神宮大会4強校の成績振り返り(2002年~2007年)

コラム

各地方大会終了後、すぐに大会が開催される夏と違い、選抜は秋季大会が終わってから5か月が経過して行われます。大会前の優勝予想は非常に難しく、何か月も前の大会成績をもとに考えなくてはいけません。しかし、だからこそ番狂わせと言われる結果が出て面白いのではないでしょうか。今回は、歴代の神宮大会で4強入りしたチームの選抜での結果を振り返っていきます。

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2002年選抜

優勝:報徳学園→優勝

準優勝:関西→ベスト4

ベスト4:日大三→初戦敗退

ベスト4:中京大中京→初戦敗退

 

この年代では神宮優勝校の報徳学園が選抜も制覇して秋春連続で頂点に立った。

MAX147キロを誇るタフネス右腕・大谷(ロッテ)を擁し、さらには控え投手陣のみで神宮を制するという圧巻の勝ちっぷりを見せた報徳学園。しかし、選抜本戦ではエース大谷の調子がなかなか上がらず、シーソーゲームが多かった。そんな中でも日大三、広陵、浦和学院、福井商と強豪校を相次いで破ると、打線もしり上がりに調子を上げて決勝では15安打8得点の猛攻を披露。28年ぶりに選抜の頂点に立った。

関西は2年連続の選抜出場。前年からエースの左腕・宮本(日本ハム)が主将・3番と一人三役を務め、4番捕手の萬浪とのバッテリーが中心のチームであった。完成度の高い左腕は初戦で強打の智辯和歌山を4安打2失点で完投すると、2回戦では機動力野球の九州学院も2失点で完投。準々決勝では尽誠学園に前年のリベンジを果たし、堂々4強入りした。準決勝で鳴門工のスクイズ攻勢に屈したが、投打ともに実力を見せつけた大会であった。

前年に初めてとなる夏の全国制覇を達成し、エース左腕・清代、野崎・幸内の二遊間コンビが残った新チームは秋の東京大会を制して、選抜でも優勝候補に挙がった。しかし、奇しくも1回戦の相手がV候補大本命の報徳学園に。初回に速攻で2点を先制したが、底力でひっくり返され、2-3と惜しくも敗れ去った。

中京大中京は左腕・中根、右腕・深町の強力2枚看板と1番三瓶を中心に機動力豊かな打線で東海大会を圧倒的に制覇。本大会でも優勝候補に挙がっていたが、初戦で広陵の2年生エース西村(巨人)の重い速球の前に5安打完封負け。スコア上は0-4だったが、それ以上の差を感じさせる内容であり、本領発揮できずに甲子園を去った。

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2003年選抜

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優勝:中京→3回戦敗退

準優勝:延岡学園→初戦敗退

ベスト4:東北→3回戦敗退

ベスト4:遊学館→3回戦敗退

 

中京は夏の甲子園メンバーが残る強力メンバーで秋の神宮を制覇。エース榊原(オリックス)、核弾頭・城所(ソフトバンク)、主砲・中川(中日)と近年の岐阜県勢では群を抜いてスケールの大きいチームであった。初戦で神宮の再戦となった延岡学園を返り討ちにしてスタートしたが、3回戦で平安の好左腕・服部の前に打線が沈黙。中盤に榊原が集中打で3点を失い、2-3と惜敗した。

延岡学園は技巧派左腕・上田と本格派右腕・杉尾の2枚看板で九州大会を制覇。神宮でも甲子園メンバーが全員残る遊学館に勝利するなど、準優勝を飾った。しかし、甲子園初戦の相手は神宮決勝で敗れた中京に。リベンジを狙う延岡学園の方が硬くなったか、2回までに守備のミスも絡んで大量7失点。追い上げを見せたが、5-8と及ばなかった。

東北は2年生エースダルビッシュ(パドレス)を中心に豊富な投手陣を擁して東北大会を制覇。仙台育英1強だった宮城県の流れを変える出場であった。初戦はダルビッシュが多彩な変化球で浜名を1失点完投して勝利。しかし、続く3回戦は故障を抱えたダルビッシュが花咲徳栄の集中打に捕まって5点のリードを守れず逆転負けを喫した。

遊学館は1,2年生で前年夏の甲子園に出場したため、全員が新チームに残る充実ぶりを見せていた。プロ注目左腕・小嶋(阪神)と門前・中山・行田ら強打者を擁した打線で全国制覇を狙ったが、3回戦で広陵に0-6と完敗。打線は西村の速球を打ち崩せず、小嶋も広陵の積極的な打撃に捕まった。優勝を狙う新鋭に伝統校が立ちふさがった一戦だった。

