2024年選抜1回戦予想 高知vs広陵

2024年

2024年選抜1回戦

高知vs広陵

51% 49%

1回戦屈指の好カードである。同時にこのカードの勝者が優勝争いの中心になっていきそうだ。

 

高知は3年連続の甲子園出場。昨年の大舞台も経験している辻井、平の強力右腕2枚看板が健在であり、守りの面では全く不安はない。辻井は躍動感のあるフォームから繰り出す速球に球速以上の勢いがあり、打者のバットを手元で差し込む伸びと球威がある。一度はまると手の付けられない状態となり、難攻不落の投球を見せる。もう一人の右腕・平は秋以降で急成長を見せ、神宮大会後の練習試合では京都国際を完封。最速148キロを誇り、スピードでは辻井の上を行く。終盤に出てくるとなかなか攻略は難しいだろう。

対する広陵打線は昨年の主砲・真鍋のような長距離砲がいないが、上位から下位までのつながりの良さは昨年と引けを取らない。4番の只石は前年春夏の甲子園で多くの好投手との対戦を経験しており、主砲として試合を決める役割を期待される。捕手として、読みも活かした打撃でチャンスをものにしたい。同じく経験者の1番濱本、2番田村を中心に走れる選手もそろっており、得点力は高い。状況に応じた攻めで高知の好投手2人を攻略したい。

 

一方、広陵のエースはもはや全国の高校球児が目指す存在となった右腕・高尾。2年生時から守先覚を務め、低めに突き刺さる速球はスピード・球威・キレともにすべての面で質の高いボールだ。変化球の精度も高く、三振を狙っても、打たせて取ってもOK。同じく前年から出場している捕手・只石との息もぴったりであり、このバッテリーの牙城を崩すのは容易ではない。右腕・堀田も成長を見せているが、まずは高尾の完投勝ちが理想だろう。

対する高知打線は、軟式野球出身の濱口監督のもと、点の取り方がうまい打線に仕上がっている。大石、谷口、そして打撃もいい辻井で組む中軸は勝負強さを持つが、そこまでつなぐまでの展開の作り方がよく、状況に応じて犠打と走塁をうまく組み合わせてくる。過去2大会を見ても、昨年の履正社戦に反映されるように、打てない展開の中でもなんとかして勝利をつかみ取る野球ができるのが強みだ。好投手・高尾を相手に、少ないチャンスを活かす野球で活路を見出していく。

 

両チームとも、投打両面で鍛え抜かれており、終盤まで接戦になりそうな予感だ。力のある投手を2人擁している高知が終盤勝負になればやや有利か。3~4点を争う好試合になりそうな予感だ。

主なOB

高知…有藤通世(ロッテ)、弘田澄男(ロッテ)、杉村繁(ヤクルト)、木下拓哉(中日)、公文克彦(巨人)

広陵…金本知憲(広島)、野村祐輔(広島)、小林誠司(巨人)、有原航平(ソフトバンク)、中村奨成(広島)

 

高知  広島

春  1勝  0勝

夏  3勝  3勝

計  4勝    3勝

対戦成績は、春は高知勢が1勝、夏は3勝3敗の五分となっている。

1973年夏は準々決勝で広島商と高知商の伝統校が対戦した。選抜では機動力野球で作新学院の江川卓(巨人)を攻略していた広島商打線は夏も好調を維持。高知商のエース鹿取(巨人)に対して、立川(広島)のホームランなどで7得点を挙げて広島商が、左腕・佃の好投もあり、7-2と快勝を収めた。さらに勢いを得た広島商が、決勝でも強打の静岡を相手に試合をリード。終盤に追いつかれるも、9回裏に大利がサヨナラスクイズを決め、広島商らしい勝ち方で5度目の全国制覇を果たした。

