前年夏、仙台育英が東北勢として初めての甲子園制覇を成し遂げた。これまで届かなかった偉業が達成された今、高校球界は群雄割拠、どこの地区にもチャンスがあるという流れが出来つつある。
果たして2023年の選抜優勝を手にするのはどこになるのか!?
優勝候補先頭集団
優勝争いを引っ張るのは以下の5チームになるだろう。甲子園優勝経験がある名門が並ぶ。
大坂桐蔭は2017年、2018年以来となる2度目の選抜連覇を狙う。昨年と同様に経験者が多いチームではなかったが、戦いながら神宮大会連覇まで公式戦無敗で駆け抜けた。
このチームの軸はやはり、昨年からエース格の左腕・前田だろう。秋は故障を抱えながらのマウンドになったが、それでも高い質のストレートにスライダー、チェンジアップによる緩急を駆使して試合をまとめて見せた。万全の体調で臨む選抜では昨年以上の快投が期待できる。また、ともに速球に力のある右腕の南恒、南陽の2人も控えており、例年通り投手層は厚い。エース前田の負担をどこまで軽減できるか。昨年の川原のような活躍が期待される。
一方、野手陣は全員が入れ替わり、昨年ホームランの新記録を塗り替えたような長打力はない。しかし、神宮で劣勢を一気に跳ね返したように、ここぞの場面でのつながりは昨年以上だ。注目は3番徳丸。智辯和歌山で甲子園優勝した兄を持つ男は、高いミート力で確実にチャンスを活かした。1番小川、2番山田のコンビは相手バッテリーにとっては非常に厄介な存在で、特に2番山田はチャンスで無類の勝負強さを持つ。
昨夏は連覇を狙いながら、下関国際に行く手を阻まれたが、それでも昨年の学年は多くの練習に対する姿勢など、多くの財産を残した。その戦いをつぶさに見てきた今年の世代がどんな結果を残すのか、非常に楽しみだ。
仙台育英は昨夏、悲願の全国制覇を達成。そのメンバーが多く残っており、次は選抜初制覇と夏春連覇に期待がかかる。
投手層の厚さに関してはおそらく今大会でも随一か。昨夏甲子園のマウンドを踏んだ速球派右腕・高橋、本格派左腕の仁田と湯田は大舞台での経験が豊富で、自分の持ち味をしっかり出すことができる。特に高橋は速球が走っているときは手が付けられない投手だ。そのほかにも技巧派投手が何人か控えており、今年も連戦を勝ち抜く準備に抜かりはない。
対する打線も1番橋本、2番山田のコンビや4番齋藤陽、女房役も務める5番尾形と経験者が引っ張る。俊足の橋本が出て何でもできる山田がつなぐのが得意のパターンだ。長打で圧倒するタイプの打線ではないが、攻めどころでは全員がミートに徹して一気に畳みかける力を持っており、神宮大会では最終回に4点差をひっくり返す脅威の逆転劇を見せた。
念願の初優勝を果たした今、時代の流れは確実に変わり始めている。この勢いを本物にできるか、東北の旗頭として再びの優勝を目指す。
広陵は2年連続の選抜出場。スラッガー真鍋を中心に4度目となる選抜制覇に挑む。
投手陣は、県大会で2年生右腕・高尾が、中国大会では左腕・倉重がそれぞれ好投。ともに角度のある速球を持ち、高尾は球威で、倉重はスライダーとの出し入れで打者を翻弄する。緩急が武器の横川も控えており、投手層の厚さは昨年以上だ。相手打線のタイプに合わせての継投も自在であり、戦い方の幅が広いと言えるだろう。
打線の軸は何といっても主砲の真鍋だ。驚異的な飛距離を誇る左の大砲は、すでに高校通算49本のホームランを記録。確実性と長打力を併せ持ち、昨年からさらに成長を見せている。また、周りを固める1番田上、2番谷本の2人は機動力も豊か。俊足の9番松下が塁に出て下位打線から得点を挙げられるのも強みだ。
昨年は九国の好左腕・香西の前に左打者主体の打線が封じられて涙を飲んだ。その悔しさを晴らすべく、今年は投攻守走にバランスの取れたチームでリベンジをかける。
沖縄尚学は選抜は意外にも9年ぶりの出場となる。前回は神宮王者として臨んだが、今回もその時に見劣りしないチームに仕上がってきた。
エースは右腕の東恩納。球速は140キロ前後だが、非常にボールのキレがあり、チェンジアップ、カーブ、スライダーと球種も多彩だ。神宮大会初戦では敗れたとはいえ、8回まで仙台育英打線を翻弄した。選抜でも注目の好投手にあげられるだろう。勝ち進むには2番手投手の台頭が望まれるが、名将・比嘉監督の手腕で新たに戦力が整備されていそうだ。
一方、打線は九州大会で強打のチーム相手に打ち勝ってきたように、威力十分。公式戦のほとんどで2桁安打を放ち、神宮初戦でも仙台育英投手陣に痛打を浴びせた。特に1番知花は九州大会、神宮大会と大事な試合ですべてマルチヒットを記録。ツボにはまれば長打もあり、初回から沖縄尚学に流れを呼びこむ。4番仲田、5番東恩納と中軸もパンチ力があり、例年の小技も絡めたスピード感ある攻撃よりは、どちらかというと打力で局面を切り開ける力が備わっている。
1999年、2008年と2度の選抜制覇の経験のある同校。九州王者として再び頂点に輝く機会をうかがう。