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2004年選抜

優勝:愛工大名電→準優勝

準優勝:大阪桐蔭→2回戦敗退

ベスト4:鵡川→2回戦敗退

ベスト4:広陵→初戦敗退

 

愛工大名電はこの大会から犠打を駆使した野球にモデルチェンジ。エース左腕・丸山(ヤクルト)の好投もあり、序盤での敗退が続いていた流れを一気に打ち破った。立命館宇治・中田、岡山城東・出原、秋田商・佐藤(広島)、社・大前と大会屈指の好投手を次々に沈めた機動力野球は見事。決勝で済美に惜敗したが、「NEW名電」のお披露目としては十分な結果を得た。

PL学園の不祥事があってから元気のなかった大阪勢だったが、この年の大阪桐蔭は投打ともにスケールの大きなチームであった。神宮の準決勝では無川に36-5と記録的な猛打で圧勝。選抜では2回戦でダルビッシュ擁する東北とのV候補対決に敗れたが、3番中村桂が2発、4番平田(中日)も初戦で1発とパワーを見せ、復活の気配を感じさせる戦いぶりを見せた。

鵡川は21世紀枠で2002年に出場していたが、今回は地力で出場権をGET。秋の北海道大会では駒大苫小牧を、神宮では済美を撃破しており、のちの春夏の行為戦優勝校を倒した力のあるチームであった。宮田・成田の右腕2枚看板はともに球威があり、打線も例年通りパワフル。2回戦で社との延長14回の激闘に敗れたが、もっと上位まで勝ち進んでもなんら不思議でないチームであった。

広陵は選抜連覇を狙って甲子園に出場。前年にトップバッターで優勝を経験した上本(阪神)が3番捕手となり、辻・藤川・伊藤ら複数のメンバーが残った打線はチーム打率4割を超えていた。しかし、選抜では東邦・岩田(中日)の伸びのある速球の前に打線が沈黙。あの大会の岩田は優勝した済美打線も1点で封じており、おそらくどのチームも点はそうそう取れなかっただろう。不安視されていた投手陣が打ち込まれ、1-9と大差で敗北を喫した。

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2005年選抜

優勝:柳ヶ浦→初戦敗退

準優勝:愛工大名電→優勝

ベスト4:神戸国際大付→ベスト4

ベスト4:羽黒→ベスト4

 

この年は優勝した柳ヶ浦は初戦敗退したが、残りの3チームは順当に上位まで勝ち進み、波乱の少ない結果であった。

柳ヶ浦はエース山口俊(巨人)を中心に秋の大会では全く危なげなく神宮大会まで優勝。選抜での戦いに期待が高まった。しかし、初戦で対戦した名門・天理にスクイズで先制点を奪われると、真井・田中克の中軸に捕まって9安打4失点。打線は同じく9安打を放ちながらも、天理の技巧派左腕・小倉に要所を締められ、完封負けで甲子園を後にした。

前年の選抜決勝を経験したメンバーが複数残ったチームが満を持して選抜に出場。前年の決勝で先発した斎賀が連続完封で発進すると、打線も2年生スラッガー堂上直(中日の周りを、佐々木・柴田(オリックス)・小島ら力のある上級生が固め、徐々に調子を上げた。準々決勝・準決勝と天理・神戸国際大付といった難敵を逆転で下すと、決勝は好投手・野上(巨人)擁する神村学園を序盤から圧倒して9-2と大勝。満開の花を咲かせて頂点に輝いた。

神戸国際大付は、前年秋に、神宮の準決勝で柳ヶ浦に敗れるまで練習試合も含めて36試合無敗と快進撃を見せた。荒れ球が持ち味の左腕・大西と右サイドながら本格派の有元の2枚看板は強力で、正木・堂本を中心とした打線も勝負強さを秘めていた。初戦で甲府工の好投手・三森を攻略すると、2回戦では大西が前年の王者y・駒大苫小牧を1安打で完封。この大会4強まで勝ち上がり、神戸国際大付の名を全国に知らしめた。

羽黒はブラジル人留学生3人を中心に国際色豊かなチームで選抜初出場。エース片山舞う利子をはチェンジアップを武器とする技巧派右腕で、初戦は八幡商の好投手・上田との投げあいで我慢の投球を続け、延長12回サヨナラ勝ちを呼び込んだ。その後、如水館・東邦と常連校を下して4強に進出。疲れの出た準決勝では初回に神村学園打線に捕まったが、山形勢として初の4強入りを果たし、歴史に名を刻んだ。

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2006年選抜

優勝:駒大苫小牧→出場辞退

準優勝:関西→2回戦敗退

ベスト4:履正社→初戦敗退

ベスト4:早稲田実→ベスト8

 

