍如であったが、小川哲の投球もなかなか乗っていけない。打者2巡目になっても、ストレートのスピードが140キロ台のボールが少ない。変化球主体にまとまりはあるのだが、本調子ではなさそうだ。

その小川哲をしり目に、神村の左腕・上川床は4回、5回を三者凡退でスイスイ投げていく。本当に1年間公式戦のマウンドから遠ざかっていたのかと思うほどの内容であり、強心臓の持ち主なのだろう。小田監督とすれば、彼にこれだけのイニングを食ってもらえたのは、うれしい誤算だっただろう。

すると、5回裏、神村は1アウトからその上川床がヒットで出塁。その後、四球・内野ゴロエラーと続き、なかなかアウトが取れない。打撃結果もそうだが、神村の各打者がファウルでよく粘り、作新に守りのリズムを作らせない。小川哲の投球数は5回ですでに90球を超えていた。ここで、9番川下はショートを強襲するヒットを放ち、3塁ランナーに続いて、2塁ランナーも生還。大きな2点を追加し、リードを4点に広げる。

序盤は完全に神村のペースで進行。しかし、流れの変わりやすい6回表、関東王者が反撃に出る。

この回、先頭の3番小川亜が内野ゴロエラーで出塁。4番広田が変化球をうまく左中間に落とし、好走塁も絡めて2,3塁とチャンスを広げる。ここで5番柳沼は粘って7球目をセンターに痛烈に打ち返し、2者が生還。3回の無死満塁で凡退した3人が、しっかりやり返す形で2点差に詰め寄った。

ここで小田監督は、エース左腕の今村を送るかと思われたが、2番手に送ったのは、右腕・千原。ダイナミックなフォームの右腕が粘って2つのアウトを取ると、四球を出したところで、作新はエース小川哲に代打・粒良を出す。すると、神村はここで3番手に左腕のを送り、まだエースは出さない。とにかく試合全体のイニシアチブを相手に渡さないぞという意思の表れ。粒良にヒットは許したものの、1番小森を得意のスライダーで見逃し三振に切って取り、この回2失点で踏ん張る。

追い上げた作新は6回から右横手の石毛がマウンドへ。昨秋も多くのイニングを投げた技巧派右腕は、ランナーを出しながらも、ストライクゾーンの横幅をうまく使い、打たせて取っていく。バックもショート土井を中心に好守備で盛り立て、ようやく作新らしい野球になってきた。

守りからリズムを得た作新は、7回表、2番土井、3番小川亜の上位陣が連打を放つ。背中から入ってくるような左サイドのに対し、2人とも開かずにしっかり我慢してヒットを連ねた。すると、ここでついに小田監督今村を投入。エースで逃げ切りを図る。

しかし、4番広田はインコース低めの変化球を体を開きながらもとらえ、ファーストを強襲する内野安打。3塁ランナーがホームインし、ついに1点差に迫る。さらに、5番柳沼は初球をすかさずとらえてライトへ打ち返し、無死満塁。2番から4連打を放ち、ビッグチャンスを迎える。今村としては絶体絶命の大ピンチだったが、ここで6番岩出は注文通りのファーストゴロゲッツーに仕留め、2アウト。この緊迫した場面で素晴らしい守りである。後続もファウルフライに取り、本日2度目の「ノーアウト満塁を無失点」で切り抜ける。

この投球で落ち着きを取り戻した今村は持ち味の速球主体の投球で作新打線を押す。すると、流れに乗った神村は8回裏、1番入耒田の四球と犠打、そして3番今岡のヒットでチャンスを拡大する。ここで打席には本日ホームランの4番正林。この回からマウンドに上がった3番手の斉藤奨に対し、高めの速球をしっかりとらえた打球は、1,2塁間を痛烈に破る。入耒田がホームを駆け抜けて5点目を挙げると、続く5番岩下もきっちり犠飛を打ちあげ、3塁ランナーが生還、この回決定的な2点が加わった。

9回表、作新も2番土井、4番広田がヒットを放ち、打力の高さを見せる。しかし、落ち着きを取り戻していた今村の前に、打ち崩すまでには至らず。最後は6番岩出がセカンドゴロに打ち取られ、ゲームセット。神村学園が常に主導権を取り続ける試合運びで、作新学院を下し、2014年の開幕戦以来となる選抜勝利を挙げた。

まとめ

神村学園の小田監督としては、会心の試合運びだっただろう。相手に研究されているであろう、左腕・今村の出番をできるだけ遅らせ、継投策で対抗。これに投手陣が応え、上川床千原の3人が自分の一番いいボールで強気に攻め、作新打線の勢いを分断した。4番手で登板した今村はショートイニングということもあり、目いっぱい飛ばして残りイニングをしっかり抑えきった。まさに「継投策の成功例」と言ってもいい投手リレー。これは次戦以降も相手を惑わすことになりそうだ。

そして、自慢の打線は作新の好投手・小川哲を攻略。相手が本調子でなかった部分もあるが、やはり、昨夏4強を経験したメンバーが多く残る強みはあっただろう。主砲・正林を中心に、全員が自分の仕事を遂行し、打ち勝つことに成功した。「投」の引き出しの多さ、「打」の確かな実力を示した九州の強豪がまずは初戦をきっちりものにした試合だった。

対する作新は実に13安打を放ちながら、無死満塁を2回逃し、3点にとどまった。強攻策主体の攻撃が悪かったわけでは決してなく、むしろその攻撃でチャンスを広げた場面もあった。ただ、勝負所で神村の各投手が投じるウイニングショットを攻略しきれず。相手のベンチワークにしてやられた感はあった。

また、エース小川哲も昨秋の無双状態を考えると、この日はもう一つ調子が上がらなかった様子。ストレートとカットボールによる投球が主体なだけに、真っすぐが走らないと相手にも打ちやすさがあったかもしれない。ただ、そうはいっても、昨年とは違い、石毛も含めて投手陣の軸がしっかりしているのが今年のチームである。今日は敗れたが、夏の戦いのめどは昨年よりは全然立ちやすいだろう。投打に実力は高いだけに、春夏連続の出場を現実的にとらえ、次の準備に取り掛かっていく。

【センバツ高校野球 神村学園 vs 作新学院 全打席完全ハイライト】 注目の対戦は関東王者vs昨夏の甲子園4強!両チーム合わせて21安打の打撃戦! 2024.3.22 阪神甲子園球場 (youtube.com)

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