この地区が無双した!夏の戦い振り返り(近畿編)

2021年

甲子園では各地区ごとに好不調が如実に表れるのが、見ているファンにとって興味を引くところだ。好調な地区では、一度勝ちだすと、地区内で「うちが一番先に負けられない」との意識が出てきて、簡単には負けなくなる相乗効果を生み出すことがある。そんな相乗効果で各地区ごとに無双状態になった大会は何年の大会だったが、振り返っていきたい。第4回は地元・近畿地区。

第103回大会(2021年)

コロナウイルス明けで最初の夏の大会となった2021年の甲子園選手権大会。まだ観衆の数も制限がある状況であり、大会前には選抜王者の東海大相模や強豪・星稜、そして大会中には宮崎商・東北学院が出場辞退となった。感染の影響が色濃く残る、そんな状況下の大会にあって、強さを見せたのが地元・近畿勢であった。

雨による順延もあり、各校が大会中の調整に苦労していた中で、地元勢である地の利も活かしてきっちり仕上げられたというアドバンテージもあった。しかし、それを差し引いても、この大会での近畿勢の強さはすさまじく、ベスト4を独占し、ベスト8には5校が進出。何よりも他地域に対して6校で不戦勝1つを含む16試合負けなしという記録は前代未聞であり、おそらく今後も永久に破られることのない、「アンタッチャブル・レコード」であろう。

智辯和歌山(和歌山代表)

2回戦   不戦勝  宮崎商

3回戦   〇5-3  高松商

準々決勝   〇9-1   石見智翠館

準決勝     〇5-1  近江

決勝     〇9-2   智辯学園

実に21年ぶりとなる栄冠をつかんだ智辯和歌山。1990年代後半から2000年代にかけて、常勝軍団の名をほしいままにしていた「ワカチ」も、2010年代に入ってからは苦しい時代を過ごしていた。高嶋監督の熱意ある指導は健在であり、選手のポテンシャルも高かったのだが、学生の気質が変わり始めていた時期でもあり、元来のスパルタ指導がうまくはまらなかった側面もあった。そんな状況を、かつての教え子である中谷コーチ(元楽天、現監督)や古宮コーチなどが救った。監督と選手の間に立ち、細かい戦術面なども教えて、より勝てる野球へと導いていったのだ。

2017年は中谷監督の教えを受けた蔵野捕手が成長し、甲子園では興南の1年生エース宮城(オリックス)を攻略して久々の勝利を記録。そこから林(広島)、富田、細川(楽天)、東妻(ロッテ)、西川など多くの下級生が残ったチームは5季連続出場を達成する。2018年選抜では準優勝、2019年は春夏とも2勝ずつを上げ、高嶋監督から中谷新監督への移行も非常にスムーズに進んだ。名門復活へ向け、着々と準備は整ってきていた。

しかし、コロナ明けの2021年度、そんな智辯和歌山の前に強力なライバルが立ちはだかる。小園(DeNA)-松川(ロッテ)とのちにドラフト一位指名を受けるバッテリーを擁した市立和歌山だ。150キロに迫る速球にツーシーム、カットボールと高速系の変化球を交えた投球の前に智辯和歌山打線はなすすべがなく、秋季大会の公式戦でなんと3連敗を喫する(新人戦を含む)。勝てば選抜出場当確の近畿準々決勝でも0-2と完封負けし、選抜の切符を逃す結果となった。

この3連敗の悔しさが選手に相当火をつけたのは間違いないだろう。主将・宮坂、主砲・徳丸を中心に、打線は150キロ近い速球を待ちながら変化球に対応する技術を磨き、投手陣もエース中西を中心にサイド右腕・伊藤など多彩なメンツをそろえた。春季大会で7-1と圧倒して対市立和歌山に2021年度初勝利を挙げると、県大会決勝では上位打線が小園を攻略して4得点。伊藤から中西へのリレーも決まり、4-1と快勝でリベンジを果たした。