神宮大会優勝の駒大苫小牧が本番1か月前にまさかの出場辞退となった2006年選抜大会。絶対王者不在の中で戦いは幕を開けた。

関西は上田(ヤクルト)・安井・下田の中軸を中心に全国トップレベルの強打を誇り、投手陣もダース(日本ハム)・中村の右腕2枚看板が安定。初戦は坂本勇人(巨人)が4番を打つ光星学院に競り勝ったが、百戦錬磨の金沢監督をして「個々の能力が高く、サッカーで言えばブラジルのようなチーム」と言わしめた。

続く2回戦では斎藤佑樹(日本ハム)擁する早稲田実と引き分け再試合に及ぶ激闘を演じ、最後は雪が舞う中で3-4と惜敗したが、高校球史に残る名勝負を見せて観衆を虜にしたチームであった。

履正社はスライダーが武器のサイド右腕・魚谷と強打の捕手・土井(オリックス)のバッテリーを軸に秋の近畿大会を制覇。春夏通じて2度目の出場ながら優勝候補の一角にあげられていたが、初戦で優勝した横浜に0-1と惜敗。ただ、スコア上は惜しかったが、各打者の特徴を研究されてわずか2安打に抑え込まれ、横浜との経験値の差を感じさせられた試合でもあった。

早稲田実はエース斎藤を擁して久々の甲子園出場であった。斎藤以外の評判はそこまで高くなかったが、都会っ子らしいクレバーな野球で立ち向かい、関西戦ではけん制で3塁ランナーをアウトにするなどそつのないプレーを見せた。大会を通じて急成長するのも早実流であり、選抜も夏も大会序盤とは見違えるように動きが良くなり、勝ち進むたびに強さを増した。選抜では8強で敗退したが、この経験が夏に活きたのは間違いないだろう。

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2007年選抜

優勝:高知→初戦敗退

準優勝:報徳学園→初戦敗退

ベスト4:千葉経大付→2回戦敗退

ベスト4:常葉菊川→優勝

 

この年はファイナルを戦った2校がともに初戦で敗退。改めて勝ち続ける難しさを感じた大会であった。そんな中、常葉菊川は犠打を使わない野球で優勝を達成。新たな旋風を巻き起こした。

高知は抜群のコントロールを誇る右腕・国尾を主将・大菊を中心とした打線が援護し、神宮大会を制覇。甲子園本戦でも期待がかかったが、いかんせん相手が5季連続出場中の関西であり、ツキがなかった。序盤2点を先行したが、アウトサイドに偏りがちなバッテリーの配球を見切られ、気が付けば4-2と関西が逆転。久々の選抜出場の高知にとっては経験値の差が出た戦いになった。

近畿大会決勝で中田翔(巨人)擁する大阪桐蔭に完勝した報徳学園。近田(ソフトバンク)-糸井の2年生バッテリーを中心に実力1番手かと思われたが、初戦で21世紀枠の室戸に1-2と惜敗した。剛腕・森沢のストレートに苦戦したこともあったが、この頃は相手を過剰に意識した戦いになっていた節もあり、なかなか初戦敗退の続く呪縛から抜け出せなかった。近田が最終学年で迎えた翌年夏に8強入りすると、そこから一気に勝ち進み始めるようになった。

千葉経大付は前年夏に続く出場。当時3番を打っていた丸(巨人)がエースとなり、シンカーを軸に好投を見せた。打線も丸・大島の中軸を中心に強力。1回戦は中京とのシーソーゲームを制し、初戦を突破した。しかし、2回戦では神宮で8-2と圧倒した熊本工の足技にかき回されて苦戦。延長12回に及び死闘は熊工の1番藤村(巨人)の縦横無尽の走塁の前に守備が決壊し、6-3と惜敗して甲子園を後にした。

それまで甲子園で1勝もしてなかった常葉菊川が一気に階段を駆け上ったのがこの大会であった。開幕前は田中(DeNA)、戸狩の左腕2人を中心とした守りのチームかと思っていたが、大会が始まると犠打を使わない打線がとにかく攻める攻める。相手投手のわずかに乱れた間を逃さずに強打で仕留め、仙台育英・佐藤由(ヤクルト)や大阪桐蔭・中田(巨人)ら好投手を攻略して、全国の頂点に上り詰めた。

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いかがでしたでしょうか?このtermは6年間で3回優勝校を輩出していました。ただ、序盤で敗退しているチームも多く、波乱がなかったとは言えませんね。

秋の大会で勝ち上がることで相手にデータを取られてしまう不利さも関係あるとは思いますが、5か月という期間が空く間に、高校生は信じられないぐらい成長することで逆転現象が起こるのでしょう。今回の神宮4強校(大阪桐蔭、広陵、花巻東、九州国際大付)がどこまで勝ち上がれるか、見ものですね。

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