大会11日目第2試合
大坂桐蔭
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 |
0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 3 | 2 | × | 7 |
報徳学園
大坂桐蔭 南恒→前田
報徳学園 盛田→間木→今朝丸
近畿勢同士のマッチアップとなった準決勝第2試合は、大阪桐蔭が先行し、報徳が追う展開に。5点差を大逆転した報徳学園が2002年以来となる決勝進出を果たした。
試合
大坂桐蔭は3回戦以来の先発となる南恒、一方、報徳学園は初戦以来の先発となるエース盛田をマウンドに送った。
報徳の先発・盛田は仙台育英戦はやや制球に苦しんだ感があったが、この試合も初回、ボールが浮いたところを1番小川にとらえられる。しかし、球威のある速球で2番山田を三振に取ると、3番徳丸・4番南川も球威で封じ込んでいく。
一方、大阪桐蔭の右腕・南恒は好調な立ち上がり。インサイドを強気に攻める持ち味を発揮し、変化球の制球も抜群。好調な報徳学園打線に対し、1,2回とヒットはおろかランナーすら許さない。
静かな入りに見えた試合。しかし、3回にいきなり試合が大きく動く。
この回、まだ制球がやや不安定な盛田は2つの四死球と2つの暴投で2アウトながら2,3塁とピンチを迎える。ここで3番徳丸はアウトコースのカーブをしっかりためてレフトへはじき返し、1点を先制。さすがにうまい打撃を見せる。盛田はやや上体の突っ込みが早いか、ここからさらに四球を与え、満塁となったところで大角監督が早くも2番手に間木を送る。
なんとか後続を抑えたい報徳だが、2番手の間木も5番佐藤に押し出し死球を与え、2点目。さらに、6番長澤、7番村本と高めに浮いたところを連続タイムリーし、大阪桐蔭がこの回一挙5点を先行する。多彩な球種とコーナーワークで抑える間木だが、絶対的な抑える球種があるわけでなく、いわばストッパー的な役割の求められるこの場面では苦しかったか。逆に大阪桐蔭の相手の乱れに付け込む力はさすがの一言である。
意気消沈しそうなこの場面。しかし、2試合連続で延長サヨナラ勝ちの報徳ナインはあきらめない。その裏、ここまで完全に抑えられていた南恒を攻め、7番林・8番竹内とカウント球をしっかりとらえて連打。無死2,3塁から9番間木の当たりそこないが3塁前へのラッキーな内野安打となって1点を返すと、さらに続くチャンスで準々決勝サヨナラ打の2番山増が犠飛を放ち、2点を返す。取られた直後に取り返したこの2点は殊の外大きかった。
登板直後に失点した間木だが、4回からは落ち着いた投球で大阪桐蔭打線を封じる。ヒットこそ浴びるものの、丁寧に内外角を突く投球で長打は許さず、勝負どころでは素晴らしいコントロールを見せる。大阪桐蔭に傾きかけていた流れを中盤からしっかりつなぎとめたのがこの2年生右腕の力投であった。
一方、南恒も3回の2失点以降は報徳打線を危なげなく封じていた。もともと速球のスピード・威力に定評のある選手だったが、この日は変化球の精度が高い。ミートのうまい報徳打線に対し、ボールをとらえさせず、内野ゴロの山を築いていく。エース前田への依存度が高いと言われた中で、大会をつうじてしっかり「右」の柱が育っていた。
しかし、ここまで粘りの戦いを見せていた報徳、終盤に強い報徳は抑えられながらもしっかり牙を研いでいた。そして、球数も多くなってきた7回裏。一気に南恒に襲い掛かった。
この回、5番辻田、6番西村といずれも巧みな流し打ちでヒットをマーク。球威のある南恒のボールに対し、うまい打撃を見せる。暴投で2,3塁となると、スタンドはもう「アゲアゲホイホイ」の大合唱。ここで、今大会絶好調の7番林がアウトコースの変化球をしっかり呼び込んでレフト線へはじき返し、あっという間に報徳が1点差に迫る。さらに8番竹内がセーフティバントでチャンスを広げたところで、ついに西谷監督は2番手でエース前田をマウンドに送った。