最強のライバルを倒したところから、甲子園での快進撃は約束されていたのかもしれない。初戦の対戦相手の宮崎商がコロナの影響で出場辞退となり、出場校中最も遅い登場になったが、エース中西が強打の高松商打線をきっちり封じてまずは5-3と快勝でスタート。日程的に最も余裕があったのは確かだが、石見智翠館・山崎や近江・山田といった好投手をきっちり打ち崩した攻撃力はさすがであった。投手陣も準々決勝では塩路→高橋→武元のリレーで1試合をつなぎきるなど、分厚さを活かして勝ち進んだ。

決勝は2002年以来となる智辯学園との兄弟校対決に。投手陣の疲労度や打線の調子の差が出てとはいえ、智辯学園の好左腕・西村を序盤で攻略した打撃は見事。終盤には右腕・小畠も攻略し、相手の左右のエースをとらえて大量9得点を奪った。投げては伊藤から中西への継投で強打の智辯打線を2失点に抑え、投打で圧倒してっ兄弟校対決を制した。時代の波を乗り越え、県内の最強のライバルも打倒しての21年ぶりの日本一。感慨もひとしおの3度目の夏制覇であった。

2021年選手権3回戦 智辯和歌山vs高松商(11日目第2試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権準々決勝 智辯和歌山vs石見智翠館(13日目第2試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権準決勝 智辯和歌山vs近江(14日目第1試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権決勝 智辯和歌山vs智辯学園(15日目第1試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

智辯学園(奈良代表)

1回戦   〇10-3    倉敷商

2回戦    〇5-0    横浜

3回戦     〇7-1     日本航空

準々決勝   〇3-2    明徳義塾

準決勝    〇3-1     京都国際

決勝    ●2-9    智辯和歌山

主砲・前川、西村・小畠の左右のエースが1年生から全国大会を経験し、新チームになってからは右の主砲・山下も急成長を見せた智辯学園。投打に2人ずつ柱を有する強力なチームであり、小阪監督もおそらくこの2021年度のチームが一番自信を持っていたチームだったのではないだろうか。秋の近畿大会決勝ではそれまでなかなか勝てなかった大阪桐蔭を倒し、手ごたえ十分の船出となった。

V候補として迎えた選抜初戦では、まさかの大阪桐蔭との再戦となったが、この試合で大阪桐蔭のエース松浦(日本ハム)の立ち上がりをせめて4得点。中盤の相手守備陣のミスにも付け込み、8-6で快勝を収める。続く2回戦では難敵・広島新庄を小畠の好投で5-2と下して、2度目の選抜制覇へ視界良好に見えた。ところが、準々決勝は西村がいきなり先頭打者弾を浴びるなど、中盤までに5失点。打線の反撃も相手守備陣の好守にはばまれ、4-6で悔しすぎる敗戦を喫することとなった。

捲土重来を期した夏は、奈良大会を順調に勝ち抜いていく。同じ選抜で上位に進んだ天理がエース達(日本ハム)の不調で高田商に敗れるなか、智辯学園は決勝でその高田商にきっちり守り勝ち、2年ぶりの代表切符をつかみ取った。夏の初優勝へ向け、投打の2人ずつの柱はもちろんのこと、脇を固める面々も岡島・垪和・森田ら好打者が並び、多士済々の分厚い打線を形成していた。

大会が始まると、智辯学園打線の勢いはすさまじかった。前川、山下の左右の大砲は期待通りの活躍を見せ、前川は2,3回戦とホームランを連発。倉敷商・永野、横浜・杉山、日本航空・ヴァデルナと好左腕を次々に打ち崩し、3試合で22得点と好調を維持した。投げては西村、小畠がそろって好投し、西村が切れのあるボールを活かした内外のコーナーワークで、小畠は手元で動くボールで打たせて取るというそれぞれの持ち味を発揮し、危なげない投球を見せた。

しかし、夏の長い戦いの中で打線の調子を保ち続けるのはやはり難しいものだ。準々決勝では、明徳義塾の2年生左腕・吉村の左サイドからの角度のあるボールに苦戦。劇的な逆転サヨナラ勝ちをおさめたが、打線の調子はここから下降気味となった。準決勝は小畠が3ランを放ち、1失点完投と投打で獅子奮迅の活躍を見せ、初の決勝進出を決めたが、チーム全体では5安打に終わった。ただ、こういうロースコアの試合もしっかり守りきって勝てるところがこの年の智辯学園の強さでもあった。

