2023年選手権2回戦 文星芸大付vs宮崎学園(6日目第4試合)

2023年

大会6日目第4試合

文星芸大付

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 2 1 0 2 4 0 9
0 0 0 5 2 0 0 0 0 7

宮崎学園

 

文星芸大付  渋谷→堀江→工藤

宮崎学園   河野

中盤以降壮絶な打ち合いとなった試合は、終盤に文星芸大付打線が宮崎学園の2年生左腕・河野を攻略。4点のビハインドを跳ね返し、逆転勝ちで3回戦進出を決めた。

試合

打力の文星芸大付に対し、好左腕・河野を中心に守りの野球の宮崎学園。好対照なチーム同士の顔合わせとなった。

宮崎学園の河野は2年生ながらエース格としてチームを牽引。日南学園や聖心ウルスラといった県内の強豪を抑え、5試合をわずか7失点で勝ち上がってきた。1回表、文星芸大付の強力な上位打線に対し、得意のスライダーにチェンジアップも駆使しながら、3者凡退で切り抜ける。

これに対し、文星芸大付は継投策で勝ち上がってきたチーム。先発には左腕・澁谷を持ってきた。打たせて取るタイプの左腕に対し、宮崎学園は1番斎藤聖がいきなり甘く入った変化球を右中間に運び、2塁打を放つ。初出場、初回に迎えたビッグチャンスでどうつなげるかというところだったが、2番渡邉には強攻策。しかし、真ん中寄りのボールを引っ張るも、3塁ゴロとなって進塁ならず。後続を澁谷がが連続三振に切って取り、こちらも無失点で勝ち上がる。

序盤3回は互いにランナーを出しながらも、両先発が踏ん張り、0-0で進行。宮崎学園の河野、文星の澁谷とともに左腕からのスライダーの切れが光り、相手打線に決定打を許さない。特に河野は、積極的に振ってくる文星打線に対し、ストライクからボールになるスライダー、タイミングを外すチェンジアップで翻弄。選抜8強の作新学院に打ち勝った打線を封じ込める。

しかし、中盤に入り、両チームの打線が打者2巡目に入って相手投手の攻略にかかる。

4回表、先手を取ったのは文星だった。1アウトから4番小林がアウトコースのスライダーをうまく拾い上げてレフトへの2塁打。さすが4番というべき、柔らかい打撃で対応する。続く5番黒崎はライトフライに倒れるも、6番山田は3ボールから取りに来た真っすぐを逃さない。左打席から放った打球は鋭く左中間を破る、左打者にとって理想的な打撃。1点を先行すると、さらに、7番江田も初球の高め速球をすかさずとらえ、2点目。このあたりの攻撃のスピード感はさすがである。

だが、この文星の攻撃は両チーム乱戦に突入する号砲であった。

4回裏、宮崎学園打線も突如としてつながりだす。1アウトから4番斎藤崚がアウトコースの速球にうまく合わせると、打球はライト線へ落ちる2塁打となってチャンスメーク。ここから澁谷が乱れ始め、連続四死球で満塁となる。打席には7番丸山澁谷のアウトコースの速球をとらえると、打球は、ライト前へ。これをライトが後逸する間に塁上の走者がすべて走者を駆け抜け、3-2と宮崎学園が一気に試合をひっくり返す。

さらに、2アウト後、9番浦田の高いバウンドのファーストゴロがエラーを誘ってもう1点。続く1番斎藤聖もうまい流し打ちでセンターへ打ち返し、この回一挙5点のビッグイニングとなる。先発・澁谷はここでついに降板。不運な形も多かったが、本来のボールは来ていただけにもったいない感があった。ただ、逆にいえば、それだけ宮崎学園の集中力が素晴らしかったということだ。

5回表、文星芸大付も3番曽我の痛烈なタイムリー2塁打で1点を返すが、一度火のついた宮崎学園打線が止まらない。

5回裏、先頭の4番斎藤崚がサード前への内野安打で出塁。捕逸で2塁へ進むと、続く5番川越もセンターへのヒットでチャンスを広げる。文星の2番手・堀江に対し、ストレートに的を絞って攻略にかかる。6番田口の犠打で1アウト2,3塁となると、先ほど逆転打の7番丸山が今度は、セーフティスクイズを仕掛ける。これが見事に成功して3塁ランナーがホームを駆け抜けると、8番河野もショートへの内野安打となって7-3。守りのチームの宮崎学園が予想外の集中打で差を広げた。

4点のリードを奪った宮崎学園。しかし、気がかりはエース河野の球数であった。6回途中で球数は100球に到達。文星の各打者の粘りもあり、3ボールになるシーンが多い。6回は相手の走塁ミスで事なきを得たが、まだ何かありそうな雰囲気は充満していた。

すると、7回表、文星打線がついに河野をとらえだす。1アウトから1番大塚が四球を選ぶと、すかさず盗塁で2塁へ。2番梅山が高めに浮いたスライダーを左中間へはじき返し、まず1点を返す。疲れの見える河野のボールが高めに浮いたところを逃さない。さらに、3番曽我の見事な右打ちでチャンスを広げると、4番小林はスライダーをレフトへ引っ張ってタイムリー。ストレートもスライダーも、そして、アウトコースもインコースも捕まえ、宮崎学園バッテリーの逃げ場を文星打線がなくしていく。

堀を埋めるような文星の猛攻。8回表、河野を完全に攻略する。先頭の7番江田が高めの速球をセンターオーバーの2塁打にすると、8番篠崎の打球はセカンドゴロに。これをセカンドが奪取して3塁を狙った走者を刺そうとしたのか、焦ってはじいてしまう。ここで7回からマウンドに上がっていた9番工藤が初球をとらえた打球はライト前へ。これを今度は、宮崎学園のライトが後逸。塁上のランナーに加えて、打った工藤までホームを駆け抜け、8-7とついに文星が試合をひっくり返した。

この回、さらに5番黒崎にもタイムリーが飛び出し、9点目。9回を投げ切った河野の球数は実に164球を数えていた。9回裏、宮崎学園打線も代打・瀬尾、5番川越のヒットで1,2塁とし、最後まで粘りを見せる。しかし、6番田口の痛烈な当たりはサードゴロとなり、梅山ががっちりキャッチ。サードベースを踏んでから2塁へ送球して、フォースアウトとなり、併殺で試合は決した。両チームとも失策と集中打の出た乱戦を制し、文星芸大付が2007年以来となる甲子園での勝利を手にしたのだった

まとめ

文星芸大付としては、中盤に大量リードを許し、苦しい展開だったが、打線がどっしり腰を据えて相手エースを攻略。左腕投手に対して、センターから逆方向への意識を徹底し、集中打で試合をひっくり返した。このあたりはさすが王者・作新に打ち勝ってきたチームである。投手陣も失点こそしたものの、それぞれが持ち味を出して粘投。投打に粘り強さを見せた伝統校が、久々の甲子園で「らしい」野球で、勝利を手にした試合であった。

一方、宮崎学園は、初出場で大善戦したが、最後は文星打線の圧力の前に、守備ミスが誘発されてしまった。しかし、初めての大舞台である程度ミスが出るのは仕方ない。2年生エースの河野は、切れ味抜群のスライダー、落差の大きいチェンジアップで、序盤は相手打線を翻弄。これからの成長が楽しみな左腕であった。新興勢力の台頭が激しい宮崎県で、また魅力的なチームが現れたと感じさせる試合であった。

【宮崎学園最後は粘るも初勝利ならず、文星芸大付属は粘り勝ち!!】 – YouTube

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