東邦は選抜最多5度の優勝を誇る強豪。2019年以来4年ぶりとなる6度目となる選抜制覇を目指す。
投手陣の柱はエース宮国。最速149キロを誇る本格派右腕は、昨年から主戦格として強豪相手にマウンドに立ち続けてきた。東海大会でエースとして3試合すべての登板し、大垣日大・常葉大菊川といった癖のあるチームを抑え込んだ。同じく速球派右腕の岡本もリリーフとして控えており、終盤の大事な場面を締めくくる。神宮大会で大阪桐蔭に大敗した悔しさをばねに冬場の練習を乗り越えた成果を見せたいところだ。
打線は4年前の優勝時と比べても引けを取らないほどに強力。中村、大島、眞邉と巧打者の3人が並び、長打は少なくとも確実につなぐ打撃で好機を演出する。4番には選抜優勝投手になった兄を持つ石川がどっかり座り、ここぞの場面で一本を出してきた。派手さはなくとも高い得点力を誇り、勝機を確実につかめる打線だ。
2008年夏に1番打者として先頭打者弾を放った山田新監督が就任して3年。着実に伝統を受け継いだ強豪が再び全国の頂点を奪い取る。
第2集団
第2集団にも強豪校がずらりと並ぶ。昨年の大阪桐蔭のような圧倒的な存在のチームがいない分、先頭集団のチームとの差もごくわずかだ。
東北は2011年以来12年ぶりとなる出場。県大会で王者・仙台育英を下したおり、その実力たるや全国トップクラスだろう。
エースは最速145キロの速球が光る右腕・ハッブス。昨秋以降、制球が安定したことで試合を壊さないようになり、秋季県大会決勝では仙台育英を、東北大会準決勝では聖光学院と強豪相手に投げ勝ってきた。また、左腕・秋本はボールの出し入れがうまく、秋の公式戦ではついに自責点がつくことはなかった。この左右の両輪が機能すれば、そう多くの失点はしないだろう。
一方の打線はチーム打率こそ高くないものの、終盤に集中打を見せたように、好機で畳みかける「鋭さ」を持つ。上位から下位まで穴となる打順がなく、上位は右、下位は左の打者が並んで、相手投手にとってはある意味やりにくい打線だろう。4番佐藤玲はポイントゲッターとしての役割が期待され、仙台育英戦でも3安打を放った。
県内のライバルの仙台育英には、昨夏の優勝も含めて、ここ数年は大きく水を開けられた感がある。OBのダルビッシュ(パドレス)がWBCに臨む中、後輩たちも存在感を見せたいところだ。また、元巨人の佐藤洋監督の采配にも注目だ。
関東勢では山梨学院、健大高崎の2校が非常に楽しみな存在。
山梨学院は久々に関東王者として選抜の舞台に臨む。ここ数年、出場を重ねつつもなかなか結果を出せていないが、そろそろ上位に勝ち進んでもいい頃だ。
エース右腕の林は、高校から投手をはじめたため経験は浅いが、小さなテークバックから繰り出す伸びのある速球、スライダー、カーブを投げ分け、関東大会では0点台の防御率をマークした。ピンチの場面でも気持ちで向かっていける強さがあり、見た目以上に打ちにくい投手だ。また、スライダーのキレが光る左腕・星野も控えており、左右の両輪を形成する。
一方、毎年高い攻撃力を誇る山梨学院だが、ここ数年は全国レベルの好投手を打ち崩せずに惜しくも敗れてきた。今年は昨年の甲子園を経験した星野、進藤、岳原、高橋、佐仲を1番から5番に並べ、例年以上に機動力も豊かだ。下位打線にも大森や徳弘など実力者が控えており、秋の公式戦で打線が抑え込まれた試合はなかった。
神宮では英明にビッグイニングを許して敗れたが、投打のポテンシャルはトップクラスだ。殻を突き破れば、一気の初優勝があってもおかしくはない。
健大高崎は2021年以来2年ぶりの出場。投打に自信の戦力で悲願の優勝を狙う。
投手陣は例年継投で戦うチームスタイルだが、今年も強力な2枚看板を擁する。右腕・小玉は質の高い速球が武器の本格派右腕。ホップするような球質のボールで打者は速球とわかっていてもなかなかとらえることができない。関東大会ではV候補の横浜打線を2点に抑え、選抜出場を当確させた。左腕・加藤もストレートに魅力のある投手で、この2人の存在がチームに自信を与えている。
一方、打線はここ数年「機動破壊」だけでなく強打で打ち勝つスタイルを目指している感があったが、ことしは原点回帰というか、再び機動力で打開するスタイルで臨んできている。増渕、半田の1,2番を筆頭に50メートル6秒前後の選手がずらりと並び、相手に圧力をかけ続けてきた。まだまだ成長途上の選手も多く、秋から新戦力がでてくる可能性もある。走力に打力がMIXできれば、さらに強力な攻撃陣になりそうだ。
過去の選抜では4強が1回、8強が2回と上位進出率が非常に高く、相性が良い。練習試合も多く組んで高い勝率を残してきた。関東大会では4強止まりだったが、実戦でたたき上げて積み重ねた自信を胸に悲願の初優勝を狙う。
近畿大会で王者・大阪桐蔭に食い下がったのが、龍谷大平安・報徳学園の2校。ともに選抜優勝経験のある両チームも虎視眈々と優勝を狙う。
龍谷大平安は8強入りした2019年以来4年ぶりの出場。伝統校が再び聖地に帰ってきた。