一方、2013年夏は明徳義塾と瀬戸内が対戦。瀬戸内のエース山岡(オリックス)は、広島大会決勝で広島新庄・田口(ヤクルト)と歴史に残る引き分け再試合を行い、伝家の宝刀・スライダーは、あのダルビッシュをして「これはプロだわ」と言わしめる威力を誇っていた。これに対し、明徳義塾は2年生の岸(西武)をエースで4番に据え、4強入りした前年に続いての上位進出を狙っていた。

試合は、0-0の投手戦で進んでたが、5回に明徳義塾が6番宋のホームランで1点を先制。山岡のスライダーが高めに浮いたのを逃さなかった。この回、犠飛でもう1点を追加すると、岸が瀬戸内打線の反撃を抑えて2-1で逃げ切り勝ち。馬淵監督の山岡攻略の狙いが結実し、ワンチャンスをものにして逃げ切った。

好勝負の多い両県の対戦。勝利を手にするのは…

思い出名勝負

2008年夏1回戦

広陵

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 5 0 0 0 3 0 8
0 0 0 0 0 3 2 0 0 5

高知

 

広陵    中田→前田

高知    松井→公文

大会序盤から強豪同士の好カードが多かった、2008年の第90回記念大会。優勝経験を持つ強豪がいきなり火花を散らすこと御なった。

広陵は前年夏に野村(広島)-小林(巨人)のバッテリーを中心に夏3度目となる準優勝を達成。しかし、ディフェンスの堅かった前年のチームから一転し、この年は1番上本(広島)、3番林を中心とした攻撃型のチームであった。広島大会決勝では前年夏に競り勝った総合技術に一時2-9と大量リードを許したが、総合技術の好投手・水野から打線が集中打を放ち、一気の逆転劇で終わってみれば12-9と勝利を収めていた。

この試合で3本の犠飛を放つなど、好機で確実に外野へと運ぶ打者の技術の高さが光った。下位まで油断できな打者が並び、相手投手は息が抜けないだろう。一方、投手陣は速球派右腕・中田(広島)、技巧派右腕・前田、春季中国大会で20三振を記録した左腕・森宗の3本柱。ともに高いポテンシャルを誇るが、好不調の波が激しいのが難点であった。

対する高知は2年連続の甲子園出場。前年度のチームはエース国尾、主将・大菊を中心に明治神宮大会を制覇し、春夏の甲子園でも優勝候補に挙がっていた。しかし、春夏の甲子園ではともに初戦敗退。島田監督就任以来、まだ甲子園での勝利は挙げられていなかった。この年の代は、選手の多くが入れ替わっていたが、右サイドながら速球派の松井と左腕・公文(巨人)の2投手を中心に投手力には定評のあるチームとなっていた。

この頃には2005年に不祥事で力の落としていた明徳義塾も復活してきており、2008年度の選抜は明徳義塾が出場。エース左腕・南野を中心に勝負強い野球で2勝を挙げてベスト16に進んでいた。しかし、夏の本大会では高知商に3-4とサヨナラ負け。その高知商の投手陣を決勝で高知打線が集中打で攻略し、10-2と大差で2年連続の選手権出場を決めた。打線は目立つ打者がいるわけではないが、2年生の4番木下(中日)を中心に上位から下位までつながりがよく、集中打で得点を挙げるのがパターンであった。

 

広陵は速球派右腕・中田、高知はエース松井が先発のマウンドに上がった。

1回表、広陵は先頭の1番上本がヒットで出塁するも、後続が倒れて先制ならず。その後、雨による中断があり、間隔があいたが、広陵の先発・中田もうまく調整し、1アウト1,2塁とピンチを背負ったが、4番木下をショートゴロ併殺に切って取り、無失点で立ち上がる。

