右投手 野上亮磨(神村学園)
創部3年目の初出場校・神村学園を決勝まで導いたエース。伸びのある速球と伝家の宝刀・スライダーを武器に、伝統校・星稜、好打者・川端(ヤクルト)を擁する市立和歌山商を下し、まずは8強に進出した。アウトコース主体の投球ながら、それだけで十分抑えきれるボールの質の高さがあった。
その後も投げるたびに、調子を上げていき、準々決勝ではそれまで2試合で22得点をたたき出していた沖縄尚学の強力打線も2失点で完投。南国対決を制して、さらに勢いにのると、準決勝では羽黒打線を4安打に封じて、ついに今大会初の完封勝利をマークした。特に羽黒打線の主砲・佐藤からは4打席連続三振を奪取。それまで当たりに当たっていた佐藤だったが、野上のスライダーの前にバットがことごとく空を切った。
決勝では、疲労から愛工大名電の強力打線に捕まったが、初出場での準優勝が与えたインパクトは鮮烈であった。それまで樟南・鹿児島実の2強の構図だった鹿児島の高校野球が、神村学園の登場を機に大きく様変わりしていくこととなる。
【山形県勢初の決勝進出はならず】2005 77回選抜 準決勝 羽黒 vs 神村学園 平成17年【山形県勢初の4強羽黒高】 – YouTube
左投手 大西正樹(神戸国際大付)
新チーム結成以来、練習試合も含めて神宮の準決勝まで36戦負けなしで勝ち進んだ神戸国際大付。2度目の出場ながら、タレントぞろいのチームで優勝候補の一角に挙げられていた。そのチームを引っ張ったのが、本格派左腕の大西(ソフトバンク)。荒れ球ではあるが、力のある速球とカーブを武器に三振の奪える投手であり、コーナーにボールが決まるときは手が付けられなかった。
1回戦では甲府工・三森との好投手対決となり、1点先取されたが、粘りの投球で踏ん張ると、終盤に味方打線が一挙4点を挙げて、神戸国際大付として初めての勝利を手にした。
そして、最も輝きを放ったのが、前年王者・駒大苫小牧との2回戦。先頭打者の林にいきなり死球を与えるが、その荒れ球ぶりが功を奏し、アウトコースの速球・スライダーに北の覇者が全く手が出ない。気づけば、9回1アウトまで無安打無得点の快投でV候補を1安打完封し、ベスト8へ力強く勝ち上がった。その後、準決勝で優勝した愛工大名電打線には捕まったものの、投げっぷりのいい彼の投球は高校野球ファンに鮮烈な印象を残した。
2005年第77回選抜高校野球大会準決勝 愛工大名電vs神戸国際大付 – YouTube
捕手 水野祐希(東邦)
大会でも5本の指に入ると言われた本格派右腕・木下(日本ハム)を攻守で支えたのが、5番捕手の水野(中日)であった。
初戦は育英・若竹(阪神)との注目の好投手対決になったが、序盤からストレート主体に飛ばす若竹をしり目に、木下-水野の東邦バッテリーは変化球を有効に使った投球で育英打線を完全に封じ込める。終盤には育英の走塁ミスにも冷静に対処し、相手のチャンスを摘み取った。そして、延長10回裏、疲れから球威の落ちてきた若竹のアウトコースの速球を水野がとらえると、打球は右中間を破るサヨナラ打となって、勝負あり。水野の守備と打棒で好勝負をものにした。
その後、2回戦では関東王者の東海大相模打線を相手に、封印していたフォークボールを解禁し、強力打線を3失点で完投。終盤の集中打でV候補を突き放し、見事8強の座を勝ち取った。準々決勝は羽黒打線の破壊力の前に屈したが、エース木下の力を存分に引き出した水野のインサイドワークは大会出場の捕手の中でも図ばぬ抜けていた。
東邦vs育英 2005年選抜 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)
一塁手 湯浅亮一(慶應義塾)
Enjoy baseballの合言葉を掲げ、2000年代に復活を遂げた伝統校・慶應義塾。その足掛かりとなった大会が2005年の選抜であった。前年秋の関東大会では準々決勝で敗退したものの、準優勝した浦和学院と引き分け再試合の激闘が評価され、久しぶりの選抜出場を勝ち取った。
初戦は大会初日の第3試合。雨が降りしきる中で、常連校・関西との激闘となった。上位に4割打者がずらりと並ぶ強力打線にエース中林をもってしても、ある程度の失点は覚悟しなくてはならない試合だったが、4番湯浅を中心とした強打で応戦。左打席からの強烈な打球が相手守備陣を切り裂き、3安打を放ってチームを牽引した。関西のサイドハンド西所を攻略し、雨中の激戦を8-7とサヨナラ勝ちで制して初戦突破を果たした。
その後、2回戦では福井商の好投手・林(ロッテ)も終盤に攻略して3-1と勝利。この選抜8強の快進撃が、その後2008年夏の甲子園8強や同年の神宮大会優勝へとつながったのは間違いないだろう。
2005年高校野球神奈川県大会 東海大相模VS慶応 – YouTube
二塁手 堂本達也(神戸国際大付)
近畿王者として甲子園に乗り込んだ神戸国際大付。大西・有元の2枚看板を強力打線が支えたタレント軍団だったが、その集団を攻守でまとめたのが主将の堂本であった。セカンドの守備では再三の好守で投手陣を盛り立て、打撃では絶対的4番の正木の後を打ち、ランナーがたまった場面で得点を挙げる活躍を見せた。
1回戦は2年連続出場の甲府工と対戦。前年の大会でも好投した甲府工・三森のスライダーの前に7回まで無得点に抑えられていたが、8回裏に3番井内の同点打で追いつくと、さらにランナーをためた場面で堂本が打席に。アウトコースのボールを逆らわずにはじき返した打球は右中間を真っ二つに破り、関東屈指の好投手を沈める一打となった。
神戸地区屈指のやんちゃ集団を束ねた堂本のリーダーシップにより、チームは初の選抜4強に進出。準決勝で優勝した愛工大名電に競り負けたが、「神戸国際大付」の名を一気に知らしめた大会となった。
2005年第77回選抜高校野球大会準決勝 愛工大名電vs神戸国際大付 – YouTube
三塁手 堂上直倫(愛工大名電)
スピード感あふれる攻撃で次々と好投手を攻略した愛工大名電。しかし、その中心には2年生スラッガー堂上直(中日)の存在があったことは忘れてはならないだろう。プロ野球選手の父と兄を持つサラブレッドだったが、3つ上の兄は甲子園でその打棒を発揮しきれずに早期敗退を喫していた。家族のリベンジと前年準優勝のリベンジを期して、2005年選抜の舞台にたった。
その打棒は大会出場校の打者の中でも際立っており、大会を通じての打率は16打数8安打の5割でホームランも2発をマーク。プルヒッティングから繰り出される強烈な打球で相手守備陣を突き破った。
巧打者タイプが多い名電打線にあって、右のスラッガーがどっかりと4番に座っていることは打線のバランスを非常によくしただろう。準々決勝では天理の技巧派左腕・小倉から、決勝では神村学園の好投手・野上(巨人)からそれぞれ豪快な一発を放ち、優勝を手繰り寄せる働きを見せた。
2005年第77回選抜高校野球大会決勝戦 愛工大名電vs神村学園 – YouTube
遊撃手 柴田亮輔(愛工大名電)
2番ショート、そして主将として愛工大名電を初優勝に導いたのが柴田(オリックス)であった。前年の選抜準優勝も経験していた柴田、佐々木、小島を中心に悲願の優勝を狙って乗り込んできた「Meiden」。犠打を絡めて相手守備陣をかき回す攻撃はさらにグレードアップし、スチール、エンドランなど積極的な走塁も絡めて得点をたたき出した。
1回戦、2回戦はともに2得点と打線は低調だったが、エース斉賀が2試合連続完封ピッチで順調に発進。準々決勝で強打の天理を相手に終盤逆転勝利を挙げると、ここから打線は一気に上げ潮ムードとなった。
そして、準決勝は近畿王者・神戸国際大付とのV候補対決に。この試合で柴田は勝ち越しの2点タイムリーと同点の2点タイムリーを放ち、一人で4打点をたたき出す大活躍。2回戦で1安打完封勝利を挙げた左腕・大西(ソフトバンク)の高めに浮いたボールを逃さずとらえ、打撃戦を制する殊勲者となった。
大一番を乗り越えて迎えた決勝では神村学園・野上(巨人)を早々と攻略して念願の初優勝を達成。愛知の私学4強と言われながら、ライバルの中京大中京、東邦に甲子園の実績で水をあけられていた愛工大名電だったが、この2004年、2005年の2年間で一気に肩を並べるだけの存在になったと言えるだろう。
2005年第77回選抜高校野球大会準決勝 愛工大名電vs神戸国際大付 – YouTube
左翼手 真井翔太(天理)
前年夏8強のメンバーが多く残った天理。大会出場校中屈指の破壊力を誇った打線にあって最も頼りにされた存在がこの男だっただろう。1年生から中軸を務めた屈指の好打者は左打席からパンチ力のある打撃で相手投手を打ち崩した。特にストレートにはめっぽう強く、秋の近畿大会でも敗れはしたものの、神戸国際大付属の左腕・大西(ソフトバンク)、右腕・有元を攻略した。
そして、迎えた選抜本戦ではいきなり神宮優勝の柳ヶ浦が相手だったが、剛腕投手・山口俊(巨人)のストレートに振り負けることなく、3安打をマーク。世代屈指の剛腕を真っ向勝負で打ち砕いた。真っ向勝負で戦前の下馬評をかわし、4-0と完勝でスタートを切った。
最後は準々決勝で優勝した愛工大名電に力負けしたが、この試合でもエース斉賀から今度は変化球を逆方向へはじき返して先制打を放ち、対応力の高さを示した。
山口俊 柳ヶ浦 ストレート勝負も天理に初戦敗退 2005年高校野球 – YouTube
中堅手 中島ユン(羽黒)
2003年夏に初出場を果たしていたものの、選抜はこの年が初出場だった羽黒。しかし、東北大会決勝では甲子園を経験したスタメンがほとんど残った青森山田に9-8と打ち勝ち、神宮大会でも夏の王者・駒大苫小牧に競り勝つなど、その力は全国クラスであった。
この年はエース片山マウリシオや4番吉野など日系ブラジル人のメンバーが数人おり、自由奔放なスタイルで相手をかき回す野球が魅力であった。中でも1番の中島ユンは2年生ながら1番センターの重責を担い、初戦は2年連続出場の八幡商の好投手・上田から3安打をマーク。延長にもつれ込んだ熱戦は延長12回裏に中島が暴投でサヨナラのホームを駆け抜け、記念すべき甲子園初勝利を挙げた。
その後、試合巧者の如水館、木下(日本ハム)-水野(中日)の好バッテリーを擁した東邦と強豪を連破して4強に進出。酒田南1強の様相を呈していた山形に新たな強豪が誕生した大会となった。
【アメリカンスタイルの羽黒野球】2005 77回選抜 2回戦 羽黒 vs 如水館 平成17年【かわされた如水館打線 羽黒・片山攻略できず】 – YouTube
右翼手 赤嶺慎(沖縄尚学)
1回戦屈指の好カードとなった沖縄尚学vs青森山田。前年夏からエースの剛腕・柳田(ロッテ)と沖縄尚学打線の対決となったが、意外にも序盤から沖縄尚学打線が柳田の速球を滅多打ちにし、2番手の2年生右腕・野田も攻略して16得点を奪い取った。
その中でも7番に座った赤嶺は3安打を放って、下位打線の起点として大活躍。持ち味の俊足も活かしてダイヤモンドを駆け回った。2回戦では西条のサイド右腕・津島からまたしても3安打を放ち、2試合連続で猛打賞を達成。強打の沖尚打線を象徴する存在であった。
岡山・関西から赴任してきた角田監督に代わってから初めての甲子園だったが、角田監督曰く沖縄の球児の上半身の力は本土より確実に強いとのこと。鍛えるのが難しい大円筋や小円筋がもともと発達しており、打球に伝わるパワーがけた外れであった。翌年に出場した八重山商工もそうであったが、小柄ながらパンチ力のある打者が並び、全国の好投手を震撼させた。
コメント