エースは右サイドの桒江。伝家の宝刀・シンカーを武器にスライダーとの横幅を活かした攻めで相手打者を翻弄する。近畿大会では2試合連続の完封ピッチでチームを牽引し、大阪桐蔭戦でも内野守備陣のエラーに足を引っ張られながら5点で踏ん張った。2番手以降の台頭が課題だが、右腕・伊禮など楽しみな存在も控えており、選抜で新たな起用法も生まれてきそうだ。
打線は、秋の大会で公式戦チーム打率が3割8分8厘と好調を維持した。ミート力の高い選手が非常の多く、打率6割を超えた5番山口を筆頭にチャンスに強いのも特徴だ。6番八鳥がチームトップの8盗塁を記録したように、下位打線の1番打者として役割を果たせれば、さらに得点力は上がるだろう。大阪桐蔭戦でも2点差に詰め寄ったように、全国クラスの投手相手でも通用する力がある打線だ。
ここ数年は京都国際の前に覇権を奪われていたが、復活を果たした「HEIAN」。選抜での快進撃が期待される。
報徳学園は4強入りした2017年以来の選抜出場。大角監督就任後は初めての選抜となる。
投手陣は力のある3人の右腕で秋の公式戦を戦った。長身右腕のエース盛田は角度も球威も抜群の速球を武器に秋の防御率は1点台を記録。大事な場面で三振を奪うことができ、狙っていてもなかなか簡単にはとらえきれないだろう。間木、今朝丸の2年生右腕コンビはそれぞれ変化球に良さがあり、秋の戦いでは履正社、智辯和歌山という強豪相手に結果を残した。捕手・堀の好リードと強肩も光り、この投手陣を攻略するのは容易ではない。
一方の打線も破壊力は十分。ハイレベルな投手のそろう兵庫大会できっちり得点をたたき出してきたように確実性のある打線だ。近畿大会で13打数10安打と爆発した堀、同大会で3試合連続弾を放った4番石野の中軸は強力。下位にも高打率の8番竹内が控え、上位から下位まで切れ目なくつながる「強い時の報徳」を思わせる打線だ。近畿決勝で大阪桐蔭・前田に完封された悔しさをばねにさらなる成長を遂げているだろう。
投打に充実した戦力誇る今年の報徳。するするっと勝ち上がって3度目の選抜制覇をする雰囲気が漂っている。
九州大会で優勝した沖縄尚学を苦しめた長崎勢2校も非常に力がある。ともに昨年は春夏と近江の前に行く手を阻まれたが、今年は上位まで勝ち進む力を持つ。
長崎日大は昨年は準優勝した近江とタイブレークの激戦の末に敗れたが、今年は昨年以上のチーム力をつけて戻ってきた。
投手陣は昨年は左右2枚看板だったが、今年は右の2人でマウンドを守りぬく。右腕・廣田は抜群の制球力を武器に大崩れしないのが強み。特に変化球の制球に優れており、県大会決勝ではライバル海星を相手に完封勝利を挙げた。球威で上を行く右腕・西尾とタイプの違う2人で継投するため、より効果的となる。守りもセンターラインを中心に鍛えられており、失点は計算できそうだ。
打線は、昨年の選抜で悔しい敗戦を経験した面々が残り、今年はリベンジに燃える。選球眼と走力を兼ね備える1番平尾が出塁し、一発のある3番豊田、4番平岩が返すのが得点パターン。全国クラスの好投手を攻略すべく、機動力にも磨きをかけてきた。得点力は昨年以上と言えるだろう。
23年ぶりの出場だった前年と違い、今年はある程度場慣れして戦うことが出来そう。まずは初戦突破が目標だが、地力は非常に高いチームだ。
海星は夏春連続の甲子園出場。昨夏同様に、今年も投攻守走にバランスの取れた好チームだ。
投手陣は左腕・吉田翔から右腕・高野への継投が基本線。相手打線が慣れ始めたところで、目先をかわし、逃げ切ってきた。吉田翔は抜群のコントロールを武器にコーナーワークで勝負できるのが魅力。打てそうで打てない吉田翔の投球でイニングを稼ぐと、終盤は高野の球威のあるボールでねじ伏せていった。捕手・田川が昨夏の舞台を経験しているのも強みだろう。
打線はチーム打率こそ3割に満たなかったが、終盤の粘り強さは驚異的だ。田中、永田の1,2番コンビや4番池田など上位打線に新2年生が並び、伸び伸びと活躍。下位には昨夏を経験した田川、峯、平尾が並び、しぶとく得点をたたき出していく。九州大会では東海大熊本星翔、西日本短大付と強打のチームに競り勝ってきたように、勝負所で決定打を放てる選手が多く並ぶ。秋は練習量が少ない中での結果であり、選抜では大きく成長している可能性もある。
昨夏は好投手を攻略し、3回戦に進出。新チームのスタートは遅れたが、全国で結果を残したエキスはチームに残っていた。今年は昨夏できなかった8強入りから、さらにその上を目指す。
好投手擁し、上位へ
春は投手力の言葉通り、やはり好投手を擁するチームが選抜で勝ち残る傾向が強い。今年も様々なタイプの好投手が選抜を彩ってくれそうだ。
クラーク国際は初出場の昨年から2年連続で聖地へ。昨年の舞台を経験したエース新岡を中心に上位を目指す。
