右投手 飯塚脩人(習志野)
2019年の選抜大会で決して前評判の高くなかった習志野を決勝まで導いたのがリリーフエースの飯塚脩人であった。右サイドハンドの岩沢、左腕の山内という技巧派の2人が先発をし、そのあとを受けて飯塚がマウンドに上がった。最速140キロ台後半の速球は伸びがあり、高めの速球の前に各打者のバットが次々と空を切った。2回戦では世代No.1と称された星稜のエース奥川(ヤクルト)に投げ勝つと、その後も市立和歌山、明豊といった強豪を相手にビハインドの展開で登板。自慢のストレートで相手打線を封じ込め、チームを決勝に導いた。決勝では東邦の石川(中日)に右中間スタンドに叩き込まれたが、夏2度の優勝を誇る古豪に選抜の躍進をもたらしたのは間違いなく飯塚の右腕であった。
左投手 野澤秀伍(龍谷大平安)
過去に幾多の好左腕を輩出してきた龍谷大平安だが、今年のエース野澤も素晴らしい実力の持ち主であった。ゆったりしたフォームから繰り出す伸びのある速球を武器に、1回戦は津田学園の好投手・前(オリックス)との投手戦を完封でものにした。2回戦は盛岡大付の強力打線にヒットは打たれるものの、要所を締める投球で1失点完投。前年秋の神宮大会では、味方の守備のミスから崩れるなど、不安定な一面もあったが、一冬超えて安定感が増した。準々決勝の明豊戦でサヨナラ打を浴びてしまったが、もっと見ていたい好投手であった。
捕手 東妻純平(智辯和歌山)
名門・智辯和歌山の4番で捕手と扇の要を務めたのが東妻純平であった。前年秋に明石商にコールド負けを喫し、中谷監督の元でインサイドワークを勉強しなおし、選抜を迎えた。タイプの異なる好投手を複数擁する今年の智辯和歌山だったが、東妻の好リードでそれぞれの投手が持ち味を出せていた。4番としても明石商のエース中森からヒットを放つなど、きっちり仕事を果たした。最後は前年秋に敗れた明石商にサヨナラで敗れたが、同じ相手にコールド負けからサヨナラ負けまで差を詰めた要因は、東妻の成長に他ならなかっただろう。
一塁手 三尾健太郎(龍谷大平安)
今大会好投手との対戦が多く苦しんだ龍谷大平安にあって、ポイントゲッターとして活躍したのが6番の三尾健太郎であった。11打数5安打と4割を超す打率を残し、1回戦の延長戦で津田学園・前(オリックス)から追加点の犠飛を放つなど、左打席からのシュアな打撃で勝負所で大事な一本をたたき出した。2年生5番奥村と相手が勝負せざるを得なかったのも、三尾の活躍があってのものだろう。
二塁手 表悠斗(明豊)
確実性と長打力を兼ね備えた、強打・明豊の核弾頭が表悠斗であった。1回戦では横浜の好左腕・及川(阪神)との対戦だったが、相手のボールをきっちり見極めて好球を逃さず、叩いた。2番手の大型左腕・松本からもヒットを放つなど、チームの勝利に貢献。習志野戦では先頭打者弾を放つなど、初回から相手バッテリーに圧力をかけた。智辯和歌山出身の川崎監督のもと、強力打線の象徴として活躍を見せた。
三塁手 奥村真大(龍谷大平安)
プロ野球選手の兄(日大山形出身、ヤクルト所属)を持つ、才能豊かな2年生スラッガーが甲子園で躍動した。投手戦となった1回戦は津田学園の前(オリックス)から詰まりながらもレフトの頭を超す決勝2塁打をマーク。思い切りのいい打撃で勝利をもたらした。2回戦の盛岡大付戦ではエンドランに応えるなど、柔軟な一面も見せた。最上級生で迎えた今年の夏も安定した打撃を見せており、プロ入りの可能性も十分ありそうだ。
遊撃手 熊田任洋(東邦)
エース石川とともにチームの「核」としてリーダーシップを取ったのが4番でショートの熊田であった。前年の選抜ではレギュラーとして出場しながらも、花巻東相手に実力を出し切れずに敗れたが、今年は初戦から準決勝まで毎試合ヒットを記録。ストレートにも変化球にも自在に対応できる打力でヒットを積み重ねた。ショートととしても堅実な守りで石川を援護。優勝の原動力となった。
左翼手 吉納翼(東邦)
下位打線ながら長打力を武器にチームに貢献した2年生。しっかりと振り切る打撃を武器に2回戦の広陵戦では2安打をマーク。準決勝では、明石商の好投手・中森から外角寄りのフォークボールを打って、逆方向に先制の3ランを放ち、観衆の度肝を抜いた。東邦が今大会最も敗戦の可能性が高かった試合で、大仕事をやってのけた。今年卒業後は早稲田大学への進学が決まっており、六大学での活躍に期待がかかる。
中堅手 来田涼斗(明石商)
強豪・明石商で1年生からレギュラーをつかんだ逸材が甲子園で大仕事をやってのけた。長打力を併せ持つ1番打者としてチームを選抜の舞台に導くと、準々決勝の智辯和歌山戦では左の技巧派の池田泰から先頭打者ホームランを記録。さらに9回裏には速球派の小林から打った瞬間それとわかるサヨナラホームランを放ち、史上初めて1試合で先頭打者弾&サヨナラ弾を記録した打者となった。思い切りのいい打撃で上の世界での活躍が期待される。
右翼手 福岡大真(筑陽学園)
1994年の夏の甲子園で準優勝した父(福岡真一郎)を持つサラブレッドが3試合で11打数5安打を結果を残した。接戦が続いた1,2回戦はともに左打席からの巧みなバットコントロールを武器にヒットを量産。6番打者として打線をつなぐ役割を果たし、九州王者の8強入りに貢献した。ライトの守備でも好守を見せ、父に勝るとも劣らない活躍を見せた選抜大会だった。
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