2022年選手権3回戦 近江vs海星(10日目第4試合)

2022年

大会10日目第4試合

海星

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 0 0 0 0 0 0 0 1
0 0 1 0 1 0 5 0 × 7

近江

 

海星   宮原→塚本→向井

近江   山田→星野

投手力の高いチーム同士の対戦となった第4試合は、近江が終盤に山田のグランドスラムで海星の先発・宮原をKO。投打に千両役者ぶりを発揮した山田の活躍で近江が3季連続となるベスト8進出を決めた。

試合

近江は投打の柱のエース山田、海星は初戦以来の先発となる宮原がそれぞれマウンドに上がった。

1回表、1番河内の難しい三遊間の打球をショート津田→ファースト岡崎の好プレーでアウトにした近江は、山田が初回を3人で片付ける。これに対し、宮原もランナーを一人許したものの、スライダーを軸に近江打線を無失点で片付ける。初回は両投手とも安定した立ち上がりであった。

ところが、わからないもので、2回2アウトから山田が突然乱れる。明らかにボール球が目立つようになり、6番平尾に四球を与えると、海星はすかさずスチールを敢行。得点圏にランナーを進めると、7番がアウトコースのスライダーをライトに流し打って1点を先制する。これまで日本文理・田中、天理・南沢と一線級の投手を攻略してきた海星打線。一分の隙も許してはくれない。

これに対し、今大会いまだ失点なしの海星・宮原を近江も攻略にかかる。ここまで絶好調の2番清谷が粘って四球を選ぶと、3番中瀬にエンドランをかける。サード前のぼてぼての当たりとなったが、これがサード田川の悪送球を誘って、スタートを切っていた清谷が一気にホームを駆け抜ける。先制されて嫌な雰囲気の近江だっただけに、相手のミスからもらったこの得点は大きかった。

同点に追いついてもらった山田は中盤に入って徐々にコントロールを取り戻す。逆方向中心に打ち返してくる海星打線に対して、縦の変化球を有効に使って打たせて取っていく。すべての変化球が決め球に使える、この選抜準優勝バッテリーは、広い選択肢を有している。

すると、5回裏、近江は再び好調の2番清谷が結果を残す。先頭の9番小竹が右打ちで出塁すると、犠打で二進。暴投で小竹が3塁まで進むと、清谷は高めの速球をうまくミートしてセンターへはじき返す。センター河内のダイブも及ばず、打球は左中間最深部を転々とする。ランニングホームランを狙った清谷は形成守備陣の中継プレーの前にホームタッチアウトとなるが、近江が大きな勝ち越し点を手にする。

グラウンド整備を終え、試合の流れが変わりやすい6回表を山田は3者連続三振で切って取るが、さすがに海星打線もただでは終わってくれそうにない。7回表、1アウトから5番西村が高めに浮いた変化球をのがさずライトへはじき返すと、続く6番平尾はこれも変化球を拾って、ショート後方へのテキサスヒットを放つ。

終盤にきてギアをあげてきた山田だが、海星打線も威力のある速球をファウルでしのぎ、変化球が甘くなるところを確実にとらえてくる。さすがに今大会注目の好投手を立て続けに攻略してきただけのことはある。しかし、ここからが山田の真骨頂だった。球威抜群の速球をアウトローに突き刺して、当たっている7番を見逃し三振に切って取ると、続く代打の切り札・柿本はフルカウントからアウトコースのフォークで空振り三振。大事な場面で研ぎ澄まされた集中力を見せる。

この山田の踏ん張りが再び攻撃のリズムを生み出す。7回裏、近江打線の粘り強い打撃の前に球数が100球を超えた宮原に対し、近江は先頭の8番大橋がショートゴロエラーで出塁。海星にとっては痛い形でランナーが出る。犠打で二進後、2アウトとなるが、当たっている清谷がこれも巧みなミートで内野安打を放つ。さすがの宮原も疲れから制球が乱れ始め、3番中瀬には四球を与えて2アウト満塁となる。

続くはもちろん4番山田。最も嫌な場面で最も嫌な打者を迎えた海星バッテリーは、慎重にならざるを得ず、初球、2球とボールが外れる。カウント0-2となり、バッターサイドもストライクを狙いにいくことはわかっているが、バッテリーとしても3ボールは避けたい。たまらず得意のスライダーでカウントを整えにいったところを、山田がここぞとばかりにフルスイング。打球はレフトスタンドへ飛び込む満塁弾となって試合は決した。

この回、さらに1点を追加した近江は今後も見据えて、8回から左腕・星野をマウンドへ送る。緊張からか制球が乱れるが、決め球のチェンジアップはさすがに緩急が効いており、大事な場面で海星の打者から空振りを奪う。8回、9回と複数ランナーを出すが、最後は8番井坂をサードライナーに打ち取ってゲームセット。近江が会心の内容で勝利をおさめ、ベスト8進出を決めた。

まとめ

2回戦は鶴岡東打線の前に苦しい内容となった山田だったが、この日は中盤以降しっかりボールを制御できているように見受けられた。ボールのコントロールがついているがゆえに、粘り強い海星打線に対してしっかり打者を見ながら勝負して適切な球種を選択することができていた。打っても7回のチャンスで自身初となる満塁弾を放つ活躍ぶり。今大会の主役というべき選手が投打に乗ってきた。

また、今年の近江の強さは山田以外の選手の成長にあるだろう。1番津田に当たりが出ていないのは不安材料ではあるが、2番清谷がそれを補って余りある活躍を見せ、得点力を保っている。また、守っては横田の離脱でポジションが変更しながらも、それを全く感じさせない堅守を見せ、ピンチの芽を摘み取っていった。過去の滋賀県のチームの中でも、投攻守に最も完成度が高いのではと思わせる今年の近江。全国制覇の千載一遇のチャンスをつかむことはできるか。

 

一方、海星は山田のグランドスラムの前に散ってしまったが、こちらも投攻守に充実した素晴らしいチームであった。特に日本文理の田中、天理の南沢とタイプの違う好投手を立て続けに攻略した打線は、センター中心に低く強い打球を打ち続け、高校生のお手本と呼べる打撃を披露した。宮原向井の好右腕2人を内外野の堅守で支えたディフェンス面もスキがなく、ここで近江と当たらなければもっと上にいっていても何ら不思議でなかった。

2002年夏に就任直後で甲子園出場を決めた加藤監督だったが、その後10年ほどはなかなか勝ち上がれない苦しい時期があった。しかし、ここ数年の躍進で、今や海星は長崎でも一番手、二番手に上がるチームになったと言えるだろう。まだ夏の優勝のない長崎県にはじめて真紅の優勝旗を持ち帰るのは、伝統校・海星になるのかもしれない。

8月15日 FULL【近江 (滋賀) vs. 海星 (長崎)】ハイライトvs ホームラン ~ 第104回全国高校野球選手権大会2回戦 2022 – YouTube

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