迎えた決勝は智辯和歌山との兄弟校対決。初戦が不戦勝だったため、まだ4試合目の智辯和歌山と6試合目になる智辯学園の間に、やはり疲労度の差は如実に表れた。序盤から智辯和歌山打線に西村が捕まり、リリーフした小畠もホームランを浴びるなど失点が続いた。打線もなかなかつながらず、初めての決勝は2-9と19年前の夏に続いて「弟」に敗れることとなり、準優勝に終わった。

だが、智辯史上でも指折りの総合力を誇るチームが選抜の悔しさを乗り越えてファイナルの舞台にたどり着いたことは称賛されるべきであり、好調だった近畿勢を象徴する存在であった。この夏の戦いが智辯学園というチームの歴史を大きく前進させたことは間違いないだろう。

2021年選手権1回戦 智辯学園vs倉敷商(2日目第1試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権2回戦 智辯学園vs横浜(8日目第4試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権3回戦 智辯学園vs日本航空(12日目第1試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権準々決勝 智辯学園vs明徳義塾(13日目第3試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権準決勝 智辯学園vs京都国際(14日目第2試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権決勝 智辯和歌山vs智辯学園(15日目第1試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

京都国際(京都代表)

前橋育英以来の夏初出場初優勝まであと2勝。勢いに乗る勝ち方が ...

2回戦   〇1-0     前橋育英

3回戦    〇6-4    二松学舎大付

準々決勝   〇3-2     敦賀気比

準決勝    ●1-3    智辯学園

左腕・森下(DeNA)、右腕・平野の2年生に核弾頭の武田や強打の辻井と、才能あふれる2年生を、4番捕手の中川(阪神)をはじめとする3年生が支え、初出場ながら存在感ある戦いを見せていた京都国際。名将・小牧監督のもとで伸び伸びと戦うチームが快進撃を見せた。

選抜では、柴田(宮城)との初出場対決を延長の末に制して、甲子園初勝利を達成。2回戦で東海大菅生にサヨナラ負けを喫したものの、森下・平野の質の高いボールや勝負どころで長打の出る打線など、選手個々のポテンシャルは全国レベルであることを証明した。夏の京都大会では、マークを受ける存在となったが、エース左腕・森下を中心に一枚岩の野球を見せ、決勝は京都外大西を相手に見事な逆転勝ち。春夏連続の甲子園切符をつかみ取った。

迎えた甲子園初戦の相手は2013年夏の優勝校・前橋育英。好投手・外丸と森下の投げ合いは2回に飛び出した4番中川の一発による1点を森下が守り切り、見事完封勝ちを収める。前橋育英は3番岡田、4番皆川の中軸を中心に打力も定評があったが、この左打者2人を森下がスライダーで翻弄。打線は1得点のみであったが、この日の森下には1点で充分であった。選抜から2年生エースが大きく成長したところを見せた一戦であった。

ここから京都国際の快進撃が続く。3回戦では、初戦で完封勝ちの二松学舎大付のエース左腕・秋山(ロッテ)から森下、中川、辻井と3本のホームランが飛び出し、中盤に一気に逆転。自分のスイートスポットの来たボールは確実に仕留める京都国際打線の破壊力を見せつけた。最終回に森下がまさかの同点3ランを浴びて、延長戦に突入したが、最後は延長10回に森下が自ら勝ち越しタイムリーを放ち、延長線をものにした。選抜では同じベスト16で同じ東京勢の東海大菅生に屈したが、今回は見事にそのリベンジを果たした。

初のベスト8の舞台。相手は北陸の雄・敦賀気比であった。この試合では右腕・平野が初先発。伸びのある速球を武器に強打の敦賀気比打線に真っ向勝負を挑んだ。5回まで散発3安打の無失点で、森下につなぎ、先発の役目を見事に果たした。リリーフした森下は8回に敦賀気比の上位打線につかまって2点の先行を許すが、京都国際もその裏、8番松下の長打を足掛かりに追いつき、一歩も譲らない。追いついた京都国際は9回裏、先発で好投した平野がヒットで出塁すると、最後は先ほどチャンスを築いた8番松下がファーストの前で弾むヒットを放ち、平野が生還。2015年の選抜優勝校も撃破し、初の4強へとコマを進めた。

