2021年選手権準々決勝
京都国際vs敦賀気比
51% 49%
〇1-0 前橋育英 〇8-6 日本文理
〇6-4 二松学舎大付 〇6-3 三重
投手力に秀でた京都国際と打力に自信を持つ敦賀気比の対戦。ともに総合力が高く、ハイレベルな攻防となりそうだ。
京都国際はエース左腕・森下が2試合を完投。3回戦の9回に突然乱れたが、2試合通じてほとんど付け入るスキを見せていない。左腕からのキレのあるストレートとスライダーはなかなかとらえにくく、左の好打者が並ぶ敦賀気比打線とも相性は良さそうだ。ただ、球数制限の問題もあり、右腕・平野の出番もどこかでは作りたいところ。ベンチの判断に注目だ。
対する敦賀気比打線は2試合とも序盤の集中打で相手を飲み込んだように破壊力は十分。甘いボールは確実にヒットにしていき、打線に全く切れ目がない。森下と言えども、二松学舎戦の9回のようなスキを見せたら一気に飲み込まれるだろう。ただ、3回戦の三重戦でリリーフした左腕をとらえきれなかったのは気がかり、森下のスライダーに対していかに体を開かずに打ちに行けるかが重要だ。
一方、敦賀気比はエース本田が3回戦は3失点完投と調子を取り戻した。ボールのキレで勝負するタイプであり、コンタクトされてもバットを押し込んで内野ゴロの山を築いていく。見た目以上に打ちにくい投手だ。ただ、もう一人の右腕・吉崎も含めて絶対的な球威があるわけではないので、コントロールに細心の注意を払いながら投球していきたい。
対する京都国際は3回戦で3ホームランを放ち、いい意味で「らしくない形」で得点を重ねた。ただ、小牧監督としては犠打や走塁のミスが絡んで取れるところで取り切れていないのは気がかりだろう。次戦までには修正したいところだ。ホームランを放った中川、辻井やキーマンの1番武田など右打者が本田のアウトコースのスライダーを見極められるかも重要となる。
タイプ的には京都国際の森下は敦賀気比打線に相性がよさそうに映るのだが、疲労も出てくるため、やってみないとわからないところはある。京都国際打線も調子は悪くないが、敦賀気比投手陣から大量点するイメージはやはりわかないので、「森下vs敦賀気比打線」が勝敗のカギをそのまま握っている感はある。あとは京都国際の投手起用がどうなるかも見ものだ。
主なOB
京都国際…曽根海成(広島)、清水陸哉(ソフトバンク)、上野響平(日本ハム)
敦賀気比…内海哲也(巨人)、吉田正尚(オリックス)、平沼翔太(日本ハム)、山崎颯一郎(オリックス)、木下元秀(広島)
京都 福井
春 1勝 1勝
夏 2勝 0勝
計 3勝 1勝
対戦成績は京都勢の3勝1敗。そのうち2勝は平安が挙げており、やはり京都の高校野球を語るうえで平安は外せないファクターである。福井勢の1勝は2013年の選抜。2回戦で好投手・岸本(中日)を擁した敦賀気比が近畿王者の京都翔英に6-5と競り勝ち、そのまま4強まで勝ち上がった。さて、今回はどちらの県が勝利するか…
思い出名勝負
2013年選抜2回戦
京都翔英
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
2 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 |
0 | 4 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | × | 6 |
敦賀気比
京都翔英 榎本
敦賀気比 岸本
記念大会で36校が出場した第85回選抜記念大会。大会序盤の2回戦で早くもV候補同士の試合が実現した。
京都翔英は太田監督の指導のもと、異色のスタイルで力をつけてきた京都の新興勢力。一日の練習中に何度も間食を入れる食育やバットにテープをグルグルに巻いて重くしたものを振ることでスイングスピードを速めるなど、独自の練習法で腕を磨いてきた。
エース榎本はベンチ外の選手の思いも背負うという意味で背番号18をつけて力投し、前年秋は近畿大会を制覇。捕手・山口と打順でも中軸を組み、2人を中心に初出場ながら貫禄・風格の漂うチームであり、上位進出を狙っていた。
一方、敦賀気比は1998年に4番として東出(広島)とともに甲子園の舞台を踏んだ東監督が就任し、この年で2年連続の選抜出場を達成。前年秋の福井大会では兼記録をことごとく塗り替える強打を見せた。北信越大会決勝で栗原(ソフトバンク)を擁する同じ福井の春江工に敗れたため、神宮出場はならなかったが、裏の優勝候補として期待を寄せられていた。
甲子園では京都翔英より一足先に開幕戦に登場。九州王者・沖縄尚学との対戦とあって、試合前は不利の予想もあったが、どっこい初回から5点を挙げる猛攻で強豪を一蹴。5番浅井が5安打を放つなど猛打で11点をたたき出し、エース岸本の好投もあって11-2と全く寄せ付けずに勝利を収めた。
強打を誇る敦賀気比と好バッテリーを擁する京都翔英の激突。個性的なチーム同士の白熱の攻防が期待された。
そんな試合は1回からいきなり火花の散る展開となる。1回表、京都翔英は強打の1番小谷が2塁打で出塁し、犠打と四球で2アウトながら1,3塁のチャンスを迎える。ここで1塁ランナーの榎本がスタートして重盗を試みるが、敦賀気守備陣は冷静な判断で3塁走者小谷を挟殺にかかる。
ところが、ランダンプレーに入ったエース岸本とランナーの小谷が激突し、ボールは転々。岸本が倒れこみ、敦賀気比守備陣がエアポケットに入ったような状況の中で1塁ランナーの榎本もホームインし、京都翔英が2点を先制する。
小谷は決して故意に行ったプレーではなかっただろうが、しかし、結果的にこのプレーが負けん気の強い敦賀気比ナインに火をつける。
エースが倒されて奪われた得点を絶対に取り返そうと、2回裏に京都翔英・榎本を攻め立て、6番小林、7番岩田の長短打で1点を返すと、なお2アウト1,2塁から2番米満一がインサイドの速球を振り抜き、右中間への逆転3ランで一気に試合をひっくり返す。京都翔英にとっては絶対的エースがいきなり4点を返される展開は想定外だっただろう。
それでも近畿の王者に輝いた自信はそう簡単には揺るがない。5回表、9番西岡田のヒットなどでランナーを2人ためると、1番小谷がストレートをとらえた打球はレフトスタンドに飛び込む3ランとなって再び京都翔英が逆転。「目には目を、歯には歯を、3ランには3ランを」と言わんばかりの小谷の強打で流れを強引に引き戻す。
しかし、その裏に敦賀気比が2番米満一、3番山田の長短打で再び追いつくと、徐々に流れは敦賀気比に傾く。エース岸本のアウトコースいっぱいに突き刺さる速球と切れ味抜群のスライダーを前に6回以降京都翔英打線は手も足も出ない。試合前に岸本の癖をいくつもつかんでいた京都翔英ベンチもランナーが出なくては策の出しようがなかった。
防戦一方の中で踏ん張っていた榎本だったが、徐々に圧力を増す敦賀気比打線の前に持ちこたえられなくなる。7回に再び中軸に連打を浴びて満塁のピンチを招くと、最後は押し出しの四球で決勝点を与え、万事休す。結局、京都翔英打線はわずか3安打に抑え込まれ、スコアこそ5-6だったが、内容的には完敗であった。敦賀気比は投打に力強い内容で3回戦へとコマを進め、この大会4強まで勝ち上がった。
敦賀気比は2014年夏に強打で4強入りし、2015年選抜では福井県勢として悲願の初優勝を達成。しかし、この躍進の流れの礎を築いたのは2013年の選抜大会だったのは間違いない。3番山田、4番喜多など、東監督をして「こいつらで勝てんかったら僕はいつ勝つねん」という実力者がそろったこの年の代が甲子園できっちり結果を出したことは、のちのちのことを考えても非常に大きかった。
一方、敗れた京都翔英は初陣らしからぬチームではあったが、やはり全国の壁は高かった。夏は福知山成美に敗れて甲子園出場はならず。ただ、翌年の選抜は龍谷大平安が初の選抜制覇、福知山成美が8強と揃って好成績を収め、京都勢の活躍が目立った。新興勢力の京都翔英の躍進がその他の強豪校に火をつけたというのは考えすぎだろうか。大変個性的で、印象深い好チームであった。
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