序盤はランナーを出しながらもお互いに0行進。中田が自慢の速球で高知打線を封じれば、松井も独特の変則フォームから繰り出すキレのある速球で広陵打線を封じていく。

しかし、その均衡が4回表にいきなり崩れていく。

この回、広陵は2番下川・3番林の連打でチャンスメーク。犠打で進塁させ、2アウトながら2.3塁となると、ここから怒涛の集中打!なんと6番中田から7番船木、8番橋本、9番長谷部と下位打線で4者連続のタイムリーで5点をたたき出したのだ。しかも、そのうち3本は3塁打という破壊力。突然の広陵打線の猛爆の前に高知バッテリーもなすすべがなかった。変則的なフォームが売りであったが、一度タイミングが合い始めると止まらない。長い甲子園の歴史の中でも、下位打線でこれだけの長打攻勢が出るのはちょっと記憶になかった。

ただ、高知も伝統校の意地にかけてこのままでは終われない。集中打で5点は失ったものの、直後の5回をきっちり松井が抑えると、6回からは2年生左腕の公文にスイッチ。2年生バッテリーとなったが、息の合った投球で6回表を3者凡退に抑える。

すると、6回裏、広陵のディフェンスにほころびが見え始める。先頭の3番高木にストレートの四球を与えると、けん制悪送球で労せず3塁へ。ここで4番木下が真ん中寄りのスライダーを完ぺきにとらえてレフトへタイムリー。さらに5番北山が四球でつなぐと、代打・西岡、9番堺がいずれも同じような右打ちでライトへテキサス性のタイムリー!あっという間に点差は2点となり、試合はわからなくなる。

広陵としては懸念されていた投手陣の不安定さが顔をのぞかせ始める。高知に傾いた流れは戻らず。7回裏にも先頭の2番大石が四球で出塁。6回から明らかに中田のボールが引っかかって抜け始めていた。ここで広陵・中井監督はたまらず2番手で前田をマウンドに送る。中田よりまとまりのある投手だが、火のついた高知打線は止まらない。3番高木がセンターオーバーの2塁打でつなぐと、4番木下はインサイドをついた速球を完ぺきにとらえ、レフトオーバーの2点タイムリー2塁打!5点のビハインドをものともしない猛攻で一気に試合を振り出しに戻した。

高知としてはこの流れに乗って一気にひっくり返したところ。しかし、セカンドゴロで木下が3塁へ進むも、6番前口のスクイズが空振りとなって併殺に。実に惜しい逸機で同点のまま試合は8回に突入する。

こうなると、九死に一生を得た広陵に勢いが出る。6回から広陵打線を封じていた公文に対し、6番中田のヒットと2四球で満塁とチャンスメーク。ここで、代打・松本に痛恨の押し出し死球を与えて再びリードを許すと、2アウト後に1番上本にタイムリーが飛び出して、8-5。上本はこの日4本のヒットを放ち、打線の火付け役かつ仕事人となった。

勝ち越し点をもらった前田は、8回からは落ち着きを取り戻し、ラスト2イニングを抑えて、試合終了。両チーム合わせて25安打が飛び交った乱打戦を制し、広陵が2年連続で初戦を突破した。

 

広陵は続く2回戦で横浜と対戦。この試合も上本の先頭打者ホームランなどで先制して試合を優位に進める(お兄さんも2003年夏に先頭打者弾を放っており、兄弟での達成は史上初)。しかし、中盤以降、横浜の強力打線につかまり、9安打で7得点と効率よく攻められてリードを奪われる。逆に広陵は11安打を放ちながら、惜しい走塁死もあって4点止まり。強豪との連戦となった大会は2回戦で幕を閉じた。

横浜vs広陵 2008年夏 | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

一方、高知は敗れはしたものの、5点差を追いつく粘り腰は見事であった。翌年は、公文-木下のバッテリーが残り、再び甲子園に出場。同じ広島代表の如水館を引き当てる。このカードは雨天ノーゲームで2試合が流れ、2試合とも如水館リードの中、試合が終わっていた。迎えた3戦目は、初めて晴れた状態でのマウンドとなり、公文が14奪三振の好投を披露。打線も集中打で好右腕・幸野を攻略し、島田監督が念願の初勝利を手にした。なにか天候が高知に味方して勝利をプレゼントしたような戦いであった。

 

2008年夏 全国高校野球選手権大会 広陵×高知 (youtube.com)

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