準決勝では、先発・平野が好投を見せるも、相手投手・小畠の3ランの一発に泣き、1-3と惜敗。初めての夏の甲子園での快進撃は幕を閉じた。しかし、強豪ばかりを相手に3勝を挙げたこの夏の戦いは、選抜の悔しさを十分に晴らすものであった。小牧監督のもと、投打にスケールの大きな野球を見せた京都の新・強豪が全国にその名をとどろかせた1年だったといえるだろう。

2021年選手権2回戦 京都国際vs前橋育英(6日目第1試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権3回戦 京都国際vs二松学舎大付(11日目第1試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権準々決勝 京都国際vs敦賀気比(13日目第1試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権準決勝 智辯学園vs京都国際(14日目第2試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

近江(滋賀代表)

1回戦   〇8-2    日大東北

2回戦    〇6-4    大阪桐蔭

3回戦     〇7-4    盛岡大付

準々決勝   〇7-6    神戸国際大付

準決勝    ●1-5    智辯和歌山

好左腕・林(楽天)を擁し、2018年から快進撃の続いていた近江。しかし、2021年度は春の県大会で早期敗退するなど、公式戦で思うような結果を残せず、苦しい戦いが続いていた。そんな中、チームは3年生を中心に基本に立ち返り、近江独自の厳しいトレーニングをもう1回積みなおして、立て直しを図った。その結果、2年生エース山田(西武)から3年生右腕・岩佐への投手リレーと硬軟織り交ぜた多彩な攻撃がかみ合い、コロナの2020年をまたいで、3年連続の甲子園出場を果たした。

初戦は福島の日大東北と対戦。2007年から連続出場が続いていた聖光学院にかわり、久々に福島代表の座をつかんだ伝統校だ。1-0で勝っていた試合が雨天ノーゲームとなり、近江にとってはやりにくさもあっただろうが、捕手・島滝のホームランなどで先制・中押し・ダメ押しと着実に加点していき、再試合も8得点と圧倒。投げてはともに140キロ台中盤の球威抜群の速球を持つ山田と岩佐のリレーで相手打線を2点に封じ込め、盤石のスタートを切った。

迎えた2回戦の相手は高校球界の王者・大阪桐蔭。近畿大会で何度も対戦し、はじき返された相手だったが、近江は果敢に挑んでいった。

初回に山田が満塁走者一掃のタイムリー2塁打を浴び、2回には8番松尾(DeNA)に一発を食らうなど、0-4と苦しい展開になったが、逆境をはねのける力がこの年の近江ナインにはあった。3回にスクイズで1点を返すと、5番新野に一発が飛び出すなど、大技小技でじりじりと追い上げる。7回裏についに同点に追いつくと、8回裏に途中出場の3番山口の決勝だが飛び出してついに勝ち越しに成功。3回以降は、強打の大阪桐蔭打線を山田→岩佐のリレーで封じ込め、6-4と会心の逆転ゲームで、これまで近畿で見上げてきた大阪桐蔭を下した。

この勝利で完全に勢いを得た近江は、3回戦ではエース渡辺が疲労を考慮して先発回避した盛岡大付に対し、序盤からきっちり先手を奪って7-4と快勝。スタメンの高校通算ホームラン数が200発を超える「わんこそば打線」に対し、変化球を巧みに使った攻めで的を絞らせなかった。準々決勝では昨秋の近畿大会で敗れた神戸国際大付に対し、山田のホームランなどで序盤から先行。4点リードの9回に相手打線の猛反撃にあって追いつかれるが、その裏1アウト1塁から春山のサヨナラタイムリーが飛び出し、劇的なサヨナラ劇を収めた。