去年は辻田・山中と力のある2投手の継投で勝ち上がったが、今年は右腕・新岡が全体的存在に。ショートからの転向とあって身体能力が高く、右スリークオーター、サイド、アンダーと自在に腕の位置を変える投球で相手打線を幻惑した。スピードはそれほどでなくとも、緩急とコーナーワークを武器に失点が計算できるのが強みと言えるだろう。冬場以降での2番手投手の台頭が待たれる。
打線は、全道大会でのチーム打率は高くなかったが、好機を犠打で確実に活かす攻めで1点1点積み重ねていった。打線でもエース新岡と捕手・麻原が中心となるが、この2人にいかにチャンスを作って回せるかがカギを握るだろう。北照、北海に競り勝った試合のように、粘り強い攻撃でエースを援護したい。
昨年は延長の末に惜しくも敗退したが、今年はその雪辱を晴らさんと燃えている。初勝利から一気の上位進出を狙う。
専大松戸は好投手・平野を擁し、2年ぶり2度目の選抜の舞台となる。剛腕エースを擁し、上位を伺う。
エース平野は最速151キロをマークする今大会でも注目の速球派右腕。投手を始めたのは高校からと経験は浅いものの、そのぶん測り知れない伸びしろを感じさせる投手だ。昨秋は本調子でない中、カーブでカウントと整える術も身に着け、投球の幅が広がった。また、2番手にも長身左腕・渡邉やコントロールの良い青野が控えており、投手力は大会でもトップクラスに位置する。
一方の打線は、関東大会で作新学院、慶應義塾といった攻撃力の高いチームに打ち負けなかった。今年は例年以上に打力にも自信を持っている。全国レベルの好投手を打ち崩すべく、速球への対応も十分だ。中山、吉田、太田の右の中軸はいずれも長打力があり、犠打で進めたランナーを確実に返す。失点が計算できる分、1点1点をきっちり奪いに行く野球で勝機をかける。
エース深沢(DeNA)を擁した2年前は選抜で中京大中京、夏は長崎商に敗退した。いずれも打線がエースを援護しきれなかったが、今年はその二の舞になるつもりはない。ディフェンス力の高い持丸野球が花開くか。
東海大菅生は2年ぶりの選抜出場権を獲得。好投手・日當を軸に2年前の8強を超える成績を狙う。
東京大会を制した原動力は何といってもその日當だろう。1つ上の代の好右腕・鈴木に追いつけ追い越せと鍛えてきた長身右腕は、最速148キロの速球を武器に、日大三・二松学舎大付と昨夏の東西の東京代表をねじ伏せた。決め球のフォークボールを武器に狙って三振が奪えるのも強みと言えるだろう。島袋、末吉といった控え投手陣も力があり、全体のレベルも非常に高い。
一方の打線は、「派手さはなくとも抜け目ない」東海大菅生らしい攻撃を今年も見せてくれそうだ。そんな中でも4番北島は長打力のある4番として君臨し、決勝では4打数4安打の固め打ちを見せるなど、大舞台に強い。5番新井も神宮で一発を放っており、要警戒の選手だ。秋以降、打順の組み換えも多そうだが、全体としての粘り強さは不変だろう。相手にとってはやりにくい打線だ。
直前の監督交代というアクシデントはあったが、こういう時にまとまりを見せて勝ち上がったチームも過去の高校野球の歴史では存在している。東京王者として意地を見せられるか、注目だ。
常葉大菊川は選抜優勝時の捕手である石岡監督が就任し、初めての甲子園となる。
投手陣の中心になるのは、「曲者サウスポー」の2年生左腕・久保。県大会を失点0で切り抜けたように、打てそうで打てない投手だ。手元で微妙に変化する球質の速球をコーナーに投げ分け、ポイントを前に出されたら変化球で崩していく投球スタイルで打者を翻弄した。試合ごとの修正力も高く、見た目で侮ると確実に痛い目を見る。また、石岡監督に指導された捕手・鈴木の好リードも光る。
打線で中心になるのは女房役の鈴木。ツボにはまった時の長打力は素晴らしく、一発で流れを自チームに引き寄せられる。1番勝亦、3番岩崎と上位には技術の高い好打者が並んでおり、確実に得点を挙げてきた。2008-2009粘のような走塁でかき回す野球や2018年のノーサイン野球と比べれば、幾分オーソドックスになった感はあるが、そのぶん確実性は増した印象だ。
名捕手に率いられてディフェンス力の高くなった常葉大菊川。新しいスタイルで臨む今年の選抜が非常に楽しみだ。
履正社は多田監督体制になってからは初めての甲子園出場。投打に充実し、「NEW 履正社」で甲子園に臨む。
投手陣の軸は何といってもエース左腕の増田になるだろう。昨年からエース格でマウンドを務め、制球力、ボールのキレともに評価が高かった。最終学年となり、素のスピードも増したことで一気に全国でも注目の好投手になっている。昨年からの王者・大阪桐蔭を相手に何度も投げており、全国クラスの強豪にも気後れは全くない。速球派右腕の今仲など後続にもポテンシャルの高い投手が並んでおり、連戦にも不安はない。
攻撃の要となるのは昨年から好打者・光弘と1,2番を形成してきた西だ。長打力と確実性を兼ね備えた核弾頭は、高い打撃技術でヒットを量産。昨夏の大阪大会で決勝まで勝ち進めたのも西の活躍が大きかった。森田、坂根、東の中軸はいずれも長打力があり、西と2番森澤の機動力で神経を持っていかれたところでドカンと打ち込むのが得意のパターンだ。多田監督になってから走力にも力を入れており、新しい履正社野球を見せてくれそうだ。
