大会ベストナイン(2019年夏)

2019年

右投手 奥川恭伸(星稜)

2018年の選抜から4季連続の甲子園出場で経験も実績も十分で迎えた最後の夏は、異次元の投球で観衆を魅了した。特に3回戦で実現した智辯和歌山とのV候補対決では全国屈指の強力打線を相手にわずか3安打で23奪三振の快投を披露。チームはサヨナラ3ランで延長14回の死闘を生き残り、一気に勢いを得た。最速150キロを超えるストレートに加え、高速スライダーにフォークといくつもの武器をそろえ、松坂大輔(西武)と比較しても双璧ではないかと感じさせる投球内容であった。力みのないフォームがよりストレートを速く見せており、怪我も少なそうな理想のフォームであった。将来はヤクルトのエース、いや日本のエースとして大舞台での活躍が期待される。

 

左投手 清水大成(履正社)

優勝した履正社の屋台骨を支えた左腕エース。前年秋から高い実力は評価されていたが、やや安定感にかける面もあった。しかし、最後の夏はダイナミックなフォームから繰り出す伸びのある速球を武器に、先発として確実に試合を作った。また、打撃でも9番ながら非凡さを見せ、1番桃谷につなぐ役割を果たした。決勝では、選抜で敗れた星稜と再戦。2桁安打を浴びながらも粘りの投球で2年生の岩崎につなぎ、チームに勝利を呼び込んだ。過去に幾多の先輩投手が成し遂げられなかった偉業を清水が見事に成し遂げたのだった。

 

捕手 藤田健斗(中京学院大中京)

初の4強入りに貢献した中京学院大中京の扇の要。捕手としてはエース左腕・不後、速球派右腕の赤塚、元とそれぞれの持ち味を活かす投球で相手打線を1試合トータルでうまく抑え込んだ。終盤の逆転劇が光る中京だったが、序盤のバッテリーの踏ん張りは見逃せないものがあった。打っては長距離砲ではないが、5割近い打率でつなぎ役となり、相手の配球を読むクレバーさも光った。強肩も含めて3拍子揃った捕手として、阪神での活躍に期待がかかる。

 

一塁手 近藤遼一(八戸学院光星)

ヤクルト入りした1番武岡とともに強打の八戸学院光星を支えた3番打者。6割を超える打率を残し、2ホームランを放つなど、最後の夏はまさに無双状態であった。特に右方向への打球がよく伸び、右手の押し込みの強さは際立っていた。それでいて決して雑な打撃はせず、大事な場面で四球を選ぶなど、まさにフォア・ザ・チームを体現した主力打者であった。

 

二塁手 中里光貴(仙台育英)

左打席から長打を連発した仙台育英の核弾頭。確実性とパワーを兼ね備えた打撃で鳴門の好左腕・西野からは4安打を放った。相手投手の球威に差し込まれてもヒットゾーンに落とす器用さもあり、名門・仙台育英史上でも屈指の打者と言っていいだろう。セカンドの守備でも50メートル5秒台の俊足を生かして難しい打球を好捕。文句なしの大会No.1セカンドであった。

三塁手 重宮涼(明石商)

スキがなく、確実性の高い明石商の、そして狭間監督の野球を体現した主将兼3番打者。県大会決勝でスクイズを決めるなど、ここぞという場所で確実に小技をこなしたかと思えば、花咲徳栄戦の勝ち越しタイムリーや宇部鴻城戦のホームランなど、打撃でもしっかり結果を残した。3塁手としても2年生エース中森を盛り立て、まさしくチームの中枢と言える存在だった。

 

遊撃手 内山壮真(星稜)

1年生時から名門・星稜のショートの座を奪った内山が2年生となり、攻守ともにたくましさを増して甲子園に帰ってきた。ショートの守備では持ち前の身体能力を活かし、広い守備範囲で奥川ー山瀬のバッテリーを支えた。打っては仙台育英戦で2本のホームランを放つなど、どっしりとした構えからのパンチ力のある打撃で結果を残した。新チームからは捕手を務めるなど、まさに野球センスの塊。将来の活躍が楽しみな選手だ。

 

左翼手 木下元秀(敦賀気比)

前年は2年生エースとして出場した甲子園に今年は4番打者として戻ってきた。3試合で12打数7安打と確実性の高い打撃は秀逸で、3番杉田とともに強打の敦賀気比復活を印象付けた。特に流し打ってショートの頭を超す打撃が多く、この打撃ができれば上の世界でも確実に数字を残せるだろう。育成で指名された広島でも自慢の打撃で這い上がっていきたい。

 

中堅手 桃谷惟吹(履正社)

履正社の切り込み隊長として思い切りのいいスイングで相手投手を圧倒した。第1打席の成績だけでサイクルヒットを達成するという、1番打者としてはまさにうってつけの存在であった。決してあてに行くようなスイングをしないため、相手のバッテリーにとっては1人目から中軸と対戦するような感覚だっただろう。センターの守備でも好守で投手陣を援護。走攻守そろった好選手であった。初戦の2ホームランを含め、履正社の夏を切り開く存在であった。

右翼手 井上広大(履正社)

決勝で好投手・奥川から逆転の3ランを放つなど、大会通算で3本のホームランを放ったスラッガー。選抜で奥川に完膚なきまでに抑え込まれたが、春以降に「打席内での修正」と「体の中でボールをとらえる感覚」を大切にし、大型打者にありがちなもろさが消えた印象だった。チームが苦しい場面で1本を出し続けた4番が、主砲不在に苦しむ阪神を救う存在となるか、これから注目だ。

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