この年の近江は打線の中での役割分担がきっちりなされており、明石・井口・西山・横田など小技と機動力の効く選手がチャンスメークし、山田・新野・島滝といった長打力を秘める中軸が返すパターンで得点を重ねていった。準決勝は疲労から山田が攻略され、智辯和歌山に2018年のリベンジを許したが、これまで投手力に注目が集まることが多かった近江にあって、攻撃力も過去最高クラスの手ごたえを得た年になったのではないだろうか。ここから2022年夏にかけて3大会連続で4勝を挙げ、黄金時代を築くこととなる。

2021年選手権1回戦 近江vs日大東北(7日目第1試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権2回戦 近江vs大阪桐蔭(10日目第1試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権3回戦 近江vs盛岡大付(12日目第4試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権準々決勝 近江vs神戸国際大付(13日目第4試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権準決勝 智辯和歌山vs近江(14日目第1試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

神戸国際大付(兵庫代表)

神戸国際大付 選抜に続いて北海に1点差勝ち! 終盤のピンチを ...

1回戦   〇2-1     北海

2回戦     〇4-3    高川学園

3回戦     〇6-5     長崎商

準々決勝   ●6-7    近江

神戸市内を中心に兵庫県の有力選手が集まり、プロレス好きの青木監督のもと、投打にスケールの大きな野球を見せてきた神戸国際大付。守りベースの兵庫の高校野球にあって、異色の存在だった同校だが、こと甲子園に関しては2005年選抜の4強入りを除くと、なかなか甲子園で勝てない印象があった。特に終盤の競り合いを落とすことが多く、豪快さともろさを併せ持つような印象があったのは否めないだろう。しかし、エース阪上の故障を乗り越え、春夏連続出場をつかんだ2021年度のチームが一気にブレイクスルーを果たすこととなる。

初戦はなんと2017年夏、そして2021年選抜に続き、3度目の対戦となる北海。過去2戦はともに神戸国際大付が勝利しており、逆にやりにくさMAXの相手であった。特に好左腕・木村(ソフトバンク)と大津の北海バッテリーは難攻不落であり、苦戦が予想された。

神戸国際は序盤、木村の調子が上がらないところを攻め、好調の2年生山里の2点タイムリー2塁打で先行する。投げては、阪上が縦に大きく割れる変化球を武器に、選抜までの故障を完全に払しょくする内容で試合を作る。しかし、中盤以降は徐々に北海のペースにはまっていき、1点差に追い上げられて迎えた8回裏には1アウト2,3塁のピンチを招いてしまう。だが、この場面を2年生左腕・楠本が速球主体の投球でしのぐと、最終回の北海の攻撃もしのいで2-1と逃げ切り勝ち。3度対戦してすべて1点差ゲームという、因縁の対決はまたも神戸国際に軍配が上がり、2017年夏に続いて初戦突破を果たした。

すると、この勝利で勢いに乗った神戸国際大付はそれまでの勝負弱いイメージが嘘のように1点差ゲームをものにしていく。2回戦では好左腕・河野を擁する高川学園に対して、一時は逆転を許すも、代打・勝木の同点打で追いつき、エース阪上が自ら勝ち越し打を放って再逆転。阪上は投げても復活の完投勝利を挙げ、初の夏の甲子園2勝目を手にした。

そして、3回戦の長崎商戦は、今大会のベストバウトといっても過言ではない死闘になった。

長崎商が先行すれば、神戸国際大付が追いつき、神戸国際が勝ち越せば、長崎商が追いつくという、お互い一歩も譲らない展開。最終回に長崎商・城戸がサヨナラ負けの絶体絶命のピンチをしのぐと、延長10回表に当たっている2年生大坪のタイムリーが飛び出し、勝ち越しを許す。しかし、この試合で今大会初ヒットが飛び出し、ホームランも放っていた4番西川がこの日の主役であった。その裏、再び城戸を攻め立てて1アウト2,3塁のチャンスを作ると、主砲の打球は三遊間を破る逆転サヨナラ打に。これで3試合連続となる1点差勝利を果たし、ついに夏の8強入りを果たした。