岡田監督退任後は初めての聖地となるが、大阪で2強を形成してきた歴史と伝統にかけて、再び全国の舞台で暴れまわってくれそうだ。
英明は四国大会を8年ぶりに制覇。しぶといカラーの野球で上位進出を目指す。
チームの屋台骨を支えるのは、多彩な投手を揃えた投手陣になるだろう。右サイドハンドの下村は変幻自在の変化球を駆使して、打者を「遅い球速帯」にご招待。緩急を活かした投球でフルスイングをさせないのが持ち味だ。思い切りのいい左腕・百々も要所で先発にリリーフにとマウンドに立ち、投打両面で貢献度が高い。ここに本格派左腕・寿賀が戻ってくれば鬼に金棒だ。
一方、打線は神宮大会で一挙6得点の猛攻で関東王者・山梨学院を沈めたように、集中打で一気に得点を積み重ねる。スタメンに6人の左打者が並ぶ「左偏重」打線だが、左投手を苦にすることはない。各人がセンターから逆方向を意識し、雑にならない打撃でヒットを積み重ねてきた。少ないチャンスで一気に攻め込むスタイルで好投手攻略を目論む。
まだ春夏計4度の出場で胃外にも1勝止まりの英明。しかし、今年は投手陣を中心に勝ち上がる可能性はかなり高そうだ。
打力で切り開く
攻撃力で上位進出を目指すのが以下のチームになるだろう。
慶応義塾は2018年の春夏連続出場以来の甲子園。「エンジョイベースボール」を旗印に神奈川の強豪が聖地に帰ってきた。
投手陣は秋は戦いながらの整備となったが、その中で2年生右腕の小宅がたくましく成長してきた。伸びのある速球とスライダーを武器に神奈川大会を勝ち上がると、関東大会では抜群のコントロールで大事な準々決勝の昌平戦に好投した。右サイドの松井は経験豊富な投手で、荒れかけた試合の流れを立てなおすことができる。
一方、打線はチーム打率3割8分2厘と破壊力抜群。卓越した長打力を持つ清原和博氏の次男の勝児を7番におけるのだから末恐ろしい力を持っている。12試合で15ホームランと長打で局面を打開することができ、4番加藤を中心に一度火が付くと止められないだろう。過去の慶応と比較しても、豪快さではトップクラスと言えそうだ。
出場するたびに話題をかっさらうのが慶應義塾。今年は清原がいることからも、その戦いに全国が注目することになるだろう。
作新学院は昨夏連続出場がストップしたが、直後の秋季大会を勝ち抜いて関東8強入り。意地の戦いで出場にこぎつけた。
投手陣は技巧派左腕・川又から本格派右腕・小川への継投で戦う。川又はゲームメイク能力が高く、相手の狙いをかわすクレバーさがある。小川は直球の最速が147キロをマークし、まだまだ伸び盛りの2年生。選抜ではさらに成長した姿を見せる可能性がある。小川が川又の負担を軽減できれば、連戦が続いても不安はない。
そして、自信を持っているのが強力打線の威力。核弾頭の高森に始まり、5番武藤まで長打力のある選手がずらりと並ぶ。小針監督らしい強気の攻めも健在で、多少のビハインドがあっても一気にひっくり返す力を持っている。関東大会準々決勝では専大松戸の好投手・平野に競り負けたが、全国トップクラスの投手との対戦を経験したことで、さらなるせいちょうへのヒントをつかんだことだろう。
意外にも選抜での上位進出は8強入りした2000年が最後になっている同校。しかし、今年は一気に勝ち上がる可能性を十分秘めている。
二松学舎大付は4季連続の甲子園出場。経験者を多く擁し、その実力は高く評価されている。
投手陣はエース重川が秋の戦いで大きく成長。球質の重い速球が持ち味で、試合ごとに制球力が増した。また、2年生の三瓶・大内のコンビが成長したことで投手層にも一段と厚みが増している。昨夏の甲子園で好投した大型右腕・大矢も控えて入り、継投の選択肢は格段に増えたと言えるだろう。
そしてフルスイングが持ち味の打線は、2年生になった4番片井を中心に破壊力十分だ。昨夏の聖地で一発を放った主砲は、秋季大会でもホームランを量産し、主砲としての仕事を果たして見せた。また、3番大矢、5番毛利の二人もスタンドに放り込む力を持っており、彼らの前にランナーをためれば一気の大量点もあり得る。打って勝つ「二松学舎」の野球は今年も健在だ。
昨夏は史上初めて1大会2勝を挙げた同校。ここのところ選抜ではなかなか勝ち上がれていないが、市原監督の時(準優勝)以来となる上位進出へ調整に余念がない。
智辯和歌山は昨夏は連覇を狙いながら悔しい初戦敗退に。しかし、新チームは力強い戦いを見せ、再び聖地に戻ってきた。
投手陣は長身左腕・吉川、本格派右腕・清水が中心となる。吉川は変化球の制球に優れ、ゲームメーク能力が高いのが強みだ。清水は球威のある速球が武器で、左右の計算できる投手がいるのは心強い。サイド右腕の石原、アンダーハンドの岡田と技巧派投手をここにどう組み合わせていくか、中谷監督の手腕が問われる。
