前橋工vs敦賀気比 1997年夏

1997年

剛腕vs強力打線の白熱の名勝負

智辯和歌山の強力打線や平安の左腕・川口(オリックス)の熱投に沸いた1997年の選手権大会。その準々決勝第4試合は強力打線と好投手の白熱の攻防が展開された。

大会No.1右腕三上(ヤクルト)を擁し、福井県勢として3年連続のベスト8入りを果たした敦賀気比。三上は140キロ台の力のある速球と縦に大きく割れるカーブで2年前のエース内藤(ヤクルト)に勝るとも劣らない実力の持ち主だった。3試合で失点はわずか2と平安の川口(オリックス)と並んで大会屈指の剛腕であった。

1回戦は堀越と1-0と息詰まる投手戦であったが、2回戦は3番主将の金岡の2ホームランなどで打線が爆発。2年生トップバッターの東出(広島)や1年生の4番吉岡など若い編成ながら、強力打線を形成して3回戦は11得点。投打に高い実力を発揮し、勝ち上がってきた。

対して前年夏ベスト4の前橋工も2年連続の4強を狙ってまずはベスト8入り。。前年は好左腕・斎藤を中心に守りのチームだったが、今年は打って変わって打撃のチーム。1番大須賀(巨人)、4番主将の寺内を中心に打ちまくり、3回戦では選抜優勝の天理を下していた強打の智弁学園に堂々打ち勝って8強入りを決めた。

エース佐藤は打たせて取るタイプの技巧派だが、打線の強力援護をもらって安定感ある投球を披露。敦賀気比の強力打線に対して打たれ強い投球でしのげるか。

 

焦点は3試合で2完封しわずか2失点の敦賀気比・エース三上を強打の前橋工がいかに攻略するかだった。三上の140キロ台の速球と大きく縦に割れるカーブのどちらに的を絞るかが重要だった。

一瞬のスキを突く走塁で前橋工がサヨナラ勝ち

1997年夏準々決勝

敦賀気比

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 0 1 2 0 0 1 0 0 0 4
3 0 1 0 0 0 0 0 0 5

前橋工

 

敦賀気比    三上

前橋工     佐藤

1回裏、前橋工がいきなり三上を急襲。先頭の大須賀がいきなり甘く入った変化球をレフトに2塁打。三上もこれまでの相手とは違うとプレッシャーがかかったか、2番滝沢のバントを悪送球していきなり1点が入った。なお、ノーアウト13塁から今度は4番の寺内がスクイズ。好投手・三上相手にそう点は取れないと踏んだか、ここは確実に1点を取りに行った。さらに後続も続き、もう1点追加。3試合で2失点のエースからいきなり3点を先取した。

 

2回表、敦賀気比の強力打線も前橋工の技巧派右腕・佐藤に襲い掛かり、満塁のチャンスを作るもダブルプレーでしのぐ。しかし、3回に1点ずつを取り合った後は、落ち着きを取り戻した三上の前に前橋工打線が封じられていく。

 

すると、ここから試合は完全に敦賀気比ペースへ。4回に東出のショートタイムリー内野安打などで2点を返すと、前橋工は防戦一方に。7回にはバッテリーエラーなどでピンチを招くと、警戒していた1年生4番吉岡に見事にレフト線にはじき返されてついに試合は振り出しに戻った。

 

だが、その後捕手としても佐藤をけん引する寺内の好リードでなんとか敦賀気比の反撃を断つと、10回裏に運命の瞬間が訪れる。

 

前橋工は2番滝沢がショート内野安打で出塁し、送って1アウト2塁から4番寺内の当たりはぼてぼてのキャッチャーゴロ。捕手が1塁に送球し、2アウト3塁かと思いきや、がら空きのホームへ滝沢が猛然とダッシュ。カバーに入ろうとした三上が間に合わず、ホームに滝沢が滑り込んで劇的なサヨナラ勝ちで前橋工が2年連続のベスト4進出を決めた。

 

試合中盤から後半にかけてを見ていると、投打とも力は敦賀気比が上かとも思わされたが、初回と10回のわずかなスキをついた前橋工のしたたかさが光った。さすが前年4強を経験しただけはあると思われる試合だった。敗れはしたが、福井県勢はこの3年でベスト4、ベスト4、ベスト8。福井県黄金期ともいえる時期だった。

 

大会No.1投手と強力打線の対峙したナイトゲームはこの大会でも屈指の好ゲーム。最後に滝沢がホームインしたシーンは大会のハイライトともいえるシーンになった。

【好投手列伝】福井県篇記憶に残る平成の名投手 1/3 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

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