準々決勝は近江との昨秋の近畿大会以来の再戦に。前の対戦では勝利していた神戸国際だが、この試合は序盤から劣勢を強いられる。自慢の投手陣がつかまり、最終回を迎えて2-6。試合は決まったかと思われたが、ここからがある意味、この年の神戸国際を象徴する戦いとなった。

これまでの3試合でもベンチ入りメンバーを含めて試合出場選手がダントツで多い神戸国際大付。2番手で登板した近江・岩佐に対して、炎の代打攻勢を見せていく。2アウトランナーなしから勝木・夜久・松尾と代打で出た選手が3連打を放ってあっという間に1点差に詰め寄ると、1番関が同点タイムリーを放ってついに試合は振り出しに。阪上-西川のバッテリーが打撃でも主軸を務め、チームの中心だったのは間違いないが、それ以外の選手も大事な場面できっちり自分の役目を果たしていく「総合力」が神戸国際大付の持ち味となっていた。

この2021年の戦いが神戸国際というチームに与えた自信は計り知れないものがあるだろう。今後、全国上位を目指していく上でのロールモデルとなるはずだ。

2021年選手権1回戦 神戸国際大付vs北海(3日目第3試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権2回戦 神戸国際大付vs高川学園(9日目第2試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権3回戦 神戸国際大付vs長崎商(12日目第3試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権準々決勝 近江vs神戸国際大付(13日目第4試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

大阪桐蔭(大阪代表)

1回戦   〇7-4    東海大菅生

2回戦    ●4-6    近江

2018年に2度目の春夏連覇を果たした大阪桐蔭。しかし、2019年は春夏連続出場を果たし、夏は全国制覇を果たしたライバル履正社の後塵を拝し、2020年はコロナウイルスの影響で大会が中止と、なかなか全国への道が険しかった。復活をかけて2021年選抜は智辯学園と前年秋の再戦になり、序盤から先手を取られて6-8と敗戦。大阪桐蔭らしからぬ守備のミスも出て、悔しい初戦敗退となった。

だが、王者・大阪桐蔭がこのままで終わるわけにはいかない。制球力をつけてエース松浦(日本ハム)が一本立ちすると、打線も驚異的な粘りで投手陣を援護。金光大阪・関大北陽・興国とライバルに次々打ち勝ち、最後は主将・池田(オリックス)のサヨナラ打で3年ぶりの夏の甲子園出場を決めた。

迎えた甲子園初戦は選抜8強の東海大菅生が相手。2015年の選抜では8-0と圧倒していたが、その当時とは両チームの立場も変わっていた。受けて立つ大阪桐蔭にやりにくさがあるかもと思われた試合。しかし、序盤から主砲・花田の先制2ランを皮切りに、前田・藤原と次々に一発が飛び出し。大阪桐蔭らしい豪快な試合運びを見せていく。

ただ、この試合は雨の中での厳しいコンディションで進行し、そんな中で東海大菅生が徐々に追い上げる展開になった。しかし、ある意味ではここからが大阪桐蔭の春からの成長を感じさせる試合となる。雨でボールが滑りやすい中でもエース松浦は制球を乱さずに投げぬいていく。球威抜群の速球で押し、東海大菅生に決定打は許さない。守備陣も取れるアウトをきっちり取っていき、8回表途中で降雨コールドゲームに。東海大菅生にとっては残酷な結果となったが、大阪桐蔭にとっては悔しさにあふれた選抜を乗り越え、大きく手ごたえを得た戦いとなった。

2回戦は同じ近畿の近江を相手に序盤4点を先行するも、中盤以降は劣勢に。8回についに勝ち越しを許し、4-6と敗れてしまう。しかし、この試合では西谷監督はエース松浦を最後まで登板させず、他の投手陣での戦いを貫いた。連戦の続く夏の大会で一人の投手に頼らないという戦いを見せたところに、西谷監督の、ひいては大阪桐蔭のプライドを見たような気がした試合であった。この試合を見た下級生たちが、翌年、公式戦無敗の快進撃を続けていくこととなる。

2021年選手権1回戦 大阪桐蔭vs東海大菅生(5日目第1試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

2021年選手権2回戦 近江vs大阪桐蔭(10日目第1試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

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