一方、打線は今年も破壊力抜群。近畿大会初戦では、初回に先制点を許しながらも、3番青山・4番中塚の長打で一気に試合をひっくり返した。同じく長打力のある1番多田羅が初回からバッテリーに圧力をかけ、相手バッテリーを飲み込んでいく。下位打線にも湯浅や、古井ら力のある面々が並んでおり、単純な打力では大会でもトップクラスには位置するだろう。あとは、昨夏のように流れを失ったときに立て直す力がついているか。雑にならない攻撃をしていきたいところだ。
昨夏は中谷監督になってから初めての初戦敗退。国学院栃木のなりふり構わない野球の前に足元をすくわれた。その教訓を胸に再び戻ってきた常勝軍団がどんな野球をみせてくれるか、今から楽しみだ。
鳥取城北は中国大会4強ながら、優勝した広陵と互角の戦いを演じた。注目度は高くないが、実力は高い。
投手陣の柱はエース新庄。鳥取城北の投手らしい角度のある速球と、スライダー・カットボールで中国大会でも完封勝利を挙げた。ピンチの場面でも強気に押せるのが新庄の良さだ。控え投手陣は、サイドの甲斐や左腕・村山など秋の戦いを経験した選手がいるが、春までに第2の柱として誰が台頭するかは不明。その答えは選抜でわかることになるだろう。
一方、打線は広陵投手陣から6得点を奪ったように得点力が高い。1番原田は50メートルを5秒台で走る俊足の持ち主。彼を出塁させると、一気に鳥取城北の流れとなる。盗塁、犠打、エンドランで相手をかき回し、チームで唯一ホームランを放った2年生4番の石黒が返す。5番河西はチャンスに強く、打点を稼ぐ役割が期待される。チーム全体では、犠打を駆使したつながりの良さで攻撃のリズムを作れるのが強み。甲子園戦法をしっかり遂行できると言えるだろう。
2年前の出場時は優勝した東海大相模に0-1と惜敗も、強豪を相手に堂々とした試合運びを見せた。全国レベルでここ10年間戦ってきた鳥取城北。そろそろ勝ちあがってきてもおかしくないだろう。
高松商は夏春連続の甲子園出場。8強入りした昨夏に続く快進撃が期待される。
エースは夏の甲子園を経験した長身左腕・大室。188㎝の長身から繰り出す角度のある速球で相手打線を封じていく。夏の準々決勝の近江戦で4点を失った悔しさが大室を大きく成長させた。まだ伸びしろ十分の投手であり、長尾監督の指導の下、選抜ではさらにいい投球が期待できそうだ。甲田、佐藤晋の両右腕も控えており、投手陣全体で全国の舞台に挑む。
一方、打線は昨年の浅野(巨人)のような注目のスラッガーはいないが、ミート力の高い選手が並び、得点力は非常に高い。1番打者タイプが多いとの長尾監督のコメント通り、着実に出塁し、出たら走れる選手が並んでいる。課題は4番の固定。2番中本、3番久保、5番横井と巧打者が多いだけに、4番を固定できれば一気に打線の形が決められるだろう。冬場を経て誰が台頭するか、注目だ。
昨年はイチローによる指導やスラッガー浅野の活躍で話題をさらった伝統校・高松商。長尾監督就任以来安定した強さを見せており、今年も聖地で躍動してくれるだろう。
ダークホース
今年は上位校で抜きんでた存在はいないため、ダークホースと呼ばれるチームにも大いにチャンスがありそうだ。
特に北信越の決勝を戦った福井勢2校は不気味な存在となる。
北陸は選抜は好左腕・鈴木を擁した1989年以来の出場となる。北信越王者として堂々甲子園に乗り込む。
チームの中心は長身右腕の友廣。185㎝の長身から繰り出す快速球を武器に北信越大会では日本航空石川の強力打線を完封して見せた。決勝の敦賀気比戦で好投した右腕・竹田も計算が立っており、2人ともストレートの質が非常に高いのが特徴だ。左腕・鳴海や技巧派の中川も控えており、接戦を勝ち抜くスタイルのチームにとって、この投手層の厚さは強みだ。
一方、打線は大物うちがいないぶん、小技で活路を見出す。9番中浦、1番水野の俊足コンビ2人が塁上をかき回し、3番平田が返すのが得点パターンだ。長打はなくとも、確実にミートできる打者が多く、見た目以上の得点力の高さを持つ。敦賀気比のコーチで甲子園を経験している林監督の采配の元、選手たちが躍動してくれるだろう。
1992年の選手権では近大付など強豪を打ち破り、8強に進出。令和の甲子園で快進撃の再現を狙う。
敦賀気比は5季連続の甲子園出場。投打に派手さはなくとも、しぶとく勝ち上がって選抜にたどりついた。
エースの辻は多彩な変化球をコントロールよく投げ分ける技巧派右腕。投手として何より大事な制球力を持っているのは大きな強みだ。サイドハンドの桶谷や左腕・竹下も控えており、継投策で戦うこともできる。守備陣も秋の戦いでほとんどエラーはなく、ディフェンス力は出場校中でも屈指だろう。
打線は例年と比べるとやや破壊力に欠けるが、昨夏を経験した1番濱野、主砲の高見澤と左の好打者を軸にポテンシャルは高い。秋はヒットが出ない分、小技での得点が多かったが、本来目指すは打ち勝つ野球だろう。毎年、冬場を超えて大きく成長するのが敦賀気比の特徴だけに、選抜では全く違った戦いを見せる可能性はある。
