2019年選手権準決勝 履正社vs明石商(13日目第1試合)

2019年

大会13日目第1試合

履正社

1 2 3 4 5 6 7 8 9
4 0 0 0 1 0 0 0 2 7
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1

明石商

 

履正社  岩崎

明石商  中森→安藤→杉戸

近畿勢同士の対決となった第1試合は履正社打線が初回に明石商の2年生エース中森(ロッテ)を攻略。5試合連続の2桁安打で相手投手陣を攻略し、初の決勝進出を決めた。

試合

履正社は準々決勝まで4試合連続で2桁安打を放ち、すべて4点差以上をつけて危なげなく勝ち上がってきたベスト4に残った4校の中でも打力は頭一つ抜けており、上位から下位まで切れ目がないうえに4番井上(阪神)という柱も持っている。投手陣は準々決勝でエース左腕・清水が完投しており、この試合は2年生の岩崎の役割が重要となりそうだ。元来の手堅い野球に力強さが加わり、優勝へ向けて視界良好だ。

対する明石商は3試合連続で1点差勝利と勝負強さが光る。単純な打力では履正社にかなわないが、攻撃のバリエーションの豊富さでは上回る。伝家の宝刀のスクイズをはじめとして、各選手が野球をよく知っており、2番水上、3番重宮、4番安藤とホームランを放っているように長打力も秘める。相手投手にとっては嫌な打線だ。そして、準々決勝までエース中森(ロッテ)を温存できたことも大きく、準決勝にむけて万全の状態で臨めそうだ。

 

明石商はエース中森が満を持して先発のマウンドへ。150キロをマークする速球と多彩な変化球を自裁に操り、2年生とは思えない完成度の高さを誇るが、初回に履正社打線に捕まる。マークしていた履正社の1番桃谷にカウント1-3からの高めに浮いたストレートをはじき返されると、センターのフェンスに直撃する当たりとなり、いきなり無死3塁のピンチを背負う。

ここまで4試合連続で初回にヒットで出塁している核弾頭を止めたかった中森だが、逆に桃谷が履正社打線に勢いをつける。続く2番池田がこれも高めに浮いた変化球を鮮やかにレフトへ流し打ち、打者2人で先制点を挙げる。立ち上がりが課題とは以前から言われていたものの、絶対的エースが打ち込まれる姿が明石商ナインに与えた動揺は想像に難くない。

さらに、1アウトから4番井上にはインコースのストレートを痛烈に引っ張られると、5番内倉・6番西川が長短打を放ってこの回一気に4点を挙げる。中森の調子が。悪かったのは確かだが、履正社の各打者のスイングがとにかく鋭い。ストレートも変化球も打ち返し、これまで花咲徳栄や八戸学院光星が苦しんできた剛腕投手を力技で沈めて見せた。

いきなり大量ビハインドを背負った明石商だが、その裏に頼りの核弾頭が仕事をやってのける。今大会初先発の履正社の2年生右腕・岩崎に対して1番来田(オリックス)がアウトコースのストレートをセンターに奇麗に返すと、打球はセンターバックスクリーンへ飛び込む先頭打者弾に!史上初の春夏連続の先頭打者弾となって、明石商が大きな1点を返す。

2回以降、中森は四球を出しながらも徐々に球威が増してきて得点を与えない。投手力では明石商の方に分があり、守備からリズムを作って反撃開始のはずだったが、この日の岩崎は初先発とは思えないほどの出来を見せる。低めにキレるカットボールと伸びのあるストレートを武器に、2回は3者連続三振。3回以降も得点を与えず、岡田監督にとってはうれしい誤算となる。

すると、5回表に履正社が待望の「次の1点」を奪う。1アウトから6番西川が高めに浮いたストレートを痛烈に引っ張ってレフトオーバーの2塁打。これで6番かと思わせるようなスイングでチャンスを作ると、7番野口がアウトコースのストレートを見事な流し打ちでライトへのタイムリーとし、1点を追加する。

6,7番にこれだけのスイングをされると、相手投手にかかるプレーシャーは半端ではない。中森の球数は5回で早くも100球を超え、履正社打線は前半で5試合連続の2桁安打とした。

点差を広げられた明石商は岩崎から5,6回と2塁打を放つが、いずれも2アウトから放ったもの。岩崎の強気の投球の前に追加点が奪えない。明石商得意の細かい野球も少ない点差でこそ活きてくる攻撃であり、4点差がついた状況ではなかなか攻撃の幅広さも見せられなかった。それでも明石商は捕手・水上(楽天)の好送球によるけん制タッチアウトなど、自慢の堅守で履正社に食らいついていく。

しかし、9回表に球数が150球に達した中森を下げると、履正社がダメを押す。2番手で登板した安藤を3番小深田のヒットと4番井上の四球でKOすると、明石商は3番手の杉戸がマウンドへ。5番内倉は死球で満塁となると、1アウトから7番野口が勝負を決定づける2点タイムリーをセンターに放って勝負あった。インサイドのボールで詰まらせたが、飛んだコースがよく、主将らしい責任感の一打であった。

岩崎は結局9回をすべて一人で投げ切って6安打で完投。試合前は「なんとか5,6回持ってくれれば…」と送り出された2年生投手がくせ者ぞろいの明石商打線を寄せ付けずに投げ抜き、履正社が夏は初めてとなる決勝の舞台へたどりついた。

まとめ

この試合の履正社の勝因はだれがどう見ても、初回の猛攻だろう。このリードで試合巧者の明石商に対して常にセーフティリードを奪って試合を進めることができ、戦いやすい環境を作り上げた。選抜で敗れた星稜・奥川(ヤクルト)をイメージしてきた練習の先に、中森攻略という結果が成ったとも言えるだろう。それほど見事な各打者のスイングと集中力であった。

また、投げては岩崎が予想以上の好投で明石商打線を相手に完投勝利。140キロ台のストレートの球威は最後まで落ちなかった。春以降高めてきたチーム力の一つ一つががっちりかみ合い、難敵を下した素晴らしい勝利だった。

 

一方、敗れた明石商にとっては初回にエースが打たれ、完敗と言える試合だっただろう。好投手を擁した堅い守りをバックに多彩な得点で着実に得点を奪うという、明石商の必勝パターンが初回でもろくも崩れ去ってしまった。打線もよく粘りはしたが、岩崎の出来が想像以上であった。

しかし、春夏連続で4強入りし、この一年ですっかり甲子園の強豪へと上り詰めたことは間違いなく、これからも兵庫の、そして全国の高校野球ファンをわかせてくれそうだ。

【ハイライト】履正社 vs 明石商 8月20日 甲子園 2019【準決勝】 – YouTube

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