前田にとっては前年夏の下関国際戦の借りを返すにはうってつけの場面。だが、乗っている報徳の勢いを止めきれない。報徳は代打の切り札・宮本を送ると、初球攻撃を仕掛けた打球はレフト線へぽとりと落ち、殊勲の林がホームイン。1塁ランナーが2塁で封殺されて記録はレフトゴロとなったが、この回実質5連打、しかも下位打線で放った連打で一気に試合を振り出しに戻した。
ムードは完全に報徳学園。大阪桐蔭は8回にこの回から3番手で登板した今朝丸からヒットを放つも、盗塁を強肩・堀に刺されて得点できない。押せ押せの流れの中、前田が8回のマウンドへ向かった。
報徳はこの回、先頭の2番山増が8球粘って四球を奪取。昨秋手も足も出なかった前田のボールに対し、必死に食らいついていく。3番堀は三振に倒れるも、ここのところ当たりの出ていなかった4番石野が仕事を果たす。初球、甘く入ってきたスライダーを迷わず強振すると、打球はライナーでレフトフェンス付近まで到達するタイムリー2塁打に!報徳にとっては待望の4番の一打で勝ち越しに成功する。追い込まれると、厳しいボールが来るだけに、若いカウントからの積極的な打棒が光った。
さらに攻撃の手を緩めない報徳は2アウト後、今度は6番西村がインサイドの速球をセンターははじき返すと、ショート小川が捕球しきれず、タイムリー内野安打となったもう1点を追加。スライダーもとらえ、ストレートもとらえ、この日は報徳打線が完全に前田の上を行った。
逆転に成功した報徳は、最終回1番から始まる大阪桐蔭の打線に対し、今朝丸が渾身の力を振り絞って力投した。3番徳丸には四球を与えたものの、最後は4番南川をチェンジアップで打たせて取って試合終了。報徳学園があの近畿決勝での戦いから約半年、大阪桐蔭の、そして前田の牙城を崩し、優勝した2002年以来、21年ぶりとなる決勝進出を果たした。
まとめ
報徳学園は王者・大阪桐蔭を相手になんと5点差をひっくり返す見事な戦いぶりで勝利をつかみ取った。エース盛田が捕まってしまったが、間木・今朝丸と力のある2年生の投手リレーで4回以降は強打の大坂桐蔭を相手に無失点。3人の投手を自在につないでいけることが、今年の報徳の強みであり、それぞれの投手が堀の好リードもあって自分たちの良さを出すことができている。序盤苦しい展開になっても二の矢、三の矢でひっくり返せるのは決勝に向けても非常に心強い材料だ。
また、打線は上位から下位まで本当に切れ目なくつながり、ラッキーボーイ的な選手が何人も出現している。3番堀、4番石野と軸になる選手はいるが、彼らだけに頼らない、つながりの良さが報徳打線の持ち味だ。この日は、昨秋翻弄された前田からも積極的な打撃で3得点。これ以上ない自信になったことだろう。自慢の機動力も好調で、今年の報徳打線が抑えられるところを想像するのは難しくなってきている。
ここまで健大高崎、東邦、仙台育英、報徳学園と昨年の春夏の甲子園王者や地区大会王者など強豪ばかりを下しての決勝進出。何か今年の大会の主人公感が出てきた地元の伝統校が、3度目の選抜制覇に向けて、いよいよ最後の舞台へ臨む。
一方、敗れた大阪桐蔭はやはり大会を通してもう一つ打線の調子が上がらなかった印象を受けた。西谷監督も追加点が取れなかったことを反省しており、機動力やスキのなさに加えて、ここ一番で一本を出す「決定力」をこれから追求していくことになりそうだ。
また、前田はこの日、報徳打線の積極打法に捕まってしまって逆転負け。やはり前田自身の投球も本来の物ではなく、ボールのスピード・キレがもう一つ乗り切れなかった。南恒の成長という大きな収穫もあったが、やはり夏に向けてエースの復調は不可欠だろう。
ただ、選抜連覇を狙い、多くの物を背負って戦ってきた大阪桐蔭ナインにとっては、ある意味大きな荷物を一度降ろせた感覚もあるのではないだろうか。失うもののなくなった王者の、夏に向けてのリベンジがこれから始まっていくだろう。
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