ここ数年の戦いで、今一番甲子園慣れしているのが敦賀気比と言えるだろう。新チーム結成以降、なかなか時間が取れない中での秋季大会だったため、本戦では大きく成長している可能性は十分だ。
その他にも昨年からの経験者が残るチーム、名将が率いるチーム、伝統校が顔をそろえる。
大垣日大は名将・阪口監督に率いられて2年連続の甲子園出場。今年も投打に充実した戦力を持っている。
投手陣の柱はエース右腕の山田。阪口監督の口からも高い評価がついて回る右腕は、腰の怪我を機に体つくりを見直したことが功を奏し、回復とともに一気にスピードアップした。140キロ台の速球にスライダー、カーブを交える投球で、要所で三振が取れるのが持ち味。速球は手元で打者のバットを押し込むキレがあり、そう簡単には打てないだろう。2番手投手陣がどこまで育っているかが懸念されるところだ。
打線は、4番ショートの米津が昨年からのメンバー。長打力と確実性を併せ持ち、ポイントゲッターとしてきっちり役割を全うする。3番高橋、5番山田と組む中軸は全国上位レベルだろう。課題は、下位打線がやや弱いところで、冬場の練習を経てどこまで強化できているかが注目点だ。
昨年は選考問題に揺れた面もあったが、今年は文句なしで切符をつかみ取った。選抜経験豊富な常連校が不気味な存在感を放つ。
能代松陽は夏春連続の甲子園出場。昨夏を経験したメンバーを中心に選抜初勝利を狙う。
エースは昨夏の甲子園を経験した右腕・森岡。聖望学園戦で失点こそしたものの、やはり大舞台での経験は何物にも代えがたいものがある。140キロ台の速球を武器に安定感があり、新チームではエースとしてチームを牽引して東北大会で準決勝までチームを導いた。また、4番を務める斎藤もマウンド経験は豊富。準決勝では強打の仙台育英打線を相手に2失点でまとめ、1-2と敗れたが、この接戦が出場の決め手となった。投手陣は万全と言えるだろう。
打線は、上位に力のある打者が並ぶ。俊足巧打の1番大高は恰好のリードオフマン。彼の出塁でリズムを作り、3番虻川、4番齋藤と中軸がきっちり打ち返す。斎藤は秋は苦戦したが、甲子園では反撃の2点タイムリーを放ったように大舞台に強いのが特徴だ。下位には打撃の良い森岡が控えるなど、打線全体の力は決して低くはない。小技も絡めてチャンスをしっかりものにしたいところだ。
やはり好投手が揃う甲子園だけに、能代松陽が勝つにはロースコアの試合展開が望ましいだろう。自分たちの良さを発揮できれば、2011年夏のような快進撃の再現もあり得る。
彦根総合は春夏通じて初の甲子園。北大津を計6度甲子園に導いた名将・宮崎監督に率いられ、全国の舞台へやってきた。
エース左腕の野下は左スリークオーターからキレのある速球を投げる技巧派左腕。肘の位置をやや下げたことによってコントロールが良くなり、安定感が増した。昨秋の近畿大会の大阪桐蔭戦では、初回のリードを守り切れずに敗れたが、全国トップクラスの打線と対峙できたのは大きな経験になったことだろう。勝田、武元と速球に力のある右腕も控えており、投手層は分厚い。
打線は、1番秋山・2番田代、3番上田の3人はおそらく不動。ミート力と選球眼に優れた3人が、宮崎監督らしい攻撃野球を体現していく。大阪桐蔭戦では不調だったとはいえ、エース前田の立ち上がりをじっくりせめて逆転に成功。観衆をあっと言わせるしたたかな攻撃を見せた。下級生にも期待の打者が多く、冬場を経て一気にラインナップが変わる可能性もある。
ここ2年は近江の独壇場だった滋賀の高校野球。新たな勢力が出てきて、これから対抗勢力となっていくのか、彦根総合の戦いから目が離せない。
社は夏春連続の甲子園出場。大阪桐蔭の神宮優勝により、転がり込んできた出場枠をしっかりつかみ取った。
エース高橋は140キロ台の速球とスライダーで勝負する本格派右腕。昨秋の近畿大会初戦ではV候補の天理の打線を相手に、最終的に7失点は喫したものの、7回までは1失点で踏ん張り、打線の爆発につなげて見せた。まだまだ伸びしろは十分な投手であり、数々の好投手を輩出してきた社からあら鉈スター誕生の予感だ。左腕・年綱も戦力として計算が立ち、ディフェンス面で大きな心配はないだろう。
攻撃陣は、1番年綱から6番河関まで左打者が6人ずらりと並ぶ。ある意味、巧打者ぞろいの社らしいラインナップと言えるだろう。夏初出場を決めた昨年からメンバーは全員入れ替わったが、ミート力と細かい攻撃はしっかり受け継がれている。天理を相手に大勝を収めたように、一度つながりだすと止まらない集中打は破壊力抜群だ。4番水谷、打撃もいい5番高橋の前に多くチャンスを作っていきたい。
本来なら準々決勝でコールド負けし、同じ兵庫勢の報徳が勝ち進んだため、なかったはずの甲子園。こういう失うもののないといった気持ちで臨める「地元兵庫勢」ほど怖い存在もないのかもしれない。社らしい守りの野球で2004年の4強をまずは目指していきたい。
光は夏は1993年、1994年と連続出場を果たしたことがあったが、選抜は初めての出場となる。
