記憶に残る代打(2001年夏)

2001年

日南学園 川口亜紀久

大会9日目第2試合

2001年夏2回戦

日南学園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 0 0 1 0 2 0 1 0 2 6
0 0 1 3 0 3 0 0 0 0 4

玉野光南

 

日南学園  片山→寺原

玉野光南  藤本

試合前予想

現在、九州地区で唯一全国制覇の経験がない宮崎県。2013年夏には延岡学園が県勢初の準優勝を飾ったが、過去の歴史で最も前評判の高かったのが、2001年の日南学園だっただろう。投手陣は、150キロを記録する剛腕・寺原(ソフトバンク)を中心に、右サイドの片山、左本格派の片田と質量ともに豊富な陣容。打線も3番井出(ソフトバンク)、4番長畑を中心に強力であり、小川監督も自信を持った戦力を有していた。

秋の九州大会は準々決勝で神崎に1-4と敗れ、選抜出場こそならなかったが、夏は宮崎県内を順当に勝ち上がる。この年の宮崎は、延岡学園・神内(ソフトバンク)、宮崎日大・田中と好投手が勢ぞろいし、史上稀にみるハイレベルな争いだったが、日南学園は寺原が日南振徳商戦で無安打無得点を達成するなど、最後の大会で盤石の内容を見せていた。決勝戦では宮崎日大との直接対決となったが、打線が好投手・田中から10安打8得点を奪って、8-3と快勝。1998年以来3年ぶりとなる夏の甲子園出場を決めた。

迎えた夏の本戦は、選抜優勝校の常総学院と並んで、優勝候補筆頭格として堂々と名を連ねた。エース寺原は、3年前に松坂大輔(西武)が記録した151キロの大会記録を塗り替えんと気合十分。初戦の相手は、春夏連続出場の四日市工であり、好打者・梅山を擁する油断ならない打線であった。しかし、序盤から150キロ台の速球を連発する寺原が力で圧倒。最速は151キロにとどまり、「松坂越え」はならなかったが、圧巻の投球であった。打線も18安打で8得点を奪い、8-1と快勝で2回戦進出を決めた。

その2回戦の相手は岡山代表の玉野光南。夏は初出場ではあったが、選抜には2回出場経験があり、2年前の選抜では好右腕・福明を擁して1勝をマークするなど、県内有数の実力校であった。エース藤本は右スリークオーターから繰り出す切れ味抜群のスライダーが持ち味であり、初戦は帯広三条打線を6安打9奪三振でシャットアウト。打線も大物打ちこそいないものの、コンパクトなスイングでヒットを連ね、終わってみれば大量8点を奪っていた。萱監督のもとで着実に実力をつけてきたチームは、挑まれる立場の日南学園としてはやりづらい相手だったのは間違いなかっただろう。

展開

試合前の焦点は、エース寺原のスピード記録更新だったが、その寺原が試合前に体調不良をきたしてしまう。日南の先発は右サイドの片山であったが、サイドとは言っても球速は130キロ台後半を投じ、キレのあるボールが武器の好投手である。他校なら悠々エースを張れる実力者だ。前半戦は、その片山と玉野光南のエース藤本の投げ合いに。3回裏に玉野光南が2番国米、4番三宅の2塁打で1点を先行すれば、日南も井出長畑の連打を足掛かりに同点に追いつく。

しかし、豊富な投手陣を擁する日南は5回裏からエースをマウンドへ送る。すると、1番福田への5球目。アウトコースへ流れる完全なボール球だったが、球速は154キロを表示。一気に3キロも大会記録を更新し、寺原は大会前の目標を達成する。球場全体がざわつくような雰囲気となり、この勢いに乗ったか、打線はグランド整備明けの6回表に2点を勝ち越し。このまま日南が押し切るかと誰もが思っていた。

ところが、その裏、大会No.1のスピードキングが捕まってしまう。試合前のコンディション不良、スピードを求めすぎたことでのフォームの崩れ、目標を達成したことによる安堵感など理由は様々考えられた。しかし、一番の要因は各打者がコンパクトな振りで逆方向への打撃を心掛けた玉野光南打線の実力の高さだろう。2アウトから9番近藤、1番福田、2番国米と3者連続のタイムリーが飛び出し、一気に試合をひっくり返す。いずれも寺原の得意とするストレートをとらえたもの。試合前に日南の圧倒的有利が謳われる中、意地の反撃を見せつけた。

ただ、優勝候補の名に懸けて日南学園もこのまま引き下がるわけにはいかない。8回表、疲れの見える藤本から2番井野が幸運なライト線への2塁打で出塁すると、3番井出はきっちり送って1アウト3塁。ここで4番長畑はサード強襲のタイムリー内野安打を放ち、3塁から井野がホームイン!井野長畑藤本の得意とするアウトコースのスライダーを狙い打ってのヒットであった。

酷暑の中、互いに譲らないクロスゲーム。調子の上がらない寺原は9回裏、3つの四球を与えて2アウト満塁の大ピンチを迎える。しかし、ここで6番吉川に対し、自信のある速球で勝負すると、とらえられたあたりはサード正面へのゴロに。途中出場で入っていた田中が目の前の3塁ベースを踏み、試合は延長戦へと突入した。

そして、代打へ

不調にあえぐ寺原だったが、玉野光南の藤本も7回で球数が100球を超え、スタミナは限界に近かった。V候補の日南打線を抑えるのはやはり厳しかったか。

10回表、3四死球で塁上をすべてランナーが埋めると、5番水戸には押し出しの四球を与え、ついに逆転を許す。なお2アウト満塁となり、打席には代打の切り札の6番川口藤本も渾身のボールをアウトコース低めへめがけて投じるが、やはりボールは高めに浮いてしまう。川口がファウルで粘り、カウント2-1からの7球目だった。外を狙ったスライダーが内寄りに入るところを逃さずとらえた打球は、三遊間を破るタイムリー!6点目のランナーがホームを駆け抜け、延長で2点差がついた。

その裏、ここまで苦しい投球が続いた寺原だったが、最後は下位打線を3人で片づけてゲームセット。日南学園が総力戦で苦しいゲームをものにし、ベスト16進出を決めたのだった。最終的に、この大会は準々決勝で横浜に行く手を阻まれたのだが、日南が勝った3試合の中で最も皆の印象に残ったのが、この玉野光南戦だっただろう。実力伯仲の好ゲームに観衆から万雷の拍手が降り注いだ。

玉野光南(岡山) vs.日南学園(宮崎)

コメント

タイトルとURLをコピーしました