出場の原動力は何といってもエースの右腕・升田。秋の公式戦をほとんど一人で投げ抜いたタフネス右腕は、主将もつとめるリーダーシップでチームを牽引し、中国大会決勝までたどりついた。181㎝の恵まれた体格から繰り出す速球に多彩な変化球を織り交ぜ、最後までマウンドを守り抜く。2番手の育成がどこまで進んでいるかは気になるところだ。
打線は1番丸次、4番藤井の2人が軸。この2人の活躍で、前評判では上だった創志学園や高川学園に競り勝ってきた。下位にも高打率の打者がいるが、全国クラスの好投手攻略にはこの2人の活躍が欠かせない。終盤の粘り強さが持ち味だけに、序盤から球数を投げさせるなど工夫を見せていきたいところだろう。
まだ甲子園での勝利には縁がない光。久々の大舞台で記念すべき1勝を手にできるか。
高知は2年連続の出場。今年は四国4強だったが、地力の高さが評価され連続出場を成し遂げた。
投手陣は昨年同様に絶対的な存在はいないため、継投策でつないでいく戦いとなる。安定感はチーム1の右腕・西村真が先発し、変則右腕・中嶋がつなぐ。中嶋は昨年も甲子園のマウンドを経験済みで心強い存在だ。そのほかにも平・辻井など速球派の右腕が控えており、彼らをどう継投させるかがカギを握る。投手力がものを言う軟式野球を主戦場にしてきた濱口監督の継投のタクトに注目だ。
投手陣を支える打線の中心となるのは4番ショートの門野。四国大会を怪我で欠場したが、本来なら大会注目の好ショートに上がっていただろう。本戦でしっかり結果を残したいところだ。下位打線まで高打率の打者が並ぶが、秋の戦いでは走塁面など細かい課題は出た。そのあたりを詰めていければ、さらに得点力はあがりそうだ。昨秋の戦いの中で1番に昇格した木村の出塁もカギを握る。
昨年は2回戦で国学院久我山のうまい野球に翻弄され、8強入りを逃した。今年はまずは昨年を超える8強入りを狙う。
大分商は創立100周年の年に選抜出場を達成。交流試合で登場した2020年以来、聖地を踏むことになる。
投手陣主体に守り切る野球がベース。キレのあるボールが武器の右腕・児玉からリリーフの飯田につなぎ、接戦を勝ち抜いてきた。2人とも防御率は0点台を記録し、九州大会でも強打の東福岡にも2-1と1点差勝ち。敗れはしたものの、全国クラスの打力を誇る明豊も大分大会決勝で2点に封じており、失点は少なく抑えられそうだ。
援護したい打線は、1番豊田・2番渡邉のコンビがいずれも打率5割以上をマークし、次々にチャンスメーク。体重100キロを超す4番羽田野はパンチ力ある打撃で彼らをホームへと迎え入れてきた。6番丸尾、7番二宮、8番児玉と下位打線も高打率をマークしており、得点に絡む。九州大会初戦で強豪・神村学園をコールドで圧倒したように、つながりのある打線を形成する。
かつては岡崎郁(巨人)など名選手を多く輩出した九州の伝統校。全国の舞台で存在感を示したいところだ。
21世紀枠
氷見は1993年以来の選抜出場となる。
昨夏は富山大会決勝で高岡商との激闘の末に敗れ、あと一歩のところで甲子園を逃した。その悔しいマウンドを経験したエース青野が成長を見せ、143キロを誇る速球を武器に富山大会で優勝。北信越大会でも強豪・遊学館を延長12回で完封し、大きな1勝を挙げた。
打線は富山大会5試合中4試合で2桁得点を挙げたように得点力は高い。バッテリーが打線でも主軸を担うだけに、1番伊尾をはじめとしたその他の打者の働きがカギを握るだろう。エースが安定しているだけに番狂わせを起こす可能性は十分ある。
城東は徳島屈指の進学校。部員13人の少数精鋭ながら、工夫した野球が評価され、21世紀枠に選出された。
投手陣は岡、清重の右腕2枚看板。岡は新2年生ながらピンチの場面でも気後れすることがない。清重もまだまな伸びしろのある右腕であり、この2人で試合を作る。打線でも軸になる岡はパンチ力があり、5番森本とともに長打で塁上の走者を返せる。「打撃より攻撃」の合言葉通り、走者との連携や打席内での粘りもあるのが城東野球の特徴だ。少ない人数ゆえのまとまりがあるチームが、全国の舞台で躍動する姿が今から楽しみでならない。
石橋は投打ともに層の厚さを武器に、県大会で4強まで進出。3度目の正直で最終選考を突破し、念願の甲子園をたどり着いた。
投手陣は左腕・藤巻と右腕・入江の2枚看板が引っ張る。藤巻は強気の内角攻めを武器に秋の公式戦を自責点0で投げ切り、入江は球威のある速球が魅力だ。さらに故障明けの右腕・小林も含め、3人の継投で試合を作っていくことになるだろう。打線も秋は故障で欠場していた捕手・横松が戻ることが決まっており、厚みを増しそう。俊足の1番大金を中心に機動力も豊かで、塁上から圧力をかけることができる。
激戦の栃木大会で頻繁に上位まで勝ち上がっていた実力校の石橋。その実力をお披露目する舞台